えん罪事件の真相を広め、裁判支援、在獄者の処遇改善運動をすすめています

No.89再審えん罪事件全国連絡会ニュース

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2018年 7月4日発行 No.89

 静岡・袴田事件 

「大島トンデモ決定」に断固抗議する!

袴田巌さんの再審を求める会
共同代表 福田勇人
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2018年6月11日(月)13時30分、東京高裁第 8 刑事部(大島隆明裁判長・菊池則明裁判官・林欣寛裁判官)は、4 年前に静岡地裁(村山浩昭裁判長・大村陽一裁判官・満田智彦裁判官)が出した袴田事件第 2 次再審請求の再審開始決定を取り消すという不当極まりない決定を出しました。
その一方で、袴田巖さんの年齢や生活状況、健康状態に照らし、死刑と拘置の執行停止は維持するという、法的根拠に乏しい矛盾した判断をしています。これにより袴田さんが直ちに再収監される事態は避けられる見通しです(ただし、検察が不服を申し立てる可能性はあります)。
この「大島トンデモ決定」は、全文 112 頁のうちの 30 頁を本田鑑定の信用性、特に「細胞選択的抽出法」の信用性判断に費やし、「科学的原理や有用性には深刻な疑問が存在しているにもかかわらず、原決定(静岡地裁決定)は過大評価している」などと批判。検出された DNA は 5 点の衣類に付着していた血痕に由来するものではなく、外来DNA の可能性が高いなどとして本田鑑定の信用性を認めず、刑訴法 435 条 6 号に規定された「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」には該当しないと判断しています。
また、村山決定で新証拠と認められた 5 点の衣類の色に関する証拠についても、事件当時鑑識が作成した鑑定書に添付された 5 点の衣類のカラー写真が「一見して相当劣化退色している」ことや、当時の撮影技術やプリント技術などの問題点をあれこれ指摘し、5 点の衣類のカラー写真は「発見当時の色合いが正確に表現されていない」ので、「大まかな傾向を把握する資料としても適切とはいい難い」などと断じました。弁護団の「味噌漬け実験」で使用された味噌の色についても、「1 号タンク内にあった味噌の色合いを正確に再現したものとはいえない」などとし、その信用性を一蹴。新証拠としての価値を認めませんでした。
大島トンデモ決定は、その他の 5 点の衣類関係の証拠(鉄紺色ズボンのサイズや端布関係の証拠や袴田さんの右肩・右脛の傷と 5 点の衣類の損傷関係の証拠など)についても全く証拠価値を認めなかったばかりか、5 点の衣類関係以外の新証拠も、「袴田の犯人性を推認させる上では補助的なものに過ぎない」と不当に過小評価し、清水郵便局で発見された焼けた紙幣関係の証拠や、裏木戸関係の証拠、取調べテープの供述分析に関する新証拠を切り捨てました。
大島トンデモ決定の理屈を通せば、5 点の衣類の DNA 鑑定から信頼できる結果を得ることは不可能になり、カラー写真も判断材料として使えないことになります。しかも、5 点の衣類関係以外の証拠は補助的な意味しか持たないと言うに至っては、例えばクリ小刀が凶器ではないことを立証する証拠や、焼けた紙幣が捏造であることを裏付ける証拠を提出したとしても、「袴田が犯人であることに合理的疑いは生じない」ことになってしまい、一体どんな新証拠を弁護団が提出すれば袴田さんの再審は認められると言うのでしょうか。
また、村山決定が指摘した捜査機関による証拠捏造について大島トンデモ決定は、取調べテープによって袴田さんの取調べに「供述の任意性や信用性確保の点からは疑問と言わざるを得ない手法が含まれていた」ことは認めたものの、そのことと 5 点の衣類の捏造を結び付けるのは「かなり論理の飛躍がある」と述べ、5 点の衣類が捏造された可能性は「具体的な根拠に乏しく、未だ抽象的な可能性をいうに過ぎず、捜査機関が 5 点の衣類をねつ造した合理的疑いは生じない」と判示し、検察の主張を鵜呑みにしました。弁護団はこの点について再三証拠開示を求めましたが、大島裁判長が検察に対して積極的な対応を取ったとはお世辞にも言えません。袴田さんの無実を示す証拠や捜査機関による証拠捏造を裏付ける多数の証拠を未だ検察が隠し持っている状況で、弁護団に重い立証責任を負わせるのはどう見ても不公正・理不尽です。不可能を強いる大島トンデモ決定に正義はありません。
さらに、取調テープの分析で明らかになった警察官の職務犯罪(接見盗聴や偽証など)を根拠に、弁護団が刑訴法 435 条 7 号などの再審理由を追加して再審を求めたことについては、「原審で主張されていなかった再審事由を請求人が新たに追加することは事後審である抗告審の性格と相容れず、不適法である」として門前払いにしました。
紙幅の関係で、「矛盾だらけ・結論ありき・責任逃れ」の大島トンデモ決定の内容に逐一批判を加えることはできませんが、その不当性の核心は、「疑わしきは被告人(再審請求人)の利益に」という刑事裁判の鉄則や、刑事裁判の究極の目的が「冤罪の防止」にあることを敢えて無視し、弁護人が提出した新証拠の価値をことごとく袴田さんに不利に評価していることです。これが適正手続を保障した憲法 31 条に違反し、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審にも適用されるとした最高裁の白鳥・財田川決定に違反していることは明白でしょう。
高裁刑事 8 部で決定を受け取った後、裁判所前で取材に応じた秀子さんは「何をか言わんやです」と悔しさと無念さを滲ませました。15 時から弁護士会館 5 階の会議室で会見を開いた弁護団の西嶋団長は、「誠に残念な決定の受取りになった。よもや開始決定が取り消されるとは思っていなかった。裁判所がそれほど信頼できる存在ではないということをあらためて確認した」と述べ、決定は「到底承服できない」として特別抗告する意向を表明しました。
大島トンデモ決定に対しては、袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会をはじめ、袴田巖死刑囚救援議員連盟、日本プロボクシング協会などが抗議や遺憾の意を表明する声明を発表しているほか、新聞各紙も社説などで疑問の声を上げています。
本会もまた、司法の正義に反する大島トンデモ決定に対し断固抗議するとともに、最高裁には弁護団の特別抗告を一日も早く認め、再審公判へ速やかに移行するよう強く求めます!
FREE HAKAMADA!

東京高裁 6.11 不当決定報告・抗議集会

「落ち込んでられぬ」 地元の報告集会で秀子さん

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袴田事件の不当決定に抗議する集会が6月15日、地元静岡市内で開催され、支援者134人が参加しました。
主催は、国民救援会など8つの支援団体でつくる「袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会」。
司会者からは、再審開始決定の報告集会を予定していたが、不当決定の報告集会になったことへの抗議と憤りのあいさつがされ、弁護団の西澤美和子弁護士が決定について報告しました。
支援者のあいさつでは、袴田巖死刑囚救援議員連盟顧問の牧野聖修元衆院議員が「決定を聞き愕(がく)然とした。無実を信じている」と抗議の意を表しました。つづく支援団体からの決意表明で、国民救援会の鈴木猛事務局長は「各紙の社説を見ても高裁決定に批判的です。事実を知らせ、裁判官の論理ではなく、市民の常識で最高裁に迫り再審を勝ちとりましょう」と述べました。
最後に袴田秀子さんがあいさつに立ち、「事件のあとは息を殺していました。いま堂々としていられるのはご支援のおかげです。落ち込んでいられません。最高裁に向かって突き進むのみです。一緒に頑張ってください」と訴え、大きな拍手が起きました。
集会は、不当決定への抗議と、最高裁での再審開始をめざす決意を固め合う集会となりました。

 鹿児島・大崎事件 

ついに突破した「高裁の壁」~大崎事件第3次再審請求 即時抗告審決定

大崎事件弁護団事務局長 鴨志田祐美

 【待ちわびた春の訪れ】

厳しい寒さだった今年の冬。ようやく水温むきざしを感じ始めた3月12日,朝から多くの人びとが福岡高裁宮崎支部の玄関前に集まっていました。
そして午前11時,玄関前で歓声が上がりました。現在わが国で最高齢の再審請求人となった,大崎事件の原口アヤ子さんに,待ちわびた「春」がもたらされた瞬間でした。
この日,福岡高裁の根本渉裁判長は,アヤ子さんと元夫(死後再審請求)について,鹿児島地裁の再審開始決定に対する検察官の即時抗告を棄却し,再審開始を維持する決定をしました。大崎事件は,第1次再審でも地裁で再審開始決定が出されましたが,検察官の即時抗告によって高裁で再審開始決定が取り消されました。第2次再審では,地裁が新証拠たる鑑定を行った法医学者,心理学者の尋問もせず,証拠開示勧告もしないまま再審請求を棄却,弁護団が即時抗告したところ,高裁は,鑑定人尋問を実施し,積極的な証拠開示勧告も行いましたが,結果は即時抗告棄却でした。
大崎事件にとって「高裁の壁」は,かくも険しいものでしたが,ついに今回,その壁を突破したのです。

 【即時抗告審決定の内容】

もっとも,高裁の決定は,地裁の再審開始決定の理由付けとは大きく異なるものでした。
まず,地裁決定が再審を開始すべき明白な新証拠と認めた,親族の目撃供述を分析した供述心理鑑定(大橋・高木新鑑定)について,もともと逐語的記録を分析対象とする鑑定手法(スキーマ・アプローチ)を,逐語的に録取されていない供述調書にあてはめた同鑑定には信用性が認められないなどの理由で,明白性を否定しました。一方で,地裁決定が「被害者の遺体には頚部圧迫による窒息死であることを積極的に認定できる所見がない」との限度で証明力を認めていた法医学鑑定(吉田鑑定)については,より進んで,
「被害者の死因は転落事故等による出血性ショック死の可能性が高い」とした結論部分は十分な信用性を有すると認めました。そして,同鑑定が確定審において提出されていれば,被害者が何者かに殺害されたという前提で犯人像を想定することはできないから,アヤ子さんと「共犯者」らを犯人とみるのはその前提を欠くと判断し,新旧全証拠を総合評価した結論として吉田鑑定の明白性を肯定しました。
二つの開始決定は,このように理由付けは異なるものの,しかし再審開始の結論は同じです。
それはどちらの裁判所も,本件確定判決の証拠構造の脆弱性,とりわけ「共犯者」らの自白供述の危うさから,有罪心証を持ち得なかったからに違いありません。

 【決定後の反響と検察官の特別抗告】

高裁が再審開始を維持したとのニュースは,全国のメディアで大きく報じられ,一刻も早く再審公判に移行すべきだとする社説も掲載されました。
日弁連,九州弁護士会連合会,そして鹿児島をはじめ各地の弁護士会も次々と会長声明,理事4長声明を出して,早期に再審開始を確定させるべきだと訴えました。刑事法研究者42名の連名による特別抗告断念を求める研究者声明も発出されました。
しかし,3月19日,そのような世論に背を向けたまま,検察官は高裁の決定を不服として,最高裁に特別抗告の申立てを行いました。その理由は,吉田鑑定に新規性,明白性を認めた原決定に判例違反があるというものでしたが,特別抗告申立書に縷々記載されていたのは実質的には事実誤認の主張であり,まったく特別抗告理由に該当しないものでした。
弁護団は特別抗告の申立てから1か月も経たない4月11日,特別抗告申立書に対する反論の意見書を提出しました。さらに,4月20日には,第3次再審の最終盤で初めて開示されたネガフィルムが示す大崎事件の真実について,ダメ押しともいうべき補充意見書を作成し,一刻も早く特別抗告を棄却すべしとの弁護団の要請書とともに,弁護団が直接最高裁に赴いて提出しました。

 【アヤ子さんの存命中に再審無罪を!】

検察官の特別抗告に対する弁護団の反論の意見書では,検察官の主張が特別抗告理由たりえないことを簡潔かつ的確に指摘しましたが,その最後に,私たちの万感の思いを込めた「結語」を付けました。支援者の皆様方にもぜひお読みいただきたく,以下に全文を引用します。
39年前,検察官は,知的・精神的な障がいを抱えた者たちに対する配慮のない取調べによって得た自白を「ベスト・エビデンス」として本件を起訴した。
裁判官は,彼らが法廷では自ら体験したはずの犯行をほとんど語れないことを直接目にしていたにもかかわらず,その信用性に疑問を差し挟まず,他に有力な客観証拠もないのに,彼らのみならず一貫して否認を続けたアヤ子にも有罪の判決を言い渡した。
弁護人は,「共犯者」らが犯人であるとすれば,アヤ子の関与なしには成り立たない犯行ストーリーであることに気付かぬまま,アヤ子の関与のみを争う弁護活動を行った。
私たちは3次にわたる再審請求の中で,司法に携わる者は,裁判官,検察官,弁護人という立場を超えて,自分たちの先達のした誤りを正さなくてはならない,と訴え続けてきた。しかしその訴えはなかなか聞き入れられず,長い闘いの中で,無実を叫ぶアヤ子の声は老いによって失われ,手足の力は自らの重みを支えられぬほどまでに衰えた。
第3次再審請求では,私たちは裁判所に,これがアヤ子にとって存命中の最後の再審請求となることを伝え,迅速な審理を重ねて要請してきた。
原原審の鹿児島地裁は,申立て初日に弁護人との面談に応じ,積極的な訴訟指揮のもと,法医学者,心理学者の尋問を実施し,証拠開示勧告を出し,最後に稲葉・竹安供述の信用性に決定的影響を与えるネガの開示を実現させた。そして,申立てから2年経たないうちに,吉田鑑定及び大橋・高木新鑑定の明白性を認め,確定判決の有罪認定には合理的疑いが生じているとして,再審開始決定をした。
原審の福岡高裁宮崎支部は,検察官の即時抗告申立てからわずか 17 日後に弁護人・検察官との打合せ期日を設け,審理期間8か月余りで即時抗告を棄却した。同決定は90頁を超える緻密な内容のものだった。
原原審の開始決定と原審の即時抗告棄却決定とは,その理由付けが大きく異なる。原審は,弁護人が提出した新証拠のうち,大橋・高木鑑定の明白性を否定し,吉田鑑定についても,原原審が認めた限度の証明力では旧証拠に対する減殺効を否定する旨判断した。
しかし,原審は再審開始決定を取り消さなかった。何故か。原審の裁判官も,原原審の裁判官と同様,本件確定判決の証拠構造の脆弱性,とりわけ「共犯者」らの自白供述の危うさから,そもそも旧証拠のみでも有罪心証を持ち得なかったからである。
原原決定と原決定は,誤った有罪判決という山の頂に取り残された無辜のアヤ子を救出するために,異なる登山ルートで山頂を目指したものだったのである。
ところで,一刻も早くアヤ子を救わなければならない,との思いを持っていたのは,裁判官だけではない。鹿児島地裁は,検察官の即時抗告(平成29年7月3日)からわずか2日後に一件記録を福岡高裁宮崎支部に送付し,同月6日には即時抗告審が同支部に係属した。さらに同支部は,検察官の特別抗告(平成30年3月19日)の3日後である同月22日に一件記録を最高裁に送付し,同月26日に貴小法廷に特別抗告審が係属した。
それぞれの裁判所書記官も,アヤ子の90歳という年齢を慮り,異例とも言える速さで,記録を整理し,上級庁に送ったのである。
原原審,原審が全速力で繋いだ再審開始のバトンは,いま,アンカーである貴小法廷の手の内にある。
残念なことに,「公益の代表者」であるはずの検察官は,前述した私たちの訴えを一顧だにせず,誤った確定判決の維持に汲々とし,無罪方向の証拠開示を渋り,判例違反など全く認められるはずのない原決定に対しても特別抗告を申し立ててきた。検察官が特別抗告申立書の最後で「著反正義」の主張をしてきたことには驚き呆れる。著しく正義に反しているのは,ほかならぬ検察官ではないか。
本件再審請求のアンカーとしてバトンを託された貴小法廷には,1日も早く,いや1分1秒でも早く,本件特別抗告を棄却し,アヤ子を再審公判の法廷へと導いていただきたい。それこそが,冤罪に人生を翻弄されたアヤ子に対して,司法府の「最高」機関が果たすべき,最後の崇高な使命である。
この6月15日で,アヤ子さんは91歳になりました。アヤ子さんが91歳を迎える前に最高裁は特別抗告を棄却してほしい,という私たちの要請は,残念ながら聞き入れられませんでした。
現在,最高裁には著名な再審事件の特別抗告審が,何と6事件も係属しています(松橋事件,湖東記念病院事件,大崎事件,飯塚事件,北稜クリニック事件,袴田事件)。このうち前者の三つは高裁が再審開始方向の決定をしたにもかかわらず検察官が特別抗告を行ったものであり,去る6月 11 日に東京高裁でまさかの開始決定取消しとなった袴田事件も含めると,実に4事件が,過去に再審開始決定を勝ち取りながら,検察官の抗告によって未だ再審開始の確定に至っていないのです。

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このように,わが国の再審に関する法制度は,「無辜の救済」という目的を十分に果たせず,機能不全に陥っているため,再審法改正に向けた運動も急務といえます。
でも,私たち大崎事件弁護団は,まず何よりもアヤ子さんの存命中に雪冤を果たさなければなりません。私たちは,今年中に「被告人は,無罪」の宣告をアヤ子さんに法廷で聞いてもらい,39年に及ぶ彼女の闘いを終わらせる覚悟を決めています。

くり返すな冤罪!市民集会II~検察は再審を妨害するな!

参加200名を超える熱気で集会が成功!

検察の再審妨害と再審法の不備を強く批判。
再審法改正をめざして、市民・議員・法曹の力強い合流を!

なくせ冤罪!市民評議会理事・今井恭平

さる6月21日、「くり返すな冤罪!市民集会II」と銘打った集会が東京都内、文京区民センターで開催されました。200名を超える熱心な参加者が会場を埋め、講演や冤罪当事者からのアピールなどに耳を傾けました。

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再審開始に対する検察官の上訴は許されるのか?

この集会は、私たち「再審・えん罪事件全国連絡会」も実行委員会に加わって準備してきたもので、昨年11月9日、同じ会場(文京区民センター)で開催した市民集会からさらに問題意識や運動の広がりを深めてきたものです。
昨年は、開示証拠が再審における無罪の発見に大きく貢献している現実に照らし、検察の証拠隠しや裁判所の証拠開示への消極姿勢に疑問を投げかけ、証拠の全面開示の必要性を訴えました。今回はさらに、再審開始決定が出されながら、検察の異議申立て(高裁への即時抗告や最高裁への特別抗告など)で再審が妨害されるケースが相次いでいること(大崎事件、松橋事件は、検察の即時抗告を高裁が棄却し、地裁の再審開始決定が維持されました。また、湖東記念病院事件では大阪高裁が再審開始決定が
出されました。しかし、いずれ事件も検察が最高裁への特別抗告を行っている。)にかんがみて、検察官が再審開始決定に対して上訴することは許されるのか、と正面から法制度の矛盾を問うものとなりました。

袴田さんの再審開始を取り消した、東京高裁(大島裁判長)へ怒りの声

奇しくも10日前の6月11日、東京高裁(大島隆明裁判長)が、袴田巖さんの再審開始決定(2014年3月27日・静岡地裁・村山浩昭裁判長)を取り消す暴挙を行った直後でもあり、道理も良心もわきまえない検察の横やりと、それを追認した東京高裁への怒りが、頂点に達していました。
東京高裁決定は、静岡地裁の原決定(再審開始)の根拠の一つとなったDNA鑑定(本田克也筑波大学教授)の手法(細胞選択的抽出法)が「本田鑑定人独自のもの」で、科学性、再現性が担保されていない、とその信用性を否定しました。
しかし、そもそも「5点の衣類」からは、袴田さんはもちろん被害者4名のDNA型も誰一人検出されていないという事実は変わりません。「5点の衣類」が犯行着衣ではないことは「味噌漬け実験」などからも証明されています。本田鑑定に寄ってたかって難癖をつける一方で、1年7半も味噌に漬けられていたとは到底考えられない衣類の変色(の少なさ)に関しては、写真ネガの発色や味噌自体の色が薄かったなど、根拠のない当て推量でこと足りるとしています。再審棄却という結論ありきで、何とか理屈をつけるために4年間を費やしてきたとしか考えられません。
これを許したのは、検察官が再審開始決定に異議申立てできる現行制度の本質的な矛盾と欠陥によるものです。本集会の掲げた検察官上訴の禁止は、まさに時宜を得たものです。

井戸謙一弁護士が基調講演

集会は、なくせ冤罪!市民評議会の客野美喜子代表の司会で始まり、当連絡会の瑞慶覧淳事務局長の開会挨拶の後、さっそく井戸謙一弁護士(元裁判官・湖東記念病院事件主任弁護人)の講演に入りました。
タイトルは「再審開始に対する検察官の上訴は許されるのか」井戸弁護士は、まず大阪高裁で再審開始決定を勝ち取った湖東記念病院事件の経緯と教訓を紹介した後、再審手続きの問題点として以下の諸点を挙げました。
証拠開示がほとんどなされないこと。公益の代表者である筈の検察官が有罪判決の獲得(維持)を至上命題として無罪方向の証拠を出さないことと、裁判所がそれを是正しようとしないこと。
検事の不服申立てを制限すべきこと。これは憲法39条(一事不再理)に違反する可能性がある。無辜の不処罰と、被告人を長期間不安定な状態におかないことの価値を、真犯人を取り逃がす不利益よりも尊重する立場である以上、再審もこの精神を貫徹すべきである。その意味でも再審開始決定への検察官上訴は制限すべきだ。
再審法の必要性 現行の刑訴法では、再審請求の手続きは「事実調べをすることができる」(法445条)程度しかなく、裁判体による再審格差を生んでいる。
井戸弁護士のこれらの指摘は、再審開始決定を勝ち取った弁護士としての経験と、元裁判官としての見識から、簡潔かつ要点が明白で、再審法改正のための方向性をはっきり認識する説得力に満ちたものでした。
最後に「袴田事件東京高裁決定を乗り越えて頑張りましょう」との井戸弁護士の呼びかけに、会場が一体となることができました。

共感を呼んだ、当事者アピール

冤罪とたたかってきた当事者も、遠くから駆けつけて下さいました。
湖東記念病院事件の再審請求人、西山美香さんは、大津地裁での再審請求棄却を大阪高裁で覆し、昨年12月、再審開始決定を勝ち取りました。だが検察が最高裁に特別抗告したため、未だに再審の目途がたっていません。
いったん被疑者と見做すと、徹底的に個人の弱さにつけ込んででも虚偽自白を搾り取る警察の取調べを実体験した西山さんは、最後まで真実を話していくと訴え、会場から拍手がわきました。
一昨年8月、20年ぶりに再審無罪を獲得した東住吉事件の青木惠子さんは、虚偽自白を生んだ警察・検察の違法な取調べに対する国家賠償請求及び火災を招いた欠陥車両製造の責任を認めないホンダを被告とする民事訴訟をたたかっています。裁判をたたかいつつ、冤罪被害者の支援のために全国を駆け回っている青木さんの、当事者ならではの真情のこもった訴えは、さまざまな冤罪事件当事者や家族・支援者を力づけるものでした。

西嶋・袴田弁護団長と袴田秀子さんが力強い報告

東京高裁のまさかの逆転決定に対し、特別抗告の申立てに忙殺されている最中にもかかわらず、
西嶋勝彦・袴田弁護団長からも力強い反撃の報告が行われました。
大島コートは、本田鑑定人を証人尋問しておきながら、専門的内容について何一つ質問さえしなかった。そのくせ、決定書であれこれ鑑定を批判している。すべて抽象的レベルでの批判にと8どまっており、ごまかしの決定である、とその本質の欺瞞性を指摘しました。
袴田巖さんの姉で再審請求人の秀子さんも「有罪判決とのたたかいは50年で終わらなかったけれど、巖も私も100歳まで生きて無罪を勝ち取る。上告棄却(死刑確定)のときは、まわりがすべて敵に見えたが、今は違う。正々堂々と巖の無実を訴えることができ、周囲も敵ばかりではなくなった」と語り、逆に聴衆を勇気づけました。

特別抗告をたたかう3事件からの報告

再審開始決定が即時抗告でも維持されながら、検察が特別抗告をしている事件に、松橋事件(熊本県)と大崎事件(鹿児島県)があります。また、北陵クリニック事件(宮城県)は、仙台高裁による再審請求棄却の不当決定に対して請求人側が特別抗告しています。
松橋事件について、齋藤誠弁護士、大崎事件について鴨志田祐美弁護士、北陵クリニック事件について泉聖二さん(守大助さんを守る東京の会世話人)がそれぞれ再審請求の現段階の状況を報告。最高裁にこれだけ多くの重要再審事件が同時に係属するという事態を重く見て、ぜひ再審制度の見直し、再審法改正へとつなげていくべきことが確認されました。

かもん 弓 & 櫻井昌司さんが、原口アヤ子さんのためのオリジナル曲を披露

大崎事件弁護団事務局長の鴨志田祐実弁護士が、かもん 弓の名前で作詞作曲した「アヤ子のうた」を披露。布川事件の当事者で歌手としても活躍している櫻井昌司さんも登壇して、歌とトークで高齢となった原口さん(そして同様にご高齢で再審を待ちわびている松橋事件、宮田浩喜さん)が元気なうちに「被告人は無罪」との判決を聞くことができるよう、会場が一体となって願いました。当初、生演奏の予定でしたが、会場が楽器NGとのことで急遽用意した音響が劣悪で、お二人の美声と名演奏が損なわれたことだけが悔やまれます。

今こそ再審法改正の実現へ!法制化をめざし、集会アピールを採択

私たちと同じく、刑事再審法の抜本的な改正をめざして活発な国会議員へのロビー活動などを展開している「全国刑事再審弁護団・支援団体連絡会」の世話人、八尋光秀弁護士や、日弁連人権擁護委員会再審部会の前部会長、泉澤章弁護士も、検察官上訴の禁止、証拠開示などを含む再審法改正や、冤罪原因を究明する第三者機関の必要性などを問題提起しました。
充実した内容と、さまざまなセクターからの声が合流した中で、最後に集会アピール(別掲参照)を採択し、今後の運動方針を確認しあいました。
実行委員会では、このアピールをもって国会議員への働きかけを組織し、超党派の議員立法をめざして活動を広げていきます。
集会前日、6月20日には、前掲の全国刑事再審弁護団・支援団体連絡会が国会議員会館内で再審法改正を訴える院内集会を開催。与野党の国会議員も出席する中、無辜を冤罪から救済する最後の手段としての再審が正常に機能するための再審法改正へ、弁護士などの法曹、国会議員そして市民運動が合流して、議員立法による法改正への着実な動きが胎動し始めています。

 集会アピール 

検察・裁判所の道義なき再審封じを弾劾し、誤判からの救済手段として、再審法改正を今こそ実現しよう! !

さる6月11日、私たちは信じられない光景を目撃した。袴田事件再審請求即時抗告審における、よもやの逆転=再審取り消しという、到底承服しがたい決定である。
この瞬間、真実の追究、無辜の救済、証拠にもとづく公正な判断など、法的正義を担保するものす9べてが、履きつぶした靴のように投げ捨てられた。
現行再審制度は、刑事訴訟法中の最低限度の条文以外、審理の方法や証拠の取扱いなど重要な規定がないに等しい。そのため、各裁判体の裁量に大きく左右され、公正さに欠ける恣意的な裁判が絶えない。また、請求審のほとんどが非公開であるため、広く国民による監視・検証も不可能な中で、無実を訴える多くの声が、当然享受すべき審理をつくされないままに葬り去られているとの疑いが晴れない。
また、ラクダが針の穴を通るような労苦の末に、ようやく再審開始決定を勝ち取りながら、検察の抗告により、さらに年月が空費されたケースは、袴田事件にとどまらない。
松橋事件(熊本)、湖東記念病院事件(滋賀)、大崎事件(鹿児島)など、立て続けに即時抗告審で勝利した諸冤罪事件も、検察の特別抗告を受け、相次いで最高裁に舞台を移している。シーソーのような揺り戻しで人の生命と人生を翻弄するこうした現行制度の欠陥を指摘する声は、マスコミの多くも共有している。
「日本の検察はまるでメンツを懸けた勝負のように、再審開始の地裁決定にも『抗告』で対抗する。間違えていないか。再審は請求人の利益のためにある制度で、検察組織の防衛のためではない」(『東京新聞』社説6月12日付)
同時に、今回の東京高裁・大島決定を見ると「裁判所が確定判決を防衛するためではない」とも付言しなければならない。
袴田弁護団は、特別抗告を行い、事件は最高裁に移る。そして、前記松橋事件、湖東記念病院事件、大崎事件、さらに即時抗告審における不当決定とたたかう飯塚事件(福岡)、北陵クリニック事件(宮城)も、最高裁で並行して審理されるという類例のない状況が生まれている。
最高裁は、個々の事件に対し、正義にかなった決定を迅速に行うとともに、再審制度が本来の機能を果たしているのかを問い直す、方向性をも示すべきである。
私たちは、本日の集会を通じ、再審請求審における検察官の過剰な立証活動や、開始決定への異議申し立てが、道義なき再審封じ以外のなにものでもなく、再審を機能不全にしている元凶であることを明らかにした。
再審開始決定に対する検察官上訴禁止の立法化を目指し、市民、法曹、専門家、国会議員など幅広い連帯を広げていくことをここに宣言する。
2018年6月21日

くり返すな冤罪!市民集会II 参加者一同

 滋賀 日野町事件 

―「支援が希望の光」長女・美和子さん訴えー

大津地裁で7月11日に再審可否判断へ
強盗殺人の犯人として無期懲役刑を受け、獄中で亡くなった阪原弘さんの再審を求めている滋賀・日野町事件で、再審の可否を判断する決定が7月11日、大津地裁で出されます。決定を前に、阪原さんの長女・美和子さんが裁判にかける思いを述べました。(6月2日の「なくそうえん罪救おう無実の人びと関西市民集会」での発言より)

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阪原弘の長女・美和子と申します。父が刑務所から病院に運ばれたとき、声を出せないほど衰弱しており、恨み言ひとつも言わずに逝ってしまいました。棺(ひつぎ)のなかの父は言いました。
「つらかった、寂しかった、悔しかった、お前たちのもとに帰ってきたかった」そのとき、父の無念を晴らすんだと心に決めました。
そして遺族による再審請求をおこないましたが、家族もボロボロでした。父を亡くしたショックが大きすぎて、立ち直ることができませんでした。今日ここで皆さまに父のお話しができるのは、支援者の方が家族を支えてくださったからです。弁護団が三者協議のなかで粘り強い交渉をおこない、無実の証拠を見つけ出し、家族に希望の光を見せてくださいました。自然と元気が湧いてきて、もう一度、もう一度父のために頑張るんだ、そう思わせていただきました。
7月11日、決定が出ます。父と一緒に待ち続け、欲しくてたまらなかった良き決定が出されるものと期待しております。
この地球上で、冤罪に巻き込まれる人ってほんのひとつまみだと思うんです。そのひとつまみにされたら、巻き込まれた本人と家族は地獄の毎日の始まりです。すべての冤罪被害者は、地獄の毎日を過ごしながら闘い続けています。闘いが長ければ長いほど冤罪に押しつぶされ、そして心が折れます。でも皆さまのお力、皆さまのご支援があればつぶれても、折れても起ちあがることができます。
どうか私たちに、冤罪被害に苦しむ全事件に、皆さまのお力をお貸しください。お借りしたお力で必ずや裁判に勝利し、冤罪の醜さ、怖さ、悲惨さ、それを広く世の中の人に伝え、警鐘を鳴らし続けていこうと思います。冤罪で苦しむ私たちが伝えていかなければならないと思っています。(日野町事件「家族再審」ニュースより)

〈要請先〉〒520―0044 大津市京町3―1―2 大津地裁・今井輝幸裁判長

〈激励先〉日野町事件再審無罪を求める会
     〒527―0038 東近江市聖徳町4―14 全教・湖東第一教職員組合内

 三重・名張事件 

名古屋高裁に要請、再審は無辜の救済に

ぶどう酒に毒を入れて5人を殺したとして死刑判決を受け、獄中で亡くなった奥西勝さんの再審を求めている三重・名張毒ぶどう酒事件で、6月15日、名古屋高裁刑事2部(髙橋徹裁判長)に要請行動がおこなわれ、4都府県20人が参加しました。
要請では、「本来、無(む)辜(こ)の救済である再審制度を裁判所が理解していない。法整備がないことを理由に調べようとしないのは許せない」などと訴えました。要請署名を 2044 人分提出し、累計1万 518 人分となり、約半年で1万人分を越えました。名古屋高検に対しても要請し、「有罪の確信があるならすべての証拠を出せ」などと要求しました。(「救援新聞」国民救援会愛知県本部版より)

 栃木・今市事件 

8 月3 日に東京高裁判決、逆転無罪判決を!

栃木・今市事件で、6月9日、東京高裁(藤井敏明裁判長)で控訴審第8回公判が開かれました。勝又さんの弁護団が総括弁論をおこない結審し、判決が8月3日に指定されました。
この事件での有罪の最大根拠は、検察官と警察官が作り上げた4通の自白調書です。弁護団は、自白は140日以上にわたる身柄拘束と強圧的な取調べで誘導されたもので、信用性がないと指摘し、遺体や現場の客観的状況と整合しないとして次の点を強調しました。
まず殺害方法について。有罪を認定した原審は、女児の左肩を掴んで立たせたまま、複数回刺したとする自白を採用しています。これに対し弁護団は、強い力で刃物を刺したり抜いたりして力が加われば、体が動いて創傷部に刃先で生じる切り傷(切創)が残るはずだと指摘。遺体に切創がなく、10カ所の刺し傷は1カ所を除き、いずれも垂直に入って垂直に抜けていることから、「自白のような殺害方法は不可能」と主張しました。
次に殺害場所について。原審は遺体発見場所を殺害場所と認定しています。弁護団は、遺体に残存する血液量はわずかで、体重から換算して約1リットルの血液が流出しているはずなのに、現場に1リットルにおよぶ血だまりはなく、解剖時に流出した可能性もないことから、自白と整合しないと指摘し、客観的事実と矛盾する自白の信用性を認めた原判決は「論理則、経験則に反する」と述べました。
また、自白で「陰茎を尻の間にこすりつける」といった濃い接触をしているのに、女児の遺体や付着していた粘着テープからは勝又さんのDNAは検出されていないことからも、自白は信用できないと主張。一方で粘着テープや遺体の微物から、勝又さんや捜査関係者とは異なるDNA型が検出されており、第三者の関与を示すと述べました。
さらに原審が「殺人事件を謝罪する内容だ」と認めた勝又さんの母宛ての手紙について。弁護団は、主観で一義的に判断すべきではないと主張しました。
弁論の結びに鹿島秀樹弁護士は、「被告人の著しい風貌の変化は、おかれた環境や心境を物語る。被告人は被害女児を殺していない。無罪判決を」と締めくくりました。
7月17日午後6時半、文京区民センターで「無罪判決をめざす緊急集会」が開かれます。集会へのご参加をお願いします。

 今後の主な事件の日程 

7月11日(水)滋賀・日野町事件再審可否決定 午後
7月11日(水)栃木・今市事件 要請行動 東京高裁前で宣伝、午後1時15分
7月17日(火)栃木・今市事件 無罪判決をめざす緊急集会 午後6時30分
      東京・文京区民センター 参加無料
7月21日(土)~23日(月)国民救援会第59回全国大会滋賀・琵琶湖グランドホテル
7月24日(火)茨城・布川国賠裁判口頭弁論 13時30分 東京地裁
7月26日(木)最高裁統一要請行動 午前8時15分宣伝(西門前)、
      10時から民事・労働事件、11時から刑事事件
7月27日(金)名張事件要請行動(13時30分名古屋高裁、15時名古屋高検)
7月30日(月)特養あずみの事件(長野地裁松本支部 13時30分から
8月3日(金)栃木・今市事件判決 午前10時30分 東京高裁
8月23日(木)名張事件要請行動 (13時30分名古屋高裁、15時名古屋高検)

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