えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.63 再審えん罪事件全国連絡会ニュース

再審えん罪ニュース.png

2013年 11月15日発行 No.63

名張事件 

最高裁が不当決定

最高裁の裁判官は人の命をなんと思っているのか!

 1961年に、ぶどう酒に農薬を入れて、女性5人を殺害したとして死刑判決を受けている奥西勝さん(87)が、誤った裁判のやり直しを訴えている三重・名張毒ぶどう酒事件で、最高裁判所第1小法廷(櫻井龍子裁判長)は10月16日付けで、再審を認めない不当決定を出しました。
 「最高裁の裁判官は人の命をなんと思っているのか!」 10月17日、最高裁への特別抗告を棄却する通知が届いたのを受けて、弁護団が緊急に開いた記者会見の席上、弁護団長の鈴木泉弁護士が怒りを込めて訴えました。
05年にいったん出された再審開始決定は翌年取消されますが、犯行に使われた毒物が、「自白」とは違うとする弁護団の指摘を受け、最高裁は、使用された毒物の特定について「科学的知見に基づく検討がされていない」として差し戻し、不当決定を経て再び最高裁に係属していました。
 今回の決定で最高裁は、「差戻し後の異議審の毒物鑑定と検察の意見書は合理的で、犯行に使われた毒物は奥西さんが所有していたものと同じ。自白の信用性も揺るがない」と断じました。決定は、ニッカリンTの成分分析につき、事件当時におこなわれた方法とは条件を変えれば、特有の不純物が検出されないこともあるとする不正鑑定に依拠した検察側の主張を鵜呑みにして、形式論理で「弁護側が新証拠として提出した証拠は、毒物がニッカリンTであることと矛盾しない」「自白の信用性にも影響を及ぼさない」と決め付け、弁護団が提出した新証拠や意見書に全く答えることなく名古屋高裁決定を追認しました。 また、事件当時の飲み残しのぶどう酒中の毒物成分分析と、参考対照したニッカリンTの成分分析が同一条件で行われていることは明白であるが、分析鑑定にその方法が明記されていないところ、それは当時の行政指導文書から同一条件(「塩析」処理)であったとする弁護団の主張に対しては、「当時の…試験において塩析が行われた形跡は伺われず」として「塩析」がおこなわれたことの確実な立証を要求し、事実上、再審請求人と弁護人に無罪の立証を求めるなど挙証責任を転嫁し、「疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則は再審にも適用されるとした最高裁「白鳥・財田川決定」に反する不当極まる決定です。
 第7次再審請求審では、白鳥・財田川決定の示した「疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則にもとづき、新旧証拠を総合的に判断するかどうかで決定が大きく分かれました。再審開始決定は、5つの新証拠を総合的に判断し、逆に取消決定は新証拠を個々ばらばらに取り出して(限定的再評価)、裁判官が勝手な推論と可能性だけで再審開始決定を取り消しました。
 弁護団は声明で、「本決定において原審の推論が科学的知見に基づくものであるか否かについての検討はなんらされていない。最高裁自らが差し戻し異議審に課した『科学的知見に基づく検討』を放棄するもの」と批判しました。また、国民救援会は、「『自白』に寄りかかり、科学的根拠を示すことなく高裁決定を追認した。再審請求人と弁護人に無罪の立証を求める挙証責任の転嫁で、『無辜(むこ)の救済』という再審の理念を否定する決定だ」と抗議声明で厳しく批判しました。
 決定文は16日付けで、A4で5枚。裁判所の判断が書かれているのは1枚。裁判官4人全員一致の判断でした。(*再審・えん罪事件全国連絡会のホームページに全文掲載しています)file棄却決定
 各地で宣伝と最高裁へ抗議決定を受けて、同日、国民救援会、名張事件東京守る会と協力して都内で宣伝行動をおこないました。事件の地元・三重では22日に緊急の街頭宣伝をおこない、愛知では、18日、19日、23日と名古屋市内で決定を批判する宣伝行動をおこないました。「一度出した死刑判決を、絶対に覆さないという司法の都合を優先させた」などと訴えると、多くの人がビラを手にとりました。
 24日には、最高裁に対する抗議行動がおこなわれ、千葉、東京、神奈川、長野、愛知などから20人以上が参加し、不当決定に対する批判が集中しました。
 24日は、もともと名張事件の独自要請の予定が入っていましたが、棄却決定を理由に、最高裁が「もう終わった事件です」と要請を拒否したため、正門前で「奥西さんを返せ」「最高裁は司法の役割を果たせ」と不当決定に抗議するシュプレヒコールをおこないました。

奥西さん 一瞬、石の表情に 面会した弁護団の報告

 東京八王子医療刑務所にいる奥西さんは、2度の危篤状態を経たものの意識を取り戻し、現在は人工呼吸器をつけて命をつないでいます。
 17日、奥西さんに面会し、決定を知らせた伊藤和子弁護士と野嶋真人弁護士が会見で次のように報告しました。奥西さんはいつにも増してお元気で、顔色もよかった。入室すると喜んで手を高々と上げて私たちの手を握った。最高裁から決定書が届いたと話している途中に、奥西さんは呼吸が荒くなった。野嶋弁護士が「ごめんなさい」と伝えた瞬間、奥西さんの表情が石の様になった。上を向き無表情になった。第8次の再審請求をやると伝えたら、「うんうん」とうなずいた。奥西さんは(気管を切開し)声を出すことはできないが、声を出そうとしていた。「よろしくということでいいですか」とたずねると、うなずいていた。手と目に力が入り、再審への意志の強さを感じたと面会の状況を報告しました。
 しかし、非常にストレスの強い面会となり、看守から「そこまで」と声がかかり、決定を受けて、これからショックが大きくなるのではと心配。支援者の方々が激励の手紙で励ましてほしいとも話されました。

弁護団、第8次再審請求申立て

 最高裁が第7次再審請求を棄却したのを受け、名張事件弁護団は11月5日、第8次再審請求を名古屋高裁に申し立てました。

記者会見をおこなう弁護団

会見で鈴木泉弁護団長は「奥西さんに残された時間は少ない。何としても再審を勝ちとりたい」と、力を込めました。
 最高裁第1小法廷が10月16日付けで出した第7次再審の特別抗告棄却決定は、弁護団の主張を全く検討することなく、初めから奥西さんが有罪であるという結論ありきの不当決定でした。弁護団は、9月末に第7次再審請求審で最高裁に提出した検察側の毒物鑑定に誤りがあるとする農薬化学専門の大学教授らの意見書を含む4点を、第8次の新証拠として再び提出しました。さらに、奥西さんに対する刑の執行停止も申し立てました。
 会見で鈴木弁護団長は、「(特別抗告を棄却した)最高裁の決定は、われわれの意見書を検討した形跡がないため、証拠としての新規性は失われていない」と述べ、今後、補強する証拠を追加提出すると述べました。
 5日の午前中、鈴木弁護団長が東京・八王子医療刑務所を訪れ、奥西さんに第8次再審請求を申し立てると伝えました。奥西さんは気管切開し人工呼吸器を付けてから、声を出すことができませんが、「あ・り・が・と・う」と口を動かしたとのことです。
 特別面会人の稲生昌三さんからは、奥西さんの妹・岡美代子さんの「兄は無実です。気力で生きている兄にとって棄却は悔しかったと思う。今度こそ一日も早く、いい結果が出ますようお願いします」というコメントが伝えられました。
 奥西さんは今年になり二度の危篤状態におちいり、容態は予断を許さない状態が続いています。来年14年1月には88歳となり、雪冤のために残された時間はわずかしかありません。愛知守る会と国民救援会愛知県本部は、名古屋高裁への第1回目の要請行動(11月20日)にむけ、新しい署名にとりくみをスタートしました。
 引き続き、映画「約束」の自主上映運動を広げて、第8次の再審請求を求める署名運動に各事件からも連帯のとりくみをお願いします。来年1月14日、奥西さんの満88歳の誕生日宣伝にもご協力をお願いします。

袴田事件

12月16日に事実調べが結審に! 来春3月末まで決定が出される?

WBC世界プロボクシング協会が支援決定

静岡市青葉公園で街頭署名活動

 9月13日、静岡地裁で三者協議が開かれ、5年間にわたる第2次再審請求審の審理を踏まえて、12月2日までに検察、弁護側双方の最終意見書を裁判所に提出することが決定されました。同時に、弁護団が求めていた最終意見書にもとづく弁護団と袴田秀子さんの意見陳述が12月16日におこなわれ、これで事実調べは終了します。弁護団は、来年3月までに決定が出される可能性もあるとの見通しを示しました。
 中国ブロックをはじめ袴田秀子さんを囲む会や団体オルグなど支援活動が広がっています。署名は現在約3万7千人分で、早期に会員数を超える署名を集め、さらに支援を強めます。
再審開始をめざす一致点で、来年1月13日に、国民救援会や日本プロボクシング協会袴田支援委員会、アムネスティ日本支部など8団体で構成する実行委員会の主催で全国集会を開催します。参加目標は250人です。ぜひ各事件からも代表を派遣して全国集会を成功させましょう。また8団体で、再審を求める統一署名と裁判所、検察庁要請を共同でおこなっていきます。全国から裁判所要請、署名を集中します。署名は、アムネスティ日本支部を通じて海外にも発信され、特にオーストラリアからは2万近くのネット署名が寄せられ、海外からも「袴田さんを死刑にするな」の声が届いています。
 さらに、11月5日にはタイでWBC世界プロボクシング協会の総会が開催され、あの映画「ハリケーン」のルービン・カーター氏に次いで支援決定が決議されました。このように袴田事件の支援が世界に広がっています。国内の運動もこれに負けるわけにはいきません。下記の行動を成功させて、来春には再審開始決定を勝ち取りましょう。

 11月18日(月) 静岡地裁、静岡地検への要請
 12月16日(月) 静岡地裁、静岡地検への要請(袴田ひで子さんの意見陳述)
  1月13日(月) 袴田巌さんは無実だ!即時再審開始を求める全国集会(静岡市) 
  1月14日 (火) 静岡地裁、静岡地検への要請(全国集会を受けて要請行動)
 *集合は、いずれも静岡地裁前に10時20分集合

東住吉冤罪事件

検察「追加実験」を計画  弁護団、容認できないと審理の終結を求める!

「東住吉冤罪事件」を支援する会 尾﨑良江

 前号(第62号)で大阪高検の「燃焼実験」でも「朴自白の放火行為は不可能」と報告したとおり、大阪高検が自らの主張に都合の良い条件で実験を行ったにもかかわらず、弁護団の新再現実験と同様に「ガソリンをまき終えるまでに種火に引火」する結果となり、「ガソリン7.3リットルを床にまき、ターボライターで火を付けた」とする朴自白に信用性がないことを検察自らも明らかにしたことになります。
 私たちは「審理終結」にむけた三者協議の展開を期待しましたが、直後の三者協議では検察から実験結果の報告も無く、裁判所からは質問どころか、追加の主張・立証計画について次回の提出を促しました。

9.21東三河支部を迎えての現地調査であいさつする小林修支部長

 次の三者協議で検察実験のDVDが上映されたものの、検察は考察のない報告書を提出。さらに、「車のフィード配管系チューブから少量(15ミリリットル)のガソリンが漏れ、引火したとしても大規模火災に発展しないこと」を立証するため、追加実験の実施を言い出しました。
 弁護団は「本裁判では『放火があったか否か』を争っているのであって、『朴自白の放火行為は不可能』との実験結果から『朴自白の信用性』が崩れている。追加実験を行う必要は全くない」と主張し、検察に実験報告書の考察及び新実験に係る詳細な計画書の提出を求めました。

 以下は検察実験報告書の考察の一部分ですが、「苦境に立たされた検察」(MBSテレビ「VOICE」より)を垣間見ることができるのではないでしょうか。
「もっとも、検察官としても、実験の結果が朴龍晧の自白の信用性を判断するに当たって全く影響を及ぼさないとまでは考えていないので、この点を補う観点から、自白の裏付けとなるべき状況証拠である『自然発火の可能性がないこと』について、補充して立証する必要があるものと考えている」
 このような状況を受け、支援する会では「検察の実験結果により、朴自白は実行不可能であることが改めて明白に。検察の有罪立証は再び崩れた」として、「速やかに 朴龍晧さん、青木惠子さんの即時抗告棄却、再審開始を求める要請」はがき運動を展開。約5,000枚普及し、各地から大阪高裁・米山正明裁判長のもとに集中していただきました。
 9月、10月と2回の三者協議での争点は裁判所が検察の追加立証を認めるか否かでした。
弁護団は、「確定審から一貫して述べる『自然発火説』では少量のガソリンが、車両の「どこから」「どれだけの量」が最初に漏れたとの断定はしていないし、実際に確定することも不可能」等の点からも、検察追加実験は無意味・不必要であり、抗告審の審理がこれ以上、引き延ばされることは到底容認できないと、審理の終結を求めました。 また、事故車「ホンダアクティ」と同車種の車の給油口からガソリンが漏れた事例を証拠として提出することで、検察の追加立証に対して具体的に反論しました。
 しかし、裁判所は追加実験を進めようとし、弁護団は「追加実験について抗告審で問題になっていない(検察は潜在的に関連すると言い逃れ)、燃焼実験で朴自白の信用性が立証できなかったため、即時抗告申立書・即時抗告補充書に記載のない立証を次から次へとおこなうのは問題。当初からの立証計画もなく、後出しじゃんけんは許されない」と強く反論。「追加実験での立証が即時抗告申立書・即時抗告補充書の何ページのどの箇所に該当するのか、書面で提出する」ように求めました。
 しかし、裁判所は追加立証について不適法・無意味とまでは言えないとして、検察へ準備は進めるよう訴訟指揮を取りつつ、まくガソリン量を15ミリリットルとする根拠など、実施する条件の説明を求めました。
 また、検察は弁護団のガソリン漏れ情報に対して、「給油口からは設計のシステム上では漏れないことになっている」としましたが、裁判所は「システム上漏れないこと」と「実際に漏れたこと」についてはかみ合わないので、検察に検討するように求めました。
次回、11月11日の三者協議では今後の審理内容が具体化されるものと思われますが、支援する会としては朴自白の放火行為が不可能と科学的に明らかになった今、「即時抗告を棄却し、一日も早く再審裁判の開始を!」との署名運動をさらに大きくして、その圧倒的な数で「再審開始決定」へと裁判所を動かしたいと考えています。
 また、国民救援会の皆様には9月にお願いしておりますが、各県本部・支部大会で決議を上げていただきますように重ねてお願いいたします。
 名張毒ぶどう酒事件での最高裁決定に見られるとおり、再審開始への道は非常に厳しいとの感があります。「東住吉冤罪事件の再審確定が他事件の勝利へ道開く」として、救援新聞9月25日号で大きくとりあげられました。個別事件でたたかいつつ、本全国連絡会が一つになって打ち破らねばと思っています。ともに頑張りましょう。

日野町事件

被害者宅が取り壊しになる  弁護団が証拠保全の検証をおこなう

日本国民救援会顧問 佐藤佳久

 28年間も人が住んでいなかった日野町事件の廃屋に、弁護士ら20数人が足を踏み入れた。その9月15日は、近畿地方に台風18号が接近し、朝から雨が降ったり止んだりの不安定な天候だった。
私も弁護士とともに屋内に入った。「ボソッ」という鈍い音と、「あっ」という声に振り向くと、雨漏りで腐っていた畳敷きの床を伊賀弁護団長が踏み抜き、身体が大きく傾いていたが、怪我はなく安堵した。
 この廃屋は日野町事件で無期懲役刑を受けた冤罪犠牲者の阪原弘さんが、女主人を殺害し、その遺体を屋外に運び出したとされる「事件現場」である。
 阪原弘さんは冤罪を訴え、有罪判決確定後も裁判所に再審を申し立てていたが、一昨年3月18日、無期懲役囚のまま逝去された。諦めきれない家族4人が、阪原弘さんの名誉回復のため、大津地裁に再審開始決定を求めてたたかっている。
 ところが、この「事件現場」とされる被害者の土地と家屋が、最近、人手に渡り、近く取り壊されることが分かり、弁護団が再審請求の裁判に活用する証拠を保全するため、この廃屋に立ち入り、屋内外の状況をデジタルカメラ等で克明に記録することになったのである。

 永く人が住まず、手入れもされていない屋内は、かび臭い匂いがたち込め、蜘蛛の巣が張り、雨漏りもある状態だった。
そんなことはものともせず、10人の弁護士がカメラマンと助手、地元の再審を「求める会」員と国民救援会ら20数人が、午前11時から午後3時まで、折からの雨を衝き約5時間にわたって、綿密に証拠保全の活動をおこなった。
 その目的は、被害者が行方不明となった一週間後に日野警察署が屋内外の状況を撮影した写真と、阪原弘さんが逮捕され、「殺害した状況や死体を搬出した状況」を指示説明させられた時の写真とを比較しながら、その相違や矛盾点を克明に記録すること、この敷地、家屋の実測をすることなどだった。
 撮影箇所を指示する弁護士、それを撮影するカメラマンと助手、家屋の実寸を計測し記録する「求める会」員や救援会会員らが、まさに一丸となっての証拠保全活動だった。

 ところで、こうした事をおこなうには、この土地と家屋の所有者に「証拠保全のための作業をさせてもらいたい」と要請し、許可を得なければならない。しかし、現在の所有者は阪原弘さんに母親を殺されたとされる、被害者の一人息子のHさんである。
 被害者感情として、逮捕・起訴され、裁判で有罪となった被告人を憎み、悪感情を抱くことは決して不思議ではないし、事件のことには一切関わりたくないと思うのが常である。かつて、大津地裁が再審請求の事実調べのため、この家屋に立ち入り「現場検証をしたい」と大津地裁が申し入れたとき、Hさんは、当初、それを承諾しなかったという経緯もある。
 たとえ、犯人とされている人が、「冤罪です。私は殺していません」と叫んでいることを知り、理解したとしても、再審請求人の弁護団の要請を受け入れ、自ら鍵を開け、協力をする被害者の家族なんて、滅多におられるものではない。
 ところが、今回、被害者の息子であるHさんの了解を得ることができたばかりでなく、台風が近づく悪天候を衝いて、わざわざ奈良県から滋賀県日野町の家まで来られ、電気が使えるように関西電力に連絡をして手配し、鍵を開けていただき、再審弁護団による証拠保全の活動を許してもらえたのは、異例中の異例と言っても決してオーバーではない。

 なぜ、そんなことが出来たのだろうか。そこには弁護団と家族、この事件を支援してきた「求める会」員や救援会員らの地道な努力があったと思う。
 地元の救援活動家や阪原弘さんの家族は、長年にわたり、日野町内の各戸を訪問し、「この事件は冤罪です。阪原弘さんは犯人ではありません」と、事件の真相を訴え、裁判所宛の再審開始要請署名への協力をお願いしてきた。そして、事件の真実や裁判の経過を伝えるリーフレットやビラ、パンフレツトなどを何度も各戸配布し、宣伝カーやハンドマイクからも訴えてきた。そうした地道な活動をとおして、地元住民の間から「ヒーのおっさん(阪原弘さんのこと)は、人殺しなんて大それたことができる男ではない」「何とか助けてあげて」といった声が高まってきている。
 また、日弁連(日本弁護士連合会)が、この事件を調査し冤罪であることを確認し、支援決定を行ない、再審弁護団を組織して弁護活動を行なっていること、再審弁護人には高等裁判所の元裁判官や刑事訴訟法を大学で教えていた元法学部教授も加わっており、ベテラン弁護士や若手弁護士15人が情熱を込めて弁護活動を続けてきていることも住民らに伝えてきた。
 そうした関係者の地道な努力の積み重ねを背景に、再審弁護団が何度もHさんと接触し、粘り強く「真実発見のために協力して欲しい」と説得された。その結果、最初は拒否反応を示しておられたHさんが次第に軟化され、事件当時、自ら体験されたことなども弁護人に話されるようになっていた。
 こうした、弁護団、地元の救援活動家、家族の粘り強い努力によって、被害者の家族に我々の誠意が届き、徐々に心を開いてもらうことが出来たのである。

 大津地裁は、阪原弘さんの死後、家族が申し立てた再審請求に対し、当初、冷やかな態度だったが、検察官と裁判所に証拠開示を迫り、阪原弘さんが被害者宅から奪ったとされる手提げ金庫の投棄現場へ「案内した状況」を警察が写したとするネガフィルムを開示させたところ、検証調書に貼られている写真の順番が、往路と復路を逆転させているものなどが見つかった。
 警察が阪原弘さんにウソの「自白」をさせた筋書きに合わせた写真を恣意的に選び、貼っていたことが判明した。このことによって、裁判所が弁護団の主張に関心を示し始めた。しかし、再審開始決定を決断させるまでには至っていない。冤罪を晴らす道のりはまだ遠いと言わなければならない。
 今回の被害者宅の証拠保全では、被害者が行方不明になった10日後に日野警察署が家屋内の様子を写した写真と、3年半後に阪原弘さんが逮捕され、ウソの自白をさせられ、被害者宅に連行されて、「殺害方法や手順、遺体搬出の状況」を指示説明させられた時に移された写真とに違いがあること(室内の通路にあった酒のケースが片付けられ、遺体が搬出し易いようにされていた)なども判明した。こうした新たな事実も裁判所にぶつけ、何としても再審開始決定を勝ち取りたいものである。

鹿児島・大崎事件 

第二次再審請求のたたかい  今後の運動への引き続いてのお願い]

日本国民救援会宮崎県本部事務局長 堀田孝一

経過と到達点

 この8ヶ月間の経過は以下の通りです。
 3月6日 鹿児島地方裁判所・中牟田裁判長は、大崎事件原口アヤ子さんの第二次再審請求を証拠調べもせずに棄却決定
 3月26日 鹿児島、熊本、宮崎3県の国民救援会役員20名で、大崎事件臨時対策会議をひらき勝利への運動方針を討議
 4月16日 毎週の定例宣伝行動をスタート。Tシャツ・ノボリ旗・横断幕で、繁華街での署名宣伝後、市内パレード、検察庁前と裁判所横で宣伝行動
 4月27日 大崎事件「スタート大集会」、宮崎市民プラザにおいて九州各県から203名の出席で勢いをつけた
 5月7日 毎月の裁判所と検察庁への要請行動を開始。別室で請願書提出
 5月15日 国連拷問等禁止条約委員会への要請行動に代表派遣参加
 5月27日 第1回進行協議、早朝裁判所宣伝、弁護士19名、支援20名
 7月11日 原口アヤ子さん本人意見陳述で劇的な感銘をあたえました。第2回進行協議、9県74名参加、弁護団と支援者の懇親会27名
 7月18日 福岡高裁宮崎支部から証拠開示勧告が出された
 7月25日 福岡高検宮崎支部は裁判所に対し、「証拠開示勧告の法令上の根拠を明らかにされたい」と抵抗文書を提出
 同日 検察庁は、任意で弁解録取書2点と供述抜粋の3点の証拠を提出
 7月26日 最高検察庁に対して、裁判所の証拠開示勧告に従うよう要請行動、堀田・首都圏の会18名参加
 7月29日 裁判所は7月25日の検察庁の抵抗を「訴訟指揮である」と却下
 8月2日 裁判所は、真実を知りたいと弁護側申請の法医学者と心理学者2名の鑑定人証人尋問を採用決定
 9月17日 第3回進行協議、支援者49名、弁護士21名、検察側から114点の証拠が任意開示された
 9月30日 検察側から21点の証拠が任意開示された。上野反対尋問用
 10月3日 上野鑑定人証人尋問(法医学・元東京都監察医)、「自白」にある「タオルでの殺害方法はあり得ない」と証言。第4回進行協議84名の支援者、弁護士27名
 10月13日 ~14日、第16回大崎事件現地調査。67名参加
 10月23日 日弁連・日本弁護士連合会が大崎事件支援を決定
 10月31日 検察側から74点の証拠が開示された
 11月14日 高木・大橋鑑定人証人尋問(心理学)「自白」供述が実体験に基づかないことを立証

10月13、14日におこなわれた現地調査の様子

 3月26日の対策会議では、勝利を勝ちとるためには、1,大衆的裁判闘争の原点に立ち、2,広く世界の常識に観点を拡げていく、3,短期勝負であることを確認して運動を出発しました。
 ①4月に「スタート大集会」を203名で開いて勢いをつけ、
 ②毎週火曜日に市内繁華街での宣伝・署名行動、市内パレード、検察庁前と裁判所横でのハンドマイクと横断幕ノボリ旗での宣伝・要請を続けてきました。
 ③毎月一回、裁判所と検察庁に対して部屋を用意させて請願書・決議文等を読み上げ要請行動を繰り返してきました。
 ④進行協議・本人意見陳述・鑑定人証人尋問の時は、九州各県の力に依拠してたくさんの皆さんに集まっていただき裁判所内へ弁護団を送り出してきました。
 ⑤国連拷問等禁止条約委員会への要請行動が、その後の要請行動・宣伝行動で、観点を拡げて運動を発展させるうえで非常に大きな役割を果たしました。
 ⑥この事件の顔は、客観的証拠が無く、3人の知的障がいをもつ男性の「自白」だけを頼りとして原口アヤ子さんが有罪とされた事件であること。
 ⑦したがって宣伝行動では、「すべての客観的証拠を出すように」を常にスローガンとしてきました。
 ⑧弁護団は東京、福岡、宮崎、鹿児島から57名の強力な大弁護団となり、力をつけてきています。
 国民救援会鹿児島県本部や現地大崎の「再審をめざす会」・弁護団などが、長年、地道に、運動をひろげ積みかさねてきた結果が、その量的蓄積がいま大きな力となって質の転化を迎えつつあります。裁判所は7月18日「証拠開示勧告」を検察庁に出しました。検察庁は抵抗はしてみたものの、その後、4回にわたり合計212点の証拠を「現時点で弊害のないものに限り」と任意に開示してきました。
 また、裁判所は事件の真実を知りたいと弁護側提出の鑑定人証人尋問を採用しました。その結果、確定判決が根拠としている「3人の自白」、その中心にある、「タオルでの絞殺」が、法医学者で上野正彦元東京都監察医務院長の証言で、「タオルでの絞殺はあり得ない」と否定されました。
 このように現在の到達点は、全体としては大きく前進しつつありますが、しかし、検察庁はいまだに、弁護側請求で裁判所が勧告した証拠と証拠リストについては提出を拒否しております。全ての証拠の開示なしには勝利の保証は無く、したがって前途はまだ、まったく予断を許さない状況です。
 引き続き今後とも全国の皆さんのご支援・ご指導をよろしくお願いいたします。

仙台北陵クリニック・筋弛緩剤冤罪事件

第8回再審協議が開かれる

国民救援会宮城県本部事務局長 吉田広夫

 10月30日、仙台北陵クリニック・筋弛緩剤冤罪事件の第8回再審協議が開かれました。
 再審請求審では検察側が昨年12月に提出した意見書で、確定審で検察側が繰り返し主張していた「大阪府警の土橋鑑定で検出されたのは、筋弛緩剤の成分であるベクロニウムの変化体ではなく、未変化体」を、「土橋鑑定が検出したのは加水分解した変化体」と180度転換させたこと、鑑定資料の全量消費問題でも、確定審で土橋鑑定人が「鑑定資料は鑑定書作成時に使い果たしている」と公判で繰り返して証言していたにもかかわらず、「鑑定“資料”を作成し鑑定書を提出した後、鑑定“試料”は残存しており、冷凍庫に保管していた」と驚くべき転換を主張していす。
 守大助さんの有罪を確定した仙台地裁の一審判決は「ベクロニウムについては、各鑑定資料から未変化体が検出された」と認定、高裁判決でも「本件各鑑定資料中に存在したベクロニウムの脱アセチル化した変化体を検出したものでないことは明らか」と認定しています。再鑑定を不能にした鑑定資料の全量消費問題でも一審判決では「各鑑定資料は、鑑定の過程で全量が消費されたことが認められる」と認定していました。
 また、もう一つの重要な争点である病態論で弁護側が再審請求書で新証拠として提出した池田正行・前長崎大学教授の意見書(以下「池田意見書」)で論じた「マスキュラックス中毒否定論」について、検察側の意見書は一切述べていません。「池田意見書」はA子さんが北陵クリニックを受診する契機となった腹痛、嘔吐から市立病院に至るまでの全経過を統一的に説明できる病態はミトコンドリア病メラスとしているのに対して、検察意見書は、A子さんの個々の症状をとり上げ、他の原因とも考えられる、と、ごく当然の一般論を述べているに過ぎず、池田意見書に対するなんらの反論にもなっていません。
 そればかりか、検察側の意見書を提出した後藤雄一医師は(ミトコンドリア病の認定基準を作成した「ミトコンドリア病の診断と治療に関する研究班」の研究代表者)は、「(A子さんの)これらの症状がミトコンドリア病で説明可能という点は否定しません」と明確にミトコンドリア病の可能性を認めています。
 確定判決は、「他にA子さんの急変症状を説明づける原因が見いだせない限り、A子さんの急変は、筋弛緩剤の投与によるものと認めるのが相当である。」として有罪判決を下したのであり、従って検察側の証人でさえ、(A子さんの症状が)ミトコンドリア病で説明可能、と筋弛緩剤とは異なる疾患の可能性を明言した今、確定判決は見直されなければなりません。
 検察側意見書の主張は、守大助さんを有罪とした判決を根底から揺るがすものであり、とりわけ有罪の最大の根拠となった大阪府警科捜研の土橋鑑定の信用性が完全に否定されたことは明白です。仙台地裁は証人尋問と証拠開示を決定し、審議を尽くした上、再審開始を決定するべきです。
 弁護団は、9月9日に証拠開示申立書を、10月25日に土橋鑑定に対する全面批判の文書と志田保夫池田正行氏尋問の必要性についての補充意見などを提出し、審議を尽くすべきである、と主張しています。
 検察側は、自白論についての意見書は出さない、本件はすでに判断は熟しているので結審してもらいたい」と述べています。
 裁判所は、証人尋問や証拠開示は、次回(10月30日)以降に判断する、としていましたが、30日の三者協議では判断を示しませんでした。
 全国連絡会は9月28日の事務局会議で、署名を一層大きく広げると共に、仙台地裁に対して、(1)請求代理人が、証拠開示勧告申立書で求めている証拠を全面的に開示すること、(2)志田保夫東京薬科大学前教授と池田正行長崎大学前教授の証人尋問をおこなうこと、の2点を要請する緊急要請葉書を集中することを全国に呼びかけることを確認し、直ちに取り組みを開始しています。

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 全国連絡会の問合わせに対し、裁判所より、10月30日現在で、河村俊哉裁判長への葉書の到着数は1,058通との回答がありました。当面11月26日に予定されている第9回三者協議にむけて、一層の集中を呼びかけています。
 また、裁判所への署名提出は11月4日現在、72,235名分となっており、9月27日に提出して以降、あらたに2,263名分集まっています。一日も早い10万名の突破をめざしつつ、当面、裁判所への次回提出日の12月20日をめざしてお互いに大奮闘を呼びかけています。
 10月にあらたに完成したパンフレット(1部20円)は、すでに1万部以上が、学習、宣伝、署名活動、などで活用され始めています。
 裁判所が勇気を持って、再審開始の決定を出せるよう全国の支援組織の知恵と力を尽くしましょう。

再審・えん罪事件全国連絡会第22回総会のご案内

 無実の人を救うための日頃の活動に敬意を表します。
さて、全国連絡会の第22回総会を下記の日程で開催いたします。この間、足利、布川、東電OL殺人事件の再審無罪確定など、大きな前進を勝ち取ってきました。
 しかし、名張毒ぶどう酒事件の第7次再特別抗告での最高裁の不当な棄却決定や、弁護団が提出した新証拠の新規性を否定され再審請求が東京地裁で棄却された痴漢冤罪西武池袋線小林事件など、事実と道理に基づかず、裁判官が勝手な「推論」を行い、「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の鉄則は再審にも適用されるとした「白鳥・財田川決定」にも反する決定が出されています。
かつて、死刑再審4事件の再審無罪後、白鳥・財田川決定を矮小化し再審を認めない「再審冬の時代」「逆流現象」といわれる厳しい状況が、足利、布川、東電OL殺人事件の再審無罪となるまで続いていました。いま再審開始をめぐって新たな「せめぎ合い」が始まっており、各事件でのたたかいを強化する必要があります。
 つきましては、再審・冤罪事件をめぐる情勢論議を深め、引き続き加盟事件の無罪判決を勝ち取るために、この間の運動を総括し、新たな方針と役員体制を強化するために下記のとおり第22回総会を開催します。
 総会後に、同会場地下にあります日比谷コンベンションホールにて、「無実の死刑囚 奥西勝さん・袴田巌さんを救え12・8集会!」が開催されます。同集会では、長年にわたって再審・冤罪事件にかかわってきた大出良知教授の講演が冒頭で行われます。現在の再審・冤罪事件の裁判所の動向についても講演でお話をしていただく予定です。ぜひ、総会後も同集会にご参加をお願いします。
 各加盟支援組織をはじめ関係者の積極的なご参加をお願いします。(宿泊施設は各自で手配をお願いします。手配が難しい方は、お早めに事務局にご相談ください。)
 

       【再審・えん罪事件全国連絡会第22回総会】

    【1日目】12月7日(土)午後2時~午後5時(議案の提案と各事件報告)
          会場  平和と労働センター3階 306会議室  
               *第1日目終了後に懇親会を近くの店でおこなう予定です。

    【2日目】12月8日(日)午前9時~正午まで(活動方針の討議、採決)
          会場  日比谷図書文化館4階セミナールームB
               *12・8集会のチラシの裏面に地図が掲載されています。

*総会終了後、同会場地下にあります日比谷コンベンションホールにて、「無実の死刑囚 奥西勝さん・袴田巌さんを救え12・8集会!」が開催されます。ぜひ、ご参加を合わせてお願いします。
 詳細は、こちら→無実の死刑囚 奥西勝さん・袴田巖さんを救え 12.8支援の集い
                                                          

裁判・集会・宣伝などの主な予定

                                             
11月18日(月) 袴田事件・静岡地裁、地検要請 10時半に裁判所に集合
11月21日(木) 最高裁第208次統一要請行動 8時15分から宣伝行動
           10時=民事事件の要請  11時=刑事事件の要請
11月26日(火) えん罪原因調査委員会の設置を求める院内集会
参議院議員会館 地下1階 B104会議室 12時~13時
12月 8日(日) 無実死刑囚 奥西勝さん・袴田巌さんを救え!
12・8支援のつどい  東京・日比谷コンベンションホール 13時開場
12月25日(水) 布川国賠第4回口頭弁論 東京地裁
2014年
1月13日(月・祝) 袴田事件支援全国集会
            静岡県総合社会福祉会館(スズウエル)7階 13時開場
1月14日(火)   名張事件・奥西勝さん満88歳誕生日全国宣伝行動

* 次号「ニュース」は、2013年12月下旬頃に発行する予定です。

再審・えん罪事件全国連絡会とは・・・

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1973年4月、えん罪で苦しむ人々を救うことを目的として、作家松本清張氏、佐野洋氏、評論家の青地晨氏等の呼びかけで結成されました。
以来、「無実の人は無罪に!」をスローガンに、えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動などを進めています。

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