えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.86再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2017年 12月20日発行 No.86

       ≪特集・再審・えん罪事件全国連絡会第26 回総会決定 ≫
12月3日、4日の両日、再審・えん罪事件全国連絡会は、名古屋市において第26回総会を開催しました。総会では、名張毒ぶどう酒事件の再審開始を勝ちとるために鈴木泉弁護団長から名張毒ぶどう酒事件についての記念講演と、布川事件の桜井昌司さん、東住吉冤罪事件の青木惠子さん、袴田事件の袴田秀子さんなど事件関係者が訴えを行いました。そして、総会終了後には、名張毒ぶどう酒事件の第10次再審請求審で名古屋高裁が一度も三者協議を開かず、請求人の岡さんに意見陳述書の提出を求めるなど不当な訴訟指揮を行っていることに抗議し、公正な審理と再審開始決定を求めて要請を行い、記者会見を行いました。
総会を前後に、松橋事件の即時抗告審の決定(11 月28 日)、名張毒ぶどう酒事件の第10次再審請求の棄却決定が相次いで出されました(12 月8 日)。両決定については、次号で掲載する予定です。



 再審・えん罪事件全国連絡会第26回総会決定

2017年12月3日~4日
愛知県名古屋市にて

一 はじめに

6月28日、大崎事件の第3次再審請求審で2度目の画期的な再審開始決定、さらに、11 月28 日には松橋事件で検察の即時抗告の棄却決定を勝ち取りました。大崎、松橋事件では、あらためて証拠開示の重要性と検察官上訴の問題性が浮き彫りになりました。長い再審のたたかいで、大崎事件で2 度の再審開始決定をかちとったのは免田事件以来のことであり、最高裁が再審開始について判断基準を示した白鳥・財田川決定後では初めての画期的なことです。
ところが検察は、無実の原口さん、宮田浩喜さんらを冤罪に陥れたこれまでの捜査と裁判への対応を真摯に反省することなく、90歳となった原口さんの人生を平然ともてあそぶ傲慢さで、福岡高裁宮崎支部に即時抗告しました。
再審開始決定に対する検察官の不服申し立ては、えん罪犠牲者の救済が遅れ、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんが獄死させられるなど深刻な事態にあります。奥西さんの遺志を引き継ぎ第10次の再審請求を申し立てた岡美代子さんは88歳、松橋事件の宮田浩喜さんは84歳、袴田事件の袴田巌さんは81歳、請求人の姉・袴田秀子さんは84歳です。まさに命がけのたたかいを強いられています。
名張事件の第10次再審請求審で名古屋高裁は、弁護団の再三にわたる要請にもかかわらず、いっさい三者協議も事実調べも行わないまま、12月8日に決定を出すと通知してきました。
また、多くの事件で再審の可否について、裁判所の決定が予想されています。11月29日の松橋事件の即時抗告審の決定を皮切りに、12月8日には名張毒ぶどう酒事件の第10次再審請求審の決定が出されます。さらに、年内には湖東記念病院人工呼吸器事件の決定が予想されています。そして、来年には袴田事件、北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件、日野町事件の決定が相次いで出されます。

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1980年代の4大死刑冤罪の再審無罪に続く、2010年代の無期刑・重大事件での再審無罪(足利、布川、「東電OL」、東住吉)を勝ちとった成果を力に、上記の事件で再審開始決定を勝ち取り、再審をめぐる「せめぎ合い」の状況を突破していく必要があります。
本総会では、激動の再審・冤罪事件をめぐる情勢について論議を深め、再審の流れをさらに大きくするために、この間の運動を総括し、新たな方針と役員体制を確立します。

二 この一年間の再審・冤罪事件をめぐる裁判の特徴と課題

1、供述心理分析の信用性を認めた大崎事件で画期的な再審開始決定!

鹿児島地裁は6月28日、大崎事件に対し、2度目となる再審開始決定を出しました。決定では、弁護団の法医学鑑定と心理学鑑定を採用したうえで、有罪判決の根拠となった死因鑑定(首の圧迫による窒息死)の証明力が減殺され、「共犯者」とされた者の家族などの供述の信用性は高くないとしました。
今回の再審開始決定は、今後の再審のたたかいに多くの教訓を残しました。今回の裁判所の審理の在り方や決定の意義について、弁護団の泉武臣弁護士は以下の3点を強調しています(詳しくは「再審・えん罪事件全国連絡会ニュースNo84」参照)。
① 裁判所のスピーディーな審理と証拠開示「勧告」など積極的な訴訟指揮

鹿児島地裁(冨田敦史裁判長)は、高齢となった原口さんに配慮して弁護団の審理の促進の要請に応えて、再審申立から決定までわずか2年足らずの間、15回以上の打ち合わせ及び三者協議を行い、弁護側、検察側合計4回の証人尋問も行いました。
また、冨田裁判長は、弁護団の証拠開示請求に対して、「未開示証拠はもう存在しない」という検察に数度にわたり証拠開示を勧告し、「証拠を探し、存在すれば開示を勧告するつもりであるから、その旨準備してください。また、もし無いというのであれば、存在しないことの合理的な理由を文書で回答するように」と検察官に毅然と迫ったと言われています。こうした裁判所の積極的な訴訟指揮と勝ち取った弁護活動に、大いに学び、今後の支援活動に生かしていく必要があります。
② 白鳥・財田川決定に忠実な決定

2点目として、これまで多くの事件で、裁判所は、弁護側が突き付けた確定判決への疑問について正面から答えず、「〇〇という様にも考えられるから不自然ではない」「××という可能性もあるから不合理とも言い切れない」など、疑問点を「確定判決を維持する」という方向に不当に評価して潰していました。その様な「疑わしきは確定判決の利益に」という不当な判断をすることなく、「疑問を正しく疑問として評価する」という、白鳥・財田川決定に忠実に、「疑わしきは請求人(被告人)の利益に」という刑事裁判の鉄則に従った決定です。
③ 供述心理学鑑定の信用性を認めたこと

3点目としては、供述心理学鑑定について、日本の再審史上初めて、科学的で明白性のある新証拠として認めた点です。これまで、「供述の信用性判断は、裁判所の専権」として、供述心理学を排斥してきた先例と異なり、専門的知見を正しく判断し、供述心理鑑定も参考にしながら、極めて合理的・説得的に自白供述や目撃供述の信用性を評価した点が高く評価されます。
今回の決定は、強力な客観的証拠がなく、自白・供述など脆弱な証拠で成り立っているような他の事件における再審事例のリーディングケースとなります。

2、証拠開示、事実調べをめぐる攻防

この間の再審開始、無罪判決の教訓として、検察官の手持ち証拠の開示の前進が指摘されています。再審における証拠開示の前進は、原審における警察・検察の捜査の問題点を浮き彫りにしました。今回の大崎事件の再審開始決定はその重要性をあらためて示しています。
証拠開示をめぐっては、各地の裁判所で厳しいたたかいが続いています。検察は、請求人・弁護団の開示請求について「法的根拠がない」として応じようとしません。また、裁判所の姿勢に大きな「再審格差」があることが指摘されています。
昨年の総会では、こうした状況を踏まえて証拠開示と徹底した事実調べを求める支援活動を展開することが強調されました。

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日野町事件では、確定判決の有罪の根拠とされていた被害者宅から盗んだ手提げ金庫の発見現場への引き当て捜査報告書の添付の写真のネガが開示されて、阪原さんが捜査官に誘導されることなく案内できたとされていた捜査報告書の添付写真が、実は復路に撮った写真を往路に行ったように写真の順番を入れ替えたものであることがネガと照らし合わせることで判明しました。これをきっかけに、裁判所も積極的に証拠開示を指揮して、新たに100数点の証拠開示がすすんでいます。その中には、阪原さんの事件当夜の行動について、警察が関係者の供述を誘導したアリバイ潰しの捜査過程を明らかにする捜査資料も開示されました。さらに、自白の殺害方法と遺体の状況とが矛盾するという新たな法医学者の鑑定意見書も提出されました。
そして、大津地方裁判所(今井輝幸裁判長)は、金庫発見現場への引き当て捜査を行った元警察官2人と捜査を指揮した検察官の証人尋問、さらに殺害方法について鑑定を行った東京医科大学の吉田謙一教授の証人尋問を相次いで行いました。一方、名張毒ぶどう酒事件第10次再審請求や北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件では、裁判所が弁護団の求める事実調べ、証拠開示に消極的です。袴田事件の即時抗告審では、東京高裁が検察の主張に追随し、審理が長期化しています。
大崎事件の第2次再審請求審の鹿児島地裁は、上記のような状況でした。弁護団は、裁判所の積極的な訴訟指揮によって重要な証拠が開示され再審無罪となった布川事件、「東電OL」殺人事件などと対比して、裁判体に訴訟指揮によって無辜の救済に格差が生じてしまうという「再審格差」の問題点を浮き彫りにしました。
大崎事件、日野町事件の教訓に学んで、裁判所、検察の不当な訴訟活動を許さず機敏に反撃することが大切です。

3、今市事件の控訴審が始まる、逆転無罪判決を勝ち取るために

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10月18日、東京高裁第5刑事部(藤井敏明裁判長)で、今市事件の控訴審第1回公判が開かれました。この事件で、勝又拓哉さんの犯行を裏付ける有力な物証はなく、1審の有罪を支える証拠は「自白」と「状況証拠」だけです。1審の宇都宮地裁判決(松原里美裁判長)は、状況証拠だけでは勝又さんが犯人とは断定できないとしながら、取り調べの録音・録画映像を決め手として、「自白」は信用できるとして 無期懲役を言い渡しました。
控訴審では、取調べの録音・録画映像が自白の信用性を担保づける実質証拠として判断された違法性が大きな争点となっています。
また、控訴審では、「自白」の殺害態様に対して、現場の血痕の量、被害者の遺体の創傷など客観的状況が一致しないとする法医学者の鑑定意見書をもとに 1 審判決の誤りを指摘して無罪を主張しています。また、遺体から採取されたDNA鑑定の元データが開示され、真犯人を推認させる第3者のDNA型が被害者の髪の毛に付着していたガムテープから検出されるなど 勝又さんの無罪を示す証拠も控訴審で弁護団によって提出されています。
今市事件については、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」の国会審議の中でも部分可視化による冤罪事件の実例として取り上げられました。
控訴審では、捜査機関による都合の良い部分だけが録音・録画された映像を自白の信用性を担保づける実質証拠として判断した1審判決の誤りを正し、無罪判決を勝ち取るために連帯して運動を進めます。

三 「新たなせめぎ合い」を跳ね返し、無実の人を救おう

1 「くり返すな冤罪!市民集会」の成功と「再審法」抜本的改正をもとめて

11月9日、東京・文京区民センターにて、「くり返すな冤罪!市民集会」を190名以上の参加で成功させました。今回の集会では、再審開始決定に対する検察の不服申し立ての禁止と再審における証拠開示という二つのテーマに絞って集会を開催しました。集会では、検察官の不服申し立て問題について大崎事件の鴨志田裕美弁護士が、証拠開示問題については元裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授に講演をお願いしました。
鴨志田弁護士は、「再審の審理で検察が当然のごとく堂々と有罪を主張しているが、刑訴法の条文では、再審請求人に対する反対当事者が検察官であるという条文上の確かな根拠があるわけではない」と説明。さらに、「憲法は、一度裁判にかけられた人が、再び同一の事件で裁判にかけられない(二重の危険禁止)の原則を定めた。この憲法のもとで、再審制度は、無罪が確定した人が再び裁判にかけられる不利益再審が禁止され、その目的は無実の人を救うことだけになった」と指摘しました。
その上で、「そうであるならば、裁判所の職権主義のもとで手続きがおこなわれる再審の審理においては、検察官は『公益の代表』として無辜の救済のために、裁判所に協力しなければならない立場だ。再審開始決定に対して、検察官の抗告が許されるのか」と述べました。
続いて元裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、裁判官の人間像について話し、「裁判官は受け身で否定されることに慣れておらず、仕事は完璧にしたいと考える優等生タイプだ」と指摘。「仕事量が多く、日々の事件処理を遂行することが最優先で、それ以外のことを考える余裕がない状態だ。そこへいくと再審は通常の事件とは別の+αの事件となっているから、そこにエネルギーを向ける余裕がないのが現状だ」と話し、裁判官がどれだけ再審に関心を持つかによって展開が変わることが浮き彫りになりました。
そして、「裁判員裁判や公判前整理手続きの導入に伴い、通常審での証拠開示が一定認められるようになったが、再審手続きにおいては、証拠開示の規定はない。規定があれば、裁判官が証拠開示を求める後ろ盾になる」と述べて、再審においても証拠開示がなされる法の運用が必要だと強調しました。
また集会では、静岡・袴田事件の袴田巖さんの姉・秀子さんのビデオメッセージ、宮城・仙台北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件の守大助さんの両親、布川事件の櫻井昌司さん、「東電OL」殺人事件で再審無罪となったゴビンダ・プラサド・マイナリさんが、発言しました。妻のラダさんと共に登壇したゴビンダさんは、「もう一度日本にくることができて良かった。5年前、ネパールに帰ることができて、今は家族と一緒に幸せに暮らしています」と話し、支援者にお礼を述べました。
ゴビンダさんの再審無罪後初めての来日ということもあり、マスコミでも集会がとりあげられ、再審の問題点を広く国民に知らせることができたという点でも、今回の集会は大きな成果をあげました。

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また、内容においても再審の現状を告発するにとどまらず、裁判体の訴訟指揮によって無辜の救済に格差が生じてしまうという「再審格差」をなくすためには、再審における証拠開示と再審開始決定に対する検察の不服申し立ての禁止を早急に法制化する必要があることを集会アピールとして採択し、再審法の抜本的な改正にむけての契機となる集会となりました。

2 事実と道理にもとづくたたかいの強化

これまでの再審・えん罪事件のたたかいの教訓は、事実と道理に基づいて公訴事実や確定判決の誤り・不当性を論証し、広範な裁判批判の運動を組織してきたことです。
この間、足利、布川、「東電OL殺人事件、東住吉冤罪事件の再審無罪判決、そして袴田、松橋、大崎事件の再審開始決定を通じて、捜査機関による証拠の捏造や隠蔽、自白偏重の捜査や裁判のあり方に国民の批判が強まっています。
一方、裁判員制度の導入の際に検察官が開示した証拠について審理以外の「目的外使用」を禁じる規定が刑訴法218条4、5に設けられ、この規定が形式的に運用され、弁護団から裁判資料の提供がされず支援運動にも支障をきたす事態も生まれています。
袴田事件弁護団は、この規定は再審請求審に適用されるものではなく、そもそも憲法が保障する公開の原則に反するとして、事件の真相を明らかにし審理の促進に役立つかどうか弁護団が総合的に判断して、この間開示された取り調べ録音テープの1部などを公表しています。
この教訓に学んで、事件支援の原点に立ち返って判決や裁判記録などを検証して、真実の究明に弁護団とともに努力し、裁判所に徹底した証拠の採用と事実調べを実現させることが不可欠です。また、裁判記録をCGで現場を再現するなどの工夫も必要です。
不公正な裁判への怒りは、事実を知り、道理にもとづかない権力の姿を知るところから生まれます。個々の事件の裁判で現れた事実を具体的に訴え、人びとの心を打ち、魂をゆさぶる運動を展開しましょう。

3 重要な段階を迎える事件に連帯した支援を

再審・えん罪事件全国連絡会は、共通する課題で冤罪犠牲者の救済と冤罪をなくすための刑事司法改革、刑事施設に収監されている被収容者の処遇改善運動にとりくんできました。また、個別事件についても重要な段階を迎える事件や各事件の集会・現地調査等の成功にむけて協力しきました。引き続き、共通した課題での共同行動や相互の事件支援と連帯した運動をすすめます。(*加盟事件の現状と課題については、「各事件報告書」を当連絡会のホームページに掲載しています。)
とりわけ、以下の事件の支援について、再審・冤罪事件の全体の運動を押し上げるために、連帯したとりくみを強化します。
① 松橋、袴田、大崎事件の再審開始の確定をめざして
本総会の直前11月29日には松橋事件の即時抗告審の決定が福岡高裁で出されます。検察は、福岡高裁の審理においても原決定を合理的に反論できず、新たな鑑定を出すこともできませんでした。
袴田事件は、即時抗告審で争点となっていた再審開始決定の理由となった本田教授によるDNA鑑定の血液由来の選択的抽出方法について、裁判所が弁護団の反対を押し切って検察の意向を受けて職権で実施しました。そして、9月28日、29日の両日、本田、鈴木両鑑定人の証人尋問が行われ、あらためて本田鑑定のDNA鑑定の正しさが明らかにされました。

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即時抗告審では、新たに取り調べ録音テープなどが開示され、捜査機関の証拠のねつ造、違法捜査、職務犯罪が浮き彫りにされました。弁護団は、刑訴法435条1号、7号事由にもとづく再審理由の追加の申し立てを行いました。
東京高裁(大島隆明裁判長)は、11月に開かれた三者協議で来年1月19日までに検察・弁護側に最終意見書の提出を命じ、「年度内のできるだけ早い時期に決定を出したい」
と述べました。
大崎事件は、福岡高裁宮崎支部が7月には三者協議をおこなうなど異例の速さで審理が進められています。検察は、即時抗告で供述心理学鑑定の科学性・信用性を否定する意見書を提出しました。1 1月には弁護団の反論書が提出され、即時抗告審も大詰めを迎えています。
冒頭で指摘したとおり、足利・布川・東電OL、東住吉事件の再審無罪を勝ちとった成果を力に、上記の事件で再審開始決定を確定することができれば、再審をめぐる「せめぎ合い」の状況を突破し、他の事件のたたかいに大きな展望を与えることができます。
ぜひ、ともに連帯して、松橋、袴田、大崎事件の再審開始決定を勝ち取りましょう。
② 名張毒ぶどう酒事件の再審開始決定を勝ち取ろう
弁護団は、ぶどう酒の王冠の2度開けを示す封緘紙の糊鑑定などの新鑑定を提出して再審を申し立てました。
ところが名古屋高裁刑事第1部(山口裕之裁判長)は、弁護団が求める三者協議も事実調べも行わないまま、12月8日に決定を出すと関係者に通知をしてきました。
これに対し、再審開始決定12周年にあたる4月5日には、名古屋高裁前集会(180人)と報告集会(80人)、10月4日の「無念の獄死2年行動」(250人)を成功させてきました。
本総会は、この間、再審・えん罪運動の牽引的な役割を担っていた名張毒ぶどう酒事件の公正な審理を実現し、再審開始決定を勝ち取るために、名古屋市で開催しました。総会後の裁判所への要請行動にもぜひご参加ください。(12 月8 日の決定については次号で掲載予定)
③ 決定が予想される仙台北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件、日野町事件

仙台北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件は年度内に決定が予想され、日野町事件も5月頃には決定が予想されています。
これらの事件で、来年は再審・冤罪事件のたたかいにとって歴史的な年となるよう、共に連帯して運動を広めましょう。
④ その他の事件

豊川幼児殺人事件は、全国現地調査を行い、事件の真相を広め、新たな事実の発見にむけて世論を喚起する取り組み行っています。
福井女子中学生殺人事件は、第2次再審請求にむけて弁護団は新たな視点も含めて、専門家の力も借りて新証拠の作成に奮闘しています。また、守る会では現地調査の開催や確定記録を読み込みながら事件の学習会を重ねています。
えん罪・神戸質店事件は、岡山刑務所に収監されている緒方さんを激励しながら、再審に向けて弁護団と協議を進めています。
京都・長生園不明金事件は、事件を風化させず事件の真相を広めるため、定例宣伝や再審に向けて情報提供を呼び掛けています。
特急あずさ号窃盗冤罪事件は、地元の自由法曹団長野支部に支援を求め、第2次再審請求にむけて協議と裁判資料の整理、事件の真相を知らせるパンフづくりを進めています。

4 「5・20全国いっせい宣伝行動」など

「白鳥決定」を記念し毎年行っている「無実の人びとを救う! 5・20全国いっせい宣伝」は、国民救援会と共同して全国で取り組みました。このとりくみは、冤罪事件の実態を広くアピールすることにもなっています。
また、秋(11月を中心)にも同様の全国宣伝が国民救援会の呼びかけですすめられ各支援組織も協力して運動に参加しています。
引き続き、国民救援会等の協力を得て冤罪事件の実態と刑事司法の改革の必要性を多くの国民に知ってもらう運動としてとりくみを強化します。

四 再審法の改正運動と、冤罪を生まない刑事司法制度改革をめざして

1、再審法の改正をめざして

再審・えん罪事件全国連絡会は、これまで冤罪を生まないための刑事司法改革の実現へ、以下の4 つの要求を掲げて運動してきました。
(1)取調べ全過程の可視化と代用監獄の廃止。
(2)証拠の全面開示の実現。
(3)無罪判決、再審開始決定に対する検察の上訴禁止。
(4)再審法の抜本的改正をめざす。
私たちは、この間足利、布川、「東電OL」殺人事件、東住吉冤罪事件で再審無罪を勝ち取るなど大きな成果を勝ち取ってきました。
一方、本来であれば当然に再審開始、無罪となるべき事件でやっと勝ち取った再審開始決定が検察の不服申立によって取り消され、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんはついに無念の獄死を強いられました。
また、再審申立をしても一切の進行協議も事実調べもないまま、いきなり棄却決定が出される事件も少なくありません。
これは、現行刑事訴訟法の再審の規定が日本国憲法の施行によって、不利益再審がなくなっただけで、あとは旧刑訴法の規定がそのまま残され、裁判官の職権にすべて委ねられているからです。だからこそ、裁判体の姿勢によって冤罪からの救済に大きな差が生じる「再審格差」という現状が生まれてくるのです。
こうした現状の再審の規定を抜本的に見直そうという運動が過去にもありました。とりわけ、1975 年の最高裁で出された白鳥決定と翌年の財田川決定によって、その後10年間に死刑確定が覆った事件(免田、財田川、松山、島田)が4件あり、その外にも1980年代前半にかけて徳島ラジオ商事件、梅田事件などの再審無罪が相次ぎました。

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こうした情勢を受けて、日弁連が再審法改正案(刑訴法の再審に関する規定の改正) を掲げて国会への請願署名運動を呼びかけました。再審・えん罪事件全国連絡会もその呼びかけに応えて署名運動、各地での集会、国会請願要請行動に取り組みました。こうした運動を背景にして、当時社会党と共産党が再審法改正法案を参議院に提出し、国会審議が行われましたが審議未了のまま廃案となりました。残念ながら、その後、再審法改正の運動は頓挫し、現在に至っています。
来年は、袴田事件など社会的にも注目する事件で、相次いで裁判所の決定が出されます。1980年代前半の再審の動きにも匹敵する情勢を迎えます。
私たちは、この間、刑事訴訟法等の「改悪」に反対する運動や、共謀罪の廃案をめざすたたかいで市民と野党との共同行動を強めています。
こうした情勢を的確にとらえて、今こそ再審法の抜本的改正を勝ち取り、誤った裁判の冤罪犠牲者を救うための再審制度を確立すべき時代を迎えていると確信します。
今後、再審法改正に向けた学習会やシンポジウムの開催、国会議員への要請や院内集会などに取り組みます。
そのために、私たちの運動の大きな力となるのは冤罪当事者です。冤罪当事者や日弁連、法律家団体、他の事件団体とも協力協同して再審法の抜本的な改正をめざします。

2、冤罪を生まない刑事司法改革をめざして

昨年の総会では、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が日本共産党と社会民主党が反対するなか、自民党、公明党、民進党などの賛成多数で可決されたことを受けて、私たちの運動を総括し、強行成立した法律は冤罪防止どころか、新たに冤罪を生み出し、さらに警察・検察の権限を大幅に拡大し、「盗聴」「密告」社会を招く治安立法であり刑事司法の改悪であることを確認しました
今後は、改悪盗聴法・刑事訴訟法の実施を厳しく監視するとともに、引き続き冤罪犠牲者の救援、冤罪をなくすための刑事司法制度の抜本的改革、そして盗聴法の廃止を求め、広く共同のたたかいをすすめていきます。

3 冤罪事件の原因究明と責任追及のたたかい

茨城・布川国賠、大阪・東住吉冤罪事件青木国賠訴訟、兵庫・花田郵便局事件国賠裁判は、冤罪を作り出した警察・検察の責任を追及するたたかいです。いずれの裁判でも、警察・検察は反省どころか、全面的に争う姿勢です。
また、足利、布川、「東電OL」殺人事件、東住吉冤罪事件という、無期懲役の重罪事件で相次いで再審無罪判決が出されたにもかかわらず、政府・最高裁はその原因を究明し、冤罪をなくすための刑事司法改革をすすめようとしません。
来年は、袴田事件、大崎事件などの決定があり、再審開始を確定させることで冤罪事件に対する社会の関心も高まります。この絶好の機会を逃すことなく、再審法の抜本的改正の課題とあわせて、なぜ冤罪が構造的に生み出されるのか、その原因を究明する第三者機関を国会に設置して、刑事司法改革にとりくむ必要があります。
今後、国民救援会や「なくせ冤罪!市民評議会」、日弁連などと共同して、冤罪原因を究明する第三者機関の国会設置運動をすすめます。

五 刑務所等の処遇改善等のとりくみ

現在、刑事施設に収容されている被拘禁者と支援者の面会など全国的に規制が強まり、各刑務所の所長の「裁量」によって処遇実態が旧監獄法時代の状況に戻りつつあります。
刑事被収容者処遇法においては、従来の累進処遇制を廃止し、現場での刑務官による多角的評価で受刑者等の優遇処置をするという制度を採用し(同法88条)、また、食事、運動、作業、接見、通信等の詳細な実施については、その刑務所の特質を反映させる趣旨で、当該刑務所長の裁量権を拡大しました。これには、従来の上からの規則、通達、指示、命令等による規律優先の処遇に変わって、現場の「人道的配慮」にもとづく人間的ふれあいの中での処遇であるためには、現場での裁量権の範囲を広める必要があるという理由付けがされました。
しかし、「現場」では「受刑者の人権」よりも「刑事施設の規律及び秩序の維持」が最優先とされ、当時私たちが危惧し、指摘したように刑務所長の裁量権が濫用されて、「行刑改革会議提言」の理念とは逆に、不当に受刑者等の権利が侵害されているのが実態です。受刑者等から見れば、生殺与奪の権限を刑務官に握られており、不満があっても懲罰を恐れて、従順にならざるを得ないという実情もまた広く存在しています。
これでは、「行刑改革会議提言」が主張したような「(受刑者が)人間としての誇りや自信を取り戻し、自発的、自律的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切であり、受刑者の処遇も、この誇りや自信、意欲を導き出すことを十分に意識したものでなければならない」という、監獄法改正の基本理念からかけ離れたものになっています。
引き続き、外部交通権の拡大をはじめ、医療問題を中心に刑事収容施設および被収容者処遇法の抜本改正を求める共同したとりくみをすすめ、拷問等禁止条約第2回日本政府報告に対する総括所見での指摘もふまえた被収容者の処遇改善と権利拡大にむけて運動を強めます。
また、昨年の国連総会で採択された改正「国連被収容者処遇最低基準規則)」=マンデラ・ルール基づいて、日本の遅れた刑事被収容者の人権と処遇改善にとりくむとともに、「刑事被収容者処遇法」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律)の全面的な再改正を求めていきます。

六 死刑廃止のたたかい

日弁連は、昨年10月の人権擁護大会で、「2020年までの死刑制度廃止」を宣言しました。これを契機に、死刑制度の存廃について議論が起こりました。死刑廃止にむけた情報の公開と国民的議論のいっそうの推進が求められます。
冤罪犠牲者の救援を目的に活動する再審・えん罪事件全国連絡会にとって、死刑制度問題は深刻な問題です。これまでも死刑制度を廃止すべきとの立場で運動を進めてきました。
日本国憲法は、国民の生命、自由を保障し、第36条で残虐な刑罰を禁止しています。死刑は国家が一定の手続きにもとづき、計画的に報復的に行う冷酷かつ人為的に作られる死です。人間の生命を、国家の名において剥奪することは許されません。 また、人間の行う裁判制度に絶対的に誤りがないということはいえません。誤判による死刑はその悲惨さとともに、他の刑罰とちがい回復不可能な質的に違う刑罰です。
現に、私たちの先輩の中には、熊本・菊池事件のFさんのように再審開始を求めつつ、死刑が執行された痛恨の歴史があります。
名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんの雪冤を果たすことなく、無念の獄死となったことは私たちにとって痛恨の極みです。奥西さんは、1審無罪判決そして一転して死刑判決を受け、半世紀上死刑の恐怖とたたかいつつ、無実を訴えて一度は再審開始を勝ちとったのです。
また、48年間も無実を叫びつつ死刑判決を受け、長期間にわたって死刑の恐怖と闘い続けてきた袴田巌さんの姿を見れば、死刑判決の残酷性と死刑が取り返しのつかない残虐な刑罰であることがわかります。
再審・えん罪事件全国連絡会は、死刑廃止をめざして日弁連などとも連帯して運動をすすめます。

七 国際人権規約を大いに生かそう

自由権約委員会の第7回日本政府報告の提出にあたり、リスト・オブ・イシュー(事前質問)を提出することを決めました。その後、国民救援会、国際人権活動日本委員会とも協議して、証拠開示問題や再審開始決定に対する検察の不服申し立てによる裁判の長期化によって深刻な人権侵害と裁判を受ける権利が奪われている点を中心に、今年7月にリスト・オブ・イシューへのレポートを自由権規約委員会に提出しました。
引き続き、国民救援会や国際人権活動日本委員会と協力して、自由権規約員会への第7回日本審査にむけて、カウンターレポートの準備をすすめます。
2014年7月に行われた自由権規約委員会の第6回日本政府報告審査に際して、当連絡会は国民救援会と協力して、袴田事件を前面に押し出したリーフを各委員に配布し、冤罪事件の深刻な実態を訴えてきました。
その結果、自由権規約委員会は総括所見の死刑に関する第13項Cの中で証拠開示について、「とりわけ弁護側に全ての検察官の証拠への完全なアクセスを保障すること、また拷問あるいは不当な処遇によって得られた自白が証拠として援用されないことを確保することによって、不当な死刑判決に対する法的セーフガードを直ちに強化すること」(国際人権活動日本員会・仮訳より)を勧告しました。
また、拷問禁止委員会は、日本の第2回定期報告に関する「最終所見」のパラグラフ11の(b)で、「刑事訴追の際に、自白に証拠の主要かつ中心的な要素として依存するような慣行を終わらせるため、捜査手法を改善すること」という勧告が出されるなど成果がありました。
これまでも自由権規約委員会や拷問禁止委員会からは、日本の証拠開示制度について改善の勧告が度重ねて出されています。
今後とも、国連の各委員会や諸機関で出された「勧告」などを活かして、裁判や関係省庁への要請行動などに活かしていくことが求められています。
また、拷問禁止委員会の第3回日本審査に向けて、国民救援会や国際人権活動日本委員会などの協力を得て、情報の提供とレポート作成などのとりくみをすすめます。

八 連絡会の組織、財政活動の総括と今後の活動方針

1 活動全体としての総括

第25回総会以降、ニュースの隔月発行をめざしましたが4回の発行にとどまりました。また、毎月第3木曜日を中心に御茶ノ水駅頭宣伝を大崎事件の首都圏守る会と協力して粘り強く行っています。
全国連絡会の果たすべき役割は大きく、その期待に応えるためにも組織的な強化が求められています。引き続き、各支援団体と弁護団との協力関係を強め、情報発信を強めていきます。各事件からのご意見や活動報告や裁判の進行状況について情報提供をお願いします。
また、冤罪事件に対する国民の関心の高まりという好機を逃さず、加盟事件の勝利をめざし、国民救援会はもとより各弁護団や研究者、他の人権NGOなどと協力・共同関係を強め、国民の目に見える活動を繰り広げ社会的発信を強化します。

2 事務局会議の開催と運営、メーリングリストの活用

事務局会議は、基本的に毎月1回開催し、各事件の動きを掴むように努めて、それを「再審・えん罪事件全国連絡会ニュース」やホームページ等で情報を提供してきました。
しかし、情報の入手や発信が偏っている状況もあり改善が必要です。昨年の総会でもお願いしましたが、各事件から積極的にメールなどで情報提供をお願いします。とりわけ、各地の行動や裁判の動きを短い記事でもかまいませんので、写真を添えて送ってください。

3 ニュースの発行、ホームページの充実

ニュース発行について、隔月年6回の発行をめざし、紙面の充実に努めます。
今後、加盟組織と事務局の連携を強めるために、事務局員と各事件の運営委員のメーリングリストを活用して、情報の共有化の迅速化を図るなど改善をはかります。
ホームページについては、情報の発信が遅れる状況にあり、一層の充実が求められています。

4 連絡会への加入の働きかけなど

前回総会以降、国民救援会が支援している冤罪事件へ加盟の要請を行ってきました。今期、新たに「えん罪今市事件・勝又拓哉さんを守る会」と「東住吉冤罪事件青木国賠支援する会」の2団体が加盟し、連絡会には、現在18団体が加盟しています。引き続き、加盟を呼びかけます。
また、この間の運動の前進のなかで、支援の相談や裁判への助言を求める手紙などが多数寄せられるようになりました。事務局では、連絡会の目的、会則にもとづいて対応しています。

5 財政・カンパ活動・賛助会員の拡大

① 財政報告=当日、財政報告を行い採択されました。
② 事件や賛助会員からの分担金・会費の集金について

分担金納入の促進。また、賛助会員についても会費の請求をきちんと行うことが大切であり、そのために事務局会議で、集金状況を必要に応じて、到達を明らかにし、議論するようにします。
③ 年末救援統一募金のとりくみ
毎年、年末救援統一募金を国民救援会と共にとりくんでいます。今年度も国民救援会から昨年度の集約された募金の中から連絡会と各支援団体に配分されました。
④ 独自のカンパ活動と賛助会員拡大のとりくみ
ニュースにカンパの訴えや賛助会員募集の訴えを掲載し、加盟事件の協力も得ながら、賛助会員の拡大にとりくみます。

6 次期役員体制の提案

総会では、代表委員に秋山賢三、新倉修、本藤修の3氏、事務局長に瑞慶覧淳、事務局次長に中澤宏、客野美喜子各氏、各団体から推薦のあった運営委員を選出しました。
今後は、総会で選出された役員が一丸となって、当連絡会の継続・発展にむかって頑張っていきますので、ご支援・協力をお願いします。

今後の主な事件の日程

1月19日 袴田事件最終意見書提出、激励・要請行動(東洋高裁前正午集合)
1月25日 第233次最高裁統一要請行動(午前8時15分最高裁前宣伝、10時刑事事件要請、
11時民事事件要請)
2月 4日 北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件全国集会(13時半から仙台市にて)。翌日、裁
判所要請行動。
2月 5日 今市事件第4回公判(東京高裁104号法廷10時半から正午)
2月 6日 今市事件第5回公判(東京高裁104号法廷10時半から17時)
2月 8日 袴田秀子さん85歳誕生日、女性を中心にした要請行動予定。
2月24日 袴田事件再審開始の確定をめざす全国集会(東京・YMCAホール13時半)

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