えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

再審・えん罪事件全国連絡会第25回総会の決定

再審・えん罪事件全国連絡会第25回総会            

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2016年12月4日
東京・平和と労働センター

一 はじめに

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 前回総会以降この1年で特筆するべき成果は、今年8月10日、大阪高裁で大阪・東住吉冤罪事件の青木惠子さんと朴龍皓さんに再審無罪判決が言い渡され、即日確定したことです。自白の信用性だけでなく任意性も認めず、証拠から自白を排除した画期的な内容です。
 また、6月30日には熊本・松橋事件で再審開始決定を勝ちとるなど、大きな前進を勝ちとってきました。この成果に続けてと、三重・名張毒ぶどう酒事件をはじめ、滋賀・日野町事件や鹿児島・大崎事件の再審請求審での支援運動が、重要な局面を迎えて攻勢的な展開をはかっています。
 一方、検察は静岡・袴田事件や松橋事件において、不当な手法で再審開始決定を覆そうと、巻き返しを強めています。また、今年の5月には、新たな冤罪を生み出し、治安強化を狙うものと厳しく糾弾し廃案を求めてきた「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立するなど、厳しい情勢も強まっています。
 本総会では、再審・冤罪事件をめぐる状勢を深くつかみ、再審無罪の流れをさらに大きくするために、各事件の無罪判決をめざして、この間の運動を総括し、新たな方針と役員体制を確立します。
 なお、今回は、総会の前日には下記のとおり、昨年開催した「白鳥決定」40周年シンポの成果を記念して日本評論社から発行される「再審に新しい風を!」の出版記念講演会とレセプションも開催されます。ぜひ、多くの方の参加をお願いします。

二 この一年間の再審・冤罪事件をめぐる裁判の特徴と課題

 1、 東住吉事件の再審無罪判決の教訓を生かそう

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 8月10日、大阪高裁で東住吉冤罪事件の青木惠子さんと朴龍皓さんに再審無罪判決が言い渡され、即日確定しました。
 東住吉冤罪事件では、朴さんの「自白」どおりに真夏の狭いガレージに7.3リットルのガソリンを撒き、ターボライターで火をつけたとすれば朴さんが火傷もしていないことは、あり得ないということが冤罪性認定の確信でした。
 弁護団は、それを科学的に立証するため燃焼再現実験を行い、当該車両のガソリン漏れの調査、専門家の意見書などによって事件の真相を究明し、今回の再審開始につながる新証拠を裁判所に提出して確定判決の認定を弾劾しました。この弁護団の努力が実を結び再審・無罪判決は、さらに、本件の火災が自然発火によるものであった可能性について、抽象的なものにとどまらない合理的なものであると認めました。
 無罪判決が自白を証拠から排除した根拠は、再審請求審の即時抗告審の段階で開示された「取調備忘録」や「取調日誌」などで、青木さん、朴さんに対する違法な取調べの実態が明らかになったことでした。
 判決では、取調官が青木さんと朴さんに対して客観的事実に反する事実を告げたり、過度の精神的圧迫を加えたりして取調べがなされたものであり、それによって青木さん、朴さんが虚偽の自白をせざるをえない状況に追い込まれたことを認めて、「自白」の任意性を否定し、確定審で採用された全ての自白調書の証拠能力を否定し、証拠から排除しました。さらに、取調官が取調べ状況についての虚偽の証言をしていたことも認定し、警察の取調べが違法なものであったことを厳しく批判しています。
 支援運動が弁護団の燃焼再現実験の結果を踏まえて、「朴自白」どおりの犯行が不可能であることを誰にでもわかるように訴えて事件の真実を広めてきたこと、そして、獄中からの青木さん、朴さんの無実の訴えが支援者の心を揺り動かしたことが無罪判決に結びつきました。このように、東住吉冤罪事件を支援する会が、国民救援会、関西たんぽぽの会と連帯をつよめ、獄中の二人と家族を励まし支えて、再審無罪に向けた共同のとりくみを繰り広げたことは、全国の仲間に多くの教訓を残しました。
 東住吉冤罪事件のたたかいの成果を今後の再審・冤罪事件のたたかいに活かしていきます。

 2、 姫路(花田)郵便局事件

 姫路(花田)郵便局事件で、大阪高裁は3月15日、再審請求を棄却した神戸地裁姫路支部の決定を「審理不尽」として取り消し、審理を差し戻す決定をしました。これに対し、弁護団は、今回の高裁決定は、刑事訴訟法の手続き規定に違反していることを認めたものの、手続きさえ踏めば、確定判決と違う根拠で有罪認定をすることを容認する部分があり、妥当な決定とは言えないとして、最高裁に特別抗告しています。 

 3、 「白鳥・財田川」決定に反する相次ぐ棄却決定

 昨年の総会以降、特急あずさ号窃盗冤罪事件(16年2/8)、恵庭OL殺人事件(16年6/13  
 最高裁第1小法廷)、高知白バイ事件(16年10/18 高松高裁)、天竜林業高校成績改ざん事件(16年10/24静岡地裁浜松支部)などで再審請求が棄却されました。
 これらの決定は、科学的根拠もなく事実にもとづかない裁判官の勝手な「推論」や新証拠を限定的に再評価して再審請求を棄却しています。これは、「新旧証拠の総合評価」、「疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則は再審にも適用されるとした「白鳥・財田川決定」に反し、事実上、再審請求人・弁護側に無罪立証を求めるなど、無辜の救済という再審の理念に反する不当な内容となっています。

 4、 証拠開示、事実調べをめぐる攻防

 冤罪を訴える者にとって、自らの無実を明らかにする上で操作を通じて得られた証拠の事前全面開示が必要です。これまで再審無罪となった多くの事件の確定審では、請求人の無実を示す証拠が検察の手元に隠されていました。
 この間の再審開始、無罪判決の教訓として、検察官の手持ち証拠の開示の前進が指摘されています。再審における証拠開示の前進は、原審における警察・検察の捜査の問題点を浮き彫りにしました。
 東住吉冤罪事件では、ガソリンスタンド店員の満タンの上に追い足しをしたとの供述調書や火事となった家の現場検証調書の開示を勝ちとったことが、燃焼実験を説得力あるものにしました。そして、前述したように「取調備忘録」などが開示され、自白偏重の違法捜査の実態が明らかにされました。
 また、松橋事件でも、「自白」や燃やしたとされるシャツの切れ端を検察が隠していた事実が明らかになり、有罪の根拠が崩壊しました。
 さらに、袴田事件、日野町事件、大崎事件では、これまで検察が不存在として証拠開示を拒んでいた証拠が、「偶然に警察署で見つかった」等により取調べ録音テープやネガフィルムなど重要な証拠が開示されています。これは大きな前進ですが、検察が五月雨的に証拠開示するのではなく、少なくとも全証拠のリスト(標目)を再審請求人や弁護人に開示することが必要です。袴田事件では、弁護団が刑訴法「改正」で公判前整理手続き段階で証拠のリスト開示行われることになったことを援用(活用)して、全証拠リスト開示を請求しましたが、検察は今回の改正が再審事件への適用は見送られたことなどを理由に証拠開示を拒否しています。
 しかし、冤罪犠牲者が再審こそ証拠開示をすべきとの批判によって、「再審が無辜の救済のための制度であることを踏まえ、証拠開示の運用、記事訴訟法第四一五条の事実取調べの在り方をめぐる今国会の審議の状況を周知に努めること」と、付帯決議が盛り込まれました。再審請求審において、検察、裁判所はこの趣旨を生かしてすべての証拠のリスト開示と証拠開示に積極的に応えることが求められています。

三 「新たなせめぎ合い」を跳ね返し、無実の人を救おう

 1、各事件の無罪を勝ちとるために連帯の強化を

 再審・えん罪事件全国連絡会は、共通する課題で冤罪犠牲者の救済と冤罪をなくすための刑事司法改革、刑事施設に収監されている被収容者の処遇改善運動にとりくんできました。また、個別事件についても重要な段階を迎える事件をはじめとする各事件の集会・現地調査等を行ってきました。引き続き、共通した課題での統一行動や相互の事件支援と連帯した運動をすすめます。
 とりわけ、以下の事件の支援について、再審・冤罪事件の全体の運動を押し上げるために、連帯したとりくみを強化します。 

①検察の巻き返しを許さず、早期に再審開始の確定を

 I) 憲法違反の検察官上訴を禁止せよ
 再審開始決定に対する検察官の不服申立(上訴権)は、冤罪当事者に深刻な人権侵害をもたらしています。やっと勝ちとった再審開始決定に対する検察の不服申立によって、裁判が長期化し、命まで奪われ奥西勝さんのように、自らの手で無実を明らかにする機会も奪ってしまいます。
 また、袴田事件では捜査機関による証拠の捏造まで明らかになったにもかかわらず、検察は即時抗告で新たな証拠を提出して積極的に有罪立証を行い、裁判所もそれを認めて裁判は長期化の様相を呈しています。袴田事件は、事件発生から50年が経過し、袴田巌さんは80歳、請求人の姉・ひで子さんは83歳となりました。
 そのほかの事件でも、大崎事件の原口アヤ子さんは89歳、松橋事件の宮田浩喜さんは83歳となりました。奥西勝さんの遺志を引き継いで再審請求を行った岡美代子さんは87歳です。冤罪当事者と家族は、まさに命がけのたたかいを強いられています。
 再審・えん罪事件全国連絡会は、憲法38条の「二重の危険の禁止」によって、無罪判決、再審開始決定に対する検察官の上訴は許されないとして、制度改革を求めてきました。
 早急な法改正は困難であれば、裁判所は、不利益再審を認めていない規定を踏まえて、検察の上訴権を認めるべきではありません。少なくとも、即時抗告審や異議審などで検察官の新たな証拠提出や有罪立証を裁判所が訴訟指揮権で制限すべきです。

 II) 袴田事件
 東京高裁は、昨年12月に再審開始決定の理由の一つである弁護側推薦の鑑定人のDNA鑑定方法について、弁護団の反対を押し切って、検察主張のまったく無意味な検証実験をおこなうことを決定しました。11月7日に開かれた3者協議で、大島隆明裁判長は、実験の具体的方法を決める予備実験をすでに終えて、鑑定人が本実験に着手したことを明らかにしました。ところが、検証結果がいつ出されるかについて「現時点ではわからない」と回答しました。
 一方、弁護団は、証拠の捏造について、新たに取調べの録音テープ23本を証拠開示させ、接見盗聴や違法な取調ベの実態を明らかにし、次々と意見書を提出しています。さらに、違法捜査の実態を明らかにするため2人の元警察官の証人尋問を求めましたが、裁判所は現時点で証人調べはしないと決定しました。このように、即時抗告審の審理は予断を許さない状況です。
 今年は、事件発生50年に当たり、袴田事件の再審無罪をめざす実行委員会を中心に、当事者、弁護団・支援団体の共同記者会見、支援集会、裁判所要請、静岡県警への要請などをおこなってきました。同実行委員会では、検察の巻き返しを許さず、再審開始を確定させ一日も早い再審無罪をめざして支援運動を強化します。2017年2月25日(土)に東京・文京区民センターで全国集会を予定しています。

 III) 松橋事件
 8月30日、福岡高裁で即時抗告審の第1回の3者協議が行われました。検察は、切出小刀と傷の一致を証明するために法医学者の新たな鑑定意見書を提出する意向を示し、再審開始決定を徹底して争う姿勢を示しています。
 国民救援会熊本県本部は、福岡県本部をはじめ九州各県の協力を得て、3者協議に合わせ、高裁に「検察の即時抗告を棄却せよ」と要請行動をおこなっています。2017年1月15日には、第2回全国現地調査を予定しています。

②名張毒ぶどう酒事件のたたかい

 昨年11月、奥西さんの妹・岡美代子さんによる第10次の再審請求申立から1年が経ちましたが、裁判所は、3者協議を開かず実質的な審理に入ろうとしていません。
 弁護団は、今年5月には毒物に関する証拠に加え、ぶどう酒びんに巻かれていた封緘(ふうかん)紙裏面の糊に関する鑑定を新証拠として提出しました。封緘紙には、製造時とは異なる糊が付着しており、真犯人が毒物混入時に張り直しの偽装工作をおこなっていたことが強く推認されます。また、「自白」どおりの犯行準備行為は実現の可能性が極めて低く、「自白」が虚偽であることを示す実験結果も新証拠として提出されました。
 この間、愛知守る会と国民救援会愛知県本部が呼びかけた「無念の獄死1周年行動」には200人が参加し、名古屋高裁に対して、すべての証拠を開示させ、直ちに実質的審理をおこなって早期に再審開始決定を出すように強く要請しました.岡さんは11月には87歳となり、再審請求審は迅速な審理が求められています。

③重要な段階を迎える事件

 I) 大崎事件

 弁護団は,89歳となった原口アヤコさんが元気なうちに再審無罪を勝ちとるために迅速な審理を裁判所に求めてきました。裁判所は、昨年7月の申立てから弁護団の新証拠に関して法医学者と心理学者の証人尋問を行うとともに、検察に対しても証拠開示を促進するなど積極的な訴訟指揮をとっています。11月末までに弁護側、検察側双方に対して最終意見書の提出を求めており、早ければ来春にも決定が予想されます。
 鹿児島県本部は、3者協議に合わせて九州各県の協力を得て裁判所要請をはじめ市内の繁華街で署名・宣伝行動をおこなってきました。10月15日、16日には、第18回全国現地調査を87人の参加で成功させました。
 今後は、弁護団の最終意見書の提出に合わせて12月10日に鹿児島市内(サンプラザ天文館6階Aホール)での報告集会を開催します。

 II) 日野町事件

2013年、阪原弘さんの遺族4人が、名誉回復のため、第2次再審請求を大津地裁に申し立て、現在その審理が重要な段階を迎えています。
 この間、弁護団が粘り強い証拠開示請求のたたかいの成果として、確定判決が有罪の根拠としていた手提げ金庫の投棄現場の引当て捜査において、阪原さんが捜査官に誘導されることなく案内できたとされる写真が実はネガの順番を入れ替えたものであることが分かり、これをきっかけに90数点の証拠開示がすすむなかで、証拠の隠ぺいや偽造、アリバイつぶしが次々と明らかになりました。さらに、阪原さんが「自白」で被害者を殺害したという時間帯、その被害者は生きていたのではという重大な事実が出てきました。新たに明らかにされた証拠によれば、犯行があったとされる時間帯に被害者宅には、知り合いの女性保険外交員が訪れていて、被害者と同居の祖母と外交員の3人で夕食を食べた後、近くの公衆浴場にその外交員と入浴していた可能性が出てきました。
 滋賀県本部と支援する会は、この間の成果を踏まえて新リーフを発行して、再審開始に向けて全国からの支援を呼びかけています。

 III) 仙台・北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件

 即時抗告審では、裁判官全員の交代などもあり、1月に第1回3者協議が開かれました。しかし、検察が答弁書、意見書などを提出せず、裁判所は次回の3者協議の日程を入れようとしていません。第1回3者協議で検察は、弁護団の「土橋鑑定書にはベクロニウムの質量分析でm/z258(信号X)のベースピークが検出されるとあるが、現段階でもこれを維持するのか」という本釈明に対して、11月に形式的な不誠実な回答を行いました。弁護団は、引き続き検察、裁判所に対して原審の決定の見直しを求めています。

④再審をめざす事件

 愛知・豊川幼児殺人事件は、2016年7月15日に名古屋高裁に再審請求を申し立てました。守る会は、再審請求にむけて確定判決の学習会の開催、新証拠の発見にむけて弁護団とともに証拠を深めてきました。
 今年2月、最高裁で特別抗告を棄却された長野・特急あずさ窃盗冤罪事件は、11月6日に第1次再審請求の報告集会を開き、第2次再審にむけて活動を継続することを確認しました。
 福井女子中学生殺人事件は、第2次再審請求にむけて弁護団は定期的に会議を開き新証拠の検討を進めています。地元福井が支援組織を再結成し、富山、石川県での支援組織が結成され、東京でも支援組織の結成にむけて学習会などが継続的に行われています。
 兵庫・えん罪・神戸質店事件は、岡山刑務所に収監されている緒方さんを激励しながら、再審に向けて弁護団と協議を進めています。
 京都・長生園不明金事件は、事件を風化させず事件の真相を広めるため、定例宣伝や再審に向けて情報提供を呼びかけています。

 2、無実の人々を救う!5.20全国一斉行動」など

 いま、冤罪の悲惨さを訴え、「無実の人々を無罪に」という世論を広げる絶好の機会です。
 「白鳥決定」を記念し毎年行っている「無実の人々を救う!5.20全国いっせい宣伝」は、国民救援会と共同して全国39都道府県・100カ所以上でおこなわれ、約550人が参加し、ビラ1万5千枚以上を配布、署名は約1千筆の協力を得ることができました。
 この取り組みは、冤罪事件の実態を広くアピールすることにもなっています。
 また、秋(11月を中心)にも同様の全国宣伝が国民救援会の呼びかけですすめられ各支援組織も協力して運動に参加しています。
 引き続き、国民救援会等の協力を得て冤罪事件の実態と刑事司法の改革の必要性を多くの国民に知ってもらう運動としてとりくみを強化します。

四 冤罪を生まない刑事司法制度改革をめざして

 1 刑事訴訟法等の一部を「改正」する法律が成立

 16年5月24日、冤罪被害者、学者、法律家をはじめ市民の大きな反対の声に背を向け、衆議院本会議で「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が日本共産党と社会民主党が反対するなか、自民党。公明党、民進党などの賛成多数で可決されました。
 そもそも本法案は、郵政不正事件など相次ぐ冤罪事件への批判が高まり、二度と冤罪を起こさないためにはどうするのか、警察・検察の不当な捜査などをいかに正すのか、ということが本来の目的でした。
 しかし、提出された法案は、冤罪防止どころか、新たに冤罪を生み出し、さらに警察・検察の権限を大幅に拡大し、「盗聴」「密告」社会を招く治安立法であり刑事司法の改悪法でした。
 具体的に指摘すれば、取調べの録音・録画については、対象となる事件も裁判員裁判など全体の2%に限定され、しかも警察官の裁量に委ねる例外規定が盛り込まれ、「自白」の録画部分を、警察・検察が有罪にするために利用することで、逆に「自白」偏重捜査をさらに強める危険があります。
 また、被疑者が他人の犯罪を「密告」すれば、自分の罪が軽くなる「司法取引」制度の導入は、過去の冤罪事件の教訓でもある、ウソの供述で無実の人を巻き込むもので、新たに冤罪を生む危険があるものです。更に、警察が恣意的に使えば、警察の敵視する団体にスパイを潜り込ませ、弾圧に使うこともできます。
 加えて、憲法違反の盗聴法を大幅に改悪したことは重大です。これまでの対象犯罪の限定や盗聴捜査時の通信事業者の立会といった「歯止め」を取り払い、広く市民に関わる犯罪へと対象を大幅に広げたうえ、警察が警察施設で好きなときに好きなだけ盗聴捜査をできるようにしました。
 これに対し、冤罪犠牲者が先頭に立ち、多くの弁護士や各地の弁護士会、法曹団体、刑事法学者、そして国民救援会など多くの市民団体が、国会議員要請やFAX要請、集会や署名活動、街頭宣伝など、さまざまな形でその危険性を訴えました。
 布川事件の冤罪被害者櫻井昌司さんは、参議院法務委員会で参考人として、「昨年と私たちの危機感は全く違う」、「どれだけ多くの仲間が冤罪に苦しんだら、立法府は冤罪を防ぐ法律を作って下さるのでしょうか」と、この法案の危険性を訴えました。
 再審・えん罪事件全国連絡会は、改悪盗聴法・刑事訴訟法の実施を厳しく監視するとともに、引き続き冤罪犠牲者の救援、冤罪をなくすための刑事司法制度の抜本的改革、そして盗聴法の廃止を求め、広く共同のたたかいをすすめていきます。

■ 私たちがめざす刑事司法改革要求
 (1) 取調べ全過程の可視化と代用監獄の廃止。
 (2) 証拠の全面開示の実現。
 (3) 無罪判決、再審開始決定に対する検察の上訴禁止。
 (4) 再審法の抜本的改正をめざす

 2 冤罪事件の原因究明と責任追及のたたかい

 布川事件で再審無罪を勝ちとった櫻井昌司さんが、警察と検察の違法捜査と証拠隠しなどの責任を追求し、東京地裁に国賠を提訴し、たたかっています。
 布川国賠裁判は、検察の証拠隠しや自白強要の警察の取り調べなど、冤罪の原因を究明しその責任を追求するたたかいです。連帯して運動をすすめます。
 また、足利、布川、東電OL殺人事件、東住吉冤罪事件と無期懲役という重罪事件で相次いで再審無罪判決が出されたにもかかわらず、政府・最高裁はその原因を究明し、冤罪をなくすための刑事司法改革をすすめようとしません。なぜ冤罪が構造的に生み出されるのか、その原因を究明する第三者機関を国会に設置して、刑事司法改革にとりくむ必要があります。
 今後、国民救援会や「なくせ洗剤!市民評議会」、日弁連などと共同して、冤罪原因を究明する第三者機関の国会設置運動をすすめます。

五 刑務所等の処遇改善等のとりくみ

 現在、刑事施設に収容されている被拘禁者と支援者の面会などが全国的に規制が強まり、各刑務所の所長の「裁量」によって処遇実態が旧監獄法時代の状況に戻りつつあります。
 例えば、秋田・大仙事件の畠山博さんが収監されている山形刑務所では、新たな支援者との面会を一切認めようとしません。今年11月には、布川事件の櫻井昌司さんと東住吉事件の青木惠子さんが、畠山さんを激励しようと面会を求めましたが刑務所は「法務省の方針であり、山形刑務所だけではない」として、面会は認めませんでした。櫻井さんと青木さんは、この不当な対応について山形県長で記者会見を開き、山形刑務所の実態を告発しました。当日は、NHKをはじめマスコミ9社が取材にきました。
 刑事被収容者処遇法においては、従来の累進処遇性を廃止し、現場での刑務官による多角的評価で受刑者等の優遇処置をするという制度を採用し(同88条)、また、食事、運動、作業、接見、通信等の詳細な実施については、その刑務所の特質を反映させる趣旨で、当該刑務所長の裁量権を拡大しました。これには、従来の上からの規則、通達、指示、命令等による規律優先の処遇に変わって、現場の「人道的配慮」にもとづく人間的ふれあいの中での処遇であるためには、現場での裁量権の範囲を広める必要があるという理由付けがされました。
 しかし、「現場」では「受刑者の人権」よりも「刑事施設の規律及び秩序の維持」が最優先とされ、当時私たちが危惧し、指摘したように刑務所長の裁量権が濫用されて、「行刑改革会議提言」の理念とは逆に、不当に受刑者等の権利が侵害されているのが実態です。受刑者等から見れば、生殺与奪の権限を刑務官に握られており、不満があっても懲罰を恐れて、従順にならざるを得ないという実情もまた広く存在しています。
 これでは、「行刑改革会議提言」が主張したような「(受刑者が)人間としての誇りや自身を取り戻し、自発的、自律的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切であり、受刑者の処遇も、この誇りや自信、意欲を導き出すことを十分に意識したものでなければならない」という、監獄法改正の理念からかけ離れたものになっています。
 引き続き、外部交通権の拡大をはじめ、医療問題を中心に刑事収容施設及び非収容者処遇法の抜本改正を求める共同したとりくみをすすめ、拷問禁止条約第2回日本政府報告に対する総括所見での指摘もふまえた被収容者の処遇改善と権利拡大にむけて運動を強めます。
 また、昨年の総会で紹介した国連犯罪防止・刑事司法委員会がまとめ国連総会で採択された「国連被収容者処遇最低基準規則(SMR)の改定などを活用して、日本の遅れた刑事被収容者の人権と処遇改善にむけて奮闘します。

六 死刑廃止のたたかい

 1、 死刑制度の廃止を求めます

 日弁連が、10月の人権擁護大会で、「2020年までの死刑制度廃止」を宣言しました。これを契機に、死刑制度の存続について議論が起こりました。死刑廃止にむけた情報の公開と国民的議論のいっそうの推進が求められます。
 冤罪犠牲者の救援を目的に活動する再審・えん罪事件全国連絡会にとって、死刑制度問題は深刻な問題です。これまでも死刑制度を廃止すべきとの立場で運動を進めてきましたが、あらためて総会の場で正式に態度を明確にして、死刑制度の廃止をめざすことを確認します。
 日本国憲法は、国民の生命、自由を保証し、第36条で残虐な刑罰を禁止しています。死刑は国家が一定の手続きにもとづき、計画的に報復的に行う冷酷かつ人為的に作られる死です。人間の生命を、国家の名において剥奪することは許されません。
 また、人間の行う裁判制度に絶対的に誤りがないということはいえません。誤判による死刑はその悲惨さとともに、他の刑罰とちがい回復不可能な質的に違う刑罰です。
 昨年10月4日、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんの雪冤を果たすことなく、無念の獄死となったことは私たちとって痛恨の極みです。奥西さんは、1審無罪判決そして一転して死刑判決を受け、半世紀以上死刑の恐怖とたたかいつつ、無実を訴えて一度は再審開始を勝ちとったのです。
 白鳥・財田川決定を書いた団藤重光元最高裁裁判官は、自著の「死刑廃止論」の中で、免田・財田川・松山、島田死刑再審4事件を踏まえて、「これらの事件さえも、白鳥決定が出るまでは再審の門はなかなか通らないのです。言い換えれば、それ以前において、再審請求が通らないで死刑を執行されてしまった人の中には、無実の罪で処刑された人がいた可能性が強いわけで、しかも、その数は明治時代かならずしも僅かではなかったのではないか」と、記述しています。
 現に、私たちの先輩の中には、熊本・菊池事件のFさんのように再審開始を求めつつ、死刑が執行された痛恨の歴史があります。
 このように、冤罪犠牲者の救援運動をすすめる再審・えん罪事件全国連絡会は、死刑制度の廃止をあらためて今回の総会で確認します。

 2, 袴田ひで子さん、死刑廃止世界大会で訴える

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 袴田ひで子さん(83)が今年6月、ノルウェーの首都オスロで開かれた「死刑廃止世界大会」に参加し、冤罪の恐ろしさを訴えました。
 ひで子さんは、逮捕後の巖さんの過酷な取り調べや、死刑確定後に巖さんの精神状態が悪化していった様子を報告。釈放されるまでの約48年間を振り返りながら、「巖にとっても私にとっても、取り戻すことのできない半世紀だ」「2014年に静岡地裁が死刑判決には疑義があるとして再審開始と釈放を決定した。検察側は決定に即時抗告し、東京高裁で審理が続いているが、再審がいつ始まるのかの見通しは立っていない」と訴えました。
 ひで子さんの訴えは、多くの人々に感動を与えました。インドから参加した女性弁護士は、「無実を訴えながら半世紀近く収監されるのは、想像もできないこと。自分が同じ立場なら耐えられないだろう」と感想が寄せられました。
 この「死刑廃止世界大会」は国際人権団体などが主催し、今年で6回目。各国から法律家や元受刑者らが参加して、ひで子さんには、監獄人権センターの田鎖麻衣子弁護士が同行しました。
 この世界大会の報告は、事件発生50年とあわせて6月29日に静岡県庁クラブで、弁護団、支援者とともにひで子さんが記者会見を行いました。

七 国際人権規約を大いに生かそう

 昨年の総会では、「拷問禁止委員会は2017年に予定されている第3回日本政府報告の提出にあたり、日本政府にリスト・オブ・イシュー(事前質問)を発表しました。今後の第3回日本審査にむけて、カウンターレポートの準備をすすめる」と、決定しました。
 しかし、拷問禁止委員会の日本審査は、2018年に予定されていることがわかりました。
 自由権規約委員会の次回日本審査にむけて、来年17年5月までにリスト・オブ・イシューのカウンターリポートの提出が予定されています。
 2014年7月に行われた自由権規約委員会の第6回日本政府報告審査に際して、当連絡会は国民救援会と協力して、袴田事件を押し出したリーフを各委員に配布し、冤罪事件の深刻な実態を訴えてきました。
 その結果、自由権規約委員会は総括所見の死刑に関する第13項Cの中で証拠開示について、「とりわけ弁護側に全ての検察官の証拠への完全なアクセスを保障すること、また拷問あるいは不当な処遇によって得られた自白が証拠として援用されないことを確保することによって、不当な死刑判決に対する法的セーフガードを直ちに強化すること」(国際人権活動日本委員会・仮訳より)を勧告しました。
 また、拷問禁止委員会は、日本の第2回定期報告に関する「最終所見」のパラグラフ11の(b)で、「刑事訴追の際に、自由に証拠の主要かつ中心的な要素として依存するような慣行を終わらせるため、捜査手法を改善すること」という勧告が出されるなど成果がありました。
 これまでも自由権規約委員会や拷問禁止委員会からは、日本の証拠開示制度について改善の勧告が重ねて出されています。
 今後とも、国連の各委員会や諸機関で出された「勧告」などを活かして、裁判や関係省庁への要請行動などに活かしていくことが求められています。 引き続き、国民救援会や国際人権活動日本委員会などと協力して、カウンターレポート作成などのとりくみをすすめます。

八 連絡会の組織、財政活動の総括と今後の活動方針

 1 活動全体としての総括

 第24回総会以降、ニュースをほぼ隔月発行をめざしましたが5回の発行にとどまりました。また、毎月第3木曜日を中心に御茶ノ水駅頭宣伝を大崎事件の首都圏守る会と協力して粘り強く行っています。
 今期は、運営委員会を開催することができませんでした。全国連絡会の果たすべき役割は大きく、その期待に応えるためにも運営委員会の開催など組織的な強化が求められています。引き続き、各支援団体と弁護団との協力関係を強め、情報発信を強めていきます。各事件からのご意見や活動報告や裁判の進行状況について情報提供をお願いします。
 また、冤罪事件に対する国民の関心の高まりという好機を逃さず、加盟事件の勝利をめざし、国民救援会はもとより各弁護団や研究者、他の人権NGOなどと協力・共同関係を強め、国民の目に見える活動を繰り広げ社会的発信を強化します。

 2 事務局会議の開催と運営、メーリングリストの活用

 事務局会議は、基本的に毎月1回開催し、各事件の動きを掴むように努めて、それを「再審・えん罪事件連絡会ニュース」やホームページ等で情報を提供してきました。
 しかし、情報の入手や発信がかたよっている状況もあり改善が必要です。昨年の総会でもお願いしましたが、各事件から積極的にメールなどで情報提供をお願いします。とりわけ、各地の行動や裁判の動きを短い記事でもかまいませんので、写真を添えて送ってください。

 3 ニュースの発行、ホームページの充実

 ニュース発行について、隔月年6回の発行とし、紙面の充実に努めます。 今後、加盟組織と事務局の連携を強めるために、事務局員と各事件の運営委員のメーリングリストを活用して、情報の共有化の迅速化を図るなど改善をはかります。
ホームページについては、情報の発信が送れる状況にあり、一層の充実が求められています。

 4 書籍や事件資料の普及

 11月20日以降、昨年秋に開催した「白鳥決定」40周年シンポジウムの成果を踏まえて、「再審に新しい風を!」が日本評論社から発行されました。本書には、「白鳥決定」40周年シンポジウムにむけて制作したDVD「再審への道〜白鳥事件から学ぶ〜」付録としてついて定価1700円(+税)です。
 内容としては、①冤罪・再審はいま、②現状をどう打開していくのか、③再審の今後の課題と展望を主な構成として、元裁判官、刑事法学者、冤罪当事者が共同執筆してます。ぜひ、多くの人々に読んでいただきたいと思います。各事件とあわせて再審・えん罪事件の現状とその打開にむけて必読書です。各組織でも普及にご協力をおねがいします。
 また、各事件の裁判資料やパンフなども普及し、相互に学び合い、たたかいを前進させていきましょう。

 5 連絡会への加入の働きかけなど

 前回総会以降、国民救援会が支援しているえん罪事件への加盟の要請を行ってきましたが、今期は新たな加盟はありませんでした。連絡会には、現在15団体が加盟しています。また、獄中から裁判への助言を求める手紙などが多数寄せられるようになりました。事務局では、連絡会の目的、会則にもとづいて対応しています。

 6 財政・カンパ活動・賛助会員の拡大

 ① 財政報告=当日、財政資料を配布し報告します。
 ② 事件や賛助会員からの分担金・会費の集金について
   分担金納入の促進。また、賛助会員についても会費の請求をきちんと行なうことが大切であり、そのために事務局会議で集金状況を必要に応じて、到達を明らかにし、議論するようにします。
 ③ 年末統一募金のとりくみ
   毎年、年末救援統一募金を国民救援会とともに取り組んでいます。今年度も国民救援会から昨年度の集約された募金の中から連絡会に配分されました。
 ④ 独自のカンパ活動と賛助会員拡大のとりくみ
   ニュースにカンパの訴えや賛助会員募集の訴えを掲載し、加盟事件の協力も得ながら、賛助会員の拡大にとりくみます。

 7 次期役員体制の提案

 別紙、総会に配布された役員推薦名簿を参照ください。
 今後は、総会で選出された役員が一丸となって、当連絡会の継続・発展にむかって頑張っていきますので、ご支援・協力をお願いします。

 

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