えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.77再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2016年 4月22日発行 No.77

大阪・東住吉冤罪事件 

青木さん、朴さんの無罪が確実に!

検察が有罪主張を取り下げ

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検察は、3月16日の進行協議で「有罪の主張・立証をしない」と言うことを明言し、その結果裁判所は、再審公判の日程を下記の通り言い渡しました。朴さん4月28日、青木さん5月2日、即日結審、8月には無罪判決が確実となりました。
今回の検察の有罪主張の取り消しは、この間の火災事件や審理の経過を見れば当然の結果です。青木さん、朴さん、弁護団の主張が実現しました。それを支えた全国のみなさんのご支援の力です。
ありがとうございました。無罪判決が確定させ、青木さん、朴さんが本当の意味で自由の身となるまで引き続きご支援をお願いします。

青木惠子さんのコメント

 当たり前の生活に戻り5カ月。アルバイトを始め、生活に張りができ、毎日が楽しく、自転車で走り回っています。
 検察が有罪立証しないと態度を変えました。しかし喜びが湧いてこない。無罪判決をもらうまでは安心できない。それだけ検察、裁判所に裏切られてきたのです。8月には、皆さまと心から喜び合いたい。あと少し支援をお願いします。(「ひまわり通信」より)
 

朴龍晧さんのコメント

 3月に検察が有罪立証断念を公表し、心の底からホッとしました。
 一方で「嬉しい」という気持ちはまったくありません。確定有罪判決が消えたわけではありません。地に足を付け、社会生活の回復に努めながら再審公判に備えて心を整えていきます。8月に無罪判決の見通しですが、これまで同様、誠実に無実を訴えていきます。ご支援をお願いします。(「ひまわり通信」より) 

袴田事件

証拠のねつ造を示すため、捜索に立ち会った元警察官2名の証人尋問を請求 

 3月28日、袴田事件の3者協議が東京高裁(大島隆明裁判長)で行われました。
 この日の3者協議では、DNA鑑定の進捗状況と弁護団が申請した証人尋問の請求等について議論が行われました。
 DNA鑑定については、裁判所が職権で決めた鑑定人にまだ検証試料も渡ってなく、検証の具体的作業が全くすすんでいないことが明らかになりました。弁護団は、あらためて無意味な検証実験をやめるよう求めるとともに、検証実験への立ち合いなどを裁判所に求めました。
 なお、弁護団は検証実験が長引くことも予想され、その間に検証実験をただ待つだけでなく証拠のねつ造問題や捜査の違法性をいっそう追及していく方針です。その一つとして、元警察官2名の証人尋問の申請を申し立てました。裁判所は、検察に弁護団の証人申請についての意見を4月中に出すことを求め、次回5月24日の3者協議で決定することになりました。
 今回、弁護団が証人申請した元警察官とは、一人は事件直後に味噌工場のタンクをはじめ最初の家宅捜査に参加した警察官です。この元警察官は、問題の第1タンクを「棒を使って内部を確認したが、何もなかった。麻袋があったとは考えられない」とし、「1年2か月後に第1タンクから麻袋に入った5点の衣類が発見されたことに疑問を持っている」と、これまで支援者や弁護団に語っている人です。もう一人の元警察官は、5点の衣類が発見された直後、袴田さんの実家の家宅捜査に参加し、5点の衣類のズボンの端布(共切れ)を発見した警察官の方です。この元警察官は、家宅捜索の捜査班より先に到着していた上司から、「タンスの引き出しの中を調べてみてはどうか」と言われ、その指示通りに端布が発見されたことに不自然さを持っているという元警察官です。
 記者会見で小川秀世弁護団事務局長は、「2人の元警察官がこれまで裁判で取り調べられてこなかったこと自体が異常だ。2人の証人の尋問は確定判決の重要な証拠となっている5点の衣類の発見経過に関わる重要な証人で、特別な必要性もある」と述べました。
 2人の元警察官の証人尋問が実現されれば、警察の証拠のねつ造の実態がなお一層明らかにされると思います。ぜひ、証人尋問の実現にむけて裁判所への要請を強める必要があります。
 次回5月24日の3者協議にむけて、東京高裁、東京高検への要請、裁判所前での宣伝行動を下記の日程で行う予定です。

 ≪次回3者協議 5月24日(火)13時半から 東京高裁第8刑事部≫
 12時15分   東京高裁前宣伝行動
 13時15分   東京高裁前・弁護団激励行動
 13時30分   東京高裁要請行動  
 14時30分   東京高検要請行動

ドキュメンタリー映画「袴田巖 夢の間の世の中」の全国上映の成功を!

 現在、袴田さんは、静岡県浜松市内で姉の秀子さんと生活しています。その生活の様子を記録したドキュメンタリー映画「袴田巖 夢の間の世の中」(金聖雄監督)が2月の東京上映を皮切りに全国の上映館で順次上映されています。
映画は多くの人々に感動を与えています。同映画を鑑賞した自由法曹団の荒井新二団長の感想文を紹介します。ぜひ、多くの方が鑑賞されるように上映運動にご協力をお願いします。

 映画「夢の間の世の中」を観て

東京合同法律事務所 荒  井  新  二

 
袴田巖氏の映画を観た。映画はよく観るが、法廷モノや裁判ドラマはどうも仕事モードになってしまい敬遠している。が、この袴田氏の映画(金 聖雄監督)は違うと聞いて過日東中野のポレポレ劇場に出かけた。元ボクサーで死刑囚の袴田氏が再審開始決定で釈放された後を実写したものであった。どんな映画でもふだんは上映開始後半時間のうちに眠る癖がある(最近は席がふわふわで気持いいし、なによりシルバーで安い)。この映画ではそうならなかった。

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 ここで袴田巌氏の事件のことを急いで記しておこう。袴田氏は清水市の味噌製造会社役員家族4人の殺人事件が発生した1966年に逮捕され、1・2審死刑判決。80年に最高裁判決で死刑確定、その後幾度かの再審請求を経て2014年3月に再審開始決定という経過をたどった。実に獄中48年である。開始決定は、「捜査機関により捏造された疑いのある重要な証拠により有罪とされ、極めて長期間死刑の恐怖の下で身柄を拘束されてきた。(略)これ以上、袴田に対する拘置を続けるのは耐え難いほど正義に反する状況にある」と述べて異例にも即時釈放を敢えて行った。
 カメラは淡々と氏の釈放後日常を細部にわたって追う。狭い室内をひきづるようにして前方下を見ながら歩を進ませるその姿はリングに向かう老いた勇者を思わせる。半世紀のわたる拘禁生活と80才ほどの実年齢を思うと驚異的なことである。一般囚と違って死刑囚に室内運動が許されているとは言え、無罪獲得の闘志抜きには考えられないことだ。カメラは袴田氏が天空に向かって何か印綬を結ぶかのような所作をとらえる。それに添って発せられる言葉は意味のとり難い呪文のようだ。あれはリング上のレフリーがカウントするときの姿勢か、勝者のポーズなのか。呪文のような言葉は、天上の存在とのふたりだけの交信か。私には地上の無罪判決にかかわらない、超現実の審廷で最終的な判決を自らが下しているように思える。
 袴田氏は無罪にいたる闘いを確信していた。が無残にも冤罪に陥れられ確定死刑囚となった。めげずにさらに挑戦を再審で続けるが、それは酷刑の恐怖と無念さとがない交ぜとなったながいながい時間であっただろう。その果てしない最大級の緊張の高みからついに向こう側の異界に突き出てしまったように思える。
 映画の題名「夢の間の世の中」は、リアルと超現実との淡い交差を暗示し、両者が地続き(シームレス)ではあることを明るみに出しているのではないか。題名と一緒に冒頭から何度も映しだされる満月は、天空にあって異様に明るい光を放つ。袴田氏の孤絶した心中をうつし出している。その放つ光は冴えわたって下界の世間を隈無く照らしていることだろう。
 次の一節は、氏が健常であった時の獄中日誌(の一部)である。
 「月光は何故か/私に希望と安らぎを与えるものである/それはあの月を娑婆でも/多くの人が眺めていると思う時/月光を凝視することによって/その多くの人と共に自由であるからである」
 ここに諦観や混乱は(未だ)ない。静溢な胸中と人々との共振が嘘飾なく語られている。孤独な月光の先には熱い人々との連帯と確信がある。
 もうひとつ、その後と思われるもの。
「さて、私も冤罪ながら死刑囚/全身にしみわたって来る悲しみにたえつつ/生きなければならない/そして死刑執行という未知のものに対する/果てしない恐怖が/私の心をたとえようもなく冷たくする時がある/そして全身が木枯らしにおそわれたように/身をふるわせるのである/自分の五感さえ信じられないほどの/恐ろしい瞬間があるのだ/しかし私は勝つのだ」
 袴田氏はこんどは場違いな法廷というリングに無理矢理押し上げられたが、そこでも一貫して闘魂溢れるファイターであった。身体を鍛えあげることを忘れず、雪隠のためのベストをつくし、そのあげくの死刑判決にも挑み続け、なおのぼり詰めていった。その後の心身の変調を「拘禁性ノイローゼ」と簡単に言い放つことは許されない。えん罪に対する死刑判決とその後のながい死刑囚の閉じられた生活、恐怖と無念さ。「全身にしみわたってくる悲しみ」は到底われわれの想像力が及ぶところではない。このような「事態」は法の名によって国家暴力が惹起しうることを、現下の情勢に立ちつつ、よくよく考えなければならない。「耐え難いほど正義に反する」とは言うもおろかなことであろう。
 カメラは足許で動き回る掃除ロボット「ルンバ」をみる袴田氏の表情を喪ったかのような顔を映しだすが、その対比は秀逸である。そして鮮列で悲しい。過ぎ去っていったながい歳月が想起される。映画のなかで秀子さんとの同居生活やえん罪仲間の激励のおりに袴田氏の表情がなごみ柔和さを取り戻す一瞬がある。ボクシングの試合をみる眼はかって年間19戦をこなしたファイターの鋭さを湛えている。その五感が恐怖に堪え得て強靱さを失っていないことを感得できる。秀子さんの明るく包容力のある、が凜とした愛情が奇跡に近い果実を産み出しつつある。1日も早い無罪確定と袴田氏の日々の平安を祈らずにはいられない。

名張毒ぶどう酒事件

奥西勝さんの偲ぶ会に全国から220名が参加

奥西さんの冥福を祈り、第10次再審の勝利を誓う!

えん罪名張事件・愛知の会事務局長 田中哲夫
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 名張毒ぶどう酒事件の発生から55年、2005年の再審開始決定から11年、奥西勝さんの無念の獄死から半年が経過した4月9日、名古屋市内で名張事件弁護団、日本国民救援会愛知県本部、えん罪名張事件・愛知の会で構成する実行委員会と10名の呼びかけ人の呼びかけによる「奥西勝さんを偲ぶ会」が開催され、全国から220名の方にご参加いただきました。昨年11月6日に、奥西勝さんの遺志を引き継ぎ、死後(第10次)再審を申し立てた妹の岡美代子さんも参加されました。
 宇佐見実行委員長の開会あいさつの後、奥西勝さんのご冥福を祈って参加者全員で黙祷、続いて奥西勝さんの「命をかけた」闘いを映像で振り返りました。その後、鈴木弁護団長をはじめ呼びかけ人や弁護団のみなさんから「お別れの言葉」をいただきました。
鈴木泉団長からは、4月中にも封緘紙の糊に関する新たな証拠を提出することが報告され、何としても再審無罪を勝ち取る弁護団の決意が伝えられました。また、ジャーナリストの江川紹子さんは、奥西勝さんの虚偽「自白」を偏重して再審開始決定を取り消した裁判官が、偲ぶ会の前日に無期懲役判決が下された裁判員裁判に対するコメントとして「自白に頼りすぎる事実認定は危険で、えん罪の可能性がぬぐえない。」と述べていたことを取り上げ、その責任をするどく問いました。
その他多くの方から、生きて奥西勝さんを死刑台から救い出すために全力で取り組んださまざまな活動や塀の中での奥西勝さんとの交流の様子、獄死後初めて対面した印象などが語られると共に、雪冤半ばで逝かなければならなかった奥西勝さんの無念を何としても晴らして名誉を回復させること、奥西勝さん獄死の責任を必ずや司法にとらせることが、奥西勝さんの遺影に向かって誓われました。
続く佐々木弁護団事務局長からの第10次再審についての弁護団報告では、新たな論点である糊鑑定の報告がありました。奥西勝さんは、捜査機関によって強制された「自白」の中で、毒物を混入する際に瓶口に貼り付けられた封緘紙を火ばさみで突き上げてはずしたとされています。しかし、もしかすると真犯人は、封緘紙をそうっとはがして毒を入れ、また元のように貼り直しておいたかもしれません。それならば製造時に使われた工業用糊とは別の糊成分が封緘紙に付着しているはずです。そのため弁護団は以前から裁判所に保管されている封緘紙の「えつ覧・とう写」(検証のこと)を求めてきましたが、これがようやく今年の1月に認められ、最新鋭の分析機器によって別の成分が検出されたようです。弁護団はその結果を4月中にも新証拠として提出予定です。奥西勝さんの「自白」とは全く異なる方法で毒物が混入されたことを明らかにしたこの証拠は、奥西勝さんではない第三者が犯行に及んだことを示すものです。私たちは新たに有力な新証拠を手にしました。今がチャンスです。
面会人の稲生さんからは、病と闘いながら無実を訴える奥西勝さんの壮絶な姿が伝えられました。また、会場に展示された遺品の中の奥西勝さんの日記には、不当決定を受けた後、欄外に小さく「クソ!」「馬鹿野郎!」と記してあったそうです。面会室では穏やかで、時にはほほえみをたたえていた奥西勝さん、何度不当決定を突きつけられても弁護団に「また、やってくれますか」と静かにお願いした奥西勝さん。その姿からは想像できない、真の奥西勝さんの苦しみを目の当たりにした思いで、当然のことなのにそこまで思いが至らなかったことが悔やまれた瞬間でした。奥西勝さんは、獄中で一人、どれだけ辛く、苦しかったか。この苦しみ・無念を晴らさないわけにはいきません。私たちは、奥西勝さんに白菊を手向けそのことを誓い合いました。
岡美代子さんからは「兄は無実です。一日も早く裁判をやり直して欲しい」と涙ながらの切々とした訴えがなされました。奥西勝さんと同じ苦しみ、無念さをかみしめてきた岡さん。私たちは、86歳になる岡さんをしっかりと支えていきたいと思います。
最後に市川弁護団員から再審無罪にかける弁護団の気迫と支援者に対する強いエールに満ちた閉会あいさつがなされ、参加者全員が新たなたたかいに全力をあげようと心を一つにすることができました。
無念の獄死から半年経過しての「偲ぶ会」でしたが、ようやく一つの区切りをつけることができ、奥西勝さんのご冥福をお祈りすると共に、第10次再審勝利に向けて新たな一歩を踏み出す決意を固める機会となりました。引き続くご支援を心から訴えます。

お別れの言葉

再審えん罪事件全国連絡会代表委員 新倉 修

奥西勝さん、このような形でお会いするのは、残念です。奥西勝さんを生きて取り返すという目的で、東京に支援の会を立ち上げて、長い年月が経ちました。弁護団のみなさんの超人的な努力によって、有罪の決め手だとされていた証拠が次々と崩され、奥西さんを狭い拘置所の部屋に閉じ込めていた「澱」や「垢」のような汚い「証拠」が次々とはがされ、透明で澄み切った無実の「証明」が次々と積み重ねられて、奥西さんの再審開始はいよいよ間近だと思い、一日も早く決定が下されることを期待していた矢先のことでした。奥西さん自身も、どれだけ強い思いを持って、再審開始の決定、再審無罪判決を待ち望んでいたことか、想像に難くありません。映画『約束』のラストシーンだったでしょうか、薄暗い照明の中で、腰をかがめながら歩き回る仲代達矢さんが、低いけれど、きっぱりした声で、「死んでたまるか」と言う場面がありました。私は、昨年10月に八王子の斎場で、奥西勝さんの最期のお顔を拝見したときに、そのセリフを思い出しました。奥西さんは、そういう言葉を、いわば「遺言」として、私たちに託したのではないでしょうか。私たちは、そういう奥西さんの思いを受け止めて、奥西さんの無実を晴らすという「約束」を交わしたのではないでしょうか。
いま世間では、「保育園に落ちた」というつぶやきが大きくとりあげられて、政府が緊急対策を講じるという動きがあります。このような動きを目にするとき、私は複雑な気持ちになります。というのも、奥西勝さんのケースも、袴田巌さんのケースも、長い間、正しい解決を図る手続が十分に働かずに、関係者の救済が長らく放置されているからです。たしかに「保育園」問題で取り上げられる生活の問題も大変重要な政治問題ですが、誤判冤罪、とりわけ死刑事件での冤罪は、正義と命の問題です。このことを十分に理解すれば、このような不正義は一刻も早くなくさなければなりません。
私は今日、奥西勝さんを偲ぶ会に列席して、思いを新たにしました。奥西勝さんは、この命と正義の問題という大変重要な問題のありかを、それこそ全生命をかけて訴えてきたのですね。私は、このことをしっかりと受け止めて、名張冤罪事件の再審開始を一層強く求めるとともに、それ以外の冤罪事件についても、その早期解決をめざして、一層奮闘することをお誓い申し上げます。
奥西勝さん、どうぞこの決意を受け入れていただき、しっかり見届けて下さい。
2016年4月9日

 *この原稿は、4月9日に行われた「偲ぶ会」での、当連絡会の新倉修代表委員のお別れの挨拶を掲載しました。

松橋事件

再審開始決定を求めて、弁護団が会見を開く!

 3月3日、松橋事件の再審請求審について、熊本県弁護士会館にて弁護団の記者会見が行われました。
記者会見では、弁護団と検察官の双方から、最終意見書が2月11日までに提出され、 裁判所は、「現在の合議体(3 名の裁判官)で協議して、3 月31日以降、判断して決定を出す」との意向を伝えてきたことが明らかにされました。
弁護団は、これまでの再審請求審において弁護団が提出した新証拠によって確定判決には合理的な疑いが生じた、検察は弁護団の主張に合理的な反論が出来なかったので、再審開始決定が出ることを確信していると述べました。
そして、具体的には、確定判決で凶器とされた切り出し小刀は、刃にも木製の柄(束)にも血がついていない、傷の形と刃物が一致しないことが法医学者の鑑定で明らかにされたこと、これについて検察は合理的な反論がついにできなかった。
また、自白では、凶器の柄に血痕が残らないように、古いシャツを切り取った布を巻き付け刺して、犯行後自宅の風呂釜で燃やしたことになっていました。ところが、燃やしたはずのシャツの切りとった布が検察庁に保管されていたことが、弁護団の証拠開示請求によって明らかにされました。
確定判決には、犯行と宮田さんを結びつける証拠はなく、自白が有罪判決の大きな柱です。その自白が、再審請求審の審理を通じて根底からその信用性が大きく揺らぎました。
弁護団は、再審開始すべ新たな証拠が十分に揃っていることを強調しました。
再審開始決定を勝ち取るために、ぜひお手元にある署名を至急、全国連絡会事務局までに送付ください。 

布川事件国賠裁判

裁判所が杉山さんの自白テープの提出命令を決定!残りの文書提出命令は却下、弁護団が即時抗告申立!

布川国賠を支援する会事務局・山川清子

朝倉佳秀裁判長は、3月17日、杉山さんの、あるはずのもう一本の録音テープについて文書提出命令を出しました。

これまでの経緯

弁護団は、訴訟の当初から証拠の開示を求め、まず文書送付嘱託申立てをしました。2014年1月22日、裁判所は「水戸地検土浦支部と茨城県警にある、原告、杉山卓男、関係者の録音テープを含む供述録取書等の書面を送付するよう」決定しました。しかし、検察は、原告と杉山さんに関する捜査報告書など、ごく一部の文書を開示しただけでした。その後、弁護団は、対象を絞って、再度文書送付嘱託の申し立てをしましたが、石栗正子裁判長は、必要ないと却下しました。
すべての文書送付嘱託申立てを却下された後、2014年12月と2015年3月、弁護団は、存在することが確実で、しかも重要な証拠に限って、文書提出命令の申し立てをおこないました。今回、2016年3月17日、これに対して、朝倉佳秀裁判長は、杉山卓男さんのもう一本の録音テープについて、被告国に対し、文書提出命令の決定を出しました。それ以外の文書については、すべて却下しました。
弁護団が文書提出命令を申し立てていた文書は、(1)ポリグラフ検査に関する検査記録紙、ポリグラフ検査に関する捜査報告書・鑑定書・送致書等の文書、(2)①杉山卓男さんのもう一本の録音テープ②櫻井さんの被疑者状況録③櫻井さんのお兄さんの供述録取書等④角田、澤部、花島の供述録取書類です。

却下の決定に対して、弁護団は即時抗告、支援する会は要請行動

弁護団は、却下された文書も、いずれもあることが確実であり、しかも桜井さんの無実につながる重要な証拠だとして、3月22日、文書提出命令申立ての却下部分について、東京高裁に即時抗告を申し立てました。そのため、3月25日の弁論期日は取り消されました。文書提出命令について決定が確定するまで、国賠裁判は進まないことになります。なお、国も杉山さんの録音テープの提出命令について、即時抗告しました。
支援する会も、提訴以来、証拠を全面開示させた上で公正な裁判をするよう何度も要請を繰り返してきました。弁論が取り消しとなった3月25日にも急遽、東京高裁に対して、証拠を開示させる立場からの決定を求めて要請行動をいたしました。

今回の決定の意義

文書提出命令を申し立てたほとんどの文書について、申立てが却下された点については、真実を明らかにしないまま裁判を進めようとする裁判所の姿勢に対して、強く抗議するものです。しかし、1点だけとはいえ、被告国や被告茨城県が「存在しない」と主張してきた杉山さんのもう一本の録音テープについて、裁判所がその存在を認め、また提出の必要性を当然のことと認めて、国に対し文書提出命令を出したことは、非常に意義のあることです。担当の上野格弁護士の説明によると、文書提出命令が出たにもかかわらず、文書の所持者(国)がこれに従わなかった場合、裁判所は、「この文書の記載に関する申立人(原告)の主張を真実と認めることができる」ことになります。櫻井さんの10.17テープには、捜査官の編集痕があり、また録音停止の前後で供述が全く違っていることが記録されていました。これは捜査官による違法な自白の誘導や強要の証拠です。杉山さんのテープにも同じような記録があるはずですから、杉山さんのテープが提出されない場合でも、裁判所はそこに捜査官による違法な自白の誘導や強要の証拠が記録されているものと認めることができるのです。また、森井警部補は確定審で、「杉山さんのテープ録音は1回だけだ」という嘘の証言をしていました。今回、裁判所は、杉山さんの録音テープがもう一本あると認めたのですから、森井警部補が偽証したことも認めるだろうと考えられるのです。
                      

福井女子中学生殺人事件

福井女子中学生殺人事件の特徴と第2次再審請求の課題

弁護団事務局長 吉村悟

 この原稿は、3月22日に東京・桜井司法研究所で開かれた福井事件研究会第4回定例会での吉村悟弁護団事務局長の報告要旨を掲載しました。

1 旧証拠構造の脆弱さと事実認定上の課題

本件は,昭和61年(1986年)3月19日,中学3年,当時15才の女子生徒が,自らの卒業式を終えた夜,母親の留守中の午後9時40分頃,市営団地の被害者宅奥6畳間で殺害された事件である。
最高裁は,第1次再審請求について,平成26年(2014年)12月10日,前川彰司さんと父禮三さんの特別抗告を棄却し,再審請求を棄却した異議審決定が確定した。
しかし,確定審が1審無罪,控訴審有罪と分かれたのに続いて,第1次再審請求審でも,1審が再審開始,異議審が不開始と分かれたことは重大である。
それは,有罪を支える証拠が極めて脆弱なことを示しているからである。
確定有罪判決を支える証拠は,覚醒剤事犯で勾留中の暴力団員A男の供述と,その供述によって関係者とされた,捜査側に弱みのある数人の若者達の「事件の夜に血を付けた前川を見た。」という供述が「大要」で一貫し,一致していることだけである。
しかし,供述の「大要」,すなわち「粗筋」は,作り話でも,一貫させ,一致させることが可能である1。
これに対し,前川さんの犯行を裏付ける物証や,第三者的な立場の者の証言等の客観性ある証拠は皆無である。
一方,前川さんは,昭和62年3月の逮捕直後から,苛烈な取調べにかかわらず,終始一貫して,「私は被害者を殺していません」,「被害者とは面識すらありませんし,現場に行ったこともありません」,「この事件はA男と仲間たちの作り話です」と明確に述べて本件犯行を否定して,今日に至っている。
したがって,本件の課題は,A男ら関係者とされた若者達の供述が「作り話の疑い」がないか,彼らの供述だけで有罪を認定してよいかをとりわけ慎重に見極めることにある。
その意味で,本件は,「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則と,健全な常識に基づく厳格な事実認定が求められる事件であるといえるが,確定有罪判決や,第1次再審請求の異議審決定は,この点をおろそかにしてきたと考えている。
そこで,A男の供述と,同人の供述によって関係者とされた,他の若者達の供述の形成経過を検討したうえで,犯行態様に関する供述,及び血痕目撃に関する供述の順に検討するとともに,第2次再審請求に向けた課題を考えてみたい。

2 本件はA男の虚言を利用した「でっち上げ」であること

A男の供述は減刑等の有利処遇を目的とした虚言であり,他方,A男の供述によって関係者とされた他の若者達の供述は,A男供述に基づく捜査側の強引な誘導に迎合したものである。
(1)A男の供述は減刑等の有利処遇を目的とした不純なものであること
A男は,本事件から半年以上が経過し,捜査が行き詰った昭和61年9月頃,捜査本部の置かれた福井警察署に,別件覚醒剤事犯で勾留中の当時21才の暴力団組員であり,自分が長期の刑に処せられることを嘆いていた。
そして,捜査機関が焦燥している情況を横目に見て,刑事立会のもとで,面会に来た知人C男らに対し,「犯人を知らないか?」,「犯人が分かると俺の罪が減刑してもらえる」などと発言して情報を収集したうえで,当りを付けるように,少しずつ前川さんが犯人であるとほのめかす供述を始めた。
このように,A男は,本件の犯人を知らないにもかかわらず,減刑等の有利処遇を得るという不純な目的のために,情報を収集して,虚偽供述をすることによって,前川さんを冤罪に陥れることを画策したことが明らかである。
(2)捜査機関は,A男の虚言を利用して本件をでっち上げたこと
ところが,捜査機関は,捜査が行き詰まり,マスコミの批判が強まる状況の中で,面会立会等を通してA男の邪悪な意図を把握しているにもかかわらず,A男に対し,次々と優遇措置を与え,それと引き換えに,数か月という異例の長期間をかけて,捜査側の筋立てに沿った供述に仕上げていった。
福井県警刑事部長坂下昇は,みずから留置場のA男を訪ねて事件への協力を要請した。
捜査本部は,A男に,刑事事務室や事務室で,知人達と面会や電話をさせ,寿司を食べさせ,煙草まで吸わせることを許容した。
捜査副主任の刑事一課長板垣喜和は,捜査協力と引換えに,A男が優遇されていた福井署留置場から刑務所への移監中止を検事に依頼した。
A男の供述を前提とすれば,捜査機関は,A男自身も犯人隠匿罪として処断して然るべきであるが,何の処分も加えていない。
捜査機関のこれらの行動は,捜査の公正に対する信頼を疑わせる重大な事態である。
(3)A男は無関係な事実を脚色して他の関係者を引き込んだこと
A男は,数か月をかけて,知人である数人の青少年を次々とストーリーに登場させて本件に引き込んだ。
ア A男は,刑事立会のもとで,面会に来た友人のC男,V`男,W”子に対し,「中学生殺しはまともな人間のやることではないから,シンナー中毒の前川に違いない。事件の頃前川と一緒にいたのはY男と思うが,誰だ?」と質問し,C男らが笑いながらたまたまL男の名前を上げると,「じゃあ,現場まで行った人間はL男かも分からない」旨発言したうえ,「L男が前川さんを現場団地に連れて行った後,A男の元に連れて来た」と供述してL男を本件に引込み,犯人隠避容疑で誤認逮捕までさせた。
この供述が,「事件の頃L男が前川と一緒にいた」という本件と無関係な事実を脚色したものであることは明らかである。
ところが,L男が頑強に関与を否定し,A男自身が取調べに立ち会って恫喝して説得しても,これに応じないまま,無関係として釈放されると,今度は,A男は,「連れて来たのは,L男ではなく,B男だ」と供述を翻した。
イ 当時の捜査経過を見ると,L男を同行者とする捜査が行き詰まった状況のもとで,偶然,被害者と同じO型血痕が付着したスカイラインジャパン2000GTが発見されたのを受けて,A男が同車両のダッシュボードに血が付着していたと述べて,殺人事件に用いられた自動車をこのスカイラインと特定したところ,所有者K男からスカイラインを借りることのできる人物は,B男しかいないため,従前の「L男と請求人がスカイラインに乗ってきた」というA男供述は破綻した。
このような捜査経過に照らせば,A男は,自身の供述の破綻を契機に,これを取り繕うため,K男からスカイラインを借りることができたB男を同行者とする,捜査機関の方針に迎合して虚偽供述をしたことは明白である。
ウ 一方,「L男」から「B男」への供述の変遷理由に関するA男の説明は変遷極まりない。
Ⅰ 当初の昭62.1.3員,昭62.1.15員では,G男から「今● (B男とL男の共通の音)っていうのから電話があり,A男の居場所を知りたいと言うて来たぞ」と言われたような気がしたので,B男をL男と取り違え,後に思い出したと供述した。
Ⅱ ところが,その後,昭62.2.24員面では,B男を隠すために,L男の名前を挙げた,つまり意図的な虚偽供述であると供述した。
Ⅲ また,昭62.3.25検面で,再び記憶違いであったと変遷し,1審昭和62.12.1公判準備,1審第6回公判でも同趣旨の証言をした。
Ⅳ さらに,1審判決がA男供述の矛盾点を指摘すると,控訴審では,1審公判証言を全面的に撤回して,取調べ当初からB男の関与が記憶にあったと証言した。つまり,再度,当初からの意図的な虚偽供述であると証言した。
このように,A男は,変遷の理由について,合計3回も供述が変遷し,1審公判と控訴審公判で,全く反対の証言を行った。変遷が意図的なものであるか否かは,変遷理由に関する供述の核心であるが,この変遷理由に関する供述さえ変遷している。
エ よって,「L男」から「B男」への供述の変遷に合理性がないことは明らかである。
ところで,ここで重要なことは,A男は,「L男が無関係であることは分かっていたが,俺の供述に合わせてくれると思って名前を出した」と供述していることである。
A男は,公判でも,「今まで,いいかげんなことを言った」と開き直り,虚偽供述をしたことについて反省の様子はまったくない。
このように,A男は,自分の勝手な都合で,無関係な事実を脚色して,無関係な人物を引き込むことに罪悪感を抱かない人物である。
したがって,「L男が同行した」との供述が虚偽であるのと同じように,「B男が同行した」との供述も虚偽であり,A男は,L男と同様に,L男以外の関係者についても,本件と無関係であることを承知のうえで,本件に引き込んだと考えて当然である。
(4)捜査幹部の度重なる重要証拠の評価の誤り
このように,A男の供述は,類を見ないほど,虚言性,不誠実性が際立っており,本来,捜査機関が相手にしてはならない代物である。
ところが,捜査機関は,A男の供述に依拠した捜査を推し進めた結果,L男の誤認逮捕事件だけでなく,客観的証拠の評価についても重大な誤りを重ねるに至った。
県警刑事部長から福井署長に昇進していた坂下昇(前記2の(2))は,たまたま,領置した乗用車スカイラインジャパン2000GTに,事件の1年前に付着していた第三者のO型血痕を見て,詳細な血清学的鑑定を経ることなく,それが被害者の血痕であり,B男が同車に前川さんを乗せてA男のもとに連れて来た決定的証拠であると速断して,前川さんの逮捕に踏み切った。
他方,主任検事匹田信幸は,O型血痕の誤解が判明したにもかかわらず,今度は,本来,個人識別に用いることのできない毛髪鑑定を根拠に,犯行現場の電気カーペット上敷から発見された毛髪のうち2本が,前川さんの毛髪であり,前川さんが犯行現場に侵入した決定的証拠であると速断して,前川さんの起訴に踏み切る一方,O型血痕の誤りが裁判所に気付かれぬよう画策した。
捜査機関が,逮捕と起訴という重要な局面で,犯人性に関する重要証拠の評価について何度も重大な誤りを犯したのは前代未聞の事態であり,警察,検察の首脳がともに冷静な判断力を失っていたことの証左である。
本件における関係者の供述は,捜査本部首脳の誤った筋立てに沿って,一線の捜査官が,A男の供述によって関係者とされた数人の若者達から獲得したものである。
したがって,このように冷静な判断能力をなくした幹部の指揮を受けた一線の捜査官が,関係者とされた若者達の取調べにおいて,O型血痕や毛髪鑑定といった,請求人の犯行を裏付ける決定的な物証があるとの誤解に陥った状態で,上司の筋立ては正しいに違いあるまいとの予断を抱き,あるいは,上司の意向に沿おうとして,違法,不当な取調べを行い,真実の記憶と異なる供述を獲得する危険が極めて大きいと考えざるを得ない。
(5) A男によって関係者とされた若者たちの供述
確定有罪判決は,A男の供述にかえて,前川さんを犯行現場やA男のいる喫茶店に連れて行ったとされるB男と,A男の指示で,前川さんを出迎えに行ったとされるN男の供述を中心的な証拠と位置付けている。
しかし,B男,N男をはじめとする他の関係者の供述には,A男の虚言に基づく捜査側の強引な誘導に迎合したことを示す虚偽徴候が多々認められるうえ,そのうち何人かは,公判や弁護人の事情聴取において,「真実は,本件に関係がないのに,捜査側の強引な誘導に迎合させた」と告白している。
ア まず,B男,N男はいずれもA男の供述によって本件に引き込まれた人物にほかならない。
A男は,L男が本件に無関係であるとして釈放されたのを受けて,L男の代わりにB男を登場させた。
また,A男は,前川さんとB男がA男のいた喫茶店の場所を知らないことを受けて,出迎え役としてN男を登場させた。
他の主要な関係者とされる,H子,G男,I子,M子,K男も同様である。
よって,A男は,同人らについても,L男の場合と同じく,本件と無関係であることを承知のうえで,本件に引き込んだと考えて当然である。
他方,事件当夜,現場団地で前川さんが乗ったとされるスカイラインジャパン2000GTと同じ丸型テールランプを目撃したとされるK男や,前川さんに被害者の電話番号を教えたとされるR男は,本件殺人事件発生直後の時期から,本件の犯人と疑われ,警察から追及を受けていたにもかかわらず,長期間にわたり,前川さんと犯人を結びつける供述をした形跡がない。ところが,事件から1年近く経過した昭和62年1,2月頃の時期に至って,唐突にも,A男やB男の供述を裏付ける供述を始めているのであるから,当然,捜査機関の誘導が疑われる。
イ 関係者のなかに,取調べに対して当初から裏付供述をした者は,誰ひとりいない。
B男は,取調べ当初の1か月間,「事件の夜はアパート近くの公衆電話で太陽タクシーを呼んで友人A”男を訪ねたが,留守だったので,そのタクシーでアパートにもどっただけである」,「本件殺人現場の団地へは行ったこともない」,「前川を乗せて現場へ行ったことはないし,血を付けた前川の姿を見たこともない」と具体的に述べて関与を否定した。
N男は,取調べ当初の1か月間,「本件殺人事件の夜は,友人Z男と一緒に,うどんや得々に食事に行き,福井市内をドライブするうち,本件殺人事件の検問に遭ったので,本件に関わったことはない」,「P男宅でテレビを見ていたところに,A男から電話がかかり,A男を迎えに行ったことはあるが,それは別の日だ」と述べて関わりを否定した。
その他の関係者のなかにも,取調べに対して当初から裏付供述をした者は誰ひとりいない。さらには,事件後,誰1人として,周囲の人達に対して,本件に関わっていたことを述べた形跡がない。
このように,中核的な主要関係者とされるB男とN男の2人が,取調べの当初,長期間にわたって,具体的な理由を挙げて本件への関与を強硬に否定し,かつ,他の関係者の中にも,取調べに対して当初から裏付供述をした者が誰ひとりいないことは重要であり,彼らの当初の不関与供述が真実であることを示唆している。
ウ 本件取調べでは,重大な人権侵害というべき違法,不当な取調べが横行した。
公判証言や,弁護人の事情聴取に対し,「A男供述のストーリーを示して押し付けられた」,「取調べにA男が同席して説得や恫喝をされた」,「供述者を同席させて辻褄合わせをさせられた」という訴えが続出した。
前川さんの写真を見せて覚えさせたうえで人物特定供述をさせる,現場引き当たりに連れて行った後に現場状況の供述をさせる等の不当な取調がなされた。
N男や,N男供述を裏付ける人物とされたZ男,P男は,松山龍司刑事から,『A男に加えて,他の者も認めているから,間違いない』と,虚偽情報を用いた「切り違え尋問」2を受けたため,迎合せざるを得なかった」と証言している。
また,N男は,控訴審で,取調べ担当の松山龍司刑事に付き添われて出頭して,一旦,上記不関与供述を否定したものの,第1次再審請求の審理中に,各報道機関の取材に対し,「控訴審証言は,松山刑事から,別件覚醒剤事件を不問に付すことと引き換えに,証言するよう圧力を受けたものである」と告白している。
エ 関係者は捜査機関の圧力や誘導に抗しきれない弱い立場にあった。
関係者とされた若者達は,いずれも,叩けばほこりの出る捜査機関に弱みのある立場であった。
B男は,保護観察付執行猶予中にもかかわらずシンナーを常用していた。
N男は暴力団事務所に出入りし覚醒剤を常用していた。
しかも,関係者の中には,実際に,「捜査に協力しなければ逮捕する」と脅迫され,あるいは,執行猶予を取消され身柄拘束下でもっぱら本件の取調べを受けた者がいるのであるから,B男やN男も,同様の圧力を受けていたと考えて当然である。
オ I子は,A男供述のストーリーは,本件と無関係な出来事を脚色したものであり,捜査段階のI子の供述は,A男の供述に依拠した捜査側の誘導に迎合したものであると証言している。
N男も,第2次証言で,前述のように,本件ストーリーは,本件と無関係ないくつかの出来事を接ぎ木したものであると証言している。
一方,B男の供述調書は,A男供述の変遷に追随して,時期を同じくして,捜査側さえ捨て去った,「B男は,前川に自宅に送らせて先に帰宅したので,A男のところには来ていない」という,虚偽のストーリーを供述している。
最終段階のB男の供述内容は,B男に先立って誤認逮捕されたL男が,捜査官から供述するよう強要されたストーリーと瓜二つである。
H子とG男の供述調書は,A男供述の変遷に追随して,時期を同じくして,捜査側でさえ捨て去った,「L男が前川を連れて来た」という虚偽のストーリーを供述しているばかりか,その「変遷理由」まで一致している。
それらの事実は,A男が虚偽の供述をしたところ,H子,G男,及び,B男が,A男供述に依拠した取調官の強引な誘導を受け,捜査官から教えられたストーリーに迎合したことを示している。
カ このように,A男の供述によって関係者とされたB男やN男をはじめとする若者達の供述には,A男供述に基づく捜査側の強引な誘導に迎合したものであることを示す構造的な特徴が認められる。
したがって,B男やN男をはじめとする関係者らの関与供述の信用性を検討するには,否認期間中の供述調書や捜査報告書等の具体的な内容を検討する必要があるが,検察官は提出を拒否している、
よって,それらの証拠の開示が第2次再審請求の課題である。

3 「前川さんの犯行である」,「前川さんが血を付けている姿を目撃した」との供述は破綻していること

(1)「前川さんの犯行である」との供述
ア A男は,本件犯行態様について,「前川は,シンナーに誘うために被害者を訪ね,玄関扉を開けようとしたら被害者が包丁を突き付けて帰れと反抗したため,激高し訳が分からなくなって,ガラスの灰皿で被害者を殴打したところ,気付いたら血だらけでびっくりして逃げた」と供述している。
確定判決は,A男の供述に依拠して,本件は,前川さんが,シンナー吸引によって弁識能力が著しく減弱した心神耗弱状態で,被害者を誘ったところ,断られたのに激高して殺害行為に出た,単純かつ短絡的な突発的激情犯行であると認定している。
しかし,本件殺人事件を取り巻く情況証拠や法学的分析結果は,これと矛盾,対立するものである。
イ 本件は,暴走族やシンナー使用者と交友関係のある中学3年,当時15才の女子生徒が,自らの卒業式を終えた夜の午後9時40分頃,市営団地の被害者宅奥6畳間で殺害された事件である。
当夜,被害者の周囲は,親しい友人についてもリンチ騒ぎが起きる騒然とした情況であった。
被害者は,母親の留守中は玄関に施錠しているため,犯人が,被害者の意思に反して被害者宅に侵入したとは考えられない。
そして,本件殺人事件の起きた午後9時過ぎの時間帯には,友達が被害者宅に遊びに来る予定があったが,捜査副主任の刑事一課長板垣喜和は,その友達が誰かは解明されていないと証言している。
その一方,板垣課長は,前川さんについては,被害者との接点が認められないうえ,アリバイ主張が家族の供述とも一致していることを認めている。
よって,「犯行の行われた午後9時過ぎの時間帯に訪問予定の友達」が,本件の有力容疑者であることは明らかである。
このように,情況証拠は,本件が被害者と交友があり,自宅に招き入れられる関係の第三者によるリンチ殺人事件であることを示している。
ウ 法医学鑑定は,本件犯行は,一気に被害者を殺害したのではなく,①ガラス製灰皿で頭部を数回殴打して昏倒させる,②電気カーペットコードで首を締めて窒息させる,③包丁2本を次々と持ち出し,④被害者顔面をビニール製カバーでおおったうえから,⑤もっぱら顔面を刺突して多数の浅い刺切創ばかり加え,頬をえぐる等して出血させる,⑥電気ドライヤーコードに首吊り用の輪を作って鴨居につるして自殺を偽装する等,被害者をなぶりものにした,まさにリンチを思わせる複雑,執拗で,凄惨な手口であると分析している。
この法医学的分析は,犯行当時の前記情況ともよく符合している。
よって,卒業式の夜に起きた非行グループ等のリンチ殺人事件とみるべきである。
エ 犯行現場には,死体周辺をはじめ,多量の血痕が散乱しているのであるから,前川さんが,弁識能力が著しく減弱した無防備な状態で本件犯行を犯したのであれば,本件現場には,前川さんの指紋・掌紋・足跡,吸引していたシンナー臭等が残されているはずであるが,鑑識や検証によって,実際には,被害者と同じく15才前後の友達の指紋等が多数残されている一方,前川さんの指紋・掌紋・足跡,シンナー臭などの痕跡は何ひとつ存在しないことが明らかになっている。
前川さんの犯行であるとすれば,本来,あるべき物的証拠がない。
オ 犯行現場は被害者宅最奥部の6畳間だけであって,玄関入り口には何の乱れや争った形跡もないのであるから,被害者は犯人を自宅に招き入れた後,奥6畳間で殺害されたものであると考えて間違いない。
したがって,「扉を開けるや否や,玄関で,被害者が刃物を突き付けて帰れと反抗したため,激高し訳が分からなくなってガラスの灰皿で被害者を殴打した」というA男の供述は,犯行場所,及び,犯行動機の両面で虚偽であるといえる。
動機犯罪といわれる殺人事件について犯行動機に関する供述の矛盾を軽視してはならない。
さらに,本件は,被害者みずから鍵を開けて,自宅奥に招き入れる関係の親しい人物による犯行であって,玄関で,被害者から刃物を突き付けられて「帰れ」と峻拒されるような人物とは,対極の犯人像であって,この点でも矛盾している。
カ このように,犯行態様に関するA男の供述には重大な矛盾があり,確定判決の認定は誤りである。
(2)血を付けた前川さんを目撃したとの供述
確定判決は,本件関係者らが,「事件の夜に血を付けた前川を見た」という「大筋で一致」した供述をしていることをもって,有罪を裏付ける決定的な証拠であるとしているが,「事件の夜に血を付けた前川を見た」という供述は,関係者や,捜査機関の誘導による作り話である。
ア 「血痕付着」の事実を裏付けるとされる関係者らの供述には,客観的証拠との不整合,あるべき客観的な裏付けの欠如がある。
(ア)確定判決は,A男,B男,及び,N男の供述に依拠して,前川さんが手指や着衣を血だらけにして,乗用車スカイラインジャパン2000GTの助手席に乗降を繰り返し,ダッシュボードに手形の血糊を付着させたと認定しているが,同車のどこにも,被害者の血痕を示すルミノール反応や前川さんの指紋等の痕跡は認められない。さらに,関係者の供述によって,立寄先とされた多数の箇所のどこにも,被害者の血液や請求人の指紋その他の痕跡は発見されていない。
異議審決定は,検察官提出の実験結果に依拠して,ダッシュボードのルミノール反応は,車内清掃や,屋外で日光を9か月間受けたために,陰性になったものと判示している。
しかし,ダッシュボードに近接した箇所に,事件の1年前に付着した第三者の血痕が付着時そのままの形状で明瞭に残っているのであるから,ダッシュボードに限って車内清掃や日光照射の影響を受けたとは考えられず,ルミノール陰性の事実は,そもそも被害者の血痕が付着していないことの証左であると考えられる。
また,検察官提出の実験は,実際に,当時のスカイラインを用いて,長期間の日光照射による血液成分の変性を検証したものではない。
他方,車内清掃については,スカイラインの持ち主が,「3月20日~12月18日の10か月間に、最低でも1か月3~4回は洗車・ワックスがけサービスを受けた」と供述している。
しかし,当該ガソリンスタンドを含むガソリンスタンドのワックス会員サービスとは,車両外部のワックスがけを指し,車内清掃をすることはほとんどなく,車内のワックスがけは皆無である。
また,検察官提出の実験結果でも,100~200回ゴシゴシ拭くという,実際のガソリンスタンドサービスではあり得ない非現実な清掃を行わなければ,反応が消滅することはないことが確認されている。
(イ)A男は,「前川の血染めトレーナー等を前川宅に持って行った」と供述した後,「前川宅に持って行ったのは間違いであり,底喰川(そこばみがわ)ポンプ場近くに投棄した」と供述し,さらに捜査から控訴審公判の最終段階まで,投棄や隠匿の方法や場所を二転,三転させたあげく,結局,そのどの場所からも「血染めトレーナー等」は発見されていない。
「血染めトレーナー等の投棄(又は隠匿)」は,A男にとって,勘違いする余地のない核心的な事実であるから,この点に関する供述の変遷に合理的な理由がないことが明らかである3。
イ 血を付けた前川さんを目撃したとの事実を否定する供述がある。
第1に,I子は,「取調べに対し,『前川さんが血を付けた姿で泊まりに来た記憶はない』,『A男をはじめ,部屋に出入りしていた誰かの足か布団に米粒大の血痕5,6滴が付いているのを見たことがあるような気がする程度の記憶しかない』と供述したところ,警察官が,『前川が血を付けた姿で泊まりに来た』という供述調書に作成した」,「前川さん逮捕のニュースを聞いて,あんないいかげんな供述で捕まるのかなと,びっくりした」と証言している。
第2に,B男は,取調べ当初,「前川を乗せて現場へ行ったことはないし,血を付けた前川の姿を見たこともない」と供述している。
第3に,G男は,弁護士の事情聴取に対し,「血だらけの前川を見たことはない」と供述している。
ウ そこで,関係者らの「血痕目撃供述」を検討すると,相互矛盾や食い違い,さらに変遷が多々認められる。
(ア)メゾン丙川のH子宅における前川さんの姿について
Ⅰ A男は,乙山前から,メゾン丙川のH子宅室内までの前川さんの姿について,ジャンパーを着ていた,また,膝に大きな血痕付着があったと供述しているが,B男,H子,N男,G男は,これらの事実を否定している。
Ⅱ B男は,当初,現場団地駐車場ないしその周辺で前川さんの右手の指から甲にかけて血が付いているのを見たのがすべてであると供述したが,後になると,エレガント甲野のI子宅前路上で,前川さんが車の乗降を繰り返している間に,胸に大きな血痕が付いているのに気付いたと供述を変遷させた。
現場団地駐車場には30W屋外水銀灯2基が設置され付近一帯をほぼ見透かせる明るさを保っており,そのうち1基の水銀灯はちょうど現場である239号室付近に位置し,3~5mはなれた地点からも人相,着衣等を明確に確認できる状況にあることに照らせば,B男が現場団地駐車場で胸の大きな血痕に気付かなかったというのは不合理である。
さらに,乙山前に到着するや,以後の記憶がなくなったと供述しているのも不合理である4。
よって,現在,元の団地建物や水銀灯が撤去して建て替え工事中ではあるが,第2次再審請求に向けて,専門家に依頼して,現場団地駐車場内の照明状況を再現して,胸に付着した大きな血痕が否応なしに視認できることを確認する実験を行うことが考えられる。
Ⅲ N男は,取調べ末期,唐突に,メゾン丙川近くの駐車場で,本件車両のコンソールボックス上と,ダウンジャケットの袖口に少々血が付いていたという供述を始めたが,A男,及び,B男は否定している。
Ⅳ G男は,シャツの左手袖あたりに、肘を中心に幅30㎝くらいに赤黒く一見して血と分かるシミが付いていたと供述しているが,A男,N男,H子は否定している。
Ⅴ H子は,ハイネックのシャツを着ていたと供述しているが,A男,N男,G男は否定している。また,転々と飛び散っているような感じの細かな血痕だったと供述している点で,大きな血を見たとするA男,N男の供述と矛盾する。
(イ)エレガント甲野のI子宅における前川さんの姿について
Ⅰ A男は,当初,右肩口寄りの胸に大きな血痕,右太腿から膝にかけて大きな血痕,両脚に飛び散った血痕,手首や足首にも血液が付いていたと供述した。
その後,左胸にも大きな血痕が付いていた,靴にも少し血が付いていたと供述を変遷させた。
取調べ末期の3月頃になると,左胸の大きな血痕が消え,口のまわりも血で汚れていたと供述を変遷させた。
Ⅱ I子は,A男をはじめ,部屋に出入りしていた誰かの足か布団に米粒大の血痕5,6滴が付いているのを見たことがあるような気がする程度ですと供述しているだけである。
(ウ)このように,関係者らの「血痕目撃供述」を検討すると,相互矛盾や食い違い,さらに変遷が多々認められることから,関係者らの「血痕目撃供述」は,I子が証言しているように,本来記憶がないのに,本件と無関係な出来事に基づき捜査機関がそれぞれ脚色して作り上げたものであると考えるのが合理的である。

4 第2次再審請求に向けた課題

このように,関係者の供述には,重大な矛盾や不合理な変遷があり,それは捜査機関がA男の虚言を利用してでっち上げたことを示していると考えられる。
そして,第2次再審請求に向けた課題は,本件旧証拠構造の脆弱な特徴の分析をさらに深めること,証拠開示によって事件直後の捜査状況や関係者の取調べ当初の供述を示す未提出証拠の提出を得ること,できるだけ客観性の高い新証拠を提出することの3点であると考えている。

刑事訴訟法等の改悪法案の廃止をめざすたたかい

「刑事訴訟法等改正案に付きましてのお願い」

参議院法務委員会委員の皆様へ

 私たち冤罪被害者は刑事訴訟等改正案に付きまして、全面可視化の保証がない法案のままに「盗聴の自由化と司法取引」が導入したならば、ますます冤罪を増やすことになる懸念から、絶対に認められないとして活動して来ました。
 参議院でも12日から審議が始まるとのことですが、参議院の法務委員の皆様には、私たちの懸念が解消されないままには成立させないで頂きたいと願いまして、このお願いをお届けいたします。
 この法案にあります取り調べの可視化は、全面的な録音・録画とは名ばかりです。裁判に供される事件の3%程度しか録音・録画しないうえ、その3%ですらも「供述を得られないときは取調官の意思で中断して良い」とする抜け道まで用意した欠陥を持っていましては、たった3%程度の事件に於ける全面的な録音・録画の取り調べにも、何の保証もありません。
 ひとたび犯人と誤解して逮捕したならば、強引に自白を強いて冤罪を作るばかりでなく、証拠のねつ造までも行う警察の酷さを体験する私たちにしますと、このような法案では、無実の人が疑われて行われる取り調べでは、今までと同じように「録音・録画が停止」されて自白強要などの強引な取り調べが行われ、冤罪者が作られることは確実だと判ります。
 郵政不正事件や氷見事件などの冤罪問題ゆえに始まった法改正だったはずですが、いつの間にか盗聴法の拡大と司法取引法の新設という、捜査手法の拡大ばかりの法律になりましたことが、なぜなのだろうかと不思議でなりません。
 今の盗聴法でも、統計によれば、その80%くらいは事件と無関係な盗聴がなされています。これが窃盗も含めた犯罪へと拡大され、しかも通信事業者の立ち合いが無くされますと、私たちの暮らしが秘密裏に侵される範囲も途方もなく広がります。
オレオレ詐欺などの犯罪防止を理由に法律の拡大と言いますが、オレオレ詐欺犯は携帯電話を次々と取り換えて行うために、盗聴で追跡することなどは不可能であって盗聴法の拡大は役に立たないと、私たちでさえも知っていますのに、なぜ国会議員の皆さんは、このような盗聴法の拡大を警察の言いうがまま認めて賛成できるのでしょうか。
私たちが認識できないところで警察によって侵される盗聴の人権侵害は、全く主義と主張に関係がありませんし、警察の盗聴で侵された人権侵害は取り戻せません。
共産党の国際部長だった緒方靖夫さん宅に対する警察庁と神奈川県警による盗聴行為を、未だに警察が認めていないことは、国会議員の皆さんはご存知でしょうが、えん罪を作り上げた法廷などでも警察は平然と嘘の証言をすることを体験しています私たちにしますと、「警察官の立ち合いで人権侵害となる盗聴を防ぐ」などとした修正で成立させますことは、悪い冗談としか思えません。
司法取引法は政治家の皆さんに無関係で済むのでしょうか。
衆議院議員の小沢一郎さんの冤罪事件、福島県知事だった佐藤栄佐久さんの冤罪事件、美濃加茂市長の藤井さんに対する冤罪事件、衆議院議員だった鈴木宗男さんに対する「やまりん」問題での冤罪事件など、例はいくらでもあります。
今までは非公然と使われていた捜査手法が、今度は堂々と使われます。警察や検察が狙いをつけて「あの政治家に金を渡したはずだ。認めなければ、お前を刑務所へ入れる、重い刑にする。認めれば助ける」と責められて、果たして「違う」と拒み続けられる企業家は、果たして何人存在するでしょうか。
先の衆議院では「弁護人の立ち合いで誤りを防ぐ」と修正しましたが、この「司法取引」で罪を問われる立場の人には弁護士は付きません。「あの人が罪を犯した」と訴えられた人の弁明は、どうして守るのでしょうか。今まで以上に「司法取引」によって「犯人」が作られる可能性が高くなり、私たちが経験した冤罪者としての苦難を体験することになるのです。このような法律に賛成された政治家の皆さんは、ご自分は安全だと思われるのでしょうか。ご自分だけ安全ならば、他の政治家や国民に禍根が及んでも構わないと思われるのでしょうか。私たちには、その考えが理解できません。
 私たち冤罪被害者一同は、このような多くの問題を含む法律では冤罪が多発する懸念と恐怖を感じて賛成できません。自分たちが「正しい」と思い込めば、平然と証拠を捏造したり、無実につながる証拠を隠したりする、組織としての警察と検察の恐ろしさを、体験して知っているからです。これまでに多くの冤罪を作っても反省すらもしない警察と検察に対して、このような法律を与えますのは犯罪者に凶器を与えるのと同じだとさえ思っています。
 冤罪の苦しみは罪の重さではありません。痴漢冤罪などの微罪でも生活が奪われます。人生が狂うのです。自殺を試みた仲間もいます。政治家の皆さんには、警察と検察によって多くの苦難を経験させられました私たちの思いをご理解くださいまして、今回の刑事訴訟法等の一部改正法案では、幾つもの重大な欠陥を抱えたままに法律として成立させることをなさらないで頂きたいと、私たちの懸念にお答え頂けるような慎重な審議をして頂きたいと、心からお願い申し上げたく、このお願いをお届けいたします。
   冤罪被害者代表者一同
 青木 惠子            (大阪・東住吉事件)
 石田  崇            (東京・痴漢冤罪事件)
 岩元 健悟            (鹿児島・レイプ事件)
 川畑 幸夫            (鹿児島・志布志事件・文字事件)
 ゴビンンダ・プラサド・マイナリ  (東京・東電OL殺人事件)
 桜井 昌司            (茨城・布川事件)
 菅家 利和            (栃木・足利事件)
 袴田 秀子            (静岡・袴田事件)
 藤山  忠            (鹿児島・志布志事件)
 柳原  浩            (富山・氷見事件)
 矢田部孝司            (東京・痴漢冤罪事件)

今後の主な事件の日程

 4月28日(木)東住吉冤罪事件・朴龍皓さんの再審公判(大阪地裁10時~ ) 
 5月 1日(日)メーデー(9時から 会場入り口にて署名・宣伝行動)
 5月 2日(月)東住吉冤罪事件・青木惠子さんの再審公判(大阪地裁10時~ )
 5月 7日(土)布川国賠裁判支援する会(15時から 日比谷図書文化会館4階会議室)
 5月13日(金)布川事件再審無罪5周年 なくせ冤罪!5・13朗読劇とコンサートの夕べ
         (東京・文京区シビックホール 18時半から )
 5月18日(水)福井事件研究会(18時 桜井司法研究所)
 5月19日(木)第223次最高裁統一要請行動(宣伝=8時15分~、刑事要請=10時)
 5月19日(木)名張毒ぶどう酒事件要請行動(13時半名古屋高裁、15時名古屋高検)
 5月28日(土)布川事件再審無罪5周年記念集会
(青山学院大学・総研ビル11階19会議室 13時から)
 5月28日(土)大阪たんぽぽ集会(大阪市立こども文化センター 13時半から)
 6月 3日(金)大崎事件第3次再審請求三者協議(鹿児島地裁 14時から)
 6月24日(金)名張毒ぶどう酒事件要請行動(13時半名古屋高裁、15時名古屋高検)
 7月14日(木)名張毒ぶどう酒事件要請行動(13時半名古屋高裁、15時名古屋高検)
 7月30日~8月1日(日本国民救援会第58回全国大会 静岡県熱海市 ホテル大野屋)
*各地の事件の取り組みや日程を事務局まで通信をお寄せください。zuke@kyuenkai.org
* 次号「ニュース」は、2016年6月中旬頃に発行する予定です。

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