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大崎事件 各社の社説

大崎事件、再審開始決定についての社説( 6月28日~30日)

【毎日新聞】 大崎事件で再審開始決定 すみやかに名誉の回復を

2度目の再審開始決定である。検察は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
鹿児島県大崎町で38年前、男性が殺害されたとされる「大崎事件」で、殺人罪で懲役10年が確定し、服役した90歳の原口アヤ子さんについて、鹿児島地裁が裁判のやり直しを決めた。証拠は脆弱(ぜいじゃく)で、原口さんの再審開始決定は当然だ。
決定は新証拠に基づく鑑定を踏まえ、「殺害行為はなかった疑いを否定できない」とし、共犯者とされる元夫(故人)の再審開始も認めた。
被害者は原口さんの義弟だ。自転車事故を起こし、意識のないまま自宅に運び込まれた後、牛小屋の堆肥(たいひ)の中から遺体が見つかった。警察は首を絞められた窒息死とみて、被害者の長兄である原口さんの当時の夫と、被害者の次兄を逮捕した。
2人の自白により、殺人を指示したとされる原口さんと別の親族も逮捕された。原口さん以外は公判で事実を争わず1審で判決は確定した。
一方、原口さんは取り調べでも公判でも一貫して犯行を否認した。
共犯者とされる3人は知的障害があった。決定は、3人の自白について捜査機関の誘導の可能性を指摘した。客観的な証拠がほとんどない中で、警察が描いたストーリーに迎合させられたのではないか。
過去の冤罪(えんざい)事件と同じ構図だ。自白に偏重した捜査への警鐘と受け止めなければならない。
確定判決を覆したのは、再審請求の途中で検察側が新たに開示したネガフィルムの写真だ。写真によって、死斑など窒息死の所見が見られないとする鑑定書がまとまった。弁護側は自転車事故によるショック死の可能性を主張した。
一連の経緯からは、司法の怠慢が見える。検察がネガフィルムなど200点以上の証拠を開示したのは事件後30年以上たってからだ。
裁判所の対応も問われる。第3次の再審請求に至るまでの間、弁護団は裁判所に対し、検察官に証拠を開示させるよう再三求めたが、応じずに審理を終結し、請求を棄却したこともあった。
原口さんは高齢だ。速やかに名誉の回復を図らねばならない。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に立てば、検察は即時抗告せず、再審裁判に応じるべきだ。

【読売新聞】 大崎事件再審 自白頼みの脆い立証の結果だ

新たな証拠で確定判決に疑義が生じた以上、再審の扉を開くのは、理に適(かな)った判断である。
鹿児島県で1979年に発生した「大崎事件」で、鹿児島地裁が再審開始を決定した。殺人と死体遺棄罪で懲役10年の刑が確定し、服役した90歳の女性の第3次請求を認めた。
決定は、有罪の根拠だった元夫ら共犯3人の自白の信用性を「捜査機関に誘導された疑いがある」などと否定した。元夫についても、遺族の再審請求を認めた。裁判官は「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に沿って結論を導いたと言える。
女性の義弟が絞殺され、自宅横の牛小屋に遺棄された。犯行は女性が主導し、元夫ら親族3人と共謀した、というのが、確定判決が認定した事件の構図だ。
元夫らは、女性に犯行を持ちかけられた、などと自白した。女性は一貫して否認していた。
地裁は2002年、女性の第1次再審請求を認めた。自白と遺体の状況が合致しない、との判断だったが、高裁がこの決定を取り消した。再審開始が再び認められた異例の経緯は、自白頼みの立証の脆(もろ)さを物語っている。
女性以外の関係者が既に死亡する中、今回の決定の決め手となったのが「供述心理鑑定」だ。公判での供述記録などに基づき、話し手の反応の仕方や聞き返し方などから心理状態を分析する。
3人のうち1人から「殺してきた」と聞いたという義妹の証言がカギだった。鑑定は体験に基づかない話をした可能性を指摘し、決定は鑑定の証拠価値を認めた。
義妹証言の信用性を突き崩すことで、自白の信用性も崩壊させる。弁護側の戦略が奏功した。
裁判官には、自白偏重の立証に疑いの目を向ける傾向が強まっている。近年の再審開始決定では、DNA鑑定などの科学的な客観証拠が判断を支えている。
その点で、供述の鑑定を根拠とする今回の決定は異質である。
検察側は即時抗告を検討している。高裁の裁判官も、供述の鑑定を有力な証拠と捉えるのかどうか、が最大の焦点となろう。
審理の過程で、検察は、実況見分などを記録した大量の写真を初めて開示した。「存在しない」と主張していたものもあった。地裁が積極的に証拠開示するよう促したのは、適切な対応だった。
恣意(しい)的な証拠開示は、冤罪(えんざい)につながる。公権力を用いて集めた証拠は公共財である。検察はそのことを再認識せねばならない。

【北海道新聞】 「大崎」再審決定

自白偏重の危うさまた自白に偏った捜査の危うさが、またも浮き彫りになった。捜査機関はもちろん、有罪認定した裁判所も重く受け止めねばならない。
鹿児島県で1979年に起きた「大崎事件」を巡り、殺人罪などに問われて服役した原口アヤ子さん(90)の第3次再審請求で、鹿児島地裁が再審開始を認めた。
有罪認定の根拠となった親族らの「自白」について、捜査機関による誘導の可能性を指摘した。
その上で、被害者とされる男性の死因にも疑問を投げかけ、「共謀も殺害もなかった疑いが否定できない」とまで踏み込んだ。
再審開始決定はこれで2度目だ。しかも原口さんは90歳という高齢でもある。検察側は即時抗告すべきではない。裁判所も速やかに再審を始めてもらいたい。
確定していた判決は、原口さんが義弟の生活態度に不満を募らせ、元夫や親族2人(いずれも故人)と共謀。義弟の首をタオルで絞めて殺害したと認定した。
しかし原口さんは捜査段階から全面否認。犯行を裏付ける物証は乏しく、直接的な証拠は「原口さんから殺害を持ちかけられた」などとする3人の自白だけだった。
地裁は今回、原口さんだけでなく、元夫についても再審開始を認めている。
注目すべきは、地裁の丁寧な事実認定だ。弁護団が提出した心理学者の鑑定書を重視し、親族らの自白や関係者供述は「捜査機関の誘導や迎合によって変遷した疑いがある」と結論付けた。
「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に忠実な判断で、評価できる。
調書を分析する心理学鑑定という手法が、自白や供述の信用性を判別するうえで有効であることも証明された。一般の裁判でも積極的な活用を検討してほしい。
地裁が検察側に対し、遺体の変色の状態などが分かるネガフィルムを証拠開示するよう勧告したのも妥当な措置だった。
これにより、首を絞められたことによる「窒息死」とされていた死因が必ずしも明白ではなくなり、事故死の可能性さえ否定できなくなったからである。
昨年の刑事司法改革で、検察側が全証拠のリストを弁護側に交付する制度が導入されるなど、証拠開示の取り組みは進んでいる。
ただ、再審請求審では決まりがなく、裁判所の裁量に任されているのが実情だという。捜査機関の証拠隠しを防ぐためにも、幅広く取り入れてもらいたい。

【東奥日報】 一日も早く公判開始を!大崎事件再審決定

鹿児島県大崎町で1979 年に男性の遺体が見つかり、殺人罪などで義姉の原口アヤ子さんが服役した「大崎事件」の第3 次再審請求審で、鹿児島地裁は再審開始を認める決定をした。原口さんは52 歳で逮捕され一貫して無実を訴えたが、81 年に懲役10 年が確定。刑期満了で出所した後の95 年から再審請求を重ね、既に90 歳になっている。
絞殺の凶器とされたタオルが特定されないなど物証はないに等しく、原口さんと犯行とを結び付けたのは共犯とされた元夫と義弟ら3 人の「自白」と、3 人のうち1 人から「殺してきた」などと聞いたとする義妹の証言だった。地裁決定はいずれの信用性にも疑問を投げ掛け「殺害行為がなかった疑いが否定できない」との判断を示した。
近年、DNA 鑑定の精度が飛躍的に向上し、97 年の東京電力女性社員殺害事件や66 年の袴田事件で再審開始決定の重要な根拠となったが、大崎事件はこうした再審事件と異なり、共犯者の供述が有罪のほぼ唯一の支えだった。このため供述の不自然さを洗い出す心理鑑定が大きな役割を果たし、地裁決定は「高い証拠価値がある」とした。
原口さんの再審開始決定は第1 次請求時の2002 年に続き2 度目。一日も早く再審公判を開くことが求められる。と同時に警察・検察と裁判所は自白を頼りに有罪認定に至った過程をきちんと検証する必要がある。
原口さんの有罪を支えた証拠構造は極めて脆弱(ぜいじゃく)だったといえる。原口さんは捜査段階から殺人と死体遺棄の容疑を全面否認したが、共犯者とされた元夫ら3人は自白。原口さんから被害者を殺すよう持ち掛けられた元夫ら2人が犯行に及び、その後、もう1 人も加わり遺体を牛小屋の堆肥の中に埋めた-という事件の構図が出来上がった。
さらに原口さんが義弟に殺害を持ち掛けるところを見たり、義弟から「殺してきた」と聞いたりしたとする原口さんの義妹の供述が3人の自白を補強した。だが客観的な証拠はほとんどなく、しかも3人は知的能力に問題があったとされる。
鹿児島地検は即時抗告を検討している。袴田事件も14 年に静岡地裁の再審開始決定が出たが、即時抗告審が続く。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に立ち返り、再審公判で主張を展開することを考えるべきだ。

【茨城新聞】 大崎事件再審決定 一日も早く公判開始を

鹿児島県大崎町で1979 年に男性の遺体が見つかり、殺人罪などで義姉の原口アヤ子さんが服役した「大崎事件」の第3 次再審請求審で、鹿児島地裁は再審開始を認める決定をした。原口さんは52 歳で逮捕され一貫して無実を訴えたが、81 年に懲役10 年が確定。刑期満了で出所した後の95 年から再審請求を重ね、既に90 歳になっている。
絞殺の凶器とされたタオルが特定されないなど物証はないに等しく、原口さんと犯行とを結び付けたのは共犯とされた元夫と義弟ら3 人の「自白」と、3 人のうち1 人から「殺してきた」などと聞いたとする義妹の証言。地裁決定はいずれの信用性にも疑問を投げ掛け「殺害行為がなかった疑いが否定できない」との判断を示した。
近年、DNA 鑑定の精度が飛躍的に向上し、97 年の東京電力女性社員殺害事件や66 年の袴田事件で再審開始決定の重要な根拠となったが、大崎事件はこうした再審事件と異なり、共犯者の供述が有罪のほぼ唯一の支えだった。このため供述の不自然さを洗い出す心理鑑定が大きな役割を果たし、地裁決定は「高い証拠価値がある」とした。
原口さんの再審開始決定は第1 次請求時の2002 年に続き2 度目。一日も早く再審公判を開くことが求められる。と同時に警察・検察と裁判所は自白を頼りに有罪認定に至った過程をきちんと検証する必要がある。
原口さんの有罪を支えた証拠構造は極めて脆弱(ぜいじゃく)だった。原口さんは捜査段階から殺人と死体遺棄の容疑を全面否認したが、共犯者とされた元夫ら3 人は自白。原口さんから被害者を殺すよう持ち掛けられた元夫ら2 人が犯行に及び、その後、もう1 人も加わり遺体を牛小屋の堆肥の中に埋めたという事件の構図が出来上がった。
さらに原口さんが義弟に殺害を持ち掛けるところを見たり、義弟から「殺してきた」と聞いたりしたとする原口さんの義妹の供述が3人の自白を補強。だが客観的な証拠はほとんどなく、3人は知的能力に問題があったとされる。
第1 次再審請求で鹿児島地裁は、共犯者の自白は遺体の状況と矛盾する可能性が高く、その信用性を再検討する必要性が生じたとして再審開始を決定したが、福岡高裁宮崎支部が取り消した。第2次請求も、共犯者の供述の信用性は必ずしも高いとはいえないが、義妹の証言は信用できるという理由で退けられた。
弁護団は第3 次請求で専門家に依頼して義妹の一連の供述について心理鑑定を実施。「実際の体験に基づかない情報が含まれている可能性が高い」とする鑑定書を新証拠として提出した。また確定判決が死因を「窒息死」と認定する根拠とした遺体の鑑定結果も、別の法医学者の鑑定を基に窒息死の所見が見られないと主張した。
これらを踏まえ、地裁決定は義妹の証言について「信用性を全面的に認めるのは困難」とした上で、3 人の自白についても捜査機関による誘導の可能性を指摘。確定判決の証拠構造は崩れた。
鹿児島地検は即時抗告を検討している。袴田事件も14年に静岡地裁の再審開始決定が出たが、まだ即時抗告審が続いている。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に立ち返り、再審公判で主張を展開することを考えるべきだ。

【東京・中日新聞】  大崎事件再審 司法の恥と受け止めよ

「やってないものは、やってない」−。殺人罪で服役した原口アヤ子さんは一貫して無実を叫んだ。
その願いは第三次の再審請求でやっと重い扉を開けた。裁判所は早く無実を認めるべきである。
厳しい取り調べにも、原口さんは一度も罪を認めたことはない。例え話であるが「認めれば仮釈放される」などの誘いにも乗ったことはない。事件は鹿児島県大崎町で一九七九年に起きたが、物証はないに等しく、共犯者とされる者たちの証言のみで立証されている。
知的障害者も含まれる。かつ共犯者も後に証言をひるがえして、原口さんの関与を虚偽であったとしている。それでも原口さんは懲役十年の刑を受け、服役を終えている。どんな証拠によるものだろうか。
発端は、義理の弟が自宅から一キロ離れた用水路に自転車とともに倒れていた。泥酔していたのだ。
村人に引き上げられ、家まで軽トラックで送り届けられたものの、その後、所在不明となった。
義理の弟は敷地内にある牛小屋の堆肥から死体となって発見された。原口さんの夫らが逮捕された。
確定判決では「タオルによる絞殺」である。今回の弁護側は鑑定書を基に「死斑などがなく、窒息死の所見は認められない」と指摘しつつ、「自転車事故による出血性ショック死の可能性が高い」と訴えていた。
検察から開示されたネガフィルムを基に現像した写真を調べても、遺体の皮膚に変色が見られなかった。つまり、首を絞めて殺害したとする供述は信用できなくなる。弁護側はそう主張した。
また、第二次再審請求の抗告審で「親族の自白を支えている」と判断された義妹の「共犯者から殺してきたと聞いた」という証言についても、「体験していないことを話している可能性が高い」とする鑑定書を出していた。
要するに「大崎事件」は人が死んでいたことは事実であるが、殺人事件であったかどうかさえ、あやふやである。確たる証拠は何もないのではないか。死体遺棄のような状態であったから、警察が殺人事件だと思い込んでしまったのではないか。
たまたま死亡した義理の弟に郵便局の簡易保険を原口さんがかけていたから、事件の首謀者に仕立て上げられたのだろう。原口さんは既に九十歳。三審制でも過去二回の再審請求でも救えなかった。司法界の恥と刻まれる。

【新潟日報】「大崎事件」 再審始め真実を明らかに

決定は殺人事件でなかった可能性をも指摘した。冤罪(えんざい)の疑いを改めて示した異例の2度目の再審開始決定だ。早期に再審を始め、真実を明らかにしなければならない。
鹿児島県大崎町で1979年にあった「大崎事件」で殺人罪などに問われ、服役した原口アヤ子さん(90)が裁判のやり直しを求めた第3次再審請求で、鹿児島地裁は再審開始を認める決定をした。
確定判決によると、原口さんは義弟の農業中村邦夫さん=当時(42)=の日頃の生活態度に不満を募らせ、元夫や親族2人と共謀し、中村さん宅で首をタオルで絞めて殺害し、牛小屋に遺体を遺棄した、とされる。
原口さんは当初から全面否認した。凶器とされたタオルが特定されないなど物的証拠はほぼなく、原口さんと犯行を結び付ける証拠は3人の自白に絞られていた。
決定は確定判決が死因を「窒息死」としたことについて「積極的に認定する証拠はない」とした。
弁護団が提出した新証拠の一つである、遺体の解剖写真に基づく法医学者の鑑定書から導いた。
さらにもう一つの新証拠である弁護団が提出した心理学者の鑑定書を重視し、親族らの自白の信用性を否定している。
殺害行為など根幹部分に説明のつかない変遷があり、「親族らは知的能力に問題があり、捜査機関の誘導や迎合によって変遷した疑いがある」と指摘したのだ。
総合的に判断し、決定は「共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」と結論付けた。見込み捜査による冤罪の可能性を示唆したといえよう。
原口さんの再審については、2002年に地裁が開始を決定したが、検察側が抗告し、04年に取り消され、その後の第2次請求も退けられた経緯がある。
逮捕から38年、無実を訴え続けた原口さんの叫びを、今度こそ真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
決定の内容を踏まえれば、検察は再審を避けてはならない。
今回の事件は、これまでの再審開始決定事件と異なり、物証がなく供述証拠しかなかった。
自白や証言の信頼性について、供述者の心理からアプローチする供述心理学を初めて適用したのは画期的といえよう。
決定には新たな開示証拠が鍵となった。心理学者の鑑定は第2次請求時に開示された証拠を踏まえて実施された。
公判段階で開示されなかった証拠が再審の扉を開くケースが近年「袴田事件」や「東京電力社員殺害事件」など続いている。
いずれも捜査機関が見立てに沿って自白獲得を迫る冤罪事件特有の構図が浮かぶ。捜査や証拠開示方法の検証が不可欠だ。
冤罪防止、自白の強要、誘導を防ぐためには取り調べの録音・録画(可視化)が有効であるのは論をまたない。
可視化を義務付けた改正刑事訴訟法が昨年成立し、19年6月までに施行される。既に捜査機関は試行を進める。過ちの根絶のため、さらに厳正な実施を求めたい。
【信濃毎日新聞】  大崎事件裁判 速やかにやり直しを
2度にわたる再審開始決定の事実は重い。逮捕以来38年間、無実を訴え続けてきた元受刑者は今や90歳。検察は速やかな裁判やり直しに同意すべきだ。
鹿児島県大崎町で1979年、男性の遺体が見つかった大崎事件。殺人などの罪で懲役10年の刑が確定し、服役した原口アヤ子さんと、共犯とされた元夫(故人)の再審開始を鹿児島地裁が認めた。
3度目の請求が実った。
81年に確定した判決で、原口さんは元夫や親族2人と共謀し、義弟の首をタオルで絞めて殺害、牛小屋に遺棄した、とされた。凶器のタオルなどの物証はなく、有罪を支えたのは“共犯者”の自白だった。
今回の決定では、遺体の解剖写真に基づく法医学者の鑑定や心理学鑑定という新証拠と、確定判決の旧証拠を「総合的に判断」した。親族らの自白は新鑑定の結果と合わないなどの理由で「捜査機関による誘導の疑い」を指摘。殺害行為自体がなかった可能性も示している。
問われるのは、客観的証拠を得ず自白獲得に偏った捜査の在り方だけではない。これを追認してきた裁判所の姿勢だ。特に棄却を続けた再審請求審は、無実の可能性を突き詰めようとしなかったといわれても仕方がない。
かつて、再審開始の要件は真犯人が別にいることを確実に証明した場合と解釈され、「開かずの門」と呼ばれた。これを見直したのが75年の最高裁の「白鳥決定」だ。新証拠だけでなく旧証拠も含め総合的に判断することや、刑事裁判の原則の「疑わしきは被告人の利益に」を再審開始にも適用することを求めた。
門は広がり、免田事件など死刑が確定していた4人の再審が認められ、いずれも無罪になった。
大崎事件の第1次再審請求でも地裁は白鳥決定に沿って判断。今回と同様に自白の信用性を疑い、再審開始を認めている。
ところが、高裁は先祖返りしたかのようだった。旧証拠まで地裁が見直したことを批判。「確定判決の安定を損ない、三審制を事実上崩す」と再審開始を取り消した。救済より裁判所の権威を重んじたように映った。
以後、最高裁、第2次請求審はいずれも棄却。2次の高裁は「捜査官の暗示誘導」を指摘しながら「全体としては信用できる」と疑問を残したままの決定だった。
「疑わしきは―」の原則は、裁判に貫かれていたのか。今回の決定が問い掛ける司法の課題だ。

【神戸新聞】 大崎事件 一日も早く再審の開始を

38年前に鹿児島県大崎町で42歳の男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、鹿児島地裁は、殺人罪などで服役した原口アヤ子さんら2人の再審開始を認める決定をした。もう1人は原口さんの元夫で既に病死している。長女が再審を請求していた。
弁護側は、遺体の法医学鑑定などの新証拠を提出した。これを受けて地裁は「新旧の全証拠を総合的に判断すれば、殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」と述べた。
本当に殺人事件は起きたのか。捜査機関がでっち上げた可能性がある。
大崎事件の再審開始の決定は今回が2度目だ。2002年にも鹿児島地裁が出したが、検察側が即時抗告し、福岡高裁宮崎支部が取り消していた。
原口さんは90歳で、今は施設で暮らす。言葉を発することが難しい状態という。検察は抗告せず、一日も早くやり直し裁判を始めるべきだ。時間を費やすことは許されない。
事件では、遺体で見つかった男性の親族4人が逮捕され、有罪が確定した。原口さんは男性の義姉で捜査段階から一貫して無罪を主張し、最高裁まで争った。刑務所でも冤罪(えんざい)を訴えて仮釈放を拒否し、懲役10年の刑期満了まで服役した。
物証が乏しい中、有罪の根拠となったのは元夫ら親族3人の「自白」だった。鹿児島地裁は、自白について「親族らは知的能力に問題があり、捜査機関の誘導で変遷した疑いがある」と判断した。02年の再審開始決定でも、地裁は「自白の強制や誘導がうかがえる」としている。
自白偏重の過ちを2度も指摘された事実を検察、警察は重く受け止めるべきだ。
これまでの再審請求では、検察側に新たな証拠の開示を求めるよう弁護側が要求したのに対し、裁判所は応じなかった。大阪の女児死亡火災事件や熊本の松橋(まつばせ)事件などで、取り調べの記録などの証拠開示が無罪判決や再審決定に結びついたことは記憶に新しい。
再審決定が2度出された免田事件も、1983年に無罪が確定している。刑事司法は、「疑わしきは被告人の利益に」という最高裁「白鳥決定」の原理に立ち返らねばならない。

【西日本新聞】  「大崎事件」再審 自白偏重への相次ぐ警鐘

殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(90)が無実を訴えて裁判のやり直しを求めた「大崎事件」で、鹿児島地裁が再審開始を決定した。
再審を認める判断は昨年6月の熊本地裁による「松橋(まつばせ)事件」に続くもので、またもや自白偏重の捜査への警鐘が鳴らされた。
冤罪(えんざい)事件の教訓を踏まえて取り調べの可視化(録音・録画)が一部義務付けられるなど、刑事司法制度の転換点を迎えた中で相次ぐ再審決定である。捜査当局は改めて重く受け止めるべきだ。
大崎事件は男性の遺体を巡って原口さんら親族4人が殺人や死体遺棄容疑で逮捕され、自白などからいずれも有罪が確定していた。
今回は3度目の再審請求で過去に1度認められた経緯もあり、異例の展開だ。鹿児島地裁は元夫(故人)への再審開始も認めた。
刑事訴訟法435条は、無罪を言い渡すべき新たな証拠の発見などを再審の要件としている。
決定は、弁護側が新たに提出した義妹による目撃証言の鑑定書などから、確定判決の柱となった親族の自白の信用性を否定した。
死因とされた「絞殺」にも新証拠から疑問を呈し、「(親族による)共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」と冤罪の可能性を示唆した。
再審はかつて「開かずの門」とされたが、合理的な疑いが生じれば開始できるとする最高裁の「白鳥決定」(1975年)で流れが変わった。
それでも、捜査当局が描く筋書きに沿って自白を強要してでも起訴に持ち込む-。そんな自白偏重の捜査は後を絶たない。決定は、義妹の証言について「捜査機関の思惑に沿って虚偽の供述を続けていた疑いがある」と踏み込んだ。
刑事司法制度を巡っては大阪地検による証拠改ざん事件などを受け、可視化を含む改革関連法が昨年成立し順次施行されている。いわゆる「共謀罪」法も今月成立し、恣意(しい)的捜査に対する懸念は強まる一方だ。罪なき人を罰していないか、再点検すべきである。

【熊本日日新聞】  大崎事件再審 重く受け止め公判開始を

自白頼みの捜査手法への警鐘であり、検察は重く受け止めて再審公判に応じるべきだ。
鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかり、殺人罪などで義姉の原口アヤ子さんが服役した「大崎事件」の第3次再審請求審で、鹿児島地裁が裁判のやり直しを認める決定をした。
原口さんは52歳で逮捕され、一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定。刑期満了で出所した後の95年から再審請求を重ね、既に90歳になっている。原口さんの再審開始決定は2度目だ。
確定判決によると、原口さんは男性の日頃の生活態度に不満を募らせ、元夫や親族と共謀。男性宅で首をタオルで絞めて殺害し、牛小屋に遺体を遺棄したとされた。
絞殺の凶器とされたタオルが特定されないなど物証はほとんどなく、原口さんと犯行とを結び付けたのは共犯とされた元夫と親族ら3人の「自白」だった。原口さんが親族に殺害を持ち掛けるところを見たり、3人のうち1人から「殺してきた」と聞いたりしたとする原口さんの義妹の供述も自白を補強した。
原口さんの有罪を支えた証拠構造は極めて脆弱[ぜいじゃく]であり、地裁の決定はいずれの信用性にも疑問を投げ掛け、「共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」との判断を示した。
決定に大きな役割を果たしたのが、弁護側が提出した心理学鑑定書だ。鑑定は供述の不自然さを洗い出し「体験に基づかない供述の可能性がある」と指摘し、地裁は全面的にこれを採用した。「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則に立ち、結論を導いたといえる。
元夫や親族らの自白については「知的能力に問題があり、捜査機関の誘導や迎合で供述が変遷した疑いがある」、義妹の証言についても「捜査機関の思惑に沿って虚偽の供述をした疑いがある」と踏み込んだ。
客観的証拠が乏しい状況で、捜査機関が描く事件の見立てに沿って自白を迫る-。過去の冤罪[えんざい]事件で繰り返された構図である。
昨年6月、熊本地裁が再審開始を認めた「松橋事件」でも、新証拠によって「自白の信用性が揺らいだ」とされ、供述内容の変遷については「取調官に迎合した疑いがある」と指摘された。今回の決定も、自白に偏重した捜査の危険性を改めて指摘する内容だ。警察や検察、裁判所は有罪認定に至った過程を検証する必要がある。
今回の3次請求では、新たな開示証拠が決め手となって再審の扉を開いた。遺体の状況などの写真が記録されたネガフィルムの存在が判明し、窒息死とされた死因について「積極的に肯定する所見がない」と鑑定された。
心理学鑑定も、2次請求時に開示された共犯者の供述を踏まえて実施された。この供述は捜査機関が「見当たらない」と開示を渋っていたものだという。捜査機関による証拠隠しも一連の冤罪事件に重なる構図と言えるだろう。

【宮崎日日新聞】  大崎事件再審決定 ◆一日も早く公判を開始して◆

鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかり、殺人罪などで義姉の原口アヤ子さんが服役した「大崎事件」の第3次再審請求審で、鹿児島地裁は再審開始を認める決定をした。原口さんは52歳で逮捕され一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定。刑期満了で出所した後の95年から再審請求を重ね、既に90歳だ。
原口さんと犯行を結びつけたのは共犯とされた元夫と義弟ら3人の「自白」と、3人のうち1人から「殺してきた」などと聞いたとする義妹の証言だ。地裁決定はいずれの信用性にも疑問を投げかけ「殺害行為がなかった疑いが否定できない」との判断を示した。 心理鑑定に証拠価値近年、DNA鑑定の精度が飛躍的に向上し、97年の東京電力女性社員殺害事件や66年の袴田事件で再審開始決定の重要な根拠となったが、大崎事件はこうした再審事件と異なり、共犯者の供述が有
罪のほぼ唯一の支えだった。供述の不自然さを洗い出す心理鑑定が大きな役割を果たし、地裁決定は「高い証拠価値がある」とした。
原口さんの再審開始決定は第1次請求時の2002年に続き2度目。一日も早く再審公判を開くことが求められる。と同時に警察・検察と裁判所は自白を頼りに有罪認定に至った過程をきちんと検証する必要がある。
原口さんの有罪を支えた証拠は脆弱(ぜいじゃく)だ。原口さんから被害者を殺すよう持ち掛けられた元夫ら2人が犯行に及び、その後、もう1人も加わり遺体を牛小屋の堆肥の中に埋めた-という事件の構図ができた。さらに義妹の供述が3人の自白を補強。だが客観的な証拠はほとんどなく、しかも3人は知的能力に問題があったとされる。
第1次再審請求で鹿児島地裁は、共犯者の自白は遺体の状況と矛盾する可能性が高く、信用性を再検討する必要性があるとして再審開始を決定したが、福岡高裁宮崎支部が取り消した。第2次請求も義妹の証言は信用できるという理由で退けられた。 自白に誘導の可能性弁護団は第3次請求で専門家に依頼して義妹の一連の供述について心理鑑定を実施。「実際の体験に基づかない情報が含まれている可能性が高い」とする鑑定書を新証拠として提出した。また確定判決が死因を「窒息死」と認定する根拠とした遺体の鑑定結果についても、別の法医学者の鑑定を基に窒息死の所見が見られないと主張した。
地裁決定は義妹の証言について「信用性を全面的に認めるのは困難」とした上で、3人の自白についても捜査機関による誘導の可能性を指摘した。
鹿児島地検は即時抗告を検討している。再審開始決定が出た袴田事件も即時抗告審が続いている。
「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に立ち返り、再審公判で主張を展開することを考えるべきだ。

【熊本日日新聞】 大崎事件再審 重く受け止め公判開始を

自白頼みの捜査手法への警鐘であり、検察は重く受け止めて再審公判に応じるべきだ。
鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかり、殺人罪などで義姉の原口アヤ子さんが服役した「大崎事件」の第3次再審請求審で、鹿児島地裁が裁判のやり直しを認める決定をした。
原口さんは52歳で逮捕され、一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定。刑期満了で出所した後の95年から再審請求を重ね、既に90歳になっている。原口さんの再審開始決定は2度目だ。
確定判決によると、原口さんは男性の日頃の生活態度に不満を募らせ、元夫や親族と共謀。男性宅で首をタオルで絞めて殺害し、牛小屋に遺体を遺棄したとされた。
絞殺の凶器とされたタオルが特定されないなど物証はほとんどなく、原口さんと犯行とを結び付けたのは共犯とされた元夫と親族ら3人の「自白」だった。原口さんが親族に殺害を持ち掛けるところを見たり、3人のうち1人から「殺してきた」と聞いたりしたとする原口さんの義妹の供述も自白を補強した。
原口さんの有罪を支えた証拠構造は極めて脆弱[ぜいじゃく]であり、地裁の決定はいずれの信用性にも疑問を投げ掛け、「共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」との判断を示した。
決定に大きな役割を果たしたのが、弁護側が提出した心理学鑑定書だ。鑑定は供述の不自然さを洗い出し「体験に基づかない供述の可能性がある」と指摘し、地裁は全面的にこれを採用した。「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則に立ち、結論を導いたといえる。
元夫や親族らの自白については「知的能力に問題があり、捜査機関の誘導や迎合で供述が変遷した疑いがある」、義妹の証言についても「捜査機関の思惑に沿って虚偽の供述をした疑いがある」と踏み込んだ。
客観的証拠が乏しい状況で、捜査機関が描く事件の見立てに沿って自白を迫る-。過去の冤罪[えんざい]事件で繰り返された構図である。
昨年6月、熊本地裁が再審開始を認めた「松橋事件」でも、新証拠によって「自白の信用性が揺らいだ」とされ、供述内容の変遷については「取調官に迎合した疑いがある」と指摘された。今回の決定も、自白に偏重した捜査の危険性を改めて指摘する内容だ。警察や検察、裁判所は有罪認定に至った過程を検証する必要がある。
今回の3次請求では、新たな開示証拠が決め手となって再審の扉を開いた。遺体の状況などの写真が記録されたネガフィルムの存在が判明し、窒息死とされた死因について「積極的に肯定する所見がない」と鑑定された。
心理学鑑定も、2次請求時に開示された共犯者の供述を踏まえて実施された。この供述は捜査機関が「見当たらない」と開示を渋っていたものだという。捜査機関による証拠隠しも一連の冤罪事件に重なる構図と言えるだろう。

【南日本新聞】 [大崎事件] 執念が再審の扉開ける

冤罪(えんざい)を訴え、裁判のやり直しを求め続けた執念が実った。
1979年に大崎町で農業男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで懲役10年が確定し服役した原口アヤ子さんの第3次再審請求について、鹿児島地裁は再審を認める決定をした。
2002年の第1次再審請求審でも、鹿児島地裁は再審開始決定をしており、2度にわたる同様の決定は極めて重い。
第1次再審請求から22年。原口さんは90歳の高齢で、健康状態も決して万全とはいえない。
決定に不服があれば、検察側は即時抗告できる。だが、決定を真摯(しんし)に受け止めて再審の扉を開け、公判で審理を尽くすべきだ。
確定判決によると、原口さんは元夫らと共謀し79年10月、義弟にあたる男性の自宅で、首をタオルで絞めて殺害し、牛小屋に遺棄したとされる。共犯とされた元夫と親族2人は80年の一審判決で実刑とされ、控訴せずに確定した。
事件は、被害男性を絞殺するのに使ったとされるタオルさえ特定されていないなど物証に乏しく、知的障害のある共犯者の自白の信用性などが争われた。
主犯とされた原口さんは捜査段階から一貫して犯行を否認し、無罪を主張してきた。
決定理由で冨田敦史裁判長は、有罪認定の根拠となった共犯者らの自白について「捜査機関の誘導や迎合で変遷した疑いがあり、信用性は高くない」と判断した。
第1次再審請求審の鹿児島地裁も、「捜査官による強制や誘導がうかがわれ、自白の信用性に疑問がある」としており、自白偏重の問題が改めて浮き彫りになったといえよう。
弁護側は新証拠として、遺体の解剖写真に基づく法医学者の鑑定書を提出した。
窒息死の所見が見られず「タオルで首を絞めて殺した」との共犯者の供述と矛盾するとの指摘について、冨田裁判長は「窒息死を示す積極的な所見はない」とし、共犯者の自白の裏付けとしての弱さを認めた。
弁護側は「原口さんが親族に犯行を持ちかけるのを見た」とする別の親族の供述を否定する内容の心理学鑑定書も提出した。
これらについても、「供述内容に不自然な点があり、捜査機関の思惑に沿って虚偽の供述を続けていた疑いがある」として弁護側の主張を認定した。
決定理由から浮かび上がるのは、初めから殺人事件と決めつけて捜査が行われたのではないか、との疑念だ。捜査機関は取り調べの全面可視化が求められる。

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