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福井女子中学生殺人事件 再審の扉、世論の力で!

福井女子中学生殺人事件 たたかいは最高裁へ

「勝つまで闘う」  前川さん        

再審の扉、世論の力で    

禮三さんの手を握り裁判所を後にする前川さん

 やってもいない殺人事件の犯人として獄中で7年を過ごし,人生を大きく狂わされた前川彰司さんが、ようやく手にした希望の光・再審開始決定(11年11月)。しかし裁判所は、前川さんの声に耳をふさぎ、頑なに再審の扉を閉ざしました。福井女子中学生殺人事件で、3月6日、名古屋高裁(志田洋裁判長)は異議申立をした検察側の主張を鵜呑みにし、前川さんの再審開始決定を取り消す決定を出しました。前川さんと弁護団は3月11日に特別抗告をおこない、たたかいの舞台は最高裁に移ります。支援を広げて世論に訴え、立ち上がろうとする前川さんを支えましょう!(救援新聞4/5号より)

 午前11時、裁判所の決定に目を通した弁護団から「負けた」と告げられた前川さん。待機していた裁判所の廊下で、呆然と立ちすくみました。再審が取り消されることなど考えていませんでした。
 大勢の支援者やマスコミが第一報を待ち構える裁判所前。11時過ぎ、小走りで裁判所を出てきた弁護士が「不当決定」の垂れ幕を掲げると「あっ!」「なんで?」とどよめきが広がり、「不当決定を撤回しろ!」と支援者からのシュプレヒコールが繰り返されました。
 数分後、父の禮三さんの手を握る前川さんが姿を見せると,支援者から「不当決定に負けるな」と声がかかりました。前川さんは身を乗り出し、「やっていないことは自分が一番知っているんだ。だから大丈夫」と応えました。
 事件の地元福井県をはじめ北陸3県から訪れた支援者からは、「裁判官は何を見てるんだ」「正義はないのか」と怒りの声が。国民救援会富山県本部の藤田政治さんは、「裁判所がこんな状態だからこそ、俺たち(国民救援会)の役割があるんじゃないか」と、声をかけていました。

抗議の声次々

 その後、集まった支援者全員で名古屋高裁に対し抗議の申し入れをおこないました。
 福井県本部の岩尾勉会長は、「裁判所は,国民の正義を守る法の番人のはずだ。疑わしきは罰せずの原則はどこへ行ったのか」と問いただし、京都府本部の岸本豊子さんは、「何が真実かを明らかにすることが裁判官の職務ではないのか。今日の決定を覆すまで、前川君と私達のたたかいは続く」と力強く宣言しました。
 愛知県本部の田中哲男さんは、「名古屋高裁は、またぞろ、こんなひどい決定を書いたか」と手にした決定要旨を振り上げて訴えました。06年に名張事件の再審決定を取り消したのも名古屋高裁でした。「裁判によって人生を狂わされたが、前川さんは人生をやり直そうと懸命。何で変遷する証言が信用できるのか」と涙を浮かべて抗議しました。

覆す決意訴え

 記者会見を兼ねた報告集会には、父・禮三さんは決定直後に具合が悪くなり欠席。前川さんは、集会では伏し目がちでした。けれども支援者から最高裁でのたたかいへの決意を尋ねられると,正面を見据えて、「勝つまで、たたかいます。最後には、絶対勝ちます」と拳を掲げました。会場からは、「よし、いいぞ」「頑張れ!」と激励が飛び、拍手につつまれました。
 前川さんと弁護団は3月11日、最高裁へ特別抗告しました。

「刑事裁判の鉄則」適用の誤り  

 解説  弁護団事務局長   吉村悟弁護士


 前川さんには「自白」がなく、逮捕直後から一貫して、「A男とA男の友達が作り上げた作り話だ」と訴えてきました。これがまさにこの裁判の争点です。それを裏付けるのが、現場からも、前川さんの指紋、足痕など、犯行を裏付ける痕跡が一切なく、血だらけの前川さんが頻繁に乗り降りしたしたとされる車からも、被害者の血痕が出ていないという事実です。そのことを踏まえて関係者供述の信用性を考えなくてはいけません。
供述変遷を「合理的」
 再審請求審で開示された29通の供述調書で明らかになったのは、A男の供述を支える他の関係者の供述が、二転三転するごとに、全く同じ変遷をたどっていたことです。「X」という供述をして、それがウソとわかると「Y」と供述し、それがダメなら「Z」という供述をする、このようなA男の供述の変遷に連鎖して、他の関係者の供述も変遷しています。
 今回の決定は、関係者たちの供述が著しく変遷している事実自体は認めているにもかかわらず、そこで挙げられた変遷の理由は、ことごとく「合理的である」として、供述調書を鵜呑みにしたものです。そこには、本件の取調べが、当時の捜査の筋立てによって警察官が取調べ、それが間違っていたら筋立てを変えて取り調べるという実態を直視する姿勢がありません。
 本件では、取調べ過程で数々の違法が犯され、関係者の誤認逮捕や血痕の誤認といった重大事件が起きており、本件起訴も、個人識別のできない毛髪鑑定で個人識別ができると誤解して起訴をした経過がありました。また、公判段階では、何人もの証人が、取調べにあたった警察官から、「A男がそう言っているから間違いない」という強引な誘導を受けて、記憶とは異なる供述調書の作成に応じさせられたと訴えています。そのことを考えれば、今回のような証拠の評価方法はありえないはずです。この決定は、公判証言や、取調べの実態を無視し、供述調書の辻褄合わせをしているに過ぎません。
判例違反の事実認定
 事実認定のやり方について75年の最高裁白鳥決定は、再審事由は、確定判決における事実認定に合理的な疑いを明確に生じさせればよく、立証責任は検察官にあると明確に述べています。確定有罪判決に「疑い」が生じれば、再審開始をすべきだと述べているわけです。09年9月25日の最高裁判例(ゴルフ場支配人殺人未遂等事件)は、控訴審が供述だけで有罪を認定した事件について、供述の信用性がよほど高いか、被告人が犯人でなければ説明できない事由がなければ、有罪の説明が可能という程度の証拠で有罪認定をしてはいけないと述べています。決定は、この判例の原則にも違反しています。
 犯行態様について見ると、被害者の顔にビニールをかけて、何種類もの刃物で顔ばかりを刺して浅い傷をつけるというものです。証言した法医学者にも、激昂からくる突発的犯行だと言う人はいません。それにもかかわらず決定は、「犯人が激情に駆られて場当たり的におこなったものと考えて矛盾はない」と認定しています。それから、被害者の傷に、現場に残された包丁ではつけられない傷があることから、計画的に持ち込まれた「第3の刃物」が存在することが明らかになっています。これについても、原審で「文化包丁であっても矛盾はない」と証言した検察側証人の根拠が、弁護側証人によって崩されていますが、決定はその事実を置いて、第3の刃物がなくても説明は可能と認定しました。
 決定は、「そういう説明も可能」とか、「そういうことも考えうる」という程度の根拠で事実認定しています。しかし、状況証拠によって有罪を認定しようとするならば、前川さんが犯人でなかったら、成り立たない状況証拠がなくてはいけない、その立証は検察がなすべきであるというのが最高裁判例の考え方であり、それが、「合理的な疑いがあるときは被告人の利益に」という「刑事裁判の鉄則」の具体的な適用方法です。
 このような判例違反や重大な事実認定の誤りを是正することが、最高裁での私達の課題だと思っています。

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