えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.79再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2016年 9月13日発行 No.79

明けない夜はない

新倉修(再審・えん罪全国連絡会共同代表 / 青山学院大学教授 /)

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残暑がまだ厳しいところ、お元気ですか。
この8 月10 日に大阪地裁刑事第1 部(西野吾一裁判長)は青木惠子さんと朴龍皓さんに無罪の判決を言い渡しました。裁判長は丁寧に判決の理由要旨を読み上げ、お二人にそれぞれ無罪であることを告げました。ほっとした空気が法廷に流れ、検察官は上訴しないことを明らかにしたので、ここに晴れて無罪が確定しました。気になったのは、裁判長がお二人を相変わらず、「被告人」と呼んだことでした。正確には、「元被告人・再審請求人」ではないでしょうか。また、私としては、足利事件で菅谷さんに対して裁判長が謝罪した先例を思い出して、東住吉事件で濡れ衣を着せて無期懲役の刑を言い渡し、再審開始決定が出るまで受刑者として収容してきた事実を、率直に謝罪してほしいと強く思いました。そのことのいったんは、判決後に、大阪弁護士会館で開かれた「無罪判決勝利報告集会」での挨拶の中でも話しました。
ところで、無罪判決に導いたのは、事実の重みではないでしょうか。自動車の自然発火の実験を繰り返して、「事故」の可能性が否定できなくなり、有罪判決を支えてきた自白の信用性が崩れました。他方、間違った有罪判決が維持されてきたのは、人の重みなのかも知れません。捜査に当たった警察官、検察官、起訴に当たって吟味した検察官、公判廷で有罪の立証をした検察官、有罪判決を下した第1 審の3 名の裁判官、そして控訴審の3 名の裁判官に、上告審での小法廷の5 名の裁判官が「太鼓判」を押しているという人の重みが大きすぎて、証拠を正しく収集して、正しく評価し、防御権を十全に保障して、確実な有罪の心証を形成して、それこそ、合理的な疑いを1 ミリも残さないで、有罪判決を下したり、有罪判決に対する上訴に対して棄却決定をしたりするという心構えが、緩みなく、無罪の認定を阻んでいるのかも知れません。「白鳥決定」40周年のシンポジウムで指摘された点が、鮮やかに浮かび上がります。
話はとびますが、厚生労働省汚職事件捜査での証拠偽造と犯人蔵匿の検察不祥事をきっかけとして、民主党政権時代に検討が開始された刑事訴訟法等の改正が大きな反対運動にもかかわらず成立してしまいました。その法案の衆議院法務委員会の審議で、最後は妥協したとみられる野党の委員が、15 日の民進党の代表選挙では京都出身の候補者を推薦するにあたって、「お世話になっているので」と語ったという新聞報道に接して、ここにも「人の重み」の威力を感じざるを得ませんでした。法律家でもあるこの野党議員が「事実や政策の重み」や「理念の重要性」に言及しないのは、なんとも割り切れないものを感じさせます。
折しも最近刊行された法律雑誌(法律のひろば)の中で、刑事訴訟法等の一部改正法の成立について著名な二人の刑事訴訟学者の論文を読む機会がありました。このお二人は、刑事訴訟法の問題点の認識においては私とそれほど隔たりがないにもかかわらず、今回の刑事訴訟法等の一部改正が、裁判員裁判を導入した司法制度改革を第一段とする刑事司法改革の第二段あるいは第二ステージだという位置づけを示しています。私は、これには多少違和感を覚えました。つまり、だから取り調べの可視化は、裁判員裁判の対象事件を中心に取り入れればいいのだとし、試行的に実施して、次の段階を予定すればよいと言っているように、読めるのです。では、いったい夜明けはいつ来るのかでしょうか。おそらく、著名な学者であっても、答は知らないと言うのではないでしょうか。そこには、先行きが見通せない闇の世界が広がっているのではないでしょうか。
また、法曹三者が協議して舞台を整え、法案を準備すればよいというような口振りがうかがわれることも、気になります。つまり、それは論点外しではないのでしょうか。捜査の可視化にとって最大の問題点は警察の取調べの点にあり、言い換えれば、警察留置場に長期間勾留して、弁護人の立会もないところで取調べを認めるという制度そのものが冤罪の温床となっているという論点が語られていません。とすれば、この問題の最大の利害関係者が警察であり、法曹三者が協議しても警察側の要求や問題点の指摘に対して、十分な回答ができなければ、いつまでも闇夜の取調べは続くことになります。夜明けはいつ来るのか?それは鶏に聞いてくれ、というのでしょうか?鶏鳴の声を早く聞きたいと思うのは、私一人ではないはずです。

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また、来年も市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の審査のプロセスが始まります。新しい手続にしたがって、まず争点表をつくり、政府報告審査を効率的に進めようという流れになりそうです。冤罪の重大性は隠しようがないのですから、その原因と対策について、市民の側からもしっかりしたパラレル・レポートを準備しましょう。そのためには、市民の衆知を集める「民間法制審」のような会議体を作ることも、有意義でしょう。また、国会議員に働きかけて、国民の代表として、ジュネーブでの政府報告審査に関与するように要請することも大事です。また、国内人権機関を早くつくらせて、人権機関からの意見や報告が政府報告をめぐる建設的な対話を実り豊かなものにするために、このような独立した機関の誠実な活動が不可欠であることを示しましょう。島崎藤村が『夜明け前』で主人公に言わせたセリフ――「明けない夜はない」をしっかり受け止めたいものです。

東住吉冤罪事件

青木さん、朴さん 再審で無罪判決確定!喜びの声

“娘殺しの母親から” “普通の母親に” 戻れた喜び

青木惠子さん
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2016年8月10日、やっと念願の再審無罪判決を勝ちとることが出来ました。 長い間、ご支援いただきありがとうございました。
私は、今から21年前、突然逮捕され、訳も分からないまま起訴されました。裁判で無実を訴えても有罪(無期懲役)。日本の裁判に絶望しました。でも、支援する会が出来て、日本国民救援会の支援を受けられたことが、全国的に「東住吉事件」の支援の輪が広がり、ありがたかったです。「布川事件」の桜井昌司さんとの面会で、私は希望が持てました。無実を信じてくれる人がいる。温かい励ましに支えられたからこそ、負けずに闘い続けることが出来ました。
確定審では、負け続けたものの、再審では真実が明らかになり、再審開始決定と刑の執行停止を勝ちとることが出来ました。この間、約21年という月日が費やされ、獄中に入れられましたが悪いことばかりではありませんでした。弁護団や多くの支援者の方々と知り合えたのですから。
8月10日、再審無罪判決は本当にうれしかったです。何よりも、無罪判決によって私は、“娘殺しの母親から”“普通の母親に”戻れることが出来ました。これまで、大変な思いをしてきた両親、息子も裁判が終われることに、ホットとしています。釈放されて8カ月になります。社会での生活は大変ですが、両親とあたり前のように過ごせる日々が、とても幸せです。息子とは、お互いの生活を守りながらも、お酒を飲みに行ったり、買い物、ドライブと楽しい時間も増えました。
私も、両親の面倒を見ながらアルバイトもはじめ、段々と普通の生活を取り戻しています。毎日が楽しく、幸せです。その中で、ふと再審で勝利できた事のすごさに気付き、“本当に生きて帰ってこれて良かったな”と、しみじみ感じています。
まだまだ、全国には冤罪で苦しんでいる方々が沢山います。私も冤罪をなくすために力を尽くしていきたいと思います。

21年ぶりに勝ちとった完全勝利!

朴 龍皓さん
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8月10日、大阪地方裁判所(西野吾一裁判長)で、悲願の無罪判決を勝ち取ることができました。21 年間の束縛から、遂に、解放されました。完全勝利です。自由です。
まずは、西野裁判長には、深くお礼を申し上げます。心から敬意しております。ここまで来ることができたのは、皆さんのお陰です。本当にありがとうございました。
有罪が確定して刑務所で受刑するようになっても、勝利を信じて前に進むことができたのは、皆さんの支えがあったからです。弁護団や専門家や支援者が総力を尽くして闘って下さったからこそ、今、この場に立つことができました。心からお礼を申し上げます。
獄中では、無力な僕には何もできませんでしたが、その代わりに、獄中生活に力を尽くしてきました。その結果、良い人間関係に恵まれて、多くの受刑者が無実を信じてくれるようになり、刑務作業でも助け合いながら取り組むことができました。そうして獄中生活の闘いに専念できたのは、刑事裁判の闘いで皆さんが力を尽くしてくれていたからです。
無実を信じてくれた受刑者にも本当に感謝していますし、皆さんにも本当に感謝しています。こんなにも素晴らしい人の縁に恵まれたことが、最も幸運なことだったと実感しています。獄中生活でも人の縁に恵まれ、弁護や支援でも人の縁に恵まれ、報道でも記者の縁に恵まれ、裁判官でも人の縁に恵まれました。それだけの素晴らしい人の縁こそが、今日の再審無罪を生み出したのです。
こうして自由を取り戻すことができたのは、そうした幸運に恵まれたからだ、と深く心に刻んでいます。それを生涯忘れずに、これからの人生を誠実に生きていきたいと思います。
これまで長年にわたって力を尽くして下さり、本当に感謝しています。心から深くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

出会いが財産!

李 文子さん(朴さんのお母さん)
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朴龍皓の母親です。本日は暑さ厳しいなか、判決公判に参加していただき、ありがとうございます。
本日はすばらしい弁護士の皆さん、支援する会、国民救援会の皆さんの力で無罪判決を勝ち取ることができました。被告人・朴龍皓は、ただの朴龍皓に戻ります。ありがとうございますこの20 年の息子と私たち家族は大変苦しんできました。警察にだまされた悔しさを胸に戦って参りました。その中で沢山の人々との出会いは私たちの一生の財産、宝物です。世の中には、まだまだ沢山の冤罪被害者がいます。
今後は、こういった人々の支えになりつつ、静かに過ごしていけたらと思っております。本日は、本当にありがとうございます。感謝しています。

東住吉冤罪事件の支援運動の参加して

伊賀カズミ(日本国民救援会大阪府本部副会長)

今から約16 年前、青木弁護団より東住吉冤罪事件についての支援の要請がありました。
正式に受けたのは一泊常任委員会の席。それまで死刑再審4事件や徳島ラジオ商事件などいくつも事件を支援してきましたが、地元事件として責任を持った運動を展開するという初めての経験の、最初の一歩を踏み出すことになりました。その後、すでに結成されていた「青木惠子さんを支援する会」からも、支援運動を一緒にという依頼がありました。一審無期懲役の判決後のことでした。
直後に大阪拘置所に赴き、惠子さんと面会、惠子さん自身の意思を確認した上で、検討を開始したのを昨日のことのように思いだします。当時は大阪府本部には明確な事件委員会は設置されておらず、常任委員をはじめとして傍聴者を募り、控訴審では毎回欠かさず傍聴を続けてきました。同時に大阪拘置所への面会者も組織し、「ともぶち通信」という面会通信を発行し、勾留中の惠子さんの様子を伝えるということも続けました。傍聴した人達の中から、一人また一人と「放火殺人事件」だという検察の起訴内容がおかしいと感じる人が増え始めます。何よりも第3回公判でガソリン漏れの可能性、自然発火の可能性のあることが技術士証言で明らかになることによって、急速にその冤罪性は多くの人の知るところとなりました。
ところが、判決は控訴棄却。判決を間近に「朴自白」どおりの放火行為は不可能であることを証明しようと弁護団実験が準備され、富士の裾野の小山町での大掛かりな火災の再現実験が実現しました。私たちも弁護団ともどもその実験現場に参加し、改めて「自白」がいかにでたらめなものであるかを実感しました。国民救援会が支援を決定したのと相前後して、当事者である青木さん、朴さんの了解のもと、合同弁護団が結成され、お互いの知恵と力を寄せ合うということになりました。最高裁では再現実験結果も含めた上告趣意書が提出されたにもかかわらず、上告棄却。まさにこれでいいのか日本の司法という事態に、大いに怒りました。
その後、青木さんは和歌山刑務所に、朴さんは大分刑務所に収監されることになり、朴さんのお母さんとは大分刑務所に新幹線で、長い時間をかけいろんなことを話しながら面会に。大分県本部のみなさんにはその後長くお世話になりました。青木さんのお父さんとは車で和歌山刑務所に、やはり往復の道すがらいろんなことを話したように記憶しています。
青木さん、朴さんには、全国の救援会内外に多くの支援者を得ることができました。支援する会は、最終600名を超す会員を擁することとなりました。支援する会は尾崎さん、山本さんという女性パワーに負うところ大でした。
国民救援会大阪府本部としては、まさに松川以来の大衆的裁判闘争の具体的実践の場を与えられ、その過程で多くの地元事件支援も重なり、力量の強化も図ることができたと考えています。
どこかで、きちんと国民救援会として運動の総括を、何よりも当事者の頑張りと、優れた弁護活動、そして大きく広がった支援運動が一つになったことによる勝利だということを、実践の経過を踏まえ、具体的にお伝えすることが今後の大阪府本部に与えられた仕事かと、今はホッとしたと同時に、大きな宿題をいただいた気持ちです。

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大阪・東住吉冤罪事件・声明

「再審無罪判決」を機に冤罪の根絶を

「東住吉冤罪事件」を支援する会
日本国民救援会大阪府本部
日本国民救援会中央本部

本日、大阪地方裁判所第3 刑事部は、東住吉冤罪事件の青木惠子さん、朴龍晧さんに対し、再審無罪の判決を言い渡しました。
事件発生から21 年の歳月を費やして、ようやく実現した本件再審無罪判決は、何よりも第一審から一貫して無実を主張し続けた青木さん、朴さんの両名と、その主張を信じ無罪判決実現のために、不屈の弁護活動を続けられた両弁護団のみなさんの真摯な活動のたまものだと考えます。そして「東住吉冤罪事件」を支援する会を中心に、大阪から
全国の国民救援会へと広がった支援運動の成果だと、改めて確信する次第です。
判決は何を明らかにしたのか。ガソリン7.3 リットルをまいてターボライターで火をつけたとする「朴自白」に象徴される「自白」の信用性について、火災の再現実験、ガソリンの漏出実験と、それを裏付ける科学的鑑定意見等により、自然発火の可能性を明らかにした弁護団立証にもとづいて明確に否定しました。さらに「自白」を引き出すた
めの取り調べが如何に過酷を極め、かつ不当なものであったかを丁寧に検討し、「自白」の任意性をも否定し「自白」を証拠から排除しました。そのうえで「本件各公訴事実については犯罪の証明がないことになる」として再審無罪の判決を言い渡しました。
私たち東住吉冤罪事件を支援する会・日本国民救援会大阪府本部・同中央本部の三者は、今回の判決は、「誤判や冤罪は許さない」「間違った裁判はやり直すべき」という市民の声を真摯に受け止め、裁判所をして法と良心にのみ拘束されるという、憲法に則った判断に従ったものと強く確信するものです。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審にも適用された事例がまたひとつ積み上げられました。
幾多の冤罪事件同様に、代用監獄における過酷な取り調べや、検察官による証拠隠しによって、青木さんや朴さんは不条理な冤罪の犠牲となりました。
私たちは今回の再審無罪判決を機に、冤罪根絶に向けた市民運動のさらなる構築に向けて新たな一歩を踏み出すことを決意するものです。

大崎事件

いよいよ大詰め、11月に最終意見書提出!

現地調査を成功させ、支援を強化しよう

1979年に鹿児島県大崎町で原口アヤ子さんら3人が共謀して、親族の男性を殺害したとされている大崎事件。第3次再審請求審で、原口さんの無実がいっそう明らかになっています。その中で開かれる今年の現地調査を支援強化しましょう。
原口アヤ子さんの再審をめざす会と鹿児島県本部は、89 歳になった原口さんが元気な内に再審開始決定を勝ちとるため、事件の真実を多くの人に知ってもらい、世論を大きく広げようと現地調査への参加を呼びかけています。
 と き:  10 月15日(土)~16日(日)
 会 場:  アスパル大崎
 問合わせ先:  国民救援会鹿児島県本部(☎099-298-5161)

今後の主な事件の日程

 9月15日(木) 袴田事件東京高裁前宣伝 12時15分から
         東京高裁要請(13時15分)、高検(14時)
 9月21日(水) 第225次 最高裁事件統一要請行動
        (最高裁西門8時15分から宣伝、刑事は10時から要請)
9月29日(木) 「ふたりの死刑囚」上映会(主催・名張毒ぶどう酒事件東京守る会)
         日比谷図書文化館(元日比谷図書館)大ホール
         上映時間=14時、16時半、19時の3回上映
10月 4日(火) 名張毒ぶどう酒事件・奥西勝さん無念の獄死1周年行動
         12時15分~ 名古屋高裁前集合
10月15日(土 秋田・大仙市事件現地調査
         問合わせ=国民救援会秋田県本部(☎018-832-9766)
10月15日(土) 鹿児島・大崎事件第18回全国現地調査
15日13時半から16日正午まで
         問合わせ=国民救援会鹿児島県本部(☎099-298-5161)
10月15日(土) 東住吉冤罪事件再審無罪祝賀会
11月 6日(日) 特急あずさ号窃盗冤罪事件を勝たせる会集会
        (上諏訪市「こころ」集会所)
11月10日(水) 福井事件第8回研究会(18時から 桜井司法研究所にて)

* 各地の事件の取り組みや日程を事務局まで通信をお寄せください。 zuke@kyuenkai.org
* 次号「ニュース」は、2016年11月上旬頃に発行する予定です。

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