えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

救援新聞2011年 3月15日号より

■救援新聞2011年3月15日号に掲載された主な記事


可視化実現の好機

世論を力に冤罪のない社会に

 多くの冤罪事件で誤った判決の原因となっているのが、警察や検事の取調べで作られるウソの「自白」です。捜査機関は被疑者を「落とす」ために、暴力や脅迫、利益誘導など様々な手で「自白」を強要します。
 最高検察庁は、2月24日、特捜部が扱う事件の取調べで、一部分の録音・録画を試行する指針を発表しました。昨年、厚生労働省の元局長に無罪判決が出た郵便不正事件と、大阪地検の証拠改ざん問題を受けた再発防止策の一環です。

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 「警察がウソをつくはずがないと思っていたので、自白してしまった」
 やっていない犯行を「自白」してしまった布川事件の桜井さん。かけられた疑いを晴らせると思って臨んだウソ発見器でしたが、警察官の言葉に心が折れます。
 「お前の言うことはすべてウソと出た。もう逃れなれない」
 こうした違法な取調べを防ぐには、被疑者がどのような取調べで自白したのか、すべてを後から検証できるよう、取調べの全過程を可視化することが必要です。
 指針によると、可視化する範囲は検事が判断することになっています。つまり、脅迫などで被疑者をコントロール化においた状態での録音・録画です。指針は、適正な取調べで自白の任意性・信用性に疑念がないことを明らかにすると語っています。そうであれば、なぜ全過程の可視化ができないのでしょうか。
 「何度もリハーサルをして、一問一答形式で録音した」
 布川事件の杉山さんは、ウソの「自白」をテープに録音された時の様子をそう証言しています。一部分の可視化は、ウソの「自白」が裁判で真実として認定されてしまう危険性があります。
 また、指針によれば、録音・録画の対象となるのは、被疑者のみで、参考人は含まれません。郵便不正事件では、強引な取調べで参考人の厚労省職員からも、元局長の関与を認める多数の供述書が作られていました。
 検察は、事件の教訓を学ぼうとしないばかりか、冤罪に苦しむ人を生まないという視点に立とうとしていません。

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 取調べが冤罪を生む実態は、市民に広く理解されています。昨年10月の毎日新聞の調査では、81%が取調べの全面可視化に賛成です。さらに、京都府議会をはじめ、117の自治体で取調べの可視化を求める意見書が採択され、衆議院に送られています。(08年から10年)。
 国民救援会は、全労連、自由法曹団とともに全面可視化を求める署名のとりくみをすすめています。世論の後押しを力に、いま、取調べ全面可視化を実現する好機です。


三重・名張毒ぶどう酒事件

再審・釈放を急げ          高裁・高検に要請

 名古屋高裁で再審開始を求めている三重・名張毒ぶどう酒事件の要請行動が、2月24日におこなわれ、4と府県9人が参加しました。
 名古屋高裁への要請では、「審理が暗礁に乗り上げているのは裁判長の責任。そんな状態をいつまで続けるのか」、「奥西さんは85歳。一刻も早く再審開始決定を出せ」などと、参加者が口々に訴えました。
 名古屋高検への要請行動では、「証拠の捏造問題をきちんと解決しない検察に異議申し立ての資格はない」、「隠されている証拠をただちに開示せよ」などと申し入れました。
 再審と釈放を求める署名1608人分を新たに提出。累計4万8821人分となり、要請ハガキは2306通が届けられました。


3月16日の判決控え 弁護団に聞く(下)

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 布川事件で再審開始につながる証拠開示を以下に勝ちとったのか__前号に続き、弁護士の山本裕夫弁護士に伺います。

 検察・警察が隠していた証拠を開示させたことは、布川事件の再審を実現する上で大きな力となりました。編集された桜井さんの取調べ録音テープ、被害者宅前にいたのは杉山さんとは異なった特徴の人だとする目撃者の供述書など、いくつもの無実の証拠が隠されていました。

再審開始決定.gif

 再審であっても検察官はなかなか証拠を開示しようとしません。それを突破するには、裁判所が事件の問題点を理解し、提出されない証拠の重要性を認識し、検察官に強く働きかける状況を作る必要があります。弁護団は、まず主要な論点のすべてについて科学的な新証拠を提出して、争点を明らかにするよう努めました。さらに証人尋問により、「自白」が現場の客観的状況と矛盾することを明らかにしていきました。それまでに開示された死体検案書や毛髪鑑定書はこの点をいっそう明らかにするものでした。また、「自白」の録音テープの開示は取調官の偽証を明らかにし、「自白」の任意性を根本から動揺させることになりました。 
 こうして裁判所の問題意識が深まる中、「自白」と並ぶ有罪判決のもう一つの柱、目撃証言の開示が進みました。現場近くの駅や橋で2人を見たとする目撃証言については、裁判所の依頼により初期の供述調書の開示が実現し、その結果、別の日の出来事が8月28日(犯行日)のことであるかのように歪められていったプロセスが明らかになりました。そして、被害者宅前にいたのは杉山さんではないとする近所の女性の調書が開示された結果、同じ頃に被害者宅前で杉山さん、桜井さんを見たとしていた最重要証人の証言が崩れてしまいました。こうした証拠開示を進展させる上で、担当の弁護人の活躍は目を見張るものがありました。
 結局、開示の結果出てきた証拠に、桜井さんと杉山さんに有利なものはあっても、不利の証拠は何もないという状況は裁判所の心証に大きな影響を与えたと思います。
 ところが検察は、再審開始決定の重要な根拠とされたこの女性の供述調書を、再審公判では不同意とし、証拠とすることを妨害しようとしたのです。これなどは、再審公判におけるあらたな「証拠隠し」であり、いまだに反省していません。

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 再審裁判の判決は3月16日に出されます。この事件は、刑事事件全体に警鐘を鳴らすもので、再審請求審の裁判所の決定からも多くの教訓を得ることができます。供述依存の裁判の危険性、代用監獄の危険性、一部可視化の危険性(全面可視化の必要性)、そして証拠開示の重要性などです。今回の判決では、冤罪を生んだ原因をさらに厳しくしてくれることを期待しています。そして、冤罪をなくすことを願う多くの人の声を集めて無罪判決を確定させ、冤罪・布川事件の教訓を広く伝えて行きたいと思います。

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