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国連人権委員会ヒアリング 東電OL殺人事件からの報告

国連人権委員会ヒアリング・東電OL事件からの報告

はじめに

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 ゴビンダ・プラサド・マイナリ(ネパール人男性43才)は、身に覚えのない強盗殺人の罪で無期懲役刑を言い渡され、現在、横浜刑務所に服役しながら、再審=裁判のやり直しを求めています。
 ゴビンダの事件は、世間では「東電OL殺人事件」として知られています。というのは、被害者の女性が、昼間は「東京電力」という一流企業に勤めながら、夜は歓楽街で売春をしていたことが、マスコミで大きく報道され、世間を驚かせたからです。

別件逮捕と違法な取り調べ

 1997年3月、東京都渋谷区のアパートで女性の他殺体が発見されました。警察は、このアパートに隣接するビルに住んでいたネパール人で、事件前に現場の鍵を管理人から借りていたことのあるゴビンダに疑いをかけました。
 ゴビンダは、疑いを晴らすため自ら警察に出頭しましたが、オーバーステイ容疑で逮捕され、もっぱら殺人事件のことで厳しい追及を受けました。これは「別件逮捕」という違法な行為であり、本件で逮捕するだけの証拠がないとき、警察がよく使う手です。

 多くの冤罪被害者が、厳しい取り調べに耐えかねて、「虚偽の自白」をさせられています。しかし、ゴビンダは、無実を訴え続けました。当番弁護士のアドバイスにより、否認・黙秘を貫く事が出来たのです。

 したがって、ゴビンダ本人には「虚偽自白」はありません。しかしながら、彼のルームメイトである他のネパール人たちは、オーバーステイなどの弱みにつけこまれ、警察に脅されて、たとえば鍵を返却した時期などについて、ゴビンダに不利な証言をとられてしまいました。冤罪防止のための「取り調べの全面可視化」は、被疑者本人ばかりでなく、関係者全員について実現されるべきでしょう。

一審無罪判決後の勾留と検察控訴による二審逆転有罪

 一審・東京地裁は、1997年10月から3年半にわたり30回以上の公判で慎重な審理を重ねた結果、2000年4月、ゴビンダに無罪判決を言い渡しました。刑事訴訟法345条によれば、無罪判決により勾留の効力は失われます。ゴビンダは勾留を解かれ、東京入国管理局に移され、ネパールに送還を待つばかりとなりました。

 ところが、一審判決を不服とする検察は、東京高裁に控訴するとともに、ゴビンダの再勾留を裁判所に求めたのです。もしネパールに送還されてしまえば、控訴審で有罪にしても、刑の執行が不可能だというのが、その言い分でした。無罪になった被告人を、外国人だからという理由で、再勾留することができるのか?この前例のない事態に、裁判官の間でも意見がふたつに割れました。しかし、結局、検察の度重なる要求により、最高裁で3対2の小差で再勾留が決定してしまいました。

 二審・東京高裁は、2000年8月から4ヶ月、わずか8回のスピード審理で、一審無罪を破棄し、ゴビンダに無期懲役の逆転有罪判決を言い渡しました。この裁判長は、ゴビンダの再勾留を積極的に主張した人物でした。その事実認定と論理はきわめて粗雑であり、まさしく「はじめに有罪ありき」の予断と偏見による不当な判決としか言いようがありません。ゴビンダは最高裁に上告しましたが、2003年に棄却され、無期懲役が確定しました。

 ゴビンダの無罪勾留が「悪しき前例」となって、外国人が一審無罪でも勾留され逆転有罪を言い渡されるというケースが、その後もいくつか起きています。非常に重大な人権侵害であると言わざるをえません。日本では、無罪判決に対して、検察が控訴することができることが、そもそも大きな問題だと思っています。

検察の証拠隠しと全面証拠開示

 ゴビンダの事件には、自白、犯行目撃証言などの「直接証拠」がありません。したがって、「間接証拠」(状況証拠)の認定によって、有罪か無罪かが争われました。二審東京高裁は、「全ての状況証拠を総合的に評価すれば、被告人が犯人であることに合理的な疑いを入れる余地はない」と言い切っています。

 しかし、じつは検察が法廷に出してきた証拠が「全ての状況証拠」ではありません。検察は、有罪立証に役立つ証拠(被告人に不利な証拠)だけを提出し、被告人に有利な証拠は隠しています。はじめから全面証拠開示がなされていれば、ゴビンダは有罪にはならなかったでしょう。しかし、現行の刑事訴訟法では、検察はどんな証拠を持っているのか、そのリストを開示する義務さえないのです。はじめから全面証拠開示を法律で義務付けないかぎり、冤罪を防ぐことはできないでしょう。

 布川事件の再審請求審においては、弁護団のねばり強い証拠開示請求によって、請求人に有利な証拠が多数出てきたことが、再審開始決定につながりました。
 ゴビンダの場合も、検察が隠していた証拠を出せば、確定判決の言う「状況証拠の総合評価」は、あっけなく崩れる可能性が高いでしょう。

最後に

 以上の詳細は、私たち「無実のゴビンダさんを支える会」が発行している英文ブックレットに書かれています。上告中に発行されたものですが、事件の概要、別件逮捕、無罪勾留について説明されていますので、ご一読ください。

 事件当時、30才の青年だったゴビンダは、今年で43才になります。リーフレットに載っている事件前の写真より外見は老けてしまいましたが、人なつこいチャーミングな笑顔は今も変わっていません。「無実の受刑者」であることに苦しみながらも、1日も早く仮釈放されるよう、一生懸命、模範囚であろうと努力しています。しかし、本当に彼が望んでいることは、再審無罪になって冤罪を晴らして故国に帰ることです。

 ゴビンダのように、日本の司法制度のもとで外国人の冤罪被害も起きていることを、国連の活動をとおして世界に広く知らしめていただきたいと思っています。

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