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鹿児島地裁不当決定を森雅美弁護団長に聞く(第2回)

鹿児島・大崎事件

証拠開示、事実調べせず

 3月6日の鹿児島地裁・再審請求棄却不当決定について、その問題点を大崎事件再審弁護団・森雅美弁護団長に聞きました。(第2回)

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_新証拠について鹿児島地裁が鑑定の前提事実や鑑定の手法について誤認しているということを伺いましたが、なぜこんなことになってしまったのでしょうか

 鹿児島地裁が、弁護団の提出した新証拠について事実誤認に陥ってしまったのは、弁護団の再三にわたる要請にもかかわらず、鑑定人に対する証人尋問等の審理を充分しなかったことに原因があります。裁判官は法の専門家ではあっても、科学的知見に対しては素人です。ですから、証拠の判断は法的見地からなされるにせよ、それに至る過程においては、もっと謙虚に専門家の意見の理解に努めるべきであり、それが無辜の救済の最後の砦たる再審に求められるものです。そういう努力をしないで結論を出してしまったところに原因があります。

_専門家の話も聞かないで判断したということですね。原口さんが犯人だとする客観的証拠がないわけですし、そういうなかで弁護団が提出した新証拠を見れば、再審開始を決定すべきと思いますが。

 まず、原口さんを有罪とした判決を支える証拠は何かということについて、今回の決定では、原口さんの元夫など「共犯者」とされた3人の「自白」が唯一の証拠であると明確に述べています。 
 私たち弁護団は、当初から「共犯者」3人の「自白」は、警察に強要された疑いがあり、有罪を認定するためには極めて危ういものであることを指摘してきました。そして「共犯者」とされる3人は知的障がいを持っており、とても警察の過酷な取調べにたえられないことも考え合わせれば、その人たちの「自白」の信用性を判断する際は、極めて慎重でなければならないことを指摘してきました。にもかかわらず、今回の決定ではその点に関する配慮はほとんどなされていません。
 それから、鹿児島地裁は、弁護団が提出した新証拠一つひとつについて事実誤認をしたわけですが、そもそも新証拠に必要とされる「明白性」があるのかないのかについての判断の方法を誤っているのです。
 少しややこしい話ですが、再審を開始するための新証拠に必要とされる「明白性」というのは、最高裁が白鳥決定や財田川決定(別掲)で示した考えに従えば、個々の新証拠については関連する旧証拠の証明力に疑問が生じれば足りるのです。新証拠がそれ自体で確定判決(原口アヤ子さんを有罪とした判決)の事実認定に合理的疑いを生じさせる必要はありません。
 要するに、新証拠の一つが旧証拠の証明力を低下させれば、旧証拠と新証拠を総合評価して、確定判決の事実認定に合理的疑いが生じればよく、それで新証拠の明白性を肯定すべきなのです。
 にもかかわらず、今回の決定は、一つひとつの新証拠が、それだけで確定判決に合理的疑いを生じさせる必要があるという理解に立っています。つまり、今回の決定はそれぞれの証拠が個別に確定判決の事実認定に合理的疑いを生じさせなければならないかのように論じています。それは、誤りというしかありません。

_白鳥・財田川決定の内容を検察に有利に変容させているわけですね。そのほかに、今回の決定の特徴は何かありますか。

 今回の決定で異例なのは、「再審開始請求手続の進行に関する弁護人の意見について」という項目をわざわざ設けているということです。決定は、そこで、弁護団が求めた証拠の標目の開示を検察に求めなかったこと、鑑定人らの証人調べをしなかったことに対する理由を述べています。
 しかし、他の多くの再審事件において、裁判所の勧告等により新証拠が提示され、それによって再審無罪が導かれた事実を無視したもので、結果的に本件の再審手続きが不十分であったことを自認するようなものとなっています。
 これまで述べてきたことから明らかなように、今回の棄却決定は承服できるものではありません。弁護団は3月11日に107頁に及ぶ即時抗告申立書を提出しました。舞台は福岡高裁宮崎支部に移りましたが、弁護団は引き続き原口アヤ子さんらの再審開始を勝ちとるために頑張ります。

_私たち支援者も頑張ります。ありがとうございました。

白鳥・財田川決定とは...

 白鳥事件と財田川事件について出された1950年・51年の最高裁の決定で、後の再審事件の裁判に大きな影響を与えた決定。再審開始のためには、「明らかな証拠を新たに発見した」ことが必要とされ、「証拠の新規性」、「証拠の明白性」とよばれますが、この2つの決定では、明白性の判断について、次のように言いました。
 もし新証拠が確定判決手続中に出されていれば、有罪認定に到達していたか否かという観点から、新証拠と他の全証拠とを総合的に評価して判断すべきである。そして、確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせれば良いのであり、その意味で、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則が再審にも適用される。
 さらに、「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則の適用にあたっては、確定判決の事実認定の正当性についての疑いが合理的理由に基づくことで必要かつ十分である。

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