えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.84再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2017年 8月4日発行 No.84

真夏の夜の夢、ではない

新倉 修(代表委員)
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暑中お見舞い申し上げます。東住吉事件の再審判決に続いて、大崎事件について鹿児島地裁は、2017 年6 月28 日にとうとう再審開始決定を下した。2 度目の再審開始決定であり、請求人の年齢を考慮すれば、当然、直ちに再審を開始して、実質審理を進めるべきである。ところが、検察側は懲りもしないで即時抗告を行った。過日、ある研究会で、再審弁護人の解説を聞く機会があったが、それによると、記録の送致がきわめてスムーズに行われ、送致を受けた福岡高裁宮崎支部も直ちに打合せ期日を入れて、迅速な手続の進行を保障する様子であるそうだ。そうであれば、翻って、検察官の即時抗告の適否が問題になる。およそ中身のない申立をすること自体に、えん罪被害者に対する礼節を失しているだけではなく、適正手続の遵守という国法上の義務に反するものと言わざるをえない。検察官については、刑事手続の構造が当事者主義であることから裁判官のような適正手続の遵守という義務はないという考え方もあり得るが、しかし他方、憲法99 条が公務員に憲法の擁護と遵守をする義務を課している以上、憲法31 条の遵守は公務員である検察官にも義務付けられていると解する余地はある。証拠を開示しなかったり、合理的な理由もないのに手続を遷延したり、客観的な証拠があるのに有罪の維持に固執したり、適正手続という憲法上の義務に反するような態度は、厳に慎むべきではないか。とりわけ再審開始決定の理由が、有罪認定に対する合理的な疑いがあるとされているから、これ以上、再審開始の当否をめぐって、入口が駄々をこねることは控えるべきではないか。大崎事件の再審無罪を一日も早く確定することを祈念したい。
話は変わるが、今年の3 月をもって16 年間勤めた青山学院大学を無事定年退職した。学長の粋な計らいで、今年から定年とともに直ちに名誉教授の称号をいただけることになった。しかも教授職の年限を他大学での教歴も含めて換算するということで、二重の特別措置が働いたようである。まずは、めでたしというところだが、あいにく、日弁連の憲法問題対策本部からの依頼で、卒業式の翌日から3 月末まで、ニューヨークの国連本部で開催される「核兵器を禁止する法的拘束力のある文書を交渉する国連会議」に参加することになり、表彰式や記念写真に臨む栄誉は辞退せざるをえなかった。
「我が世はもちづきの欠けたることなし」と謳った平安の貴族に比べると、我が人生は常に三日月というがごとしと表せざるをえない。その心は、常に発展途上。現状が満点であれば、現状を維持したいという気持ちが働くことは否定しがたい。球体の大部分が影に隠れているような三日月状態であれば、変化を期待し、変化を呼び起こそうと気持ちになることは、誰でもよくわかることであろう。満点なんか取ったことはないという妙な自負もある。その気持ちがあればこそ、制度の欠陥とも言うべき、不正の糾明に向かうとも思う。

 鹿児島・大崎事件 

再審の門を2度開ける画期的開始決定!

泉 武臣(大崎事件弁護団)
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1 「本件について再審を開始する」

何度夢に見たでしょうか。何度口にしては、その道のりの遠さに悔しさを覚えたでしょうか。何度心の底から原口アヤ子さんに伝えたい、と思ったでしょうか。
事件発生から38 年後の2017 年6 月28 日、鹿児島地方裁判所1 階、101 号ラウンドテーブル法廷、午後1 時30 分。
「どうぞ開けてください」という訟廷管理官の声とともに、森雅美弁護団長と、亡父の再審請求人でありアヤ子さんの娘である京子さんが座るテーブルの目の前に置かれた封筒の中から、取り出した決定書にはそう書いてありました。心が震えました。
記載を確認した私は旗出し役の若手弁護人二人に、慌てて「開始! 開始です!」と声をかけました。二人はぎゅっと握っていた旗を持って部屋を出て、裁判所正門まで駆けていきます。途中、ロビーに集っていたマスコミの方々に結果を伝えたのでしょう、「おぉっ!」というどよめきが廊下から聞こえてきました。
私は、アヤ子さんに第一報を伝える役を買って出ていました。
決定書の写しを脇にかかえながら廊下に出て、急ぎ支援の方に電話をかけ、やっと通じたとき「再審開始です! 裁判のやり直しです!」と上ずった声で伝えますが、とても大事な、心待ちにしていた一報なのに、電波が通じ難く「えっ? えっ?」と何度か聞き返されました。やっと趣旨を伝えると、電話口の向こうで歓声があがります。「アヤ子さんに代わってください」といって、電話口に出たアヤ子さんに「おめでとうございます! 再審開始ですよ、裁判のやり直しですよ!」と伝えると、しっかりとした声で「ありがとう。ありがとう」と言ってくれました。涙が出てきました。感無量とはこのことです。

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2 事件から38年。3度目の再審請求。

大崎事件第3 次再審請求は、申立て当初から異例であり、申立て当日に裁判長以下との面談が実現した際は、再審を開始するにせよ、棄却するにせよ、大崎事件に決着をつける、真剣に取り組もうとする、裁判体の決意が伝わってきました。そしてその後のスピーディかつ充実した証拠調べ(供述心理学者尋問については、極めて異例な事に2 度の尋問が行われました)や、検察官に未開示証拠の開示を求める積極的訴訟指揮がなされたこと、その訴訟指揮の成果として、第3 次再審で新たなネガフィルムが開示されたこと、その写真をも基に、裁判体に対しプレゼンを行えたことなどは、再審えん罪事件全国連絡会ニュースNo.83 号で既にご報告したとおりです。

3 決定の要旨

結論として、上述のとおり、鹿児島地裁は本件について再審を開始する決定をしました。本件再審開始決定は、法医学鑑定につき「被害者の遺体に窒息死であることを積極的に認める所見がないこと、頸部に外力が作用したことを積極的に示す所見がないことを明らかにした」として「死因を頚部圧迫による窒息死と推定した旧鑑定の証明力を減殺させた」としました。そして供述心理鑑定については、その信用性についての検察官の反論をつぶさに検討した上でこれを排斥し、「新鑑定は、供述心理学の専門家による親族(義弟の妻)の(目撃)供述の分析として一定程度の合理性を有し、親族供述の信用性を判断する資料の一つとしてみた場合、十分な証明力を有するものというべき」として、その証明力を認めました。
そして、その二つの新証拠にいわゆる「減殺効」が認められた訳ですから、新旧全証拠の総合評価を行い、死因については「確定判決は、死因について積極的に窒息死であることを支えてきた唯一の客観証拠である鑑定を失った」としました。そして「共犯者」自白供述および親族の目撃供述の信用性を「総合評価」し、自白の根幹部分の不合理な変遷があること、供述の非体験性兆候が認められる部分があること、「共犯者」らの知的障害への配慮がなされなかったことなどから捜査官による暗示や誘導も考えられるとし、いずれも「信用性は高くない」「虚偽の事実を供述した疑いを否定できない」と評価しました。最終的に「確定判決が認定する犯行態様やアヤ子の犯行への関与について、これを直接に裏付ける客観的な証拠は存在していない」「共犯者3 名の自白は、それぞれ信用性に疑いのあることが明らかとなり、主要な支えであった旧法医学鑑定は証明力を失い、親族の供述も共犯者の自白の信用性を代わりに支えられるほどの証明力はないことが明らか」とのことで「共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」として事件性もなかった可能性があることまで踏み込み、再審開始を決定しました。

4 本請求審の在り方と本決定の意義

本請求審の在り方と本決定の意義は極めて大きいところがあります。
まず1 点目は、審理の在り方として、極めてスピーディな展開と、証拠開示についての積極的な訴訟指揮があったことです。申し立てから決定までわずか2 年足らず。その間、15 回以上の打合わせないし進行協議期日を数え、弁護側、検察側合計4 回の証人尋問も行いました。かかる進行がなされた事実自体が、他の再審事件におけるリーディングケースになります。
また、証拠開示についていえば、数度にわたる証拠開示の勧告と、「証拠を探し、存在すれば開示を勧告するつもりであるから、その旨準備してください。また、もし無いというのであれば、存在しないことの合理的な理由を文書で回答するように」と検察官に迫ったその積極的姿勢が評価されるべきです。
さらに2 点目として、決定の在り方として、いわゆる「白鳥決定」に忠実に、「疑わしきは請求人(被告人)の利益に」という刑事裁判の鉄則に従った決定であることが挙げられます。大崎事件の今までの決定では、弁護側が突き付けた確定判決への疑問について正面から答えず「〇〇という様にも考えられるから不自然ではない」「××という可能性もあるから不合理とも言い切れない」など、疑問点を「確定判決を維持する」という方向に不当に評価して潰していました。その様な「疑わしきは確定判決の利益に」という不当な判断から、ようやく「疑問を正しく疑問として評価する」という、あるべき司法判断に至った点が評価されるべきです。
3 点目としては、供述心理鑑定について、日本の再審史上初めて、科学的で明白性のある新証拠として認めた点です。この点従来「供述の信用性判断は、裁判所の専権」として、供述心理学を排斥してきた先例と異なり、専門的知見を正しく資料とする、真摯な姿勢が評価されるべきです。さらに、DNA 鑑定などの強力な客観的証拠で支えられている事件において、その強力なDNA 鑑定が誤りで、犯人ではないことが証明される様な「客観的に固い証拠構造ゆえに、逆にその固い証拠が崩れればえん罪であることが強く推認された事件(例えば足利事件、東電女性社員殺害事件など)」での再審開始が相次いだ近時の再審開始事例と異なり、本件が、ほぼ自白供述だけで成り立っているいわゆる「柔構造」の事件であるところ、供述心理鑑定も参考にしながら、極めて合理的に説得的に自白供述や目撃供述の信用性を評価した点が高く評価されるべきです。つまり、自白供述だけで成り立っているような他の事件における再審事例のリーディングケースとなるということです。

5 検察官の即時抗告

弁護団は、決定日当日に鹿児島地検、翌日に最高検、翌々日に福岡高検に、「即時抗告をしないよう」申し入れを行いました。主たる理由は①アヤ子さんが90 歳と高齢であり、時間的猶予がないこと、②検察官は再審請求人の1番手であり、公益の代表者なのですから、裁判所が確定判決に2 度合理的な疑いを抱いたからには、もはや再審請求で争うべきではなく、「再審公判」で、有罪の立証を再度行ってもらうべき、というものでした。しかし、検察官は、即時抗告申立期限ぎりぎりの7 月3 日に申立を行ってしまいました。「血の通わない単なるプライドのためだけの延命」と言わざるを得ず、満腔の怒りをもって糾弾するほかありません。

6 今後の審理

即時抗告申立を受けた福岡高裁宮崎支部は、極めて異例なことに、申立てから17 日後の本年7 月20 日に、早々に三者協議の場を設定してくれました。その中で、補充意見提出まで長期間を要すると説明する検察官に対し、裁判長は「裁判所はいたずらに長引かせる気は全くない」と断言し、早期の締め切りを指示しました。即時抗告の戦いも始まっています。
今後とも、一日も早い「アヤ子さんの命あるうちに無罪を!」という目標に向かって、弁護団一同が全力で取り組む所存ですので、ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

 静岡・袴田事件 

DNA鑑定をめぐって、9 月に鑑定人尋問へ

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7月20 日(木)、東京高裁(大島隆明裁判長)で袴田事件の即時抗告審の三者協議が行われました。
三者協議後に開かれた記者会見で、西嶋勝彦弁護団長は、9 月26 日と27 日に静岡地裁の再審開始決定の根拠の一つとされたDNA鑑定を行った本田克也鑑定人と、即時抗告審で裁判所が職権で鑑定を依頼した鈴木康一鑑定人の尋問を行うことを明らかにしました。弁護団は、鑑定人尋問を公開の法廷で行うように求めましたが、非公開で行われることになりました。但し、請求人の袴田秀子さんの立ち合いは認めることが示されました。
秀子さんは、「これで前に進めてもらえる」と期待を述べました。
また、西嶋弁護団長は、確定判決が袴田さんの犯行の理由として挙げていた袴田さんの右足の脛の傷について、即時抗告審で開示された証拠によって、逮捕時に袴田さんは右足の脛の傷はなかったことが明らかになり、弁護団は意見書を提出していました。これに対して検察が反論書を提出していたため、弁護団が再反論書を提出したことを報告しました。そして、「鑑定人尋問が終われば弁護団としては年内にも最終意見書を出す用意がある」と述べ、早期に検察の即時抗告の棄却を求めていく意向を示しました。
この日、国民救援会も参加する袴田巖さんの一日も早い再審無罪を求める実行委員会は、東京高裁前で宣伝行動を行い、東京高裁、東京高検への要請を行いました。東京高裁には、新たに3 万名を超える署名(累計で約23 万名)を提出しました。次回は、9 月の鑑定人尋問にあわせて宣伝、裁判所要請などを行う予定です。9 月の宣伝・要請行動の日程の詳細は後日連絡します。

※即時抗告審でのDNA鑑定をめぐる経過

即時抗告審で尋問が行われる鑑定は、静岡地裁が新証拠のひとつと認定したDNA 鑑定の信用性についてです。鑑定は、死刑判決(80 年確定)が袴田さんの犯行着衣としていた「5 点の衣類」を対象に行われました。袴田さんの弁護団が推薦した本田克之教授は、袴田さんのものとされてきた血痕のDNA 型は本人と一致せず、被害者の返り血とされてきた血痕のDNA 型も別人のものだとする鑑定結果を出しました(検察側推薦の山田鑑定人もミトコンドリアDNA 型判定をおこなった結果、白半袖シャツの右肩の血痕は袴田さんと一致しなかった)。これが再審開始の大きな決め手となり、静岡地裁は「証拠が捏造された疑い」にまで言及し、袴田さんをこれ以上拘置することは、「耐えがたいほど正義に反する」として、袴田さんを釈放するとともに決定で厳しく捜査機関を批判しました。
検察は、このDNA 鑑定結果を覆そうと、本田教授が用いた「血液由来の選択的抽出法」と呼ばれるDNA 鑑定の手法を批判しています。「血液由来の選択的抽出法」とは皮脂や唾液などが混じった血痕から、血液に由来するDNA だけを選り分けて取り出すものです。検察は「本田教授の独自の手法で有効性はなく、鑑定結果は血液ではないDNA 型を検出したもので信用できない」と主張し、検証実験をして確かめるよう東京高裁に求めてきました。
これに対して、弁護団はこの検証実験は確定判決の弾劾にもならず無意味なものであると強く反対しましたが、東京高裁はこれを押し切って検証実験を強行しました。裁判所は、検察が推薦した法医学者・鈴木康一教授に下記の3 点について鑑定を嘱託しました。
検証実験で使う試料は、(1)新しい血液に別人の新しい唾液を混ぜたもの、(2)10 年以上前に血液が付けられたガーゼ、(3)(2)の血痕に別人の新しい唾液を混ぜたもの、の3 種類。これらの試料から、「選択的抽出法」を使って血液のDNA 型を判定できるかどうかを調べるというものでした。
ところが、前回の「連絡会ニュース83 号」に掲載した通り、鈴木鑑定人から検証実験の「検証報告書」が大幅に遅れて、今年6 月上旬に裁判所に提出されました。
鈴木鑑定人は、本田鑑定人が行った「選択的抽出法」と呼ばれる鑑定手法について「血液由来のDNA を取り出すために使った試薬『抗Hレクチン』がDNA そのものを分解する」などと有効性を否定しています。
これに対して、弁護団は鈴木鑑定人の検証は裁判所の嘱託事項(上記3 項目)を無視した検証事件であり無意味であること。また、鈴木鑑定人の検証実験のデータをもってすればDNA 型判定ができ、鈴木鑑定は本田鑑定人の方法を否定するものではないとの意見書を裁判所に提出しています。

≪当面する主な行動日程≫

 ■逮捕から51 年 宣伝・抗議行動
 8 月18 日(金) 13 時00 分 JR静岡駅北口地下広場集合
 14 時00 分 静岡県警抗議
 15 時00 分 県庁記者クラブで会見
 ■逮捕から51 年 袴田事件フィールドワーク(現地調査)
 主 催 袴田巖さんの再審無罪を勝ち取る実行委員会
 *事務局=袴田巖さんを救援する清水・静岡市民の会
 電話 054-366-2468、FAX054-366-2475
 日 時 8 月19 日(土)13 時00~16 時00 分
 会 場 清水辻生涯学習交流館(JR清水駅西口徒歩10 分)
 〒424-0807 静岡市清水区宮代町5 番75 号 ☎054-364-0234

 資料代 1000円(資料、マイクロバス代等含む) 宿 泊 各自で手配をお願いします。
 締 切 第1 次集約が7 月31 日(月)で、最終締切日は8 月14 日(月)
 現場が住宅地の中で車道も狭いことなどから定員50 名となっています。お早目の申込みをお願いします。
 申込み先=国民救援会中央本部(瑞慶覧)までご連絡ください。
 電話 03-5842-5842 / FAX 03-5842-5840

 滋賀・日野町事件 

再審開始へ期待高まる!

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警察官2名と起訴検事を証人尋問 続いて殺害方法の鑑定人も

7月18 日、19 日の両日、日野町事件で引当て捜査に関わった警察官2 名と検事1 名の証人尋問が大津地裁で開かれました。これは4 月26 日の三者協議において、新しく担当することになった今井輝幸裁判長が証人尋問を行なう意向を示し、6 月1 日の三者協議において日程と尋問対象者が決まりました。
日野町事件は阪原弘さんを犯人と断定する証拠はなく、「自白」に頼った事件です。その中で有罪の根拠となったのが、金庫発見現場と遺体発見現場の引当て捜査で阪原さんが任意に案内できたというものでした。ところが金庫発見現場の見分調書に添付された写真が、ネガの開示により19 枚のうち8 枚が帰りの写真であったことが判明し、阪原さんが一直線に現場にたどりついたように装った証拠偽造の疑いが強まりました。さらに経路の分岐において阪原さんが進路を指し示す写真はありませんでした。
また金庫発見の通報をうけた捜査員が作成した実況見分調書では、現場の見取り図が添付され、金庫の内容物が崖に点々と散乱している様子が計測されているのですが、阪原さんの自白は崖下の松の木の根元で金庫をホイルレンチで壊したとなっているため内容物が散乱している様子を撮影した写真は調書に貼付されておらず、検察は開示請求に対して紛失したと回答しています。その後検察は、往路と復路の写真が混在していることは認めたものの、阪原さんが任意に案内したことに変わりはないと回答しています。遺体発見現場の引当てにおいても阪原さんが進路を指し示す写真はなく、遺体を宅地造成地に置く場面の写真がありません。これは弁護団がネガと写真の開示によって遺体の抱え方に関わる重要な発見をし、遺体発見時の遺体の向きと伏せ方が自白による抱え方、降ろし方では再現が不可能であることが分かりました。この事実は秘匿されたままでした。
原審裁判所が、有罪の心証を強くもったとされる引当て捜査において、偽造・隠ぺいの疑いを指摘した弁護団の主張に、再審裁判所が当時の捜査官と起訴検事の証人尋問に踏み切ったことは大変重要です。また裁判所が、殺害方法について「自白」の矛盾を突き止めた東京医科大の吉田謙一教授の尋問が9 月4 日に実施されます。殺害方法について阪原さんの「自白」は、座っている被害者の首を両手で挟むように絞めたとなっていますが、吉田鑑定によると、被害者の両腕を後ろ手に縛り(うっ血の跡があった)、抵抗できない状態にし、仰向けにして右手をのど輪の状態で体重をかけ、左手で口をふさいで殺害しているとして阪原さんの「自白」の矛盾を突いています。また被害者の口腔内と食道に傷があることや顔面の内出血の痕が吉田鑑定による手の位置と符合し、阪原「自白」を否定しています。
二日間にわたる捜査官と検事の尋問を終えて記者会見した弁護団は、再審事件で30 年も前の捜査担当者と起訴検事に対する尋問は例がなく、裁判官全員が積極的だったと評価しました。再審請求人として二人の妹とともに出廷し、傍聴した長男の阪原弘次さん(56 歳)は、「裁判官が非常に関心を持ってくれて大変うれしく思う。父がねじ曲げられた状況のなかで犯人にされていった状況がよく分かり、非常に憤りを感じている」と述べました。今後、再審審理は9 月の吉田証人の尋問のあと、来年1月に弁護側、検察側双方が最終意見書を出す方向です。

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一日目の午前の尋問を傍聴した遺族3 名は、JR大津駅前で行われた救援会や再審無罪を求める会の昼休み宣伝に遺影をもって参加し、長女の美和子さんがマイクで、「父がどのように現場に連れて行かれたのかが分かり、辛かった。最後までご支援をお願いします」と訴えました。この日の尋問傍聴を終えた遺族を「励ます集い」が大津市内で開かれ、長男の弘次さんは、「人生最良の日でした」と語り、再審開始への期待をにじませました。この日夕方のNHKニュースで日野町事件証人尋問の映像が流れ、二日目のJR大津駅前宣伝では通行人から「きのうニュースで見た。がんばってください」と激励されました。
滋賀、大阪、兵庫の支援行動参加者は二日目も尋問に呼応し、裁判所前や大津駅前で宣伝を行ないました。救援会滋賀県本部と再審無罪を求める会は8 月26 日(土)、日野町内にて宣伝を行なう予定です。テレビで報道されたこともあり、地域に入れば反応もつかめるし何か役立つ情報が聞き出せる可能性もある、と準備をしています。
また11 月12 日~13 日には日野町事件第10 回全国現地調査を東近江市内(旧八日市市)で開催する予定です。

日本国民救援会滋賀県本部事務局長 川東繁治

 三重・名張毒ぶどう酒事件 

「このままでは審理なしに判断へ」 検察官が意見書を提出

名張毒ぶどう酒事件は2015 年11 月6 日に、第10 次再審請求が妹の岡美代子さんによって申し立てられました。弁護団は昨年10 月4 日に新証拠を提出。その後裁判所は何も動きを見せませんでした。検察官は5 月10 日(糊鑑定、リアリティー モニタリング等)、6 月28 日(毒物鑑定)に意見書を提出してきました。これによって具体的な審理、証人尋問に入ることができます。
ところが裁判所は岡美代子さんに対し、「意見書」の提出を求めてきています。三者協議を開こうとはしていません。このままでは実質審理をおこなわないままに、「請求棄却」決定が出される可能性 が高いといえます。どういう決定が出されたとしても、「異議申し立て」がおこなわれ、名古屋高裁刑事2 部での審理となります。
そういう点では、10 月4 日の「無念の獄死2周年行動」が大きな意味を持つことになります。笹島交差点(名古屋市内)に300 名以上を集め、再審開始のための一大イベントを成功させましょう。それを節に、宣伝、署名、要請行動、学習会、上映会などを計画的に進めることが必要です。弁護団は7 月の弁護団合宿で、意見書に対する反論を準備し、証人尋問などに備えることになっています。
「名張毒ぶどう酒事件第10 次再審請求 再審開始をめざすニュース」NO429より転載。

≪今後の要請行動の予定≫

 ・8 月24 日(木)北海道、東北、北陸、甲信越
 ・9 月15 日(金)愛知守る会中心に
 ・10 月4 日(水)無念の獄死2周年行動

 栃木・今市事件 

守る会が9月に結成総会

今市事件は、2005 年12 月1 日、栃木県旧今市市の小学1 年生の女児が行方不明となり、翌日、茨城県の山林で遺体となって発見された事件です。
捜査機関は、殺人事件として捜査を開始しましたが、数年に渡り犯人逮捕に至らず、それでもなお50 名体制の捜査本部を維持し、事件発生から約8 年経過させ、進展のない状態を打開する賭けに出ることとし、2014 年1 月29 日、勝又拓哉さんの身柄を確保するため、手始めに偽ブランド品の販売の罪で逮捕しました。
偽ブランド品の販売事件の逮捕・起訴後、勝又さんの身柄拘束を利用し、弁護人から取調べの中止を申し入れされようが、今市事件の取調べを続けました。
取調べの結果、殺人で逮捕できると考えた捜査機関は、6 月3 日に殺人で逮捕し、20 日に殺人の自白を得て、起訴しました。
宇都宮地裁での裁判員裁判は、2016 年2 月29 日の第1 回公判の後,連日に渡る開廷及び評議が行われ,4 月8 日に無期懲役判決を言い渡しました。裁判員裁判を担当した裁判員は、閉廷後の記者会見で、物証の「弱さ」を指摘する一方で「犯行を自白した録音・録画がなければ判断は違っていた」と、自白に頼って判断したと言いました。判決理由中でも「客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできない」と述べており、自白偏重を露呈しています。
今市事件にある程度の知名度がある理由が、取調べの可視化の問題と大きく関連しているからです。捜査機関は取調べの録画をしており、それを法廷で流したものの、実質的には自白の任意性判断ではなく証拠とされました。しかも、別件で逮捕された事件については、取調べの全過程ではない一部しか録画されておらず、別件逮捕後に殺人で再逮捕される件については問題視されていましたが、現実化しました。
宇都宮地裁は、犯人性を認定し無期懲役判決を言い渡しましたが、勝又さんは犯人ではありません。
第1 に、自白は客観的事実と矛盾します。自白では、女児の両手両足を粘着テープで縛った状態で右肩を左手で掴み,約10 秒間で正面から立たせた状態で5 回刺し、膝立ちになった後にもう5 回刺したとあります。しかし、立った状態から膝立ちになっているにも関わらず、刺された10 箇所全てが同じ角度から刺されています。刺すとき右肩を左手で掴んでいるはずなのに、女児の肩に掴まれたアザはありません。立った状態で刺されているにも関わらず、血液が下半身に向かって流れていません。鑑定結果によれば、女児の体からは1 リットル以上の血液が流れ出たと考えられるのに、血痕が殺害現場にほとんどありません。
第2 に、自白を裏付ける証拠がありません。勝又さんの女児誘拐の動機はわいせつ目的であるとされ、自白では「強姦した」「胸を触った」「射精した」と言っていますが、女児の体から勝又さんのDNA は検出されていません。女児の頭部に張り付いていた粘着テープには、勝又さんのDNA が検出されないばかりか、第三者のDNA が存在します。さらに、自白には真犯人しか知り得ない秘密の暴露もありません。
宇都宮地裁は、客観的証拠が乏しいことを念頭に置きながらも、勝又さんの供述内容を吟味することなく「やりました」と言ったことをもって捜査機関が描いたとおりの犯罪をしたと認定したのです。
控訴審の弁護人は、栃木県内の弁護士が2 名のほか東京合同の泉澤先生、横山先生、旬報の今村核先生、元裁判官の6 名体制です。泉澤先生と救援会栃木県本部とは、足利事件以来のめでたくない再会を果たしました。
足利事件の再審無罪から約7 年経過し、栃木県本部の体制も大きく変わりましたが、国民救援会中央本部から支援の方法を教えてもらい、引っ張っていただきながら、支援体制を作りつつあります。
9月16 日午後2 時からは、栃木県弁護士会館で「えん罪今市事件・勝又拓哉さんを守る会」の結成総会をします。
まだ控訴審第1 回公判期日は決まっていませんが、控訴審係属中の事件ですので傍聴での支援も可能です。署名活動は、9 月16 日の結成総会で提案させていただく予定です。多くの方々に支援をいただき、控訴審での無罪を獲得したいです。
全国のみなさん、ご支援よろしく願いします。

国民救援会栃木県本部事務局長 服部 有

 福井・福井女子中学生殺人事件 

全国現地調査を開催

他人の供述の曖昧さを再確認、再審の実現必ず

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1986年に起きた殺人事件の犯人とされた前川彰司さんが再審を求めている福井女子中学生殺人事件の第5回全国現地調査が6月10日、福井市内でおこなわれ、10都道府県87人が参加しました。
事前学習会で、吉村悟弁護団事務局長は、前川さんと犯行を結びつける物的証拠は何もなく、警察に弱みを握られた人たちの、客観的事実と矛盾し変遷する供述だけで有罪にされた事件だと特徴点を強調しました。その後、山本裕夫弁護士が、被害者の遺体の状況や現場との矛盾などを説明。検証調書に基づいて被害者宅の部屋の間取りや家具などを置いた犯行現場を再現して、確定判決の犯行態様がリアルに分かる再現実験などをおこないました。
参加者からは、「犯行は玄関から争いもなく、奥の部屋の6畳間で及んでおり、被害者と面識のない前川さんが奥の部屋まで上がることは不自然だ」「確定判決は激高して突発的な犯行としているが、現場に血痕、足跡も残さず冷静な犯行としか思えない」など、再現検証実験で確定判決の問題点を実感することができました。
次に、佐藤辰也弁護士の案内で有罪の根拠とされた関係者の供述に基づいて、犯行後に血の付いた前川さんをかくまったとするマンションなどの経路をバスに乗って確認しました。その中で、関係者の供述で関わった人間が理由もなく突然入れ替わったりするなど、供述は不自然で、とても信用できないことを体験しました。
また、布川事件の桜井昌司さん、東住吉冤罪事件の青木惠子さんも参加して前川さんを激励し、「無実の罪で苦しんでいる仲間を助けたい」と冤罪事件への支援を呼びかけました。
そして、第2次再審請求にむけて、さらに事件の真実を訴えて支援運動を広げることを確認して、現地調査を終えました。
前川さんは、「事件があった直後、私が血だらけでいるのを見たという目撃証言はまったくのウソ、デタラメです。私をはめた証人は、司法取引した事実を裁判で認めています。私はこの事件に無関係で、正真正銘の無実であることを皆さんにお伝えしたい」などと話しました。

エッセイ 「橋下徹さん」

桜井昌司さん(布川国賠裁判・原告)

先日、TBS の「世界怒りの法廷」と言う番組に出演した。
橋下徹さんとNEWS 小山さんがMC を務める娯楽番組とのことで出演要請が来ましたが、どのような番組でも冤罪を理解してくれる人が増えれば良いと思って出ることにしました。
当日は、色々な事件の当事者が弁護士である橋下徹さんに訴えたり、話したりする形式で録画が行われました。青森での公金横領事件で有名な「アニータさん」の収録が長引いて、ゴビンダさんの部分が無くなったりしましたが、布川事件は、それなりに行われました。
スタジオは法廷のような作りで、被告人尋問席みたいなところに立ったとき、橋本さんは「桜井さんを、そんなところに立たせて申し訳ない」と言いました。
番組担当者からは「橋下さんに反論したり、やりあって頂いて構いません」と言われていましたので、何かあれば議論するつもりでしたが、意外にも、そうはなりませんでした。
例えば可視化の議論になったとき、「桜井さんには申し訳ないが」とか「桜井さんは不満でしょうが」と、橋下さんは言い訳の言葉から自分の主張をしていました。
「可視化すると証拠を得られなくなるので、完全可視化するならば、警察に世界基準の盗聴などの権限を与えるべき」というのが橋下さんの認識でした。満足に刑事裁判を体験していない橋下さんでは仕方がない感覚でしょうが、もちろん、「それは錯覚。自白で事件を解決するのではなくて証拠で解決すべき。日本の警察は信用できない。証拠のねつ造もする。大体、日本には警察を監視して指導するシステムがない。本来、公安委員が行うべきなのに、何の役にも立っていない、金で飼われたような人しかいない」などと反論しましたけども、橋下さんは、ほとんど反論してきませんでした。拍子抜けでした。
どうして反論して来なかったのかは判りませんが、もしかすると、私の持っている真実と言いますか、冤罪体験者ならではの力みたいなものを感じて、あの橋下さんをして言葉を飲み込ませたのかも知れないと思いました。
どんな時も真実は強いと知った、今回のテレビ体験でした。

 今後の主な事件の日程 

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 7月26日 宮城・北陵クリニック筋弛緩剤えん罪事件要請行動(13時=仙台高裁)
 7月28日 倉敷民商弾圧事件 控訴趣意書提出・激励行動・報告集会
 13時=広島高裁岡山支部前で宣伝、終了後激励行動、報告集会に移動。
 7月29日 豊川幼児殺人事件第3回全国現地調査(13時 豊川市勤労福祉会館集合)
 8月18日 倉敷民商弾圧事件(小原、須増裁判)最高裁要請
 8時15分 宣伝行動、10時要請 *いずれも西門集合
 8月18日 長野・あずみの里公判(13時10分 長野地裁松本支部)
 8月18日 袴田事件・事件発生51年行動(宣伝・静岡県警抗議
 13時 JR静岡駅北口地下広場集合)
 8月19日 袴田事件現地調査(集合13時 清水辻生涯学習交流館)
*JR清水駅西口徒歩10 分
 8月24日 名張毒ぶどう酒事件要請行動(13時半=名古屋高裁、15時=名古屋高検)
 9月15日 名張毒ぶどう酒事件要請行動(13時半=名古屋高裁、15時=名古屋高検)
 9月16日 栃木・今市事件支援する会結成総会(13時 栃木弁護士会館)

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