えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.78再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2016年 6月23日発行 No.78

取調の可視化・通信傍受・司法取引の悪法に反対する!

再審・えん罪事件全国連絡会 代表委員
新倉修(青山学院大学教授)

2016年5月19日から24日にかけて、国会は参議院選挙をひかえて終盤に来ていた。参議院法務委員会では、与党議員が質疑を全く放棄し、国民の代表としての任務を完全に放棄した挙げ句に、ひとり共産党の仁比聡平議員が反対の討論を行うという惨状を呈していた。自民党の三宅伸吾議員と民進党の小川敏夫議員が賛成の討論を行って、刑事訴訟法等の一部改正法案が採択され、参議院本会議では公明党の魚住裕一郎議員による委員長報告だけで直ちに採決に移り、可決されると即日、衆議院に送付され、その日の午後に衆議院法務委員会にかけられたが、ここでもひとり共産党の清水忠史議員が与えられた時間を大幅に超過して質疑しただけで、与党や一部野党は質疑を放棄して採決に移り、翌火曜日の午後1時25分に、衆議院本会議で自民党の葉梨康弘議員による委員長報告の後、起立多数で「悪法」が可決成立した。そのとき、「えん罪の被害者は反対しているぞ」という不規則発言が聞こえた。私は、議長席正面の傍聴席前から2列目の端にいたが、心の中で泣いた。いったいだれが、詐術に満ちた法律の成立に責任を負うのであろうかと思うと、暗澹たる気持ちをぬぐえなかった。

一部録画の悪弊が露見した今市事件

波乱もあった。商標法違反で起訴された被告人を別件の殺人容疑で140日間以上も執拗に取り調べた「今市事件」で、70時間ほどの録画が裁判員裁判で証拠採用され、そのうち70分ほどが法廷で再生上映され、裁判員はその録画を見て、「殺人」の容疑について被告人の有罪を確信したという発言を公判後の記者会見で明らかにした。宇都宮地裁(松原里美裁判長)の判決も、客観的証拠が乏しく、「自白」以外に決め手はないとまで言っている。一部録画の悪弊が露見したことを踏まえて、参議院法務委員会で仁比議員が追及したところ、答弁に立った法務省林真琴刑事局長は、被告人を別件で取り調べるのは、任意捜査であり、新法においても録画義務の対象とならないと言明した。その解釈は間違っているという日弁連の意見に基づいて再度糺したところ、刑事局長も岩城光英法務大臣も、法制審議会での議論では日弁連も賛成していたと胸を張って答えた。参考人の桜井昌司さんは、こうも解釈できる、ああも解釈できるということを言っても意味がない、法律にはっきり規定してもらわないとえん罪被害者は救われないと言って、頂門の一針を打ち込んだ。
もう一つの波乱は、三宅議員も小川議員も、賛成討論と言いながら、えん罪防止がこれで万全なのかという訴えを切々と行った。これを受けて自民党・公明党・民進党・生活の党が共同提案した「附帯決議」では、「刑事訴訟法第301条の2第4項の規定により被疑者の供述及びその状況を記録しておかなければならない場合以外の場合(別件逮捕による起訴後における取調べ等逮捕又は勾留されている被疑者以外の者の取調べに係る場合を含む)であっても、人的・物的負担、関係者のプライバシー等にも留意しつつ、できる限り行うように努めること」という下りがある。起訴後の別件取調べや余罪取調べが任意捜査であることが明言されているわけではないが、刑事局長答弁を踏まえて、法律上の義務ではないけれど、努力目標として録音録画に努めると述べている。とはいえ、「今市事件」で露呈した「穴」はまだ塞がったわけではない。

法律家・市民8団体の抗議声明

法律家・市民8団体は、5月30日付けで「刑事訴訟法・盗聴法の改悪に強く抗議する声明」を出し、同時に、有志100名余の名前で、日弁連に公開質問状を送って、日弁連会長と5月31日に面談をした。中本和幸会長は、5月24日付けの会長声明と参議院法務委員会「附帯決議」および小坂井久氏「いわゆる可視化法成立『前』の情況をめぐって」(大阪弁護士会会報OBA Monthly Journal2016年5月号)のコピーを配付し、附帯決議は遺憾であること、今後は「マニュアル」をつくって弁護士研修を徹底して、弁護士実践の中で問題点を克服し、全面可視化をめざすという趣旨の発言をした。
弁護権拡充のために、研究やマニュアルづくりは意味があり、その重要性は否定できない。可視化実現本部長である日弁連会長が率先垂範すれば、その効果は大きいであろう。しかし、それ以外にもまだいろいろできることがあり、しなければならないことがある。

まだやるべきことがある

刑事訴訟法などが改正されると、それに対応した実施細則をつくるはずである。そこで、最高裁判所(寺田逸郎長官)が憲法の定める規則制定権に基づいて「刑事訴訟規則」を改正したり、警察活動のお目付役である国家公安委員会(委員長・河野太郎国務大臣)が「犯罪捜査規範」を改正したりするはずである。ならば、規則制定委員会に事務総長(出井直樹弁護士)らを送り込むことができる日弁連としては、機先を制して、防御権の拡充を図る提案をすべきであろう。また、国家公安委員会に対しても、関係機関として、申入れを行うことは不自然ではない。できるだけ可視化したくないと願う捜査側が相手なら、相当踏み込んだ提案でなければ、意味がなく、ひろく国民に訴えて、国民の請願権による要求運動に高める方法もあり得る。
えん罪はあってはならないものであり、事後的に刑事補償で償われるような類いのものではない。責任者の追及は、国家賠償が認められた例が少ないことから見ても、救済が十分ではなく、また、救済に充てられる金銭はすべて国民の税金によって賄われていることは、国民の理解が得にくいのではないか。予防に優る救済はない。そこで、刑事局長の見解が、起訴後の別件取調べや余罪取調べが任意捜査であるというなら、そのような場合には取調べの任意性を確保するために、弁護人の立会いが義務づけられ、これに反する取調べによって得られた自白は、憲法38条2項にあたるとする刑事訴訟規則を作るように提案すべきであろう。国家公安委員会も、当然、これに相応する規定を定めるべきである。

国際法上の二つの課題に答えるべき

すでに拷問禁止委員会も、代用監獄の廃止ともに、取調べによる自白追及の捜査手法が中世と変わりないと批判している。自由権規約委員会も同様の見解を繰り返し述べており、これらの人権機関の勧告は、憲法98条において誠実に遵守すると宣言した国際法の履行に関する権限ある国際機関の見解であり、それぞれの人権条約を批准した日本は、定期的に国家報告をするとともに、これらの履行監視委員会と誠実に建設的対話を行う約束をしているわけだから、勧告を一方的に無視するのは、「法の支配」のイロハもわきまえない野蛮国という誹りを免れないであろう。
さらに国際機関による人権審査を凌げばよいという気風を改めて、これもかねてから強く要請されている国際法上の2つの課題に答えるべきである。つまり、実効性があり、かつ、独立の国内人権機関を設置して、たえず人権状況の改善に自主的に取り組むとともに、後ろ指を指されることなく、国際舞台で存分に活躍するために、自由権規約をはじめ人権条約のすべてについて個人通報制を採用し、必要な条約・議定書の批准を早急に行う必要がある。

立憲主義が問われている

要するに、アジアでは、人権を制限したり抑圧したりしなければ、政権は維持できないとか、社会の安全ははかれないという「負の遺産」をいつまでもかかえておくことは、憲法前文が自ら70年ほど前に約束した「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しよう努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という願望をうらぎることになろう。ここでも立憲主義が問われていることは、自明といっても過言ではない。

大阪・東住吉冤罪事件

8月10日に再審判決言い渡し決定!

関西たんぽぽの会・伊賀カズミ

青木さん(10時)、朴さん(13時半)の再審無罪へ

再審無罪実現をめざしてたたかい続けてきた東住吉冤罪事件は、いよいよ8月10日(水)、大阪地裁で再審公判の判決日を迎えます。
当日は、午前10時から青木惠子さんに対する判決、午後1時30分からは朴龍晧さんに対する判決が、大阪地裁201大法廷で言い渡される予定です。
既報に明らかなように、大阪地裁第3刑事部・西野吾一裁判長のもと開かれた再審公判では、検察官は有罪立証を断念し、裁判官に「しかるべく」と丸投げしたにもかかわらず、論告では出火原因は客観的に確認ができないとし、自白内容の信用性は維持できないとしながらも、自白の任意性にも問題はないと、矛盾した主張を繰り返しました。
対する朴弁護団、青木弁護団はともに、事件性のない自然発火による事故を、保険金目当ての放火殺人事件とした警察の初動捜査のミスを鋭く指摘、自白を得るための強権的な取り調べの数々の不当性についても徹底して追及。さらには検察による警察の不当捜査や取り調べを追認し起訴した責任等々を批判。
最後は裁判所に対して、確定審において自然発火の可能性を見抜くことができずに、自白偏重の審理に終始。無罪判決をなぜ出すことができなかったのかを改めて言及。そして両弁護団ともに、再審公判における判決は、警察・検察の責任、さらには裁判所の責任をも明確にし、何故朴さん青木さんが20年にもわたる不当な拘束を受けなければならなかったのか、根本的な問題点を指摘する、そのような判決を期待すると締めくくりました。
国民救援会大阪府本部と支援する会では、弁護団との意見交換の上で「警察・検察の責任、裁判所の責任に言及し、根本的問題点を指摘する判決を」求める要請ハガキ運動を提起しています。
再審・えん罪事件全国連絡会に参加するみなさんの大きなご協力を何卒よろしくお願いいたします。
そのうえで、いよいよ8月10日には、今年の5・20宣伝行動のチラシの表紙を飾った「無罪」の垂れ幕(財田川無罪判決のときに公選法弾圧事件の元被告であった書家の大坪南龍さんの揮毫による)が布川事件以来、掲げられることになります。
判決終了後、大阪弁護士会10階会議室で報告集会を開催いたします。
みなさんのご参加を心よりお待ちいたしております。
 ※file要請はがき

今後の予定

 9月10日(土)13:30~ 解散総会を大阪グリーン会館2階大ホールで開催。
 10月15日(土)には祝賀レセプションを、国民救援会大阪府本部・支援する会共催で開催する予定にしています。

名張毒ぶどう酒事件

ぶどう酒の封かん紙等、弁護団が新証拠を提出!

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5月18日、名張弁護団は名古屋高裁刑事1部に対し、ぶどう酒の封かん紙の裏面の糊の成分分析4点、毒物に関する新証拠5点とあわせて9点の新証拠を提出し、記者会見を行いました。
封かん紙の問題は、ぶどう酒に毒物を入れる機会に関わる重要な証拠の一つです。確定判決は、ぶどう酒の封かん紙が公民館の囲炉裏の場で見つかったことや公民館で奥西さんが一人で懇親会の準備をしていたとして、ぶどう酒に毒物を混入する機会があったのは奥西さんしかいないと認定しています。
弁護団は、真犯人が公民館とは別の場所で毒物を入れた後、未開封を装うために封かん紙を貼り直した可能性が高いとして、名古屋高裁が保管している封かん紙についた糊の成分分析に必要なデータを採取するため、今年1月に名古屋高裁の許可を得て、データを採取し、専門家にそのデータの分析を依頼していました。
弁護団は記者会見で、「今回の糊の成分分析では、本来の製造段階で使われた糊とは別に、当時、一般に流通していた洗濯糊や工作糊などに含まれている成分で」「自然界には存在せず、食品にも含まれない」もので、「奥西さんが糊を塗ったなどの供述、証拠はまったくなく、今回の証拠で、農薬を混入したのは公民館の囲炉裏の場ではなく、第3者によるものであったことが証明できる」と、述べました。
また、毒物に関する新証拠として、事件で使用された毒物が奥西さんの自白した「農薬ニッカリンT」と異なる実験報告書等5点の新証拠を提出しました。
会見で鈴木泉弁護団長は、「これだけ科学的、具体的に真犯人の存在に迫る証拠は初めてと言っていい」と、今回提出した新証拠の重要性を強調しました。
今回の新証拠の提出によって、第10次再審請求審もいよいよ本格的な審理が始まります。全国からの支援の強化が求められています。国民救援会、守る会では、下記の日程で集会、名古屋高裁、高検への要請行動を予定しています。
 7月14日(木)13時半 名古屋高裁、15時 名古屋高検要請
 8月24日(水)13時半 名古屋高裁、15時 名古屋高検要請
 *写真は国民救援会愛知県本部提供。

袴田事件

弁護団が証拠のねつ造を示す意見書を提出。

元警察官2名の証人申請 結論は次回三者協議に

5月24日、袴田事件の3者協議が東京高裁(大島隆明裁判長)で行われました。
この日の3者協議では、前回に引き続き、DNA鑑定検証実験の進捗状況と弁護団が申請した証人尋問の請求等について議論が行われました。
弁護団は、三者協議に先立ち、新たな証拠のねつ造を示すものとして「右下腿の傷に関する意見書」を提出しました。
確定判決は、袴田さんは5点の衣類のズボンをはいて犯行に及び、被害者の専務と格闘した際に右足を蹴られたため、ズボンが破れ、その下の脛にも傷が付いた、と認定しました。公判で袴田さんが否認に転じる中で、右足の脛の傷は、5点の衣類が袴田さんの犯行着衣であることの根拠として、死刑判決の重要な支えになっていました。
ところが、弁護団と支援者がこの間開示された証拠を分析したところ、袴田さんが逮捕された当日(8月18日)に警察官が作成した「身体検査調書」には、「右足の裏に小豆大の古い傷痕2つ」と、とても小さな古い傷までとらえているにもかかわらず、右足の脛の傷は記載されていません。つまり、開示された証拠などによれば袴田さんの右足の脛の傷は専務との格闘でできた傷ではなく、むしろ袴田さんが裁判の中で主張した「取り調べの中で暴行を受けてできた傷」であることを裏付けるものです。
弁護団は、三者協議後に記者会見を開き、DNA鑑定検証実験のための検証試料が裁判所、検察、弁護団が立ち会いの下で鑑定人に渡されたことを明らかにしました。しかし、鑑定人と裁判所がどのような検証手順で検証を行い、いつ頃結論が出るか今後の見通しについて、この日の協議では裁判所からは説明がなく、次回7月8日の3者協議までには明らかにされる予定だと報告されました。
また、弁護団が申請した元警察官2名の証人尋問については、検察側が「必要性ない」と反対し、裁判所は検察に6月13日までに反対する「意見書」の提出を求め、その上で次回の3者協議で結論を出すことになりました。
弁護団が証人申請した元警察官は、一人は事件直後に味噌工場のタンクをはじめ最初の家宅捜査に参加した警察官で、もう一人の元警察官は、5点の衣類が発見された直後、袴田さんの実家の家宅捜査に参加し、5点の衣類のズボンの端布(共切れ)を発見した警察官です。この2人の元警察官の証人尋問が実現されれば、警察の証拠のねつ造の実態がなお一層明らかにされます。ぜひ、証人尋問の実現にむけて裁判所への要請を強める必要があります。

検察の即時抗告を求める署名を提出

この日、三者協議にあわせて「袴田巌さんの一日も早い再審無罪を求める実行委員会」は、裁判所前で宣伝行動を行い、元警察官の証人採用の実現と新たな警察の証拠のねつ造問題を告発し、検察の即時抗告を直ちに棄却するように訴えました。その後、東京高裁と東京高検に要請行動を行いました。東京高裁に再審確定を求める署名3011筆(累計で約16万)を提出しました。
事件発生50年! 早期の再審確定を求めて支援運動の強化へ元警察官証人採用を求める要請ハガキを集中しよう。
8月21日の地元・清水での集会を成功させよう。
「袴田巌さんの一日も早い再審無罪を求める実行委員会」(国民救援会や日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会など8団体で構成)は、要請行動後に実行委員会を開き、事件発生50年に節目の年に支援運動を強化することを確認しました。

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①元警察官の証人実現を求めるため緊急要請ハガキ(7月5日までに投函を)を各団体で作成し取り組むこと。 *別途添付したハガキを活用してご協力をお願いします。
②事件が発生した6月30日に静岡県警への抗議(9時)、お昼に県庁前で宣伝行動を行う。
③袴田さんが逮捕(8月18日)されて50年にあたって、8月21日(日)に事件の地元清水テルサで集会(13時半から)を開催する。
④静岡弁護士会が計画している支援集会の成功にむけて協力する。
⑤来春2月に東京で全国集会を開催する。
⑥袴田事件「夢の間の世の中」の自主上映運動を成功させよう。
■自主上映の問合わせ先 映画「袴田巖プロジェクト」
  TEL 042-316-5567

≪次回の東京高裁、高検要請行動≫

次回7月8日(金)午後3時半から行われる三者協議にむけて、東京高裁、東京高検への要請、裁判所前での要請行動を下記の日程で行う予定です。
12時15分 東京高裁前宣伝行動
13時15分 東京高裁要請行動
14時10分 東京高検要請行動
15時15分 東京高裁前・弁護団激励行動
15時30分 東京高裁第8刑事部で三者協議

布川事件国賠裁判

布川事件再審無罪5周年記念集会を開く!

布川国賠を支援する会事務局・山川清子
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布川事件無罪判決5周年記念集会が、5月28日、70名あまりが参加して、青山学院大学総研ビルで開かれました。この集会は杉山卓男さんをはじめとするこの5年の間に亡くなった布川再審に関わった方々への黙とうから始まりました。
国民救援会中央本部の鈴木猛事務局長はその祝辞の中で、「無罪確定後の記念集会は、普通、なつかしい、よかったというのが普通だが、布川の場合は、闘いの中にある5周年ということができる。桜井さんの検察・警察の責任を追及するための国家賠償請求訴訟の最中であるし、また刑訴法が冤罪拡大・盗聴拡大に改悪されたが、その際、桜井さんが冤罪被害者の先頭に立って活動した。この刑訴法改悪で検察・警察が冤罪を反省していないことも明らかになり、現在の桜井さんの運動の意義を改めて確認している次第である。」と述べました。
「布川事件の40年」という2007年に作られたビデオを見た後、元布川再審弁護団事務局長の山本裕夫弁護士が「布川事件の44年は問いかける」と題した講演を行いました。
再審・冤罪の歴史から見て、白鳥・財田川決定のあと、なおせめぎあいが続く現在、布川事件という供述証拠のみによる有罪の柔構造冤罪事件で、証拠開示させ、総合評価で再審無罪を勝ち取ったこと、最高裁の判断も経たことをその意義としてあげました。また、他の冤罪事件と同様、弁護団はあらゆる論点を積極的に慎重に攻めていったが、それは必要条件であるが十分条件でなく、再審では、大変な負担を負うことになる裁判官をその気にさせることが重要で、そのためには国民の関心を呼び起こすための運動が不可欠であるとしました。そして、これからも真実は勝つとの信念で頑張りましょうと結びました。
集会後、アイビーホールに場所を移しての祝賀会は、参加者が次々とマイクを握り、なつかしい思い出話に花が咲き、楽しいひと時を過ごしました。

鹿児島・大崎事件

父と母、家族の悲痛な叫び、無念・・・

再審開始と救済を求めて長女が意見陳述

6月3日、鹿児島地裁で再審請求人の一人である長女の意見陳述と、第6回三者協議が行われました。この日、原口さんの再審無罪をめざして熊本、宮崎、鹿児島から25名が参加して、弁護団を激励して、三者協議に送り出しました。その後、支援者は裁判所のまわりをシュプレヒコールをあげながらパレードしました。
三者協議後に弁護団が記者会見を開き、長女の意見陳述は弁護団からの質問に答える形で行われ、事件当時親族20 人以上が大家族で仲良く暮らしていたが、この事件を境にして親族の信頼関係がズタズタにされたこと。冤罪に巻き込まれた家族の悲痛な思いと生活の苦労を事実をもって裁判官に訴えて、長女の魂の叫びに弁護団も涙を流して聞いたと報告されました。
また、この日の三者協議では、以下の7点が確認されたことも報告がありました。
 ①弁護団が開示請求していた、第1現場とされている道路の側溝から引き揚げられた被害者を目撃したという近所の住民の供述調書については、検察官から「不存在である」、不存在の理由については、「共犯者らの記録保存期間が経過して破棄された可能性がある」と回答があった。
 ②未提出の46本のネガについては、検察が6 月13日までに裁判所に提出し、弁護人が写真の専門家とともに裁判所内においてネガの状況を見分し、印画の可否を確認した上で、可能な場合には弁護人側において印画する。
 ③弁護側提出の大橋・高木両教授による供述心理鑑定書について、両教授の鑑定人尋問の際裁判官から出た疑問を踏まえ、両教授は補充鑑定書を提出した。この補充鑑定書の内容について、再度両教授への反対尋問を実施する可能性も出てきた。
 ④弁護側申請の吉田謙一教授の法医学意見書にたいして、検察は近藤稔和鑑定人の反論意見書を7月末までに出する。
 ⑤弁護団が求めていた、裁判所による現場検証の件については、「引き続き検討させてほしい」との回答にとどまった。
 ⑥最終意見書を双方、11 月末までに出す。
 ⑦89 歳のアヤ子さんの状態を考慮し、審理は迅速に進めたい。

会見の最後に、意見陳述をおこなった長女が発言しました。長女は、「今日までに 37 年になる。37 年間、犯罪者としてみんな苦しんできた。
父は、事件の前に交通事故で、身体も思うように動けないような状況だったのに犯人にされてしまった。父も「母がした」と言わされてしまった。志布志警察 が殺人と決めつけて犯罪者とされた。『取り調べがほんとうに苦しかった』と言って、叔父と従弟の 2 人は自殺してしまった。警察は家族を苦しめてきた。最初から母は自白していない、37 年間やっていないと言い続けてきた。
私たち残された子供は、母も父も連れて行かれたので、両親と一緒に暮らし事件について話すことはなかった。家族も親戚もみんな苦しんで来た。このような家族と親族の仲を引き裂く、冤罪事件は絶対になくしてほしい。
父は、刑期を終えてひとりで自宅に戻ってきて、亡くなった被害者の家の掃除など、コツコツとしていた。
母は、天に誓ってもしていない。母は自白せずにがんばっている。本当にやっていないからこそ、やってないと言っている。
母は、もうすぐ89歳となります。母の、元気なうちに無罪を知らせたい。」

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次回の三者協議は、8 月 2日午後 4時 30 分からと決まりました。
全国のみなさん。原口さんが生きて無罪を勝ちとるために、なお一層のご支援をお寄せください。

京都・長生園不明金事件

粘り強く事件の真相を地域で広める

長生園不明金事件の真相を究明する会
事務局長 山岡 良右

無実の人を救う!全国宣伝行動と連帯!

無実の人を救う全国いっせい行動をJR園部駅前で実施。国民救援会中央本部と再審・えん罪事件連絡会が、毎年5月20日に呼びかけている〝無実の人を救う全国いっせい宣伝行動〟が今年も取り組まれました。国民救援会口丹支部と「長生園不明金事件の真相を究明する会」は、JR園部駅西口前で早朝6:50~7:40の間、中央から届いた「無罪」ビラと「真相究明の会」入会リーフをセットし声をかけながら配布しました。この日の行動には8人が参加し、ビラを80枚配りました。高校生が沢山ビラを受け取ってくれ、小学生が横断幕のスローガンを声を出して読んでくれました。

なくそうえん罪、救おう無実の人々 関西市民集会 part9で訴え


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5月28日、大阪市立こども文化センターにおいて「〝なくそうえん罪!救おう無実の人々〟関西市民集会 part9」が開かれ、関西の冤罪事件関係者を中心に 280人が参加。第一部では、湖東記念病院人工呼吸器事件・名張毒ぶどう酒事件・日野町事件・長生園不明金事件・神戸質店事件・姫路花田郵便局強盗事件・中津学園労働刑事弾圧事件・東住吉冤罪事件の関係者・当事者が事件の支援を訴え。

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第 2 部は、〝歌とナレーション でつづる たたかいの軌跡〟と題して劇団息吹・大阪府庁合唱団・歌手の野田淳子さんが、白鳥決定から東住吉冤罪事件再審開始決定に至るたたかいを、映像・歌・ナレーションで綴りました。第 1 部で登壇した西岡廣子さんは、運動の現状、園部の町の反応などを語り、引き続きたたかう決意を述べました。宣伝用に新しく作成したボードは、舞台上でもよく目立ちました。

福井女子中学殺人事件

前川彰司さん第2次再審めざし、長野県内を駆け巡る

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「無実の人は無罪に」、無実の人々を救う全国のいっせい宣伝行動の一環として長野県本部は、30年前に福井市で起きた「福井女子中学生殺人事件」の当事者・前川彰司さんと諏訪市の「あずさ35号窃盗冤罪事件」の当事者の元諏訪市職員が、県内の労組・民主団体を訪問し、事件の真実を語り、支援の要請を行いました。
訪問の初日6月14日は、長野支部の役員が福井事件の前川さんとあずさ号窃盗事件の「無実を勝ちとる会」の小池事務局長とともに長野市内の16カ所を訪問しました。訪問先では、冤罪当事者の心からの訴えに真剣に耳を傾け、支援の協力を約束していただきました。また、心温まる支援金も寄せられました。
冤罪被害者の福井女子中学生殺人事件の前川さんは、「20歳の時、事件と無関係の私が突然逮捕、起訴され、1審は無罪だったが検察が控訴して一転して有罪となり、最高裁で刑が確定しました。今では50歳。私を事件に巻き込んだ暴力団員は司法取引で、自分の刑を軽くしてもらうための嘘の証言をし、それで私は有罪とされた」と、冤罪で苦しみ無罪を叫び続ける30年を語り、「こんな理不尽な冤罪は許せない」と、第2次再審請求にむけて理解と協力を訴えました。

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また、1審の福井地裁で無罪。2審の名古屋高裁金沢支部で逆転有罪、そして最高裁で有罪確定し、岡崎刑務所に収監された。出所後に再審請求を行い、一度は名古屋高裁金沢支部で再審開始決定が出されたが、検察が異議を申し立て、またもや名古屋高裁で再審開始決定が取り消され、最高裁がこれを追認した。前川さんは、原審そして再審裁判で「無罪から有罪」と二度にわたりどんでん返し判断をした裁判所に翻弄されてきた口惜しさと怒りを語り、日本の司法の構造・体質も問いただしました。
その訪問先でも冤罪被害者の「無実の叫び!」が聞く人の心の底まで響いた宣伝・訪問活動でした。 「救援新聞」長野県本部版6月15日号より転載

滋賀・日野町事件

有罪判決をだまし取られていた日野町事件の真相 再審開始まで、あと一歩!!

2016年6月15日
再審日野町事件弁護団長 伊 賀 興 一

1 再審日野町事件とは

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昭和59年12月29日、いつもと変わらない朝、滋賀県豊田郡日野町のホームラン酒店はいつもと違って店舗扉が開いていなかった。早朝からつけの支払いなどに来ていた3人の客は店舗前で立ち話をしながら店の開くのを待っていた。そこに出勤してきた店員も、いつもと違うことに気づき、表の木戸を開けようとしても開かない。店員は隣家の庭を通って背丈を超える崖をよじ登って母屋の裏手に回ると、母屋の玄関は施錠されていなかった。母屋の中では、89歳(当時)のトサばあさんが一人寝ていて「ハツは、わしを置いて一 人で出て行った」と述べた。周りの人が店主ハツの所 在不明に気付いた最初の出来事であった。
その日、「ハツが出て行った」というトサさんの説明以外に、何ら店舗内にも母屋にも変異を示すものはなく、平常通り営業が続けられた。店主の帰りを待って夕方まで時間が経過している。前日ハツさんが着ていた衣服が離れに脱ぎ捨ててあった以外に何も、誰も、異常を察知することがなかった。その日の晩になってもハツさんら連絡もないことから、奈良に住んでいて連絡を受けて駆け付けた息子から警察に行方不明の届を行い、高齢のトサは、世話をするハツさんがいないため、その日のうちに近くの親せきの家に寝所を移した。
翌60年1月19日、日野町東端の住宅分譲のために開発途上にあった空き地に、ほとんど損傷も汚れもないハツさんの遺体が発見された。同年4月28日には、日野町北側にある石原山の傾斜地にハツさんが所持していた金庫が破壊された状態で発見されたが、主要部品であるダイアルが発見されていない。
これらの客観的痕跡からは、いったい誰が、いつ、どこで、どのような犯行を行ったのか、その結びつきや内容を確定することが極めて困難な事件であった。
事件当時当該酒店のツボ入り客の一人であった阪原さんは、事件から3年4か月ほど経過した昭和63年3月、3日間連続早朝から夜遅くまでの取り調べを受け、自分が犯行を行ったと自白に至り、逮捕され、その後の自白内容に沿った公訴事実で起訴されるに至ったのである。

2 確定審判決は何を解明したか

確定第一審判決は、阪原さんの自白には事実認定ができるほどの信用性を認めることができない、とした。一方で、審理の最終段階で裁判官の一人が、弁護側に内緒で検察官に対し訴因の変更を促し、犯行場所や時間等について概括的記載に変更させ、およそ有罪を支える証拠価値のない状況証拠のみによって概括的有罪としたのである。
確定控訴審判決は、状況証拠だけでは有罪とすることはできないとしつつ、確定第一審判決が事実認定の根拠とすることはできるほどの信用性が認められないとした自白について、どの部分がどのように信用できるのかの論証もないまま、「自白の基本的根幹部分は信用できる」と判断を変更した。そのうえで、検察官主張である公訴事実通りの事実認定を行うとともに、確定第一審の概括的認定の範囲内だとして、およそ認定の根拠を異にするにもかかわらず破棄せず、確定第1審を維持するとしたのである。
これらの確定判決の有罪心証を支えたものは二つの状況証拠であったと考えられる。
一つは、阪原さんが一貫して主張していたアリバイについて、虚偽アリバイだと断定し、そのような虚偽アリバイに固執するのは犯人であることを隠したい心理から出たというものである。いま一つは起訴前になされた金庫発見現場引き当たり捜査において、見事に捜査官を任意に案内できたことをもって、犯人性認定を支える重要な事実とした点である。
これらの判決によって、いったい何が解明され、何が証拠に基づき証明されたのだろう。
自白を除いて事件の構造を認定できる証拠が何一つ存在しないことが明らかにされた以外、事件内容について、なにも解明されていないことである。それどころか、「自白の基本的根幹部分は信用できる」、すなわち「自分がやった。自分が犯人だ」と阪原さんが自白したのだから、自白のような犯行が行われたと考えると阪原さんが犯人だ、という判断しか行えていないことがわかるのである。刑事判決としてこれほど説得力のない、脆弱な判決は他にない、と言っても過言ではない。

3 第二次請求審が行った事実取り調べによって暴かれ始めた確定審段階での証拠操作

阪原さんは、えん罪を晴らすたたかい半ばに病に倒れた。現在、遺族が第二次請求審をたたかっている。
第一次請求審では、殺害方法や遺体の手首に残っていたひもの結束方法など20数か所にわたって、自白が事実と異なっている等信用できないことが認められた。これらはまさに自白の基本的根幹部分というべき部分であった。しかしながら、殺害方法などについて記憶違いの可能性、もしくは些細な違いだという理屈を持ち出し、確定判決等の結論を覆すほどの事情とは認められないなどとして、棄却となった。即時抗告審の判断が出る前に、阪原さん死亡によって第一次請求審は終了している。
第二次請求審では、当初、裁判所は弁護側の証拠開示請求に対し、当面何らかの判断を行うことはないと断言し、弁護側が申請していた心理学者浜田氏の鑑定証人も採用しない、との審理方針を示した。もはやこれまでかとの危機感が遺族弁護団を襲った。
しかし一方で、裁判所は弁護団請求の開示要求証拠のうち、金庫引き当たり捜査時の全部の写真及びネガ、自白調書が作成された時点の自白状況を報告した捜査復命書の事実調べを行うことを同時に決定し、検察官に当該証拠の提出を命じたのである。
その意図は定かではないが、自白状況報告書から、自白の任意性や信用性を認定した確定審判決の検証が可能ではないか、いま一つは、金庫発見現場引き当たり捜査ネガから、自白を支えるに値する程度の引き当たり捜査がなされていたか検証できる、と考えられたと見てあながち的外れではなかろうと思われる。率直に言って、再審請求は首の皮一枚で維持された。
果たして、この手続きで提出開示されたネガと捜査復命書から、確定審で提出されていた証拠からは到底想像すらできなかった新事実が発見されたのである。
その一つは、開示されたネガによって、金庫発見現場引き当たり捜査の見分調書に貼付されていた写真の、撮影順が解明された。その結果、復路の写真が往路の「任意案内」の証拠写真として貼付されていること、写真説明記載と写真が合致しないばかりか、阪原さん自身が方向転換場所等の指示を行っていることを示す写真が一枚もないことが完全に明らかにされた。
結果、引き当たり捜査で阪原さんが任意に案内したとの認定を維持することは許されない衝撃的新事実が明らかとなったのである。
さらに今ひとつ。事件から9カ月後の昭和60年9月13日、阪原さんを被疑者とする逮捕状が発付されていた事実、その逮捕状は執行されなかった事実が存在したことが明らかになったのである。この時点で逮捕状が請求され、しかも執行されなかった事実は、確定審が念入りに調べた、事件発生から起訴までの3年4カ月にわたる捜査過程に関する捜査側証言等において、完全に隠されていた事実であった。
一体、この時点で阪原さんを犯人として特定するに足りる証拠が存在したのか、存在したのなら、なぜ逮捕状が執行されなかったのか、その障害事実は何だったのか、提出されなかったが故に確定審裁判所がおよそ検討すらしえなかった新事実が発見されたのである。

4 思い込み捜査による不公正、手抜き、隠蔽は、裁判所を騙す不正義

現在、第2次請求審は、以下の論点を軸に事実取り調べと証拠開示が進んでいる。
① 起訴直前に実施された金庫発見現場引き当たり捜査や犯行再現見分の実情解明
阪原さんは犯人ではないから、金庫発見現場など警察から聞かされていた情報があったとしても任意にスムーズに案内することは到底できなかったはずであった。また、殺害方法から手首の結束、遺体搬出方法から遺体放置方法などの再現も同様である。
確定審に提出されていたこれらの見分調書添付写真と説明では、実にスムーズに、任意に案内し再現を行ったようにまとめられ、その見分調書作成の真正作成を供述した警官も、誘導もなく再現、案内が行われたかのように供述していた。第二次請求審裁判所は、これら再現実況見分時の撮影ネガの全部の事実取り調べを決定し、提出開示を検察官に命じている。弁護団検討によれば、この期に及んでもなお開示されていないネガが存在する。開示されたネガは弁護団によって鋭意精査中である。
任意スムーズに再現見分が行われたと確定審提出証拠ではされていたが、開示されたネガから見て取れるのは、繰り返し繰り返し行われている、まさに頸部や手首のひもの結束練習と言わざるを得ない状況、さらに遺体の衣服のずれ方は自白の搬出方法では生じないなどなど、いくつもの新事実が発見されつつある。確定審に提出されていた見分調書は、再現見分の実情とはまるで異なる証拠として作成され、提出されていた疑いが否定できない新事実である。

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特に手首の結束方法については、警察の間違った認識が自白内容に反映していた重大な事実(確定第一審判決添付のスケッチ)が明らかとなっている。犯人の手首結束方法(遺体に残されていたひもの結束状況)は警察が誤った理解の上でスケッチしたものを証拠化し、阪原さんに自白させていたものであるが、実際の結束方法とは異なった方法であったことに捜査官が気づいた可能性が、再現実況見分の際、何度も結束方法を繰り返していることを示すネガの分析によって解明されている。犯人の結束方法は、阪原さんの自白の方法と当然ながら異なっている。
これらから明らかになるのは阪原さんの自白は犯人ではなかったことを示す事実であったといわねばならない。
捜査側は、こうした再現実況見分の実態を確定審にはひた隠しにし、逆に、写真と説明を加工し、あたかも任意にスムーズに自白通りの再現ができたかのような虚偽証拠を作成し、阪原さんを犯人だとする証拠に作り上げて提出していたことが明らかにされつつある。
② アリバイ関係捜査のきっかけと開始時期、関係者との捜査官接触の全容解明
確定審段階で検察官は、阪原さんのアリバイ主張を認知したのは昭和61年8月に行った地取捜査においてであると主張し、一時本件捜査が他の重大事件発生によって中断していたから、アリバイ関係捜査はそれまで行っていないとまで主張していた。
確定審判決は検察官主張に沿った認定を行い、虚偽アリバイの主張が犯人性を認定する重要な証拠だと位置づけている。
ところが、今回昭和60年逮捕状の発付と不執行の事実に関連して、事実取り調べとアリバイ関連証拠の開示が進むところとなった。不執行の要因がアリバイ主張であることを探知した警察がアリバイ関係捜査を行っていたにもかかわらず、それはアリバイつぶし活動の質を持つものであったがゆえにこれらの事実をごっそり隠蔽した。そのうえで、昭和61年8月まで検察はアリバイ主張を知らなかったかのような虚偽主張と立証を確定審審理に対し行っていたことが、第二次請求審の事実取り調べで明らかになったのである。今回関連する証拠が順次開示される中で、阪原さんは虚偽アリバイを作り上げて犯人性を否定しようとしている、とのアリバイつぶし捜査が行われた可能性が浮かび上がってきている。
現時点では、アリバイつぶしの手法に焦点が当たりつつある、
それはアリバイ関係者の記憶の裏付け捜査を行わず、あいまいな記憶状況に貶めたり、裏付け捜査を行っている場合には、その入手した証拠を確定審審理に対し隠蔽した可能性が浮かび上がってきたことである。
こうした証拠提出に関する意識的行動が否定できない状況が浮かび上がることにより、アリバイ主張の認知時期に関する検察官の虚偽主張やアリバイ関係捜査の開始時期に関する虚偽説明は、完全に確定審裁判所を欺く違法な証拠コントロールと断じざるを得ない。
③ 犯行日時とされる日の被害者の動向に関する捜査の実態解明
そもそも、冒頭述べたように、本件は犯行内容を特定するに足りる客観的な痕跡のない事件である。その意味では、虚心坦懐、公平公正な初動捜査の重要性は強調しても強調しすぎることはない事件と言えるだろう。
ところが、初動捜査の実情はいまだほとんど解明されているとは言えない。
犯行が店外であったか、店内であったかという根本問題については、当時の新聞記事から推測される捜査本部の見解もそのどちらとも決めあぐねていた状況のようである。
事実上同居していた高齢とはいえ、毎朝、近くのお寺に朝事参りを欠かすことがなかったトサさんが「わしを置いて一人出て行った」と供述していた事実の扱い方に関する捜査復命書がこの間開示された。そこには、捜査官の思い込みや見込の押しつけ、もしくはそれと合わない供述排除の姿勢がきわめて明確に示されている。
トサさんは、「いなくなった前夜、畑根が来て飲食を共にし、ハツがおもらしをして、ハツは、畑根と一緒にお風呂に行くと言って出掛けた」と述べていた事実は、事件がいつ発生したかを検討するうえで決定的に重要な事実であるといわねばならない。ところが、このような供述を得た捜査官は、この段階で、(それは27日のことの思い間違いだ)という指摘をした事実が開示された捜査復命書の記載から判明している。つまり、トサさんにすれば朝になって「ハツはいなくなった」と思っている。その人にすれば、『前夜』とは、29日から見て前夜だから、28日の晩に畑根が来た、ふろに行った、と認識していることをそのまま述べたと考えられる。にもかかわらず、これを聞き取った警察官は「前夜とは、【いなくなった】28日の前夜、すなわち27日」との捜査側の理屈による考えをトサさんに押し付けた可能性を示すものである。トサさんは、こうした押しつけに接し、「わしは一日ハツがいない状態の家に一人いたのか」と自分の認識に基づく抗議の意思をも表明している。トサさんのその後の捜査に対する対応については、29日からトサさんを自宅に引き取った川口艶子さんの供述によれば、警察を極端におびえていたと述べている。
もし、トサさんの供述のように畑根さんが28日の夜ホームラン酒店に来訪し、ハツさんとともに飲食し、風呂に行った、ということであれば、公訴事実の時間帯には被害者であるハツさんが犯行現場にいなかったこととなる。この事実は、公訴事実記載の犯行を阪原さんが行うことは不可能となる決定的重大事実である。
この論点に関する風呂の開場日や畑根さんの来訪目的であった保険継続手続き書類の取り寄せなどによって、畑根さんの来訪日の客観証拠による特定が可能である。常識的な捜査が行われたとすれば、上記客観証拠が当然に入手、作成されているであろう。
こうした関係証拠の開示を求める弁護団に対し、検察官はどの新証拠を念頭に置いているのか明らかにすることなく「新証拠の信用性判断に関連性、必要性がない」として、関連する証拠の存在を前提に、開示に抵抗している状況にある。

5 捜査全容を検察官に開示させ、一日も早く阪原さんの名誉回復・雪冤を

上記の到達点を評価すると、再審日野町事件では、個別証拠の開示の必要性を示すという段階から論点に関するまとまった証拠全体の開示の不可避段階に到達したと考えられる。
裁判所は、この間アリバイ関係の開示論争を踏まえて、「弁護人の特定する期間に限らず、アリバイ関係の証拠のすべてについて一覧表にして提出するよう」検察官に命じするなど、新たな対応と評価しうる釈明が行われた。これに対してはすべてとは到底言思えない一覧表が提示され、現在も検察官に対し、アリバイ関係の証拠はどのような表題であれ開示するよう弁護人は迫っている状況である。

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前記の事件の発生場所の認定にも不可欠な、事件とされた日時における被害者の動向について、裁判所は、「ここまで来たのだから存在するのなら提出する方向で検討するよう」検察官に促す発言を行った。
捜査の全容を明らかにすることによって、阪原さんを犯人だとする確定審判決の認定に対し、合理的な疑いを生じさせるに十分な、無実の新証拠の新たな発見につながるだろう。
同時に今後の進展は、確定審段階における捜査側の「被告人に有利な証拠」の意図的な隠ぺいにより、確定審裁判所を結果として騙して、有罪判決を得たという不公正な裁判であったことを明らかにするであろう。
捜査過程の全面的開示を実現することが、再審日野町事件の開始決定を得る道だと信ずる。
多くの皆さんのご支援をさらに強めていただければ幸甚である。

今後の主な事件の日程

 6月24日(金) 名張事件要請行動 13時半 名古屋高裁、15時 名古屋高検要請
 6月30日(木) 袴田事件50周年宣伝行動 午前9時静岡県警前抗議行動
 6月30日(木) 正午 静岡県庁前で宣伝行動
 7月 8日(金) 袴田事件東京高裁前宣伝 12時15分から
高裁要請(13時15分)、高検(14時)
 7月14日(木) 名張事件要請行動 13時半 名古屋高裁、15時 名古屋高検要請
 7月30日~8月1日(日本国民救援会第58回全国大会 静岡県熱海市 ホテル大野屋)
 8月20日(土)~21日(日) 仙台・えん罪北陵クリニック事件の親睦交流会
 主催・仙台えん罪北陵クリニック事件関東連絡会事務局
 山形蔵王温泉・ホテルオークヒル 参加費13、000円
 8月21日(日) 袴田事件50周年集会(13時半~ 清水テルサ・JR清水駅徒歩5分)
 8月24日(水) 名張事件要請行動 13時半 名古屋高裁、15時 名古屋高検要請
 9月13日(火) 名張事件要請行動 13時半 名古屋高裁、15時 名古屋高検要請

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 *各地の事件の取り組みや日程を事務局まで通信をお寄せください。
    zuke@kyuenkai.org
 * 次号「ニュース」は、2016年8月下旬頃に発行する予定です。

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