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個人通報制度の実現にむけて

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 国連の自由権規約委員会は08年、表現の自由を規制する法律などの撤廃を求める勧告を日本政府に出しました。しかし09年11月、最高裁は、葛飾ビラ配布事件で不当判決を出しました。このように人権侵害を受けても国内では救済されなかった場合、国連に訴える制度があります。それが自由権規約などの国際人権条約に定められた個人通報制度です。今回は、国連での日本の審査に何度も要請に行くなど、国際人権条約に詳しい弁護士の小池振一郎さんにお話を聞きました。

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__まず個人通報制度とはどのようなものですか?

 個人通報制度は、人権侵害を受けた個人が、国内の裁判などの手続きを尽くしても救済されなかった場合に、国連に救済を求めて通報できる手続きです。ただし、個人通報制度を定める選択議定書を批准した後に発生した事件(批准時に継続していれば可)が対象となります。

__通報したあとはどのように手続きはすすむのですか?
 
 通報を受けた国連の機関は、非公開で審査をします。審査の基本は、機関と人権侵害を通報した個人がいる当該政府との対話です最終的に出される「勧告」には強制力はありませんが、この対話がしつこく行われ、政府への大きな圧力になります。審査の結論は、ホームページや年次報告書で公にされます。

__なぜこの制度ができたのですか?

 人権条約をはじめ条約は、国連で採択され、各国が批准し、その国に対し拘束力をもちます。日本でも、憲法で「日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」(98条2項)と規定されており、条約は憲法についで優先され、法律よりも上位にあります。
 しかし条約というものは批准すれば事足りるというものではありません。それを履行しなければ意味がありません。日本の場合、裁判所が人権条約に無知であることや、憲法と自由権条約の中身がかなり重なり合うため、憲法を適用することで済まされて(その適用の仕方がかなり問題ですが)、人権条約にはほとんど目が向いていませんでした。
 このような「絵に描いた餅」という状況にならないようにするために、自由権条約や女性差別撤廃条約など国際人権条約には2つの制度が設けられました。

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__2つの制度とは?

 ひとつは、報告制度です。これは、条約を批准した国の政府が、履行状況を定期的に国連に報告するものです。たとえば、自由権条約の場合は5年に1度報告することになっています(日本の場合、前回大幅に遅れて提出され、批判されました)。政府報告について、国連の機関で審査が行われ、改善などを求める勧告が出されます。これが各国への圧力になります。
 もうひとつが、個人通報制度です。報告制度は条約で義務付けられていますが、個人通報制度の場合は別途、選択議定書の批准などが必要です。自由権規約の場合は第1選択議定書というものを批准する必要があります。ちなみに、第2選択議定書は死刑廃止をめざすものです。日本政府はどの人権条約についても個人通報制度は批准していません。

__世界的にはどれくらい批准されているのですか?

 自由権条約についていえば、第1選択議定書を批准した国は09年6月時点で、規約を批准した164カ国中、112カ国です。アジアでは、韓国、フィリピン、ネパール、モンゴルが批准しています。

__なぜ日本政府は批准しないのですか?

 政府がいつも言う理由は「司法の独立に抵触する」ということです。言い換えれば、最高裁で決まった結果(確定判決)を、国連が審査する4審制になるのではないかということです。しかし、批准した国で「司法の独立」に抵触すると問題になったところはまずありません。 08年、自由権規約委員会は、第5回の日本政府報告書審査の勧告で、「第4審ではなく、国内裁判所が行う事実や証拠の評価、国内法の解釈適用に関する再審査は原則的におこなわない」とわざわざ日本の口実に反論して批准を求める理由を述べ、「第1選択議定書の批准を検討すべき」と説得をしているのです。
 私は、「司法の独立」というならば、最高裁自身が書く裁判官を官僚的に統制して「裁判官の独立」を侵していることこそ問題にすべきで、何が「司法の独立」かと言いたいですね。

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__個人通報制度が実現した場合の影響は?

 さきほど紹介した第5回審査の勧告で委員会は、葛飾ビラ配布弾圧事件など言論弾圧事件を取り上げ、そのような事態に懸念を表明しています。ですから通報制度が実現すれば、言論弾圧事件については日本政府に厳しい勧告が出されると思います。ひとつの事件で勧告が出れば、世論を動かし裁判所の姿勢も変わるでしょうし、同様の人権侵害事件に救済の道が開かれるでしょう。その結果、国際人権条約が国内で生かされ、国民の人権も守られることになります。

__自民党政権は個人通報制度の批准を行いませんでした。昨年の総選挙では、民主、社民、共産、公明の各党がマニフェストで、個人通報制度の実現を公約しています。また、千葉景子法務大臣も、就任会見で実現への意欲を示しました。批准の可能性が広がっています。

 そうだと思います。私の考えですが、民主党は、「抵抗勢力」の抵抗が大きい課題は先送りする、しかし世論の味方があれば実行するという「仕分け」をしているのではないかと思います。私は、国民世論が盛り上がれば、個人通報制度を実現できる可能性は十分にあると思います。私も日弁連でワーキンググループ委員になっていますが、日弁連としても外務省などへの働きかけをはじめ世論を広げていきたいと思います。ぜひ力をあわせて頑張りたいと思います。

__お話ありがとうございました。

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