えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.82再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2017年 3月31日発行 No.82

共謀罪と冤罪

弁護士 小池振一郎

1 共謀罪立証の困難性

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犯罪を立件するためには、それなりの証拠がなければならない。共謀罪の立証対象は、計画=共謀=合意そのものである。合意の他に、合意に基づく準備行為が条文に付加された。何らかの外形的行為を要件とすることによって、結果発生の犯罪行為に連なる客観的な要素を入れたという趣旨であろう。
しかし、その準備行為の範囲があいまいで、漠然としており、広過ぎる。合意に基づいて、さらに仲間を募る行為(話しかけ、メール等)も、外形的行為として、準備行為とされるのであろうか。
法案には、計画に基づき、資金を手配するとか、下見するなどの客観的行為が準備行為として例示されているが、銀行からお金を引出す行為だけでは、旅行に行くために引出したのか、何のためかわからない。下見行為も、単なる散歩かどうかわからない。客観的行為といっても、それだけではその意味がわからない。 外形的行為だけでは、準備行為であるという立証ができない。結局、準備行為の評価は、その目的にかかる。合意が何かという問題になる。従って、その合意そのものを立証しなければならない。準備行為は立件の外形的きっかけに過ぎず、限定機能を有しないので、以下、共謀罪の要証事実を合意に絞って論じる(なお、準備行為はもともと処罰条件とされていたが、3 月7 日配布法務省資料では、「構成要件の一つ」とされる)。
ちなみに、一定の犯罪を複数で計画=合意すれば共謀罪が成立するといっても、その合意内容が曖昧な場合も多く、合意自体が変遷することもある。いつの時点のどのような合意を捉えるのか、その特定も困難である。

2 直接的な立証方法

合意の客観的証拠となる計画書・議事録・日記などの共謀記録があれば合意を直接的に立証できるが、そのような記録がないのが普通であろう。
そうすると、合意を直接的に立証する方法は、①盗聴か、②共犯者の自白しかない。
(1)盗聴
共謀罪は盗聴と最も親和性がある。
2016 年5 月の刑訴法改正により、盗聴法の対象犯罪が一般犯罪にまで大幅に拡大した。しかも、通信事業者の立会いという歯止めをなくした。
そのため、共謀罪は盗聴の対象犯罪ではないが、別件傍受により共謀罪まで手が伸びる道が拡がった。別件傍受により取得した共謀罪に関わる通信は合法的な証拠とされる。
(2)共犯者の自白
 (a)自白の重み
捜査段階の自白調書が極めて重要な位置を占める。自白に依存し過ぎていると国連からも批判されている日本の刑事司法であるが、共謀罪の直接的立証にどうしても必要な証拠として、より自白強要が強まるであろう。
法案には、実行着手前の自首を必要的刑の減免とする規定がある。1 人が自首すれば、話し合った全員を共謀罪として一網打尽にすることができる。密告を奨励し、スパイを投入する誘因となる。それが、仲間の間で疑心暗鬼を生む。
自白調書の任意性、信用性を争う場合、通常、客観証拠と自白の矛盾を突く方法をとるが、共謀罪の場合は客観証拠に乏しく、困難になるだろう。
 (b)刑訴法改正との連動性
 ①刑訴法改正により、他人の犯罪を供述・証言することにより自己の犯罪を減免する司法取引が制度化(合法化)された。共犯者を確実に合法的に不起訴等にする道が開かれ、共犯者の自白が得られやすくなった。
共謀罪自体は司法取引の対象となる「特定犯罪」ではないが、証拠隠滅は長期2 年から3 年に引き上げられ、「特定犯罪」とされている。部下から司法取引により証拠隠滅(文書破棄)の自白調書を取り、その証拠で捜索し、法人税法違反共謀罪の証拠(メール、指示書等)を獲得するといった事態が起り得る。共謀罪が「特定犯罪」とされれば、司法取引がフル活用されるであろう。
 ②証人に不利益な証拠としない約束で証言を強制(黙秘権の剥奪)する刑事免責制度ができた。対象犯罪に限定はない。これにより、共犯者の自白が強制される。
 ③共犯者(証人)の名前が弁護人にさえ匿名にされる証人秘匿制度ができた。その共犯者が警察のスパイかどうかの見極めもできなくなった。
 ④取調べでの自白のビデオ録画が次々と公判廷に証拠提出される部分可視化が制度化された。ビデオ録画は、取調べ規制のために有効だが、それを証拠とすることは危険である。共謀罪との関係では、共謀の事実を取調べのビデオ録画で立証することが容易になった。
以上の通り、刑訴法改正が共謀罪への道を敷きつめたといえよう。

3 間接的な立証方法

それにしても、共謀の直接的な立証方法は大変であるから、共謀の間接的な立証方法が求められる。それは、これまでの団体の活動の積重ねの立証(目的立証)と準備行為で推認するしかなく、団体員の内心ないし思想傾向、集団の性格などを日頃の活動から調査蓄積し、予め、同時並行的に、任意捜査や盗聴をして、情報収集しておかなければならない。日常的な監視が不可欠である。
しかし、間接的証拠では有罪判決までは難しいかもしれない。それでも、逮捕状、勾留状、捜索令状は容易に発付される。起訴しなくても、捜索による情報収集で目的を達する。あるいは、捜索の脅しだけで、団体を委縮させ、目的を達することもできる。仮に起訴されて無罪判決となっても、委縮効果があり、団体に壊滅的打撃を与えることができる。

4 さらなる立法改悪へ

捜査側としては、有罪判決を確実に得るためには、やはり、共謀の直接的な立証方法を欲しがるであろう。 金田法務大臣は、共謀罪を通信傍受の対象とすることは将来の検討課題と言い、今後、盗聴法の対象犯罪に含めることを否定しない。277 件の共謀罪が盗聴法の対象になれば、「合法的」共謀罪盗聴が圧倒的に増大するであろう。
部屋等に盗聴器を仕掛ける会話傍受も立法化される恐れがある。
3 月15 日最高裁はGPS 捜査について妥当な判決を出したが、そこでGPS 捜査の立法化を促している。そうなれば、防犯カメラの拡充や高性能指向性マイクの使用などと共に、日常的な監視活動が飛躍的に強化され、監視社会への道に進むであろう。

5 冤罪の増加へ

共謀罪の立証対象である合意は、目に見えず、曖昧であるだけに、その立証方法も、客観的証拠というよりも、曖昧模糊としたものにならざるを得ない。冤罪がますます増えていくことが危惧される。

静岡・袴田事件

警察と検察の職務犯罪こそが冤罪袴田事件の本質だ

全国集会に 1 0 都道府県から 2 0 0 名が参加!

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2月25日(土)、東京・文京区民センターで「2・25 袴田巖さんの再審無罪を求める全国集会」が10都道府県から200名を超える参加で開催されました。
袴田巖さんは、静岡地裁による再審開始決定に異議を唱えた検察の即時抗告により、未だ死刑囚のまま、再審無罪判決を求めて闘い続けています。
今回の集会は、検察の即時抗告の不当性に焦点を当てて、東京高裁が検察の求める検証実験に引きずられ、審理をこれ以上いたずらに長期化させないために開催されました。
西嶋勝彦弁護団長は、即時抗告審で開示された袴田さんの取調べ録音テープの一部を紹介し、警察と検察が重大な違法捜査を行ったことを具体的事実で明らかにしました。そして、弁護団は、開示された録音テープを解析する中で、①取調室への便器持ち込みに関する偽証罪、②取調室に便器を持ち込み取調官の面前で小便をさせた特別公務員暴行陵虐罪、③弁護人との接見を盗聴した公務員職権濫用罪、④犯行着衣とされたズボンの寸法札に関する実況見分調書を偽造した有印虚偽公文書作成罪など、警察官が捜査や公判で数々の「職務に関する罪」を犯していたとして、刑訴法435条7号による再審理由の追加申立を行ったことを報告しました。
西嶋団長は、袴田事件はDNA鑑定だけで再審開始になったわけでなく、弁護団が提出したその他の新証拠によっても十分再審開始決定がされるべきだと強調しました。
記念講演では、元検察官の市川寛弁護士が「なぜ検察は『引き返す勇気』を持てないのか」と題して、自らの検察官体験を元に現在の冤罪を作り出す検察の実態をリアルに告発しました。参加者からは、「これまでいろんな冤罪に関わる集会に参加したが検察官の視点から冤罪を生み出す構造的な問題点を学ぶことが出来て、集会に参加して良かった」との感想が寄せられました。
この後、袴田さんが東京拘置所に収監された時に、刑務官として袴田さんに3回面会したことのある坂本敏夫さんが特別報告を行いました。坂本さんは、拘置所の中で事件に真正面から立ち向かい、無実を晴らそうと膨大な上告趣意書を書き上げていた元気なころの巖さんの姿が強烈に印象に残っていることを紹介しました。
連帯のアピールでは、映画監督の金聖雄さん、WBO世界ライトフライ級王者などから一日も早い再審無罪を勝ち取ろうとエールが送られました。
今回の集会には、久しぶりに巖さんも参加する予定でした。当日は、姉の秀子さんと一緒に浜松駅の改札まで来たのですが、残念ながら集会には参加できませんでした。
秀子さんは、「最初は笑いもしなかったが、最近はいろんな表情を見せるようになったこと。拘禁症はすぐには治らないとは思います。巌の再審無罪を勝ち取るためになお一層のご支援をお願いします」と、訴えました。
最後に、集会アピールを採択し、当面の行動として再審開始決定3周年目にあたる3月27日に東京高裁、東京高検への要請行動と、即時抗告審の新たな再審理由の追加申立等を踏まえて、新しい署名が提起されました。

弁護団が検証経過報告書に反論

裁判所の嘱託事項を無視した、無意味な実験!
3月2日、袴田事件弁護団は、静岡地裁の再審開始決定の根拠となった筑波大学の本田克也教授のDNA鑑定方法を否定する検証報告書の提出を受けて、緊急の記者会見を開き、「東京高裁が決めた鑑定嘱託事項を無視した独自の実験であり、本田鑑定人が行った条件や鑑定で使用した器具も異なり、開始決定には影響しない」との見解を示して反論しました。
今回のDNA鑑定検証実験は、以下の経過をたどって即時抗告審で厳しく争われてきました。
静岡地裁の再審開始決定は、確定判決が有罪の根拠にした「5点の衣類」に付着している血痕が「袴田巖さんのDNA型と一致しない」とした、弁護側推薦の本田克也・筑波大教授の鑑定を重要な新証拠としてその信用性を認めました。
検察側は、血液だけでなく皮脂や汗、唾液などが混じった可能性のある血痕から、血液に由来するDNAを選り分けて取り出す方法は本田教授の独自の方法であり、信用性がないと反論し、検証実験を裁判所に求めました。
これに対して、弁護団は、静岡地裁でも十分に審理が尽くされた本田教授の鑑定方法は国際的にも有効性が認められている、検証実験は無意味であり裁判の長期化を招くだけである、と強く反対しました。
しかし、裁判所は、職権で今回の検証実験を決定し、大阪医科大の鈴木広一教授に検証を委託しました。
弁護団は記者会見で、鈴木教授の「検証報告書」では、本田教授がおこなったDNA鑑定で使用された抗Hレクチンという試薬には、DNAを分解する有害物質が含まれており、この試薬をDNA検査に使用することは禁忌である」と本田鑑定人の手法を否定しているが、「今回の鈴木教授の鑑定は、本田教授の鑑定とは異なる条件と方法で抗Hレクチンを使った独自の実験であり、鑑定器具も異なり、裁判所の嘱託事項を逸脱した」、無意味な実験であると反論しました。
さらに、「仮に、報告書が正しいと仮定しても、DNAの回収量が減るに過ぎなく、本田教授の鑑定でDNAが抽出されたことは事実であり」、その有効性は覆らないと述べました。そして、「そもそも本件では、履けないズボンや確定審も認めざるを得なかった違法取調べを始め、その他の状況証拠も袴田さんの冤罪を裏付けている。それらの証拠と半袖シャツの右肩の血痕が袴田氏のDNA型と異なることを証明した本田鑑定は合致している」、「今回の机上の検証実験で再審開始決定は揺らぐものではない」ことを強調しました。
最後に、4月中にも鑑定人の鑑定意見書が裁判所に提出される見込みで、さらに鑑定データなどを開示させて、弁護団として反論書を裁判所に提出する方針を明らかにしました。
3月21日に開かれた3者協議では、東京高裁は鈴木広一大阪医大教授の尋問を行う考えを示しました。

雨の中、検察の即時抗告を棄却せよ !と宣伝と要請

静岡地裁で歴史的な再審開始決定が出されてから丸3年を迎えるにあたり、袴田巖さんの一日も早い再審無罪を求める実行委員会は、決定が出されたのと同じ3月27 日、東京高裁前で宣伝行動を行いました。行動には36 人が参加し、「検察の即時抗告を直ちに棄却せよ」と訴えました。宣伝行動後に東京高裁、東京高検に要請を行い、司法記者クラブで会見を行いました。

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■「大先輩、殺人などしない」チャンピオンボクサーが訴え
袴田巖さんが48 年ぶりに獄中から生還してから、丸3 年が経過しました。しかし、未だいわれなき「確定死刑囚」の汚名を着せられたままで、すでに81 歳となりました。
宣伝行動では、「組織の面子」の保持に汲々とするあまり、「公益の代表者」たる職責を忘れたかに見える検察に対し、渾身の憤りを込めて抗議するとともに、検察の横暴に歯止めをかけるべき裁判所が職権で無意味なDNA検証実験を行うなど即時抗告審の審理が長期化していることに抗議の声をあげました。
日本プロボクシング協会から、事務局長の新田渉世さんと、世界タイトル17 年連続防衛を続けWBC から表彰も受けている小関桃さん(WBC 女子世界アトム級王者・WBA 女子世界ライトミニマム級王者) も参加しました。マイクを握った小関さんは、「年間19 試合という不滅の記録を持ち、苦しい減量とも戦い、ボクシングに真剣に向き合っていた大先輩の袴田巖さんが殺人を犯すとは考えられない。一日も早く再審無罪になることを願っています」と訴えました。
東京高裁の要請行動では、布川事件の桜井昌司さんが「3 年も続けているDNA 鑑定の検証実験はまったく意味がない。裁判所が、警察や検察の主張をそのまま取り上げるから冤罪がおきる」と批判。浜松の会の寺澤暢紘さんは、釈放後の巖さんの映像を納めたDVD を差し出し、「袴田さんは要請に来られないから、この映像をぜひ裁判官に見てもらいたい」と訴えました。国民救援会の鈴木猛事務局長は、「再審の理念は無実の人の救済。その立場で審理をすべき。防衛省の情報隠しを国会が追及しているが、検察の証拠隠しは裁判所がやらなければだめだ」と指摘しました。
東京高検への要請行動では、アムネスティの山口薫さんが「話を聞いていただけるのはいいが、何度同じ話をするのか。静岡地裁は再審開始決定で、袴田さんを拘束することは『耐えがたいほど正義に反する』と述べた。人の命を守る立場で、正しい判断をすべきだ」などと述べました。
この日、東京高裁に個人署名1623人分を提出し、実行委員会として累計で約17 万人分を提出しました。また、2 月25 日に開かれた「袴田事件2・25 全国集会」で集まった寄せ書きも「要請書」として裁判所に提出しました。
■姉・秀子さん「巖の表情、明るくなった」
行動終了後に司法記者クラブでおこなわれた記者会見には、実行委員会代表をはじめ、ボクシング関係者、布川事件の桜井昌司さん、映画監督の金聖雄さんらも同席しました。
袴田さんの姉の秀子さんは「この3年間で巖の表情が大変明るくなりました。私にしてみれば50 年待っていたので、拘置所で自由を奪われて孤独を強いられていたことを思えば、3年ぐらい何でもありません」と、再審開始決定により48 年ぶりに釈放された喜びを語りました。そして、「再審無罪になって、多くの支援者のおかげであることを巖本人が理解することができれば」と、期待を語りました。
実行委員会では、引き続き全国からの支援を求めています。次回の要請行動は、4月21 日(金)、5月23 日(火)に予定(裁判所等に申し入れ中)しています。

大阪・東住吉冤罪事件

東住吉冤罪事件・国家賠償請求訴訟について

弁護士 加藤 高志

はじめに

本件は、平成7年、保険金詐取目的で長女を殺害したとして起訴され、現住建造物等放火、殺人、詐欺未遂の罪で無期懲役の判決を受け(かつ、その判決が確定し)、約20年間身体を拘束されたものの、昨年(2016年)8月10日の再審公判において無罪判決が下され、同日無罪が確定した、いわゆる「東住吉事件」の冤罪被害者である青木惠子氏が、捜査機関及び訴追機関の行為の違法性を問い、その責任及び賠償を求め、昨年(2016年)12月20日に提訴した訴訟である。

東住吉事件とは

東住吉事件の概要については紙面の関係上大幅に省略するが、何ら具体的な証拠がなく、警察の思い込みだけで捜査が進められ、違法な取調べの結果得た自白のみを直接証拠として公訴提起された事案である。検察も、取調状況を記載した報告書から、自白の任意性が欠如していることを認識し得たにも拘らず、その問題性を黙殺し、かつ、違法な取調べ(少なくともその懸念がある取調べ)によって取得された自白である以上、一層自白の信用性については慎重に判断すべきところ、核心部分である放火行為の現実的可能性を真摯に検討することもなく、公訴提起を行なったものである(しかも、検察は、確定審段階では、捜査報告書の開示を拒否し続けた)。

本件訴訟提起に至る経緯

更に、検察は、再審公判において、有罪とすべき証拠が存在しないことを認めながら無罪の論告をせず、しかも、論告の中で、取り調べは適正に行われた、事故・自然発火の可能性は低いと論じ、恰も「青木氏らが本当は犯人だけれども証拠がないので有罪の論告をしない」かのような、極めて不適切な主張を行い続けた。
そして、無罪判決が出た後も、控訴はしなかったものの、何ら反省の弁はなく、本件を検証し再発防止の為に努力することも行わなかった。
更に、テレビのニュース番組の取材に応える当時の取調べ担当警察官は、匿名の形をとりつつ、取調べは適正に行われた、今も彼らが犯人だと信じていると平然と述べた。
それゆえ、青木氏は、このままでは自分の無罪判決は十分な意味を有さない、再び冤罪が繰り返されるという思いで、本件訴訟の提起を決意したのである。

第1回口頭弁論期日・意見陳述(本人陳述)

3月9日13時20分、第1回口頭弁論期日が開かれた。
大阪地裁201号法廷(大法廷)はほぼ満席となり、訴状陳述等の形式的な手続の後、青木氏の意見陳述がなされた。
青木氏は、まず、取調べの酷さについて、簡潔に、しかし的確に述べた。なくなった長女の写真を見せられ、「悪いと思っていないのなら見れるはずだ」と言って見続けるよう命じられたこと、警察が長女の戒名を何度も言わせようとしたこと、なぜ火事の時長女を助けられなかったのかと、青木氏が一番辛く思っていることを述べ続けたことなどが語られた。
そして、続いて、被害の重篤さ、無罪となっても何ら被害は回復しないこと、人生は戻ってこないことが語られた。21年後に無罪となって、それで「めでたしめでたし」というものではない、無罪となって刑務所から出られたら、次の日から普通の暮らしができる等ということは決してない、幼い長男と引き離され、本人だけでなく家族も辛い思いをしてきたことなどが具体的に語られた。また、自分の顔や名前が報道され、これからは普通の市民としては暮らしていけないこと、そして、警察や検察が謝罪もせず今も犯人であるかのように述べている為、インターネットなどで酷いことを書かれていることも述べたのである。
そして、最後に、裁判所に望むこととして、失った時間は戻ってこないのであり、警察、検察がきちんと謝罪をすべきであること、冤罪が二度と生じないよう徹底的に事実を明らかにすべきであること等を述べ、意見陳述を締めくくった。

第1回口頭弁論期日・意見陳述(弁護団陳述)

青木氏本人の陳述の後、弁護団からも意見を述べた。
具体的には、本件訴訟においては、第一に、徹底した真相究明が行われるべきこと、証人の数が絞られる等必要以上に証拠調べが制限されることがあってはならないこと、第二に、捜査や起訴がなされてから21年以上が経過しており、審理計画が早急に立てられるべきこと、第三に、青木氏が被った全人格的かつ甚大な被害の実相を真正面から捉え、これに対する適正な賠償とは何かを真摯に検討すべきことを求めた。 更に、この訴訟においては、被告国、大阪府も、迅速かつ適正な審理に積極的に協力すべきことを述べ、最後に、青木氏に被害を生じさせたのが司法の場であったということ、裁判所自身も無関係ではなかったことを述べて、意見を締めくくった。

国賠訴訟の今後

被告国、大阪府は、既に訴訟が提起されてから2か月以上が経過していたにも拘らず、第1回期日においては、「原告の請求を棄却する」というだけの答弁書を出すにとどまった。
また、今後、書面作成にあたって、多くの証拠や事実を調査しなければならないとして、次回期日は、なんと7月18日に決定されたのである。かような対応は引き延ばしと評価せざるを得ないものであり、事件の風化を意図しているのではないかとさえ疑われる。
今後、訴訟は、関連証拠の出し方や争点の確定、事実関係の整理等、テクニカルな部分が多いため、いったん弁論準備手続きに付されることになったが、その段階を早期に終わらせ、多くの関係者の証人尋問へと進みたいと思料する次第である。
上記のとおり、しばらくの間、停滞する感が否めないが、今後も引き続き本事件に関心をお持ちいただき、支援をお願いする次第である。

鹿児島・大崎事件

「原口アヤ子さんの 再審無罪をかちとる緊急集会」1 2 0 名の参加

再審開始を勝ち取るため、支援の集中を!

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2017 年2 月25 日(土)午後 1 時半より3 時40 分まで、原口アヤ子さんの地元である鹿児島・大崎町中央公民館2階大ホールにおいて「原口アヤ子さんの再審無罪をかちとる緊急集会」が開かれました。
集会には、熊本、宮崎、鹿児島県本部などから120名が参加しました。第3次再審請求審の決定が間近に予想される情勢でマスコミも大挙取材に来ました。また、参加者の約8割近い方が事件の地元大崎町、大隅地区の町民の参加だったことは今後の支援活動にも大きな財産を残しました。
開会あいさつで、「再審をめざす会」の宮地会長は、「アヤ子さんは第二次再審で裁判官に『私を生き返らせてください。今のままでは私は死んだも同然です』 と再審開始を訴えました。本人は命がけでたたかっています」と、決意を述べました。
弁護団報告では、永仮弁護士・鹿児島県本部会長が60数名の弁護団を代表して、事件の問題点をくわしく報告されました。永仮弁護士は、「弁護団の提出した新証拠によってアヤ子さんや共犯者とされた男性らの無実が明らかになった以上、再審開始になるでしょう」、そしてこれに安心せずに、「検察の即時抗告をさせない運動が非常に重要だ」と強調しました。
この後、志布志事件の「えん罪被害者」のみなさんと、栃木・足利事件の菅家さんが、インタビューにこたえて、警察の過酷で非人道的な 140 日~395 日にもおよんだ勾留期間の取り調べの実態を証言されました。志布志事件の藤元さんと懐(ふところ)さんは737 時間にもおよんだ取り調べを振り返り、「えん罪はどうしておこるのか?犯人に仕立て上げるため警察が人の言うことを聞いてくれないから起こる。原口アヤ子さんのこの第三次再審請求を成功させなければいけません。原口アヤ子さんに力を貸してください」と訴えました。
集会では、大崎事件の再審をめざす会の有志による朗読構成劇「夜明けは近い」が演じられ、この事件の経過と特徴がわかりやすく語られました。劇の最後の合唱『銀色の道』では支援者も参加してともに力を込めて「夜明けは近い」と歌い上げました。
最後に、国民救援会鹿児島県本部の野元事務局長がこの間の行動経過と、もう一回りの署名提出など行動提起を行いました。なお、集会では、厚生労働省郵便不正事件の村木厚子さん、原口さんの二人の娘さんからのメッセージが読み上げられ参加者に感動を与えました。

国民救援会宮崎県本部事務局長・堀田孝一

鹿児島地裁、決定が4月以降に延期へ

3月1日、鹿児島地裁で大崎事件の第3次再審請求審の三者協議が開かれました。三者協議に合わせて午後 1 時より、雨の中、鹿児島地裁前で熊本、宮崎、地元鹿児島県本部から支援者が駆け付け、弁護団の激励行動を行いました。
この日の三者協議は、短時間で終了し、弁護団が記者会見を開きました。
会見で森弁護団長は、「裁判所から、再審の可否の決定が4月以降になる。決定は、現在の合議体で書く、と言明があった」と報告しました。鴨志田弁護団事務局長からは、今年1月12日に新証拠である写真をもとにプレゼンテーションしたことをふまえて、新証拠である写真をもとに1月31日に最終意見補充書も含めて判断すると裁判長から回答があったこと。これに対して検察は反論の予定がないことが報告されました。また、鴨志田弁護士は、裁判長から「駒はそろった。材料はそろったが、まだ書く段階まできていない」と述べたことが紹介されました。
大崎事件の第3次再審請求審は、3月末の年度内の決定は延期になりましたが、再審開始にむけていよいよ支援運動が重要になっています。全国で各都道府県の会員数の署名を早期に達成して、再審開始決定を勝ち取りましょう。全国の引き続きのご支援をよろしくお願いします。

宮城・仙台北陵クリニック事件

仙台市内で全国集会 3 0 0 人以上が参加

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仙台北陵クリニック・筋弛緩剤えん罪事件で無実を訴える守大助さんの再審・無罪を勝ちとる全国集会が3 月25 日、仙台市内で開催され、全国18 都道府県から300人以上が参加しました。主催は、同事件全国連絡会。
集会に先立ち、宮城のうたごえ有志と全国の仲間による「芦別の雪の中を」、また深浦のうたごえのみなさんと一緒に、守さんを歌ったうた「ぼくはやってない」が演奏されました。
集会は、鹿又輝男・宮城の会会長の開会あいさつで始まり、事件をわかりやすくまとめたDV D「仙台・北陵クリニック事件筋弛緩剤冤罪事件の真相」が上映されました。
つづいて記念講演にうつり、松山事件など多くの冤罪事件の弁護団や日弁連副会長、同人権擁護委員長などを務められた青木正芳弁護士が「刑事司法の文化的水準の今を考える―冤罪(誤判) をなくすために―」と題し講演しました。青木弁護士は、「無罪推定の原則」から実名報道が与える問題点を指摘しました。また、「間違ったときにどうするかが大切だ」として、4つの死刑再審無罪が出たときに、日弁連が裁判所や検察に一緒に問題を検討しようと呼びかけたが、“自分でやる”と拒否されたことを紹介しました。そして、検察の姿勢について、松川事件をはじめ、4つの死刑再審事件のいずれでも検察が無罪を明らかにする証拠を隠していたことが冤罪の原因となったことを指摘。いまも村木事件での証拠偽造にみられるように反省がなく、全面証拠開示を拒否するなど、検察の姿勢を批判しました。
弁護団から堀井実千生弁護士が報告しました。堀井弁護士は、裁判の争点をわかりやすく説明し、争点は「だれが犯人かという犯人性ではなく、患者の容態急変が筋弛緩剤によるものか、病気など他の要因によるものかの事件性にある」と指摘し、再審請求で筋弛緩剤が原因とする有罪鑑定が誤っていること、また症状から急変の原因は病気によるものであることを明らかにした2 つの新証拠を紹介しました。最後に、3月28日に三者協議が開かれること、来年4月までに弁護団が検察に求めていた釈明に対する答弁書が出される予定であることが報告されました。その後、関東連絡会による点滴の模擬実験がおこなわれました。
全国から参加した支援者の紹介につづき、仙台高裁に全ての証拠開示と弁護団主張の証拠調べを実施し、一日も早く守大助さんの再審開始を決定するよう求める決議案を採択しました。
最後に、守大助さんからの「どうか真実を全国に広げて、仙台高裁へ再審開始の風を吹かせて下さい」とのメッセージが読み上げられ、守さんの両親が「息子は無実です。どうか息子を助けてください」と訴えました。参加者は、守さんと両親の訴えに応えて奮闘する決意を込めて「再審開始!」と書かれたパネルをいっせいに上げました。
「再審開始へみなさん、ともにがんばりましょう」と小山高澄・大阪の会準備会会長の閉会のあいさつで集会は終了しました。
翌日には、現地調査と仙台市内での宣伝行動がおこなわれました。

三重・名張毒ぶどう酒事件

新調した横断幕で、お伊勢さん名張事件宣伝行動!

国民救援会三重県本部は2月12日、参拝客でにぎわう伊勢市おかげ横町で、恒例の名張事件署名宣伝行動をしました。
行動には橋本進県本部副会長(会長代行)をはじめ、6支部(伊勢支部、紀北支部、松阪支部、津支部、久居支部、四日市支部)から11名が参加。「第10次再審 奥西勝さんの名誉回復を」とグリーン主体で新調した横断幕(津民商の会員さんが作成)は、参拝客の目を引き短時間の行動でしたが再審開始を求める署名31人分が集まり、用意したティッシュ付きチラシ300枚を全て配布しきりました。
とくに愛知県、名古屋方面から来られた参拝客の関心が高く、いったん通り過ぎてからわざわざもどってきた若いカップルは、「この事件って、無実の人ですよね~、いろいろテレビとかで見て知っています」と話しかけてくれました。
参加者は行動後、昼食を兼ねて懇親交流会。「一見、こわもての人たちや、いろんなタイプの方々に署名協力をいただけ手応えを感じた。やはり地元・三重で取り組みを強めていかないといけない」など話し合いました。     

国民救援会三重県本部事務局次長 西川 昌宏

熊本・松橋事件

次回協議で終結 福岡高裁が再審可否判断へ

1985 年に知人を刃物で殺害したとして宮田浩喜さんの有罪が確定し、昨年再審開始決定が出された熊本・松橋事件の即時抗告審は、3 月16 日、福岡高裁(山口裁判長)で第三回三者協議がおこなわれました。
焦点となっているのは、弁護側の大野鑑定書が明らかにした凶器とされる刃物の形状と遺体の傷が矛盾するという点で、再審開始決定の根拠の一つにもなっている問題です。前回の三者協議で検察側は、別の事件の鑑定書などを持ち出して反論する補充意見書を出しています。これに対して、弁護側が2 月に出した反論書については、検察側は再度医師と協議の上反論する予定だと述べました。 これに対して、裁判長は、「今までで論点は尽きていると思っている」と発言し、次回で協議を終了させるかもしれない姿勢をみせました。 次回協議は5 月31 日におこなわれます。

今後の主な事件の日程

4月 5日 名張毒ぶどう酒事件・再審開始決定12年行動
     9時から名古屋高裁スタンディング、12時から名古屋高裁前宣伝
13時15分から報告集会(愛知県弁護士会館5階ホールにて)
4月 8日~9日 第27回裁判勝利をめざす全国交流集会
      ところ:東京・平和と労働センター
4月14日 北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件要請行動(13時 仙台高裁)
5月20日 無実の人々を救う!全国一斉宣伝行動
5月23日 袴田事件三者協議(15時~ 東京高裁)
5月27日 なくそう冤罪 救おう無実の人々 関西市民集会part10
     会場:大阪市立クレオ大阪東 問合わせ=救援会大阪府本部まで
5月31日 長野・あずみの里第7回公判(長野地裁松本支部 13時半 予定)
5月31日 熊本・松橋事件3者協議(16時~ 福岡高裁)
6月 3日 布川国賠裁判を支援する会第6回総会(予定)
6月10日 福井事件全国現地調査(13時~ 福井県民会館を予定)
*賛助会費、募金
渡辺昌也さんから賛助会費と募金の協力がありました。ありがとうございました。
*次号は、5月末発行予定。

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