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布川事件再審確定の意義と現状

 布川事件は、昨年再審開始が確定し、いよいよ再審公判へ向けて動き出しています。布川事件の再審確定の意義をつかみ、支援運動を強め、一日でも早く桜井さんと杉山さんの2人が無罪判決を勝ち取るため、布川事件弁護団長の柴田五郎弁護士に「布川事件再審確定の意義と現状」と題する文章を書いていただきました。

布川事件再審確定の意義と現状

弁護団 柴 田 五 郎
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 最高裁第2小法廷は、2009年12月14日付けで、布川再審開始決定に対する検察官の特別抗告を棄却し、08年の東京高裁の再審開始決定、05年の水戸地裁土浦支部の再審開始決定が確定した。
 この再審開始をもぎ取った力の第1は、櫻井昌司・杉山卓男両君の不屈の闘志である。真実を明らかにすべく、負けても負けても戦い続けた両君に最大の敬意を払おう。
 第2は、日本国民救援会や布川守る会を中心とした、内外の多く人々の支援である。この支援無しでは、この成果は難しかったかもしれない。
 第3は、日弁連の物心両面からの支援である。実際、確定3審で負けて無期懲役が確定したときには、両君も弁護団も言葉通り矢玉尽き果て途方に暮れて、日弁連に泣きついたことであった。日弁連の支援があったからこそ、再び立ち上がれたのである。
 そして第4が、老若男女を集めた弁護団、特に中堅・若手弁護団の奮闘である。
 これら4つの力が相まって、今度の成果を勝ち取ったと言えるだろう。ただ、再審事件の弁護に当たる弁護人の「替え」はいくらでもいるが、請求人本人の「替え」はない。この意味で第1の力はやはり両君である。

 再審請求審(土浦決定、東京高裁決定)で明らかになったこと

(1)捜査の違法・不正

 1967年8月30日から12月28日までの本件捜査段階において、警察・検察には、両君の無罪を証明する多くの証拠が収集された。両君の現場不在を物語る指紋対照依頼に対する回答書(両君と一致する指紋は一つもない)、毛髪鑑定書(現場からの採取毛髪の中に、両君の毛髪は1本もない。誰のか分からない毛髪が数本ある)、殺害方法に関する死体検案書(両君の自白では「扼頸」とされているのに、この死体検案書には「(絞頸の疑い」と書いてある)などな
どである。更には被害者宅前にいた男2人は、両君らと別の人物であるとするO母の供述調書などもあった。

(2)誘導などを使って両君を自白させたこと(以下、土浦決定、東京高裁決定の引用)

「櫻井に対する偽計及び誘導などに係る事情を一切否定する早瀬(櫻井を取り調べた警察官)の供述全体の信用性に疑問が生じる」「櫻井に対する自白の誘導を一切否定する吉田検事の供述部分も、櫻井に対する供述の誘導があった可能性を否定することはできず、その信用性に疑問を入れる余地がある」
「請求人らに対して強盗殺人の自白を迫ったり供述を誘導したりすることは一切しなかったとの取り調べ捜査官らの各供述は、いずれもその信用性に疑問があり、取り調べ捜査官らに自白を強制・誘導された旨の請求人らの各供述の信用性を排斥することが出来ない」
「虚偽の自白を誘発しやすい状況に請求人らを置いたという意味で、請求人らの警察への再移監には大きな問題があったというべき」

(3)誘導などで目撃証言を変更させたこと

「Iについて、供述調書中の日付に関する記載部分は、取り調べ検察官の暗示・誘導によるものと言わざるを得ない」

(4)録音テープを編集したこと

「櫻井の10月17日に採られたテープを分析した中田鑑定は十分に信用できる」
「このテープにはオーバーライトを伴う録音停止・再開の編集作業があったと断定で来る部分が2カ所、録音停止・再開の編集作業があったと断定できる部分が9カ所ある」

(5)確定審で重要な証拠を隠した。

 検察は、当初作成された供述調書類(目撃日付の曖昧なものなど)を、提出しなかった。また、O母の初期捜査メモ(事件当夜被害者宅前にいた男は、杉山ではないとする)については、今頃(2010年3月19日、3者協議が終わった直後)になって、渋々開示してきた

(6)確定1審で捜査官らは、10月17日付けの録音テープに関し、口を揃えて「無い」旨の偽証をした。

 再審開始を命じた地裁・高裁の決定で、このように警察・検察があからさまに批判されることは、珍しいことである。起訴が強引で、誤りであったことは、今や明らかである。

さて、足利事件は、DNA鑑定という有罪の物証が無罪の物証に転化したことや、ひいては法廷での自白も含めて自白が虚偽の疑い有りとされたことによって再審が開始され、無罪になった。
 これに比して布川事件は 、有罪の物証は全くなく(従って無罪の物証に転化しうるものも全くない)、自白調書とあやふやな目撃証言だけで有罪とされたものであった。このいわば「柔」構造とでも言うべき事件について、最高裁までもが再審開始を認めたことは、他の再審事件や冤罪事件を大いに励ますものであろう。

足利事件では、弁護側は虚偽自白作成経過を明らかにすべく充分な証拠調べを求め、検察側は謝罪をした上で早期の幕引き・早期無罪判決を求めるという、異例の展開になった。裁判所はこの二つの立場の中間をとったように見える。
 これに比し布川事件では、虚偽自白作成経過とその原因は、上記のように再審請求審で既に明らかになっており、あらたな証拠調べの必要はない。また検察の新たな有罪立証も許さるべきではない。何よりも不当逮捕以来43年になろうとしていることに照らすなら、再審裁判の早期進行、早期の無罪判決こそが、司法の役割であろう。

こうした基本方針のもとに弁護団は、裁判所・検察・弁護の3者協議、或いは検察との事前打ち合わせの場において、請求審に提出された全証拠につき再審裁判においても証拠とすべく(検察・弁護両方が相手方申請の証拠について、証拠とする事に同意すればそれは可能となる)折衝中である。検察は今頃になって「43年前に押収・領置したタオルやYシャツについてDNA鑑定を申請したい」などと言っているが、弁護団は断固反対する方針である。一方で検察は「無用な争いはしない」とも明言しており、次回6月11日に行われる第2回の3者協議が注目される。

 次々回(7月9日)は、再審公判第1回にしたいものと考えている。

以上

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