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大阪地検によるデータ改ざん問題_検証・検察の不正義

【郵政不正事件とは】

 障害者団体向けの郵便割引制度を悪用して企業のDM(ダイレクトメール)などを発送し、不当に利益を上げたとして、実体のない障害者団体の幹部や厚生労働省職員などが大阪地検に逮捕された。
 検察は、逮捕した元幹部などに対して強引な取調べをおこない、検事の想定した筋書きに沿った供述を強要。国会議員が厚労省官僚に口利きをして、村木元局長が割引制度の承認に必要な障害者団体証明書を偽造するよう、部下である元係長(公判中)に指示したとして、村木元局長を虚偽公文書作成罪などで逮捕・起訴した。
 しかし、捜査段階で村木元局長の関与を示唆する供述をした検察側承認の多数が公判で供述調書の内容を否定。供述調書も信用性がないとして大部分が証拠採用されず、9月10日、村木元局長に無罪判決が出た。(救援新聞2010年11月25日号より)

大阪地検によるデータ改ざん問題....浮かび上がる問題点

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 大阪地検によるデータ改ざん問題で、最高検は、改ざんと隠蔽に関わったとして検事ら3人を起訴。この問題に幕引きをする構えです。最高検が事件の検証に乗り出していますが、組織的な隠蔽体質を持つ検察自身に、適正な検証と問題解決は期待できません。警察・検察の違法捜査に社会が注目しているいま、郵便不正事件の捜査にはじまる一連の不祥事から浮かび上がる問題点を徹底追及して検察の不正義をただし、えん罪を防ぐ制度を確立することが必要です。

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「基本をおろそかにした検察の捜査のため、長期間にわたり多大な負担、労苦をおかけし申し訳なく思う」
 検察庁トップの大林宏検事総長が10月21日、会見を開き、郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省の村木厚子元局長に向けて謝罪しました。

ウソと脅しで「自白」を強要

 おろそかにされた「捜査の基本」とは何だったのか__この事件で検察は、客観的な証拠に目を向けず、自ら想定した筋書きに合わせて関係者に自供を迫り、事件を作りあげました。実在しない証拠を「ある」とウソをつき、それを前提に供述させる偽計や、被疑者の家族や友人を取り調べるなどと脅し、供述調書を作りあげました。逮捕された元局長も、取調室で自白を強要されました。
 村木元局長は、10月19日におこなわれた取調べの可視化を求める日弁連の集会にあてたメッセージで自らの取調べを振り返りました。

「いくら訂正を申入れても聞き入れられず、しかたなく署名したこともありました。私が全くやっていないことを書かれた調書に署名を迫られることも何度もありました。今回のような間違った逮捕・起訴が再び起こらないようにするためには、密室でのやり取りを事後的に検証する仕組み__取調べの全過程を録音するなどの可視化の実現が不可欠です」

 同じ集会で、パネリストとして参加したジャーナリストの江川詔子さんは、今回の事件について次のような見方を示しました。「(捜査で)事件を組み立てるということは、色々な証拠を組み合わせてストーリーを作ることですが、特捜部の場合は、一定のストーリーに合わせて証拠を探し、なければ供述調書を作ってしまう。データ改ざん問題も、それが一歩進んで物に手が出たということで、“証拠を作る”という流れの一環に変わりありません。取調べが可視化されていれば、こんな事件は起きなかった。可視化は第一ステップだと思います」

被告の検事が可視化を要求

参院法務委員会で調査のようす.gif

 最高検は、大阪地検特捜部の幹部だった元検事2人を、改ざん行為の隠蔽を図ったとして、犯人隠匿の罪で起訴しました。元検事2人は全面的に否認。
 一人は「最高検のストーリーには乗らない」と、自身の取調べの前面可視化を求めています。これに対し最高検の伊藤次長検事は、10月5日の会見で、「自分が取調べを受ける側になると、そのようなことを言うのは不自然。被疑者の権利を守る方法は一番よく知っているはずで、録音・録画の必要性はない」と発言しました。

 この発言を、日本共産党の井上哲士議員が10月21日参院法務委員会で取り上げ、法務省担当者を追及しました。
「被疑者の権利を守る方法を知らない一般の人びとにとっては、真相解明のためには、可視化が必要だということを逆に(次長検事は)認めたことになるのではないか」

大阪地検によるデータ改ざん問題....真実よりも保身を重視する検察

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 証拠のデータ改ざんが明らかになった郵政不正事件。「公益の代表者」であることを忘れ、自分たちに都合の悪いことはすべて隠そうとする検察の隠ぺい体質の実態が浮かび上がってきました。

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 「取調べをメモしたノートは、すべて廃棄しました」
 偽の障害者団体証明書の発行を指示したとして、厚生労働省の村木厚子元局長が起訴された郵便不正事件の裁判で、関係者の取調べをした際のメモをすべて廃棄したと6人の検事が法廷で揃って証言しました。「供述の信用性が争われたとき、メモの廃棄が不利と考えなかったのか」 裁判官の苦言に、検察らは身を縮めました。

メモ廃棄促す最高検の通知

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 密室での取調べの様子が記録されたメモは、取調べの全過程が可視化されていない現状では、供述の信用性を示す客観的な証拠になります。最高裁もこのメモの価値を認め、「個人的メモの域を超え、捜査関係の公文書で、証拠開示の対象」とする決定を07年に出しています。最高検もこれを受け、メモを適正に保存するよう求める通知を、08年に2度にわたって全国の地検・高検に出しています。
 こうした判例や通知があるなかでのメモの廃棄。実は、最高検は通知を出した際に、「補足説明」と題した内部文書を添付し、自分たちが不利になるメモは速やかに廃棄するよう指示していたことが10月24日の報道で明らかになりました。
「補足説明」には、必要性の乏しいメモを安易に保管しておくと、メモを開示するかどうかで無用な問題が生じかねない、必要なメモは保管し、それ以外のメモは、プライバシー保護などの観点から速やかに廃棄すべき、などとあります
 広島の少年院での暴行事件や、要介護者を放置死させたとする事件の裁判などでも、検事が被疑者などを取り調べた際に書いたメモを廃棄していたことが報道されています。最高検の「補足説明」に従って、プライバシー保護を建前に、各地の検察庁で組織的にメモの廃棄がおこなわれた疑いがあります。

筋書きと違う最高検も認識

 証拠改ざんと隠ぺいに関わった3人の検事を起訴し、不正を正す構えを見せている最高検ですが、実は早い段階から、特捜部の捜査に疑問を持ちつつ放置していたことが10月15日の参院予算委員会(社民党・福島みずほ参院議員の質疑)で明らかになりました。
 法務省側の回答によれば、無罪判決が出る半年前の今年5月、最高検は供述調書と改ざんされた証拠に食い違いがあることを認識。この点について大阪地検に対して質問状を送っていました。
 また、5月の公判で、村木元局長を有罪とする関係者の供述調書の大半が「信用できない」として証拠採用されませんでした。村木元局長の逮捕・起訴は、最高検が承認したもとでおこなわれていたので、この時点で当初想定した有罪の筋書きは崩れていたのです。それにもかかわらず、最高検は裁判を取りやめる指示はおろか、検討さえしませんでした。

検事の人間性担保にならぬ

 データ改ざん問題は、事実を知った公判担当検事らの内部告発で発覚したとされています。このことを「美談」として報じるメディアや、「信用が地に落ちた検察に一縷の望みがあった」とコメントする元検事の弁護士などがいますが、被告人が無実であることを確信しながら有罪判決を求めて論告求刑までした事実はどう説明するのでしょうか。

 結局、検事の正義感や人間性では公正さを保つことは無理で、捜査の全過程可視化と証拠の全面開示をするしかないことが浮き彫りになりました。
 最高検は、データ改ざん問題について、「徹底検証し思い切った改革策を講じる」と原因探しを続けています。しかし、被告の無実を示す証拠は隠し、無実とわかっても裁判を続ける自身の「隠ぺい体質」こそが根本の原因であることに、まだ気づかないのでしょうか。
         

郵政不正事件.....ウソの供述生む長期拘留

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 郵政不正事件で、村木厚子局長の無罪判決と、検事によるデータ改ざんの発覚によって、検察の一連の捜査のあり方が大きく問題視されています。そのなかのひとつが、検察の見立てた筋書き通りの供述をするまで被疑者の勾留を続ける「人質司法」です。

「容疑を認めれば在宅(起訴)だ。あなたは否認するんですね」

 逮捕直前、厚生労働省の村木厚子元局長は、検事にそう告げられました。検察官の言葉を逆に取れば、容疑を認めれば身体拘束をしないということ。村木元局長は否認したため、09年6月に逮捕。保釈されるまでの約150日間、大阪拘置所で過ごしました。

「否認は不利」利益誘導はかる

 検察の取調べは、真実を探ることではありませんでした。あらかじめ検事が作ったストーリーに沿った供述を被疑者にさせ、調書にサインをさせることが狙いでした。

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「あなたは起訴されます。私の仕事は、あなたの供述を変えることだ」
 検事はそう言い放ち、執拗に供述を迫りました。
「否認を続けると裁判で厳しいことになるよ」
 「執行猶予がつけばたいした罪ではない」
 「自白」させようと躍起になる検事。あるときは、村木元局長が何も話していないうちから供述調書を持ってきてサインを求めることもありました。
 村木元局長は、「検事さんの物差しは、私たち一般市民のものと違う。私にとっては公務員として30年やってきたことの信頼を失う問題だ」と、検事に泣いて訴えました。

真実暴いた被疑者ノート

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 検察が村肝と局長を訴追する根拠としたのは、部下である元係長や実態のない障害者団体の役員などからとった供述調書でした。検察は元係長を始め、村木元局長の犯行を示唆する供述をした11人を証人として出廷させましたが、大半の証人が供述はすべて検事の作り話だと証言。元係長も裁判でこう証言しました。
「自分が独断でやっているというのに、いくら言っても聞いてもらえない。村木さんと私のやりとりが書かれているところは、全部でっち上げです」
 元係長が自分の意に反して、供述著書にサインしたのはなぜか__その理由が、元係長が取り調べの様子を克明に記録した「被疑者ノート」から明らかになりました。
「私の記憶がないのをいいように作文されている」「検事に抵抗する気力がなくなった」「もう無駄な抵抗はしないでおこうと思う。早くここから出たい。まともにものを考えられる状況ではない。また逮捕されて20日間拘置されたら困る」
 ノートには、元係長が身体を拘束され、言い分を聞いてもらえなかったことで、ウソの供述をせざるを得なかったことがはっきり書かれていました。元係長の証言によれば、検事は取り調べの際、保釈の話をしたあとに調書へのサインを求めたといいます。保釈を餌にした利益誘導でした。元係長は、検察の調書作りに「協力」したため、逮捕から約40日で保釈されました。

自白への傾倒裁判所に責任

 長期の勾留によって被疑者の自由を奪い、捜査機関の思うままに供述を誘導する取り調べは、「人質司法」と呼ばれ批判されています。さらにそれに輪をかけているのが、弁護士以外との面会を禁ずる接見禁止処分です。被疑者を孤立させることで、捜査機関によってコントロールされやすい環境が作られているのです。
 こうした人質司法がまかりとおっていることは、裁判所にも責任があります。最高裁によると、09年度の地裁段階での逮捕状認容率は99.2%、勾留認容率は97.7%、接見禁止認容率は91.1%です。
 裁判所が容易に被疑者の勾留を許可することで、捜査機関によって虚偽の自白が生み出されます。さらに裁判所が虚偽の自白に依拠して判決を書くので、捜査機関はさらに自白偏重に傾倒していく__こうした悪循環を断つためには、取り調べの全過程を可視化するしかありません。
 元係長のノートには「トランプ遊び2時間」と書かれています。あるとき検事は取調べをせずに、事務官を交えて元係長とともにトランプゲームで「遊び」、貴重な人生の一部を奪われている被疑者の時間を弄(もてあそ)んでいました。(つづく)

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