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◆筋弛緩剤えん罪事件

宮城・筋弛緩剤えん罪事件(北陵クリニック事件)

2016年7月1日更新

事件の概要  

大助さん.gif

 宮城県仙台市の北陵クリニックで、入院患者の容体が急変する事態が相次いだとして、2001年1月、准看護師の守さん(当時29)が逮捕され、ウソの「自白」をさせられ、犯人とされました。守さんは、患者の点滴に筋弛緩剤(筋肉の動きを弱める薬)を混入させたとして、殺人と殺人未遂で起訴されました。
 裁判では、弁護団は1審の段階から、守さんはもちろんのこと、何者かが筋弛緩剤を患者に投与した事実は存在しない、患者の容体急変は、筋弛緩剤の注入による症状ではなく、いずれも病気や薬の副作用、救急処置の不徹底などによるものであると主張しました。また、点滴ボトルに筋弛緩剤を混入させたとする守さんの「自白」の方法では、容体の急変は起こりえないことも明らかとされました。
 しかし、有罪とした仙台地裁判決は、5人の患者さんの血清や尿などから筋弛緩剤マスキュラックスの成分であるベクロニウムが検出されたとした大阪府警科学捜査研究所の鑑定(土橋鑑定)を信用できるとして、主治医が心筋梗塞による死亡と診断したものや、明らかに筋弛緩剤の薬理効果とは異なる症状であったものも、筋弛緩剤投与が患者急変原因であると断定して、殺人および殺人未遂事件と認定しました。
 守さんが犯人とされたのは、作られたウソの「自白」と、守さんが正規の手術で使用された筋弛緩剤の空アンプル入りの針箱を片付けようとしただけの行為を「証拠隠滅を謀った」とすり替えられた証拠が採用されたためでした。
 守さんは、一、二審で無期懲役の不当判決を受け、08年最高裁の上告棄却で確定しました。守さんは現在、千葉刑務所に服役中です。

再審めざして  

 裁判で犯罪と認定する根拠とされた「土橋鑑定」が誤りであることは多くの学者の証言や意見書で明白です。また、急変症状が明らかに筋弛緩剤の薬効と異なると争われた患者の急変原因については、ミトコンドリア病(メラス)による急性脳症が原因であるとの神経内科専門医の意見書も出されており、殺人及び殺人未遂事件と認定した判決の根拠は完全に崩れています。
 守さんの自白も事実と矛盾する信用性に欠けるものであり、証拠隠滅を謀ったとされる多数の空アンプルも証拠として法廷に出されたのは、四層に分けて撮られた四枚の写真の合計で19本の空アンプルがあると言うだけで、検察側は筋弛緩剤の空アンプルもそれが入っていたとする針箱も法廷に提出することを拒んでいます。証拠ねつ造さえ疑われています。
 2012年2月に守さんと弁護団は、仙台地裁に対して再審を請求しました。                   
再審請求申立書では、3つの主な新証拠から守さんが無実であること明らかにしています。
第1は、患者の血液や尿、点滴ボトルから筋弛緩剤の成分が検出されたとする、大阪府警科学捜査研究所の「土橋鑑定」への反証。第2は、吐き気と腹痛で北陵クリニックを来院した少女の症状は、筋弛緩剤の症状ではないばかりか、筋弛緩剤の薬効と矛盾すること。第3は、守さんが法廷で「僕はやっていない」という証言が信頼できる証言であることを論証した心理分析です。
 また、弁護団は事実調べと証拠の全面開示を請求しました。しかし、検察側は事実調べは必要ないと主張しています。
 守る会では、速やかな再審開始決定を求める要請署名に取り組んでいます。
 みなさまのご協力とご支援を心からお願い致します。

守る会の連絡先/署名等  

  連絡先
  仙台筋弛緩剤冤罪事件・守大助さんを守る会
  〒980-0022 宮城県仙台市青葉区五橋1-5-13 宮城県労連会館内
  署名用紙 file仙台北陵クリニック・筋弛緩剤冤罪事件の速やかな再審開始決定を求める要請書 




冤罪です.gif

「事件」はこうして作られた

 守大助さん(当時29歳)は、勤務していた医療法人「社団法人泉会北陵クリニック」(仙台市泉区)において、患者5人の点滴に筋弛緩剤を混入したとして、2001年1月6日に逮捕されました。
 しかし、守大助さんには何の動機もなく、また容疑者となった5人容体急変は、筋弛緩剤(マスキュラックス)の薬理効果とは矛盾し、殺したとされる患者については主治医が心筋梗塞による死亡と診断していました。にもかかわらず、有罪が確定したものです。

捜査のきっかけはこうです

 検察側は、「患者の容体急変が相次いだクリニック側が、宮城県警に操作を申し入れた」と言っていました。
 しかし、実際には、半田康延教授の依頼を受けた東北大医学部のF教授が、宮城県警に行き捜査を申し入れたのです。宮城県警はすぐさま特殊犯捜査チームを編成、クリニックの半田夫妻を呼び出し、急変患者リストを提出させるなど捜査を開始しました。
 当時の北陵クリニックは、救急措置の出来る医師が辞めたため、小児患者の仙台私立病院への転送が多発していました。
 また、赤字経営を改善するため老人ホームから重篤な患者を受け入れていました。急変患者リストを見た特殊犯捜査チームは、多くの急変患者に関わって仕事をしていた守大助さんに勝手な思い込みを抱き、証拠もないまま逮捕に踏み切りました。これが事件の始まりです。

でっち上げたシナリオ.gif

北陵クリニックとはどんな病院だったのか

北陵クリニックは、1991年10月FES研究を実践に移す病院として、地元財界の名士(地元電力会社・宮城県と仙台市の医師会・地元銀行・新聞社)が理事に名を連ねて「医療法人・社団陵泉会北陵クリニック」として設立されました。
 FESとは、「機能的電気刺激」という先端医療で、脳卒中や交通事故、脳性麻痺などで手足に運動障害をもつ患者の患部を電気刺激で動かそうとする治療法。
 東北大学工学部が中心になって開発された治療法で、その中心にいたのが半田康延教授です。

国、県、地元財界が後押し、マスメディアも「奇跡の研究」と特集報道

 北陵クリニックは、「地域結集型研究事業」として国の認定を受け、国から20億円、県からは関連を含めて30億円もの多額の補助金を受けています。また、この事業が成果をあげれば、新産業が創設されるとして、地元財界が全面的に後押しし、マスメディアも大きく取り上げ、NHKでは「クローズアップ現代」ほか2回放映、河北新報社は半田康延教授に「河北文化賞」を送っています。

期待された成果は得られず経営実態は多額の負債で火の車

しかし、期待されたFES治療は、全国から2百余名もの患者が手術を受けましたが一人として歩けるようにはならないし、筋肉に電極を埋め込むため患部の衛生管理が困難で電極を抜去する事態が多発しました。このためFES電極などを製造していた会社は清算を中止し、会社も解散しています。
 このため、多額の補助金にもかかわらず、1999年度で負債額は13億6千万にのぼり、「仙台筋弛緩剤えん罪事件」が起きた当時は、税金を滞納して病院の土地と建物が仙台市に差し押さえられたりして破産状態でした。 そして、経営再建のために、薬剤師を解雇したりリストラを行いました。
 一方で、特別養護老人ホームから高齢患者を受け入れ、他の病院に転送していた終末期の患者も、ベッドを満床にしておくために、最後まで看取るようになりました。これが急変患者や死亡患者が増えた原因と指摘されています。さらに、2000年4月、救急処置が出来る医師が退職し補充もされなかったことが、仙台私立病院に搬送される小児患者が増えた原因となりました。

筋弛緩剤とはどんな薬か?

点滴投与することに殺傷能力があるのか?

 筋弛緩剤は、筋肉を動かす末梢神経に作用して、筋肉を動かなくする薬です。普通手術のとき、静脈に注射して使用します。筋弛緩剤は筋肉には作用しますが脳の機能には直接影響はありません。脳に影響するのは、肺を動かす筋肉が緩むため呼吸が止まり、脳に酸素が回らなくなり心臓も停止します。そのため、手術では、人工呼吸で酸素を送るため問題はありません。

 マスキュラックスの説明書には「排泄半減期は11分±1分であり、短時間で代謝または排泄されて血中から消失する」と記述されています。筋弛緩剤を点滴で体内にゆっくりと入れた場合は、体内に入ると同時に代謝されるので効果は少なくなる、と多くの専門家は指摘しています。
 事実、公判でも500ミリリットルの点滴ボトルに4ミリグラムのマスキュラックスをいれて5分後に患者が急変するなどあり得ないと検察側の証人も証言しています。犯罪を立証するには、点滴ボトルにマスキュラックスをどの程度入れたのか、そのときの点滴速度はいくらか、そして、点滴中の患者の症状の変化など具体的に立証する必要があります。しかし、その具体的な立証は警察も検察も全くしていません。

「大阪府警鑑定」本当に行われたのか? 重大な疑問

鑑定結果・故意の全量消費・鑑定試料の採取・保管の不自然・鑑定は机上で作られた疑い濃厚

 原判決は、事件性の最大の証拠として大阪府警「土橋鑑定」(鑑定員は土橋均・西川真弓両氏)で、患者の血清や尿、点滴ボトルなどから筋弛緩剤の成分であるベクロニウムが検出されたとし、これを理由に患者の急変をすべ筋弛緩剤の薬理効果とにんていするひどい判決でした。

ベクロニウムの質量は279・258とする土橋鑑定は誤り

「土橋鑑定」では、筋弛緩剤の成分であるベクロニウムの質量を258と鑑定していますが、学術論文では、ベクロニウムの成分を質量258と測定した例はなく、影浦福岡大教授は大阪府警鑑定を「欠格」として、仙台高裁に「鑑定意見書」を提出しました。
 影浦教授は、ベクロニウムの液体クロマトグラフ質量分析では必ず、質量557あるいは279に分子イオンが出現すると発表しています。これと異なる土橋鑑定(質量258)に用いられた分析方法は、ベクロニウム標品の分析結果についても、ベクロニウムを検出したとは言えず、ベクロニウムの存在を客観的に証明する方法としては「欠格」であるとしました。
 2006年2月、学術誌に発表された東北大学と宮城県警の研究でもベクロニウムの質量は279と明記されており土橋鑑定の258を認める学者はおりません。

患者の試料の存在が全く証明されていない

 患者の試料の採取と保管を裏付ける証拠は全くありません。鑑定に廻される経緯もきわめて不自然。鑑定そのものが警察による捏造の疑いさえある鑑定は証拠にはなりません。

土橋鑑定は本物なのか、重大な疑いが指摘される

 土橋鑑定書には、「患者の試料を質量分析した結果質量258のイオンをモニターし、このイオンをプリカーサーイオンとした質量分析法でm/z356、374、398のイオンが出現した」とありますが、土橋と西川が1999年5月、日本法中毒学会の学術誌「法中毒」に発表したものと同じ内容です。また、鑑定書には鑑定データの基礎資料となるはずの実験ノートや試料の血清や尿の血液型のデータなども一切添付されていません。
 土橋鑑定の患者の試料のベクロニウムの鑑定濃度について、テレビ朝日(ザ・スクープ)では、マスキュラックスを直接静脈注射した場合の数値と奇妙に一致するとして、実際に鑑定を実施したのかどうかも疑われると報道しました。
 鑑定実施を裏付ける資料も出していないことから、ねつ造ではと疑われるのは当然です。

守大助さんの「自白」は客観的事実と矛盾し任意性はありません

 原判決は、A子さん事件の犯人性認定にあたって、「唯一自白の認められる事件であって、自白の存在はさらに犯人性認定の強固な支えとなっている」と守さんの2001年1月6日の自白を任意性ありとしたが、これは誤りです。
 A子さん事件では、検察官の起訴状では「自白」は500ミリリットルの点滴ボトルにマスキュラックスを混入し、5分後に患者の容体が急変したとなっています。
 しかし、裁判では検察側証人からも、この方法は医学的にあり得ないと証言されると、証言に沿うように「三方活栓」を利用して直接チューブへ混入したと主張を変えました。しかし、それでは時間的に矛盾すると弁護側から反論されると、第54回公判で橋本保彦東北大名誉教授に「三方活栓から点滴ボトル側に直接混入したと考えるのが合理的だ」と証言させて、「三方活栓」からチューブの上に向けて注入したと、またまた主張を変えてきました。
 このような自白は、警察官の誘導に従ったもので、守さんの6日の「自白」では事件は起こり得ないのであり、自白に客観性がないことは明白です。
 また、原判決では、最も重要な動機の解明すら出来ませんでした。自白の任意性を認めた原判決は重大な事実誤認です。

証拠隠滅を謀ったと犯人視の証拠とした空アンプルが入った赤い針箱はでっち上げの疑い

 原判決は、犯人性の証拠として、「マスキュラックスを不正に購入して患者の点滴に混入し、その空アンプルが入った赤い針箱を病院外に持ち出そうと証拠隠滅を謀った」と認定しました。しかし、検察が出した証拠はすべて写真で、層の区分もない針箱の中身を4層に分けて撮影し、合計して19本の空アンプルが入っていたと主張してきたもので、控訴審では弁護側が針箱と19本の空アンプルの証拠開示を請求しましたが、裁判所は検察官への開示勧告を拒否しました。
 守さんから針箱を押収したときも不自然で、直ちに証拠化して守さん立会いで中身の検証を行うのが警察の鑑識の鉄則でありながら、それをしませんでした。
 19本の空アンプルは、守大助さんを犯人とするためにでっちあげた警察の謀略の中心をなすもので、空アンプルが19本無ければ、守大助さんの犯人性の根拠が崩れ去るのです。
 この証拠を含めて、検察官が法廷に提出した証拠はすべて写真だけで実物は何一つ提出していません。
 再審に向けて、赤い針箱や調書類の証拠開示を請求することが重要になっています。

再鑑定をさせないための鑑定試料全量消費

鑑定にまわされた試料.gif

 左の表は患者の血液や尿、点滴ボトルの溶液の試料の量と検査可能回数、何回の鑑定が出来るかを表したものです。
 K男の点滴ボトルでは、2560回の鑑定が可能なのです。
試料全体では5500階の鑑定が出来ます。検査の種類にもよりますが、全量を使い切るには膨大な検査時間が必要です。これを依頼されたベクロニウム以外の薬品の検査もしたために全量消費したと言う大阪府警の鑑定員、土橋氏の証言を裁判長は不当にも採用しました。
 鑑定試料の全量消費は、鑑定結果を検証する再鑑定は勿論、試料が患者本人のものかどうかという最も基本となる検証を不可能にしたものであり、鑑定そのものの存在さえ疑わせるものです。鑑定書が机上でつくられた疑いが指摘されるのはそのためです。

科学と医学を無視した原判決は誤り

誤った鑑定で患者の急変原因を筋弛緩剤投与に証拠ねつ造で守さんを犯人に

 仙台地裁の一審から弁護団は、守さんはもちろんのこと、何者かが筋弛緩剤を患者に投与した事実は存在しない。患者の容体急変は、すべて他の原因で説明で きると主張してきました。しかし、仙台地裁は、守大助さんに無期懲役の有罪判決を出し、仙台高裁、最高裁も追認して刑が確定しました。

 原判決は、5人の患者さんの血清や尿などから筋弛緩剤の成分であるベクロニウムが検出されたとした大阪府警科学捜査研究所の鑑定(土橋鑑定)を信用でき るとして、主治医が心筋梗塞による死亡と診断したものや、明らかに筋弛緩剤の薬理効果とは異なる症状も、筋弛緩剤投与が患者急変原因であると断定して、殺 人および殺人未遂事件と認定しました。

捏造された証拠.gif

 守大助さんを犯人としたのは、守大助さんの自白と、2000年12月4日、守大助さんが退職した夜、使途不明のマスキュラックスの空アンプルが多数入っ た針箱を病院外に持ち出そうと証拠隠滅を謀った、とでっち上げ、そして、5件の犯人性の認定は、警察官の誘導で作られた病院関係者のウソの証言で、守さん の注射後患者が急変したと事件を作り上げ、その方法の特異性から他の事件も被告人が関与したと推認できると、証拠も示さずに犯人にする不当な判決でした。

 しかし、犯罪事件と認定する根拠とした大阪府警「土橋鑑定」が誤りであることは多くの学者の証言や意見書で明白になり、また、急変が明らかに筋弛緩剤投 与の状況と異なると争われた患者の急変原因も、ミトコンドリア症発症による急性脳症が原因との医学者の意見書も出され、殺人及び殺人未遂事件と認定した原 判決の認定根拠は完全に崩れています。

 守大助さんの自白も事実と矛盾する任意性に欠けるものであり、証拠隠滅を謀ったとされる多数の空アンプルも証拠として法廷に出されたのは、4層に分けて 撮られた4枚の写真の合計で19本の空アンプルがあると言うだけで、検察側は筋弛緩剤の空アンプルもそれが入っていたとする針箱も法廷に提出することを拒 んでいます。証拠ねつ造さえ疑われています。

 このように明らかに誤った認定で無実の青年に有罪を科した原判決の誤りは正さなければなりません。そのために、再審を請求する準備を進めております。
 みなさまのご協力とご支援をを心からお願い致します。

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